ニュースの後始末

2018-10-31 07:13

何か新しいものが実用化された。そうなるとニュースで大きく取り上げられる。しかしその「後始末」がなされることは滅多にない。

「変なホテル」というホテルがあり、やたらとロボットが「活躍」しているという話題はだいぶ前に聞いた。しかしこの「後始末」については大きく報じられることがない。

長崎県佐世保市のハウステンボスにある「変なホテル」が、目玉だったロボットの数を大幅に減らしている。

2015年の開業時には6種類82体を導入し、ホテルに入るとフロントにいるロボットが迎え、案内や荷物運搬、清掃など多岐にわたって活用。

2016年には「初めてロボットがスタッフとして働いたホテル」としてギネスの認定も受け、その後も数を増やし、ピーク時の2017年10月に稼働していたロボットは27種類243体。

ところが、2018年9月時点で16種類85体にまで減らしている。

引用元:音声認識に限界が…「変なホテル」に目玉のはずの“ロボット激減”の理由を聞いた - FNN.jpプライムオンライン

原因をまとめると

・音声認識が使いものにならない

・荷物搬送ロボットは雨が降ると使えない

・コンシェルジェロボットも使い物にならない

・ロボットの充電にやたら時間がかかる。ロボットが老朽化してくると充電間隔が2時間にまで短くなってしまう。

この事例は多くの教訓と示唆に満ちている。使いものにならないと知りながらロボットを大量導入するのは話題を集めるという観点からはいいだろう。

しかし結局そのツケは「現場力」で補わなければならない。昨今秋風が立ち始めたAI業界も結局は人間の「現場力頼み」になっていると聞く。なんでこんなことが繰り返されるかね。


発言すること

2018-10-30 07:05

立場上どうしてもコメントを述べなければならないことがある。しかしそれは慎重に行わなければならない。妙なところで歴史に名が残ってしまうかもしれないからだ。

iPhoneに関してはそうした「外れた断言」が定期的にニュースになる。次の断言はどうだろう。

ELECTRIC vehicles will always be more costly than fuel-burners, according to a senior BMW executive. “No, no, no,” is Klaus Frölich’s reply when asked if EVs will ever equal the prices of equivalent conventional cars. “Never.”

引用元:BMW executive says electric cars will always cost more than conventional cars

BMWの偉い人が「電気自動車は絶対に普通の自動車と同じ価格にはならない」と言ったのだそうな。

記事の続きを読めば、現状バッテリーのコストだけで普通の自動車のコストと同じになる。じゃあバッテリーのコストが下がるかというとそういう見込みもない、という説得力のある議論が続く。

だからこの発言にはちゃんと根拠があることになる。彼の不幸は"Never"と言い切ってしまったこと。for a couple of yearsとかfor a couple of decadesとか言っておけばよかったのにね。

もちろん彼の言い分が正しいことだってありえる。その場合彼の名前はすぐに忘れ去られる。そして彼の言い分が間違っていた場合、彼の"Never"は何度も引用されることになる。そのどちらが起こるかは今の所誰にもわからない。


10年後の車

2018-10-29 07:03

「惑星トヨタは崩壊すべきだ」とかなんとかしょっちゅう書いている私だが、トヨタの力には感服せざるを得ないことも多い。例えば今朝読んだkのニュース。

レクサスの新型ハイブリッドセダン「ES」に、ドアミラーの代わりにカメラが設置される、「デジタルアウターミラー」が装備される。“version L”のオプション設定。量産車としては世界初採用となる。

引用元:ドアミラーがないレクサス発売。カメラが広い視認エリアとクリアな視界を確保 - Impress Watch

前にも書いたが、今の車は内部が大きく変化している。電子機器の塊になりつつあるのだ。視界もだんだんカメラ+ディスプレイに置き換わりつつある。

このようなコンセプトを提案することは難しくない。しかしそれを商品化するのは並大抵のことではない。物理的な鏡は割れなければ電気がなくても機能する。このシステムはそうではない。安全性をどのように確保するのか。

そのような困難を乗り越え、本当に商品化された。今後視界をどのように直接と間接に振り分けるかは試行錯誤が続くだろう。

当家の車を今年の春に買い替えた。次に買い換えるのは多分10年以上先の話。そのとき車はどうなっているのだろう。少し楽しみだ。Apple Carが買えればいいけど、その時までに値段は下がってないだろうしなあ。(嘆息)


人工知能芸の観察

2018-10-24 07:19

おもしろい文章を見つけた。松原仁という人工知能研究で有名な人のインタビューである。出だしは期待が持てる。

「松原さん、まず“わかる”ってなんですか?」と。
「実はそれがまだわからないんです。“わかる”ということが“わからない”んですね」

引用元:AIは「わかる」が何かは「わからない」──松原仁、人工知能の本質をかく語る|WIRED.jp

をを、と思い読み進めると人工知能芸が炸裂し始める。

もしも“わたしにわからないことはない”というクラウド型AIが実現できたとしたら、フレーム問題は解決するでしょう。それは世界中のことが瞬時にわかるということですが、ぼくは工学的にいくらコンピュータが速くなっても難しいと思います。

引用元:AIは「わかる」が何かは「わからない」──松原仁、人工知能の本質をかく語る|WIRED.jp

これはコンピュータがフレーム問題を解決できるか、という文脈の中での発言。この短い文にいきなり

「クラウド型AIが実現できたとしたら、フレーム問題は解決するでしょう」

という大胆な予想が出てくる。しかし松原氏は(少なくとも記事に引用された範囲では)クラウド型AIとは何かを説明していないし、その説明していないものがどうフレーム問題を解決するかを示していない。

しかしすぐ次の文では

「工学的にいくらコンピュータが速くなっても難しい」

とそのフレーム問題の解決を否定する。わけがわからない。

人工知能研究をしていると称する人にはいろいろなタイプがいる。私の経験の範囲内でいうと、このように

「ふわふわした言葉だけで前後の矛盾を気にせず喋り続ける」

というのは一つの話芸だ。こういう人と話すと時間の無駄に終わることが多い。言っていることはわけがわからないのだが、立て板に水で目の前でしゃべられると何か重要なことを言われたような気がする。

コンピュータがこういう会話ができるようになればそれこそ「シンギュラリティだぁ」ということなのだろう。



ゴールを決めよう

2018-10-23 07:02

昨日読んで「あたりまえそうだが、なかなかできないな」と思った文章。

確実に絶対ゴールできるというものでもないが、成功へ向けての明確なシナリオはある。つまり、プロジェクト全般にわたり、不確実は許すが、曖昧さは許さないのが特徴である。

 例えば、目標として「高齢者が楽しく幸せに暮らせるようにしたい」というのは許されない。それは希望する結果であり、タスク・能力として具体的に何をすればいいのか分からない。そうではなく、「認知的な機能の衰えた高齢者が、こういうことができるようにする」というように、目標とする能力を具体的に規定する。

引用元:《日経Robo》金出武雄氏 私の知るDARPAの深層(1)、不確実は許すが曖昧さは許さない | 日経 xTECH(クロステック)

「目標とする能力を具体的に規定」というのはなかなかできない。みんなでブレストをしていろいろアイディアを出しましょう、だと

「みんな幸せになるのがゴールです」

ということになる。しかしそちらのほうが曖昧であり「幅があり」皆が丸く収まる。

かくして我が国には曖昧で聞こえがいいゴールが蔓延することになる。いつかきいたDARPAの局長のビデオはすごかったなあ、とぼんやり思い出す。


再生可能エネルギーを考える上で必要なたった一つの知識

2018-10-22 07:01

なぜこれを学校で教えないのか、理解に苦しむ。娘はエネルギー問題についてならい「原発ってむちゃくちゃあぶない」とならってきた。問題は「全部自然エネルギーにすればいいんじゃね?」が(少なくともここ数十年は)成り立たないのか?という点にある。

「電気は貯めることが(ほとんど)できない。使う分だけ供給しなくてはならない」

問題はこれだ。いいんだよ。風が止まって曇った日には皆電気なしで暮らしましょう!緊急手術が必要な人はみなそういう日には死ぬけど原発を動かすよりマシだ、と言ってくれるのならば。

風力発電ブームがもたらしたのは、供給と需要のミスマッチという予期しない問題だった。ドイツでは風力発電所は常に強い風が吹く北部に集中しているが、大規模な工場の多くは南部にある(南部に集中する原発は次々と運転を停止している)。

北部の風力発電所から南部の工業地帯に電力を送るのは容易ではない。風が強い日には、風力発電所は大量の発電が可能になるが、電力はためておくことができない。供給過剰になれば送電線に過大な負荷がかかるため、電力系統の運用者は需給バランスを維持しようと風力発電所に送電線への接続を切断するよう要請する。こうなるとツアー客が眺めた巨大なブレードも無用の長物と化す。

一方で、電力の安定供給のためには莫大なコストをかけてバックアップ電源を稼動させなければならない。ドイツでは昨年、こうした「再給電」コストが14億ユーロにも達した。

引用元:ドイツで潰えたグリーン電力の夢 | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

この記事には明らかな嘘がある。需要と供給のミスマッチが「予期しない問題」だったわけがない。事実と計算からそうした問題を指摘する声を「自然エネルギー万歳!」という声が打ち消したのだ。それは

「アメリカと戦争すれば負けますよ」

という事実と計算に基づく声を「鬼畜米英」が打ち消したのと同じように。

九州電力では、太陽光発電の発電量が多すぎて出力を制御している。これとて「予想できた問題」ではなかったか。



伝統的大企業の思い出

2018-10-19 07:29

KYBというから何かと思ったら、カヤバ工業が偽装をしていたのだそうな。あれだよね。日本の無能な経営者が

「なんとかしろ」

と現場を締め付ける。しょうがないから偽装をしましょう、というのは何度も聞いた話だ。ものつくり大国万歳。

おそらくこの問題は以前から存在していたのだろう。こんな録音が存在するらしい。

津市のKYBの子会社の元従業員が、上司に対してデータの改ざんをやめるよう訴えている音声データを入手しました。

<音声データ>

元従業員:
「試験データの数値をパソコン上で変える、これは何ですか?これはいいんですか?」

上司:
「良い、悪いというと誤解を招くことがある」

元従業員:
「良いか悪いかしかないじゃないですか」

上司:
「良いか悪いかしかないかもしれないけれども、その...調整という誤解を招くような言葉は...」

引用元:「陰でコソコソ…」KYB子会社元従業員が改ざんやめるよう上司に訴えていた…生々しいやりとり(東海テレビ) - Yahoo!ニュース

この「上司」の言葉を読んでいるうち「ああ、懐かしいなあ」と思った。某重工業でまずいことを指摘された時のえらい人の言葉にそっくりなのだ。さらにはこんな言葉も。

元従業員:
「問題がないと言うなら、別にお客さんがいようが、立ち合いがあろうが堂々としたらいいじゃないですか」

上司:
「逆にいうとその場所でやる必要もないのかなと…」

引用元:「陰でコソコソ…」KYB子会社元従業員が改ざんやめるよう上司に訴えていた…生々しいやりとり(東海テレビ) - Yahoo!ニュース

こののらりくらりとなんとか相手を言いくるめようとする態度。日本のものづくり企業で出世する人とはこうでなければならない。俺には無理な話だったな。



ミステリーの真相は

2018-10-18 07:39

サウジアラビアの記者が、トルコのサウジアラビア大使館内で殺害されたのではないかと言われている。不思議なのはどんどん情報がでてくることだ。

ウォール紙は、カショギ氏が殺害されたとみられる際の録音内容を報道。それによると、同氏はサウジのオタイビ駐イスタンブール総領事立ち会いの下、殺害された。遺体はこの日サウジから駆け付けた法医学者が切断。法医学者は切断している間、現場に居合わせた人々に音楽を聴くよう促していたとされる。

引用元:尋問なし、殴打、薬物投与=「生きたまま切断」か-サウジ殺害疑惑:時事ドットコム

誰かがなんらかの意図をもって情報を流している。それはそれとしてどうやてこの情報を得たのか?当初から「記者が装着していたApple Watchではないか」と指摘はあった。

しかしそれは無理だ、という指摘も当初から存在する。Bluetoothでは「外にいる婚約者のiPhone」には届かず、トルコではApple Watch単体では携帯電話のネットワークに接続できない。

なのに情報だけはどんどんでてくる。これはどういうことか?可能性は二つあり

海外旅行などでよく使われるポケットWi-Fiモバイルルーターを持っていたのではないか?という推測です。

Wi-Fiモバイルルーターであれば、どこでもネット接続が可能です。アップルウォッチもWi-Fi接続をサポートしており、アプリが対応すればWi-Fi経由で直接インターネット接続が可能です。

引用元:失踪サウジ記者のアップルウォッチ暴行録音はW-Fiルーター+iCloud保存ではないか(三上洋) - 個人 - Yahoo!ニュース

モバイルルータでネットに接続し、録音データをiCloudに転送していたというものであり、もう一つは

トルコ治安当局には実は各国外交官の動きを把握する別の手段がすでにあって、アップルウォッチのうわさは単に便利な隠れみのに過ぎないという方が、よほどあり得そうな話だ。

引用元:サウジ記者「殺害」、アップルウォッチ関連のうわさはあり得るのか - BBCニュース

Apple Watch関係ない、というもの。

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このどちらが真実かはおそらく明らかにはならない。しかし思うのだ。携帯情報機器+クラウド上への録音はいくつかの犯罪の防止につながるのではないか。

「死人にくちなし」とばかりに行われる犯罪がある。人目がないところで弱者に対して行われる卑劣な犯罪も存在する。人目があっても、集団で行われる犯罪もある。

そうした犯罪はただ「人目」をそこにおくだけで防ぐことができる。ひと昔前の映画なら「知られたくない記録を保存したUSBメモリー」を奪い合っていたが、今ならクラウド上に保存してしまえば本人及びパスワードをしる人間以外手が出せない。緊急時にとにかく録音、録画をはじめデータをクラウドに保存する。そうした防犯グッズが普及しても驚かないのだが。


人工知能芸人列伝:駒澤大学 井上智洋准教授

2018-10-17 07:11

この人は駒澤大学経済学部の准教授。何をやっているかと言うと

AIが社会や経済、仕事、そして働き方に与える影響について、マクロ経済学の視点から分析をしている

引用元:駒澤大学 井上智洋 准教授に聞く、ビジネスパーソンは「AI」をどう学び、活かすべきか? | ビヨンド(Beyond)

マクロ経済と聞くと私の頭にはいくつかの言葉がよぎるがまあそれは気にしない。彼の言葉に耳を傾けよう。

人工知能は機械やロボットなどに搭載されたコンピュータ上で知的作業をするソフトウエアです。命じられた作業をする「特化型AI」と、人間の脳のように自分で思考判断する「汎用型AI」があります。

(中略)

このように、特化型AIでさえも、多くの職業を奪いつつあるのです。汎用型AIが実現したら、人間の仕事が根こそぎ奪われても不思議ではありません。

引用元:第7区 井上智洋准教授 『人工知能とベーシックインカム』 | 駒大PLUS

人間の脳のように自分で思考判断する「汎用型AI」ができたら大変なことになりそうです。恐ろしいですね。でもってそんな恐ろしい人口知能がいつ頃できるんですか?

井上氏:早ければ2045年ごろには汎用AIがかなり普及していて、幅広く人間の仕事を代替するようになるかな、とは考えています。遅くても2060年にはかなり普及しているはずなので、2060年になってみなさんが今と同じように仕事をしているというイメージは湧きません。全く違う社会になっていると思います。確証はありませんが。

引用元:駒澤大学 井上智洋 准教授に聞く、ビジネスパーソンは「AI」をどう学び、活かすべきか? | ビヨンド(Beyond)

「確証はないが」2045年にはかなり普及し、遅くとも2060年にはかなり普及している。随分具体的に年代まで教えてくれてありがとうございます。その根拠はなんですか?

それが2030年に実現すると言っている研究者の方々がいて、私はそれに乗っかっていますが、もっと早くできると言う人もいます。

引用元:駒澤大学 井上智洋 准教授に聞く、ビジネスパーソンは「AI」をどう学び、活かすべきか? | ビヨンド(Beyond)

なるほど。あなた自身の分析ではなく、ほかの研究者の言葉にのっかっているわけですね。じゃああなたは何をしているのですか?

人間の知的振る舞いをぎこちなく真似られるような汎用AIならば、一応できるかなと私は思っていますが、そのことにそれほど執着していません。というのも、私はあくまでも経済学者なので「汎用AIができたらどうなるか」は論評しますが、「いつできるか」についてはAI研究者ではないのであまり言うことではないと思っています。

引用元:駒澤大学 井上智洋 准教授に聞く、ビジネスパーソンは「AI」をどう学び、活かすべきか? | ビヨンド(Beyond)

あくまで経済学者で専門家じゃないからわかりません、ということですか。何がどういつごろどうできるかさっぱりわからないが、そのインパクトは論評できるのもすごいですね。具体的にどんな未来がくるのでしょうか?

今後社会にAIが浸透していっても、企画やデザインといったクリエイティブな仕事や複雑なコミュニケーション業務は、AIの力を借りつつも人間が担う時代が長く続くはずです。また、人文社会科学系の学問が廃れることもありません。

引用元:第7区 井上智洋准教授 『人工知能とベーシックインカム』 | 駒大PLUS

どこからその予想が得られるのですか?おっと、これ以上は無駄だから打切りのサインが出ました。では皆さま次の人工知能芸人さんの登場までしばしのお別れです。

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私の経験によれば、このような人はブームを見つけるのに長けている。人工知能ブームが去り、冬の時代が到来すれば今度は別の何かを見つけて「何がどういつごろできるか知りませんが、とにかく論評はします」という態度で本を書いたり講演をしたりすることだろう。

こうした能力は一つの才能であり、彼にとっては日々の糧を得るのに役立っている。私は彼の行動から多くを学ぶべきだ。皮肉じゃなくて本当にそう思ってるのだよ。


+4年

2018-10-16 07:06

トランプが大統領になったとき、私は「彼が再選されても驚かない」と言った。彼はありとあらゆる暴言、失言をしながら大統領になった。アメリカ人の半数以上はそれほどバカだということだ。(これは冗談で書いてます)そう言いながらも頭の片隅で

「さすがに再選はないだろう」

と思っていたのだろう。今朝のこのニュースをみてゲンナリするということは。

ワシントン(CNN) 2020年の米大統領選でトランプ氏が再選されると予想する人は米国民の46%と、今年3月時点より増えていることが、CNNの世論調査で15日までに分かった。野党・民主党の大統領候補としてはバイデン前副大統領が有力視されている。

引用元:CNN.co.jp : 「トランプ氏再選」46%、民主はバイデン氏有力 CNN世論調査 - (1/2)

Four more yearsである。まあいまの段階の予想とか数字は全くあてにならないとは思うが、

共和党支持者と同党寄りの無党派層で、トランプ氏が党候補に指名されることを望む人は74%に達している。

引用元:CNN.co.jp : 「トランプ氏再選」46%、民主はバイデン氏有力 CNN世論調査 - (1/2)

この数字には率直にげんなりする。まあルビオとかテッドクルーズしかいないのであれば、、、、って他にはおらんのかい。

認知症患者が大統領になるのは初めてではない。そしてレーガンは再選された。しかしレーガンはトランプほどバカではなかった。

アメリカ人の半分以上は、あれだけの愚行を目にしながらトランプを支持する(冗談で書いてます)まあ最長でも+4年。その間に核戦争が起きないことを祈りながら過ごすしかない。


秋風立ちぬ

2018-10-15 07:06

今から考えれば第3次人工知能ブームが頂点に達したのは2016年だった。そこでは多数の「人工知能芸人」が誕生した。生活のためか、もともとホラをふく性質があったのか、単に愚かなためかわからないが芸人はブームを煽りまくった。

世の中から期待されてたから、
肯定的な名前になっちゃったんでしょうね、きっと。
落ち着いて考えれば「これだけのこと」って
言えたはずなのに、
それを喋って仕事にしている人がすごく多いから。

引用元:「ヘンタイよいこ」新井紀子は明日への希望を忘れない。 - ほぼ日刊イトイ新聞

今雇用契約を結んでいる会社には「ゼミ」と称してお互いにおしえあう仕組みがある。そこで「数式もPythonも使わない野次馬的人工知能概論」というのをやろうとしており、しゃべるネタをあれこれ集めている。

そして「人工知能芸人」の主張を知り唖然とした。こんなことを言って彼らは金をもらっているのか。

調子のいいことを言う人、お調子者は必要なんだけど、
よく喋る説明の上手な人が
ぜんぶ職業になってしまっている。
「ただ喋ってる人」の価値は
下がった方がいいと思います。

引用元:「ヘンタイよいこ」新井紀子は明日への希望を忘れない。 - ほぼ日刊イトイ新聞

私は糸井氏より芸人たちについて厳しく見ている。彼らは大学で教鞭をとることで収入を得ている人であるならば、事実に対してより謙虚であるべきだ。

「人工知能芸」の中でも最大の傑作は「シンギュラリティ」だと思う。私はシンギュラリティは信仰であり宗教だと思っている。宗教ならばそのよるところの経典に明らかな矛盾がたくさん存在していようが、信仰の対象、そして支えとなりうる。

ちなみに「ディールラーニング」というのもある人にとってはツールの枠を超え信仰の対象となっているようだ。これについては別項で述べる。

我が国では信仰の自由が保障されているのだから、何を信じてもかまわない。しかし大人であるならばその結果に対して責任をもつことを自覚すべきだ。ガンの医療が信用できない。よし代替医療を信じよう。それは結構。結果はあなたの寿命で払ってもらう。その人の家族には迷惑だろうけど。

許せないのは

その「宗教」を煽り、自分は利益を得て「あとはしらないよ」とケツをまくる芸人たちである。いや、どんなブームでも利益を得るのはそうした「煽り屋」たちか。

「なんでもディープラーニングで解決できる気がする!」という幻想を持ち得た2014-2016年はすぎ、そろそろ何ができ、何ができないかがわかりつつある。ガートナーのハイプサイクルではAIは幻滅期に入ってきたようだ。私も秋風が吹くのを感じている。

社内でやるのは概論ゼミだから、調べた内容、考えたことを全て語るわけにはいかない。というわけで、このブログでぽちぽち書いていこうと思う。


子供の課題

2018-10-12 07:26

中学生の子供が取り組んでいる課題が面白い。夏目漱石の「夢十夜」の続きで十一夜をかけ、なんてメラメラと燃えませんか?

今まで何度「お父さんが代わりにやる。」と言ったかわからない。問題はとうの子供がそれほど楽しそうではないこと。そういうものかと思っていたが、こんな文章を見つけた。

そのあと中高校生向けに
同じようなことをやったんです。
そのとき、お母さんたちに比べて
中高校生が文章を書けないことに気づいたんです。
まあ、率直に言うと、つまらない。

引用元:「ヘンタイよいこ」新井紀子は明日への希望を忘れない。 - ほぼ日刊イトイ新聞

赤ん坊はなんにでも突進するが、子供は基本的に臆病で保守的である。

子どもはね、保守的なんですよ、だいたい。
子どもが自由な発想をするっていうときの
「子ども」は、だいたい借りてきたものなんですよ。
〝決着した人〟じゃないと遊びはできないんですよ。

引用元:「ヘンタイよいこ」新井紀子は明日への希望を忘れない。 - ほぼ日刊イトイ新聞

読書感想文とかどんな点がついてもいいから面白いこと書けばいいと思うのだが、大抵の子供はそうはしない。

それともあれかな。大人だろうが子供だろうが90%は普通の人であって、残りの10%と出会うのが難しいということなのだろうか。

とか面白く読んでいて

「いや、だからそうじゃなくて、こう」って
一生懸命言うと、
「ああ、わかった」ってまた言う。
それなのに全然違うことを考えている。
いつまでも平行線のまま、
わかりあえない可能性がある、っていうのが、
「ゲーデルの不完全性定理」です。
「人は言葉だけでは絶対にリアリティを共有できない」。
そういう定理なんですよ。

引用元:「ヘンタイよいこ」新井紀子は明日への希望を忘れない。 - ほぼ日刊イトイ新聞

こういう解釈があるのかと驚いた。いやいかんせんゲーデルのお話は難しくて私にはわからんのだが。しかしあれだね、これはいわゆる人工知能にも関連する話ではなかろうか。第2次AIブームはまさにこれにはまっていたように思うのだが。

子供が何にたのしみをみつけるかはわからないが、大丈夫。世の中にはまだ面白いものがたくさんある。


思い返せば

2018-10-11 07:14

さんざん書いたネタだが、今朝またその感を強くしたので。

The Battle for the Home

引用元:The Battle for the Home – Stratechery by Ben Thompson

"The Battle for the Home".家にIT技術を持ち込み収益をあげられるのはどの企業か?

この記事で分析されているのは、Amazon, Google, AppleそれにFacebook。

ソニーもシャープもNECも東芝もPanasonicもその影すら見えない。

1980年代には世界中の家電製品を支配していたように思えたあの企業たちはどこに行ってしまったのか。

この記事の正確性についてはコメントしない。いや、中国企業だろうとかサムソンがはいっていないのはなぜだとかまあいろいろ意見もあろう。もっと言えば、日本企業が奇跡の躍進を遂げ10年後はHome Computerを支配している可能性だってある。

問題はそこではない。

現時点では相手にすらされていないのだ。

あれほど優秀な人が集い、金もうなるほど存在し皆が憧れた企業は手も足もでない。彼らは一体何をやっていたのだろう。そして何が間違っていたのだろう。

まず間違いを認めるところから始めるといいのではないかと思う。そうでなければ今でも彼らは同じ間違いを続ける。


もっと利益を。もっと情報を

2018-10-10 07:26

Facebookは一人のユーザから月$11だかそれ以上の収益を得ている。平たくいえば、Facebookは第3者にFacebook内での行動データを渡し、あるいは行動データに基づいて広告を表示することで金をもらっている。

でもって

最近何かとFacebookが問題として取り上げられることが多い。

米フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は10日、偽ニュースのまん延や個人情報の不正流出問題にからみ米上院の委員会で証言した。スーツにネクタイ姿で臨んだ同氏は冒頭で「(サイトの)悪用について十分な手を打てていなかった」と説明。そのうえで「私の過ちだ。申し訳ない」と謝罪した。

引用元:フェイスブックCEO「私の過ち」 米議会で謝罪  :日本経済新聞

Facebookは、数千万ユーザーのアカウント情報を露出した大規模セキュリティー事故の後始末に追われている。 Cambridge Analyticaスキャンダル以来すでに波乱に満ちているこの年、同社はユーザーデータを漏洩させた新たなセキュリティー問題を受け、ユーザーの信頼回復に必死だ。

引用元:5000万人が影響を受けたFacebookのデータ漏洩について知っておくべきこと

あまりに頻繁にニュースになるため「一つの事件」と思われるかもしれないがそうではない。

でもって

そのFacebookが家庭で使うビデオチャット用端末を発表した。カメラとマイクがついており、常にユーザのモニターをしている。これに対してはさっそく辛辣なコメントがあちこちでつぶやかれている。

Is there any company you’d trust less than Facebook with this?

引用元:Daring Fireball: 'Facebook Unveils the Portal, a Video Chat Camera for the People Who Still Trust Facebook'

訳:こういうことをするのに、Facebook以上に信用できない企業はあるか?

いやいや、Facebookがあったおかげで中学時代の同級生にも出会えたし、、と私はFacebookを弁護しようと試みた。このデバイスの値段を知るまでは。

この製品で最も驚くべきは(その存在自体を別として)価格かもしれない。大画面モデルが349ドル、小さい方は199ドルでEcho Showよりも20ドル安い。さらに、Portal 2台で299ドルというバンドル商品もある。このデバイスは、ユーザーをさらにつなぎとめる方法としてのハードウェアを模索するFacebookの利益を度外視した製品であることは明らかだ。

この文章は楽観的に過ぎる。なぜFacebookは「ハードウェア単体では利益がでない製品」を販売するのか?理由は簡単でこのデバイスを各家庭に設置することにより、Facebookはより多くのデータを収集し、それによって収益をあげられるからだ。

ユーザの動きを追跡するのは、ユーザが歩き回りながらでもビデオ会話をできるようにするためだとか、ユーザの声を認識するのはデバイスで行うからサーバーにデータは送信しないよ、とかFacebookは主張しているようだ。ほとんどの人は

「それは安心だ」(にやにや)

という反応ではなかろうか。あるいは単に「わー安い。ぜひ買おう」と思うのだろうか。ほとんどの人は後者かもしれないなあ。

私にするとLINEなどというものを使うこと自体信じられないのだが、日本人の多くはそれを使っている。ここらへん人によってこだわりが違うのだろう。


ユーモアのセンスの欠如

2018-10-09 07:19

ユーモアのセンスの必要性について度々語っている。つまり私にはユーモアのセンスが欠如しているということである。

先日(またもや)こんな記事を見つけた。

しかし、多くのユーザーが感じているように近い将来iPhoneはたいして売れなくなる。アジア地域での伸長の余地はまだあるが、Windowsマシンに対するMacのように、iPhoneが低価格で高性能なスマートフォンに置き換えられることは容易に想像できる。乱暴にいうと、iPhoneでできることは、Androidでもできるのだ。

(中略)

そのうえで「ジョブズがいたらこうはならなかった」と想像するのも楽しいのだが。

引用元:【スティーブ・ジョブズ氏追悼】iPhoneはもうすぐ日本で売れなくなる、アップルはどうするのか?

今は2018年なのだが、今時こんな「WindowsとMacのシェア争いの再現だー」という言説を見るとは思わなかった、と私は真面目に反応してしまう。

しかしこういう「ジョブスが生きていれば」という幸せな人に真面目に取り合うのは間違っている。

2番目に多かった「故人に会った」経験では、「亡くなった知り合いから『まだ来る場所ではない。帰りなさい』と諭された」という内容が最も多かった。しかし、実際に会った人物としては「ジョブズ」が群を抜いて多く、「家族」「ペット」「友人」といった身近な人物を合わせた数をも上回った。

 「ジョブズ」とはiPhone(アイフォーン)の生みの親として知られるアップルの創業者スティーブ・ジョブズ氏。毎年秋になると「あの世でジョブズが激怒している」「天国でジョブズが嘆いている」など、生前ですら会ったことのない人物にあたかも実際に会って話を聞いたかのような書き込みが急増する傾向があるという。

引用元:「死後の世界」の存在証明? 証言、具体的で一致 千葉電波大

まず第一に「この人の書く記事は読む価値がない」と学び、そして笑い飛ばして仕舞えばいいのだ。こう考えると私にはやはりユーモアのセンスが欠乏している。

個人的には「ジョブンスが死んでから云々」という人は、「ああ、なるほど。この人はこういう人ね」と学ぶ材料を提供してもらえるので助かる。しかし是非これくらいの笑いのセンスを相手に面と向かって発揮したいものだ。それにはまだ私には余裕がたりない。


オープンイノベーションに関する誤解

2018-10-05 07:07

「みんなでがんばろう!」と心から信じてしまうのが誤解である。

何がいいたいのか?この文章を読もう。

このことからも学べるように、オープンイノベーションにおいて目標とすべきはコラボレーションそのものではなく、まずは10社や20社と参加してくれるようなコミュニティをつくることにある。それにより、多様な視点から欠乏に気付いていき、エコシステムが拡大していく。

 また、コミュニティでは、プロダクトを共同開発するよりも、それぞれが有機的につながりながらも、企業ごとにビジネスを作り上げていく方が良いだろう。エルメスならアップルウオッチのベルトを、ナイキならコラボレーションモデルやアプリケーションを売る。エコシステムの中でビジネスをつくることで全体の収益が上がり、その市場自体が拡大していくのだ。

引用元:日本企業のオープンイノベーションに欠けているもの | ビジネスは「コミュニティ」からはじめよう|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー

この記事で取り上げられているのは、Apple Watchである。発売のかなり前にバンドなどの仕様を後悔したため、ベルトを作ってくれたり、ナイキモデルができたりした、と。

それはいいことであり、商品の力を高めるのに役立つ。しかし肝心な点がこの記事にはかけている。中心にはApple Watchというしっかりした製品が存在していた、という事実だ。

それを忘れて

「とにかく皆が集まれる場所を作り、飲み会をやればイノベーションが生まれるだろう」

と考えるのは間違っている。議論すること、交流することは有益だがそれぞれが自分の中に核を持っていなければならない。いざとなれば一人でも一社でも製品を出せる。しかしそれをより広げる、磨く、新しい可能性を見つけるために交流が役立つのだ。

そうした「核」のない人間を何人集め、何回飲み会をやっても生まれるのは酔っ払いと飲み屋の請求書だけである。

烏合の衆から何かが生まれるはずもないし、そんなことは人類の歴史でよくわかっているはずなのに、なぜ「オープンイノベーション」という魔法の言葉をかけるとそれを忘れるかな。



人工知能詐欺師が黙して語らないこと

2018-10-04 07:27

そろそろ第3次人工知能ブームにも陰りが見えて来た。2次と違うところは実際に使われる成果がたくさんでたことである。特に画像処理の分野における進歩は目覚ましい。具体的にはiPhone Xsのカメラ機能。購入予定の人間にとっては「人工知能様ありがとう」というところである。

しかし少し前の「なんでもディープラーニングで解決だあ!」といった熱狂的な言説は聞かれなくなってきている。それとともに人工知能詐欺師もおとなしくなったように思う。ディープラーニングはすばらしい成果を残したが、いかんせんコンピュータの内部で閉じた処理にすぎない。そもそもそれで十分なのか?という問いが建てられそうではない、という意見が述べられたのはおそらく数十年前である。

そうした点に関しては、多くの人工知能詐欺師は何も述べない。しかしその問題が非常にコンパクトにまとまっていたので、ここに引用したい。

初期の研究者たちはコンピュータに膨大な知識と高度な推論能力を与えてインテリジェントな機械を生み出そうとした.しかしこの方向は行き詰まった.著者たちはそれはソフトとハードを別にするデカルトの心身二元論的なアプローチだったからだと説明する.世界は複雑で,現実に何が起こるかをこのようなアプローチで判断するのは困難なのだ*3.さらにこのアプローチでは行動に移る前にすべての結果が計算できていることが前提になる(だからこそ最適行動を選べる).そしてやはりそれは膨大な計算量が必要になる.
ここで生まれたのが「知能の具現化」という新しいロボット工学のアプローチ(包摂アプローチ)になる.まず限られた情報の元に決断し,行動しながらリアルタイムで情報を収集してフィードバックすればいいのだ.
そしてヒトの知性のデザインもこの包摂アプローチに近いことがわかってきた.

引用元:書評 「知ってるつもり」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

「行動しながらリアルタイムで情報を収集しフィードバックする」今実用化が目指されている自動運転よりももっとプリミティブな試みが一時なされていて、しかもそれはあたかも生きているかのように動いた。

私が人工知能詐欺師と「初恋に浮かれた童貞少年」のボーダーラインにいると思っている松尾氏の言説によれば、ディープラーニングを使えばあと数年以内には言語処理が可能になり、言葉の壁がなくなるのだそうな。(このPDFのp22参照のこと。今は2018年だからそろそろ研究レベルではできてるはずだ)

それは本当だろうか?

「人間のように文章を理解する」「人間のように会話する」ためには実世界のモデル化、およびそれに伴う頭の中でのシミュレーションがかかせない。それには実際に身体を持ち、実世界とあらゆる方法でインタラクションしながら学ぶ以外に方法がないと私は考えている。悪名高い

「僕はウナギだ」

という発言(@うなぎ屋での注文をとられたとき)をちゃんと解釈し、I am eel.などではない訳文を出力しようと思えば、それ以外に方法がないように思うのだ。

しかし人工知能詐欺師は絶対それには言及しない。そして「ディープラーニングに投資すれば日本の未来は大丈夫です」と宣伝し続ける。

これが人工知能研究にとって初めての挫折であれば、こうした行為も理解できる。しかし挫折は3度目であり、2度目の挫折の時に十分な反省も提案もなされている。それを知ってか知らずしてか「ディープラーニングでなんでも解決だあ」と叫び続けるのは詐欺師に近い、と私は考えている。



花の色は

2018-10-03 07:28

26年前、私はアメリカから帰った頃だった。当時は浮世離れした場所で、浮世離れした仕事をしていたのでバブルの形成と崩壊については何も知らなかった。ただひたすら目の前の仕事で消耗していた。今の東証株価指数は26年前と同じなのだそうな。でもって当時と今の時価総額ランキング

時価総額ランキング

当時は上位に銀行がぞろりと並んでいた。今やそれらは見る影もない。というか三菱UFJにあらかた合併してしまったように思う。この中で新顔と言えるのはソフトバンクとキーエンスだけ、というのが我が国の問題を表している。えっ、今やKDDIのほうがNTTより時価総額上なの?ああそうか。ドコモが外だしか。

このように世の中はどんどん変わって行く。ほとんどの人の社会人人生は26年より長い。であれば、必要なのは就職するときの知恵と運ではなく、適応力ではないだろうか。

考えてみれば当時の私に「お前は26年後、不動産情報サイトの会社で働いているぞ」といっても「サイトってなんのこと?」と言われるだけだっただろうな。

今から26年後、私は81だから頭が機能しているかかなり怪しい時期ではある。しかし願わくばこの文章を読み返してニヤニヤしたい。若いものは何にもわかっとらんなぁ、と。


戦うSEC

2018-10-02 07:26

金が動くところでは、「フェアな戦い」をするべき。であるから、アンフェアな行動をしたプレイヤーには容赦なく戦いを挑む。この「フェアな戦い」というのはアメリカで何度か見られるキーワードだと思っている。

日本の株式市場もこうであって欲しいものだ。忖度とか根回しとかなしでさ。

今回の「420(マリファナを吸う意味)ドル」ツイートの事実調査に乗り出したときのSECの究極の目的はイーロンに無責任極まりないツイートをやめさせることだった。だから2名の取締役を送り込み、かれらに全てのイーロンのコミュニケーションを事前承認させるというのがSECの最終的狙い。それは達成。

引用元:広瀬隆雄さんのツイート

狂人イーロン・マスクに対してSECが戦いを挑み、そして終戦させるまでの素早さには正直驚く。東芝を当然上場廃止すべきにも関わらずぐだぐだとやっていた日本とは大違いだ。

日本でこういう事件がおこれば「だから日本は革新の目をつんでしまってけしからん」という論調が必ず出てくる。おもしろいことにかの国で同じような論を振り回すひともいるようだ。

イーロン・マスク会長兼最高経営責任者(CEO)が今年8月、自社の株式非公開化を検討しているとツイッターに投稿したのは、交際相手の女性を感心させるのが狙いだった──米証券取引委員会(SEC)にそう判断されたマスクは、その“誤った”つぶやきのおかげで、2000万ドル(約22億7700万円)の罰金を支払うことになった。

だが、実際にツケを払わされることになったのは、私たち全員だ。

引用元:SECと和解のテスラCEO、ツイッターの更新が停止 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

この人の弁によれば、マスクのTwitterでの発言によって世間はイノベーションに関心を持ち続けているのだそうな。だからマスクのTwitterでの発言がおとなしいものになれば、世間はイノベーションに対する関心を失う。だからツケを私たち全員が払う、と。

こうした議論は別として、マスクとその周辺はこれから彼の革新的な部分と暴力的な部分のバランスをとることに苦労し続けるのだろう。

戦時のCEOは戦闘が治って来たら退任しなくてはならない。Teslaがまだ戦時のCEOを必要とするのか、あるいはもっと地に足がついたCEOがしきるべきなのかはまだわからない。


古老の知恵

2018-10-01 07:28

年をとると自分が発見したことを得意げに語ることが愚かな行為であることを学ぶ。そして困ったことに私は学んだ大切なことをすぐに忘れる。

グーグルでは2007年から、「Googlegeist(グーグルガイスト)」という全従業員を対象にしたアンケート調査を毎年行っている。

(中略)

良い結果も悪い結果も、全従業員に公開される。これにより、各チームの従業員とマネジャーは次の年の評価に向け、調査の中でスコアが低かった部分を認識し、改善するよう取り組むことができる。とりわけマネジャー陣は真剣に毎年の調査結果を受け止めているし、それを見ながら会社をよりよくする策を練っていく。

引用元:グーグル流「なんとなく」の判断を避けるコツ | 組織を科学で強くする方法 | 週刊東洋経済プラス

確信はないが、世界中の国でアンケートをとれば最も幸福な国は北朝鮮ではないかと思う。アンケートが示すのは

「従業員がこういう状態にある」

ことではなく

「アンケートに対してこういう回答があった」

でしかない。不思議なことにこの単純な原理を忘れた方が人事担当者は幸せになれるようだ。

私は常に他人の幸せを願っている。だから会社が実施するアンケートに答える際には「ここは北朝鮮だ」と自分に言い聞かせる。

さて、グーグルの人事担当者はそこまで楽観的ではないようだ。

回答内容が真実かどうかを証明するのはなかなか難しいが、グーグルガイストを10年間運営する中で、2つの異なる調査方法で回答内容が変わるかを検証したことがある。一方は、100%匿名での調査。もう一方は、機密性の高い状態の調査だ。後者はつまり、個人までは特定できないものの、高度に分析すればどのグループが発言しているかはだいたいわかる、というレベルである。

2つの方法を試した結果、実は両者の間に回答の差は現われなかった。グーグルの従業員はそもそも、自分の意見をしっかり表明する傾向が強いのかもしれないが、どんな聞き方であっても、ある程度正直に話してくれると考えられる。一方で、グーグルガイストの結果は、それ以外の社内調査の結果ともつねに比較している。回答の傾向に差が出ていないか、従業員の声を正しい形で吸い上げられているかを確認するためだ。

引用元:グーグル流「なんとなく」の判断を避けるコツ | 組織を科学で強くする方法 | 週刊東洋経済プラス

彼らは自分たちのアンケート結果が「北朝鮮の世論調査」になっていないか常に検証しているという。もっと単純に幸せになればいいのにねえ。

従業員満足度を上げるのは簡単だ。従業員にアンケートをとり、その結果を従業員にフィードバックする。結果を教えるのではない。結果が「悪かった」部署に処罰を下すのだ。グループ内での「反省・改善」ミーティングを強制し、マネージャーに反省文を書かせ研修に何度も参加させる。そうすれば人間は偉大な学習機能を発揮し

「アンケートには満額回答をした方がよい」

ということを学ぶ。

ある日読んだ本にこんな小話が載っていた。「下から上への批判、というのは空に向かってバケツの水をかけるようなものだ」

空に向かって勢いよく水を放り投げればどうなるか?そのまま自分に水がかかる。

もちろんこれは私が友人から聞いた話であり、私が体験したことではない。想像だが、三菱自動車内でもこんなことが起こっていたんじゃなかろうか。問題はトップにあるのだが「コンプライアンス遵守意識が低い」とアンケートの結果診断された部署には「コンプライアンス研修」への参加を強制する。そうすれば皆「アンケートにどう回答すれば点数があがるか」だけを考えるようになる。

今日もアンケートが飛び交う。私は常に満額回答。時々期限が悪い時に筆が滑る時がある。そしてすぐ後悔して結果を修正する。


バカ発見器

2018-10-01 07:28

どうやらオリンピックまでにサマータイムを実施するという無茶苦茶な提案は消滅したようだ。まずは一安心。

しかし

おそらくこれからもサマータイムは何度も蘇る。どうしてそうなるのかはわからないが、この現象にも一定の意味はある。誰が本当の馬鹿かわかるのだ。

夏に標準時を早める「サマータイム」について、東京都の小池百合子知事は28日の記者会見で「夕方の時間を活用するようになれば新たな需要ができて、人生を楽しむ機会が増えるきっかけになる。成長戦略の一つとして考えていい」と述べ、将来の導入に前向きな考えを示した。

引用元:サマータイム検討「デッドラインを外せば…」 小池知事:朝日新聞デジタル

東京都知事は「一瞬だけ世間の注目と期待を集めるが、実は底抜けのバカ」しか立候補できない条件でも存在しているんだろうか。この人はしゃべればしゃべるほどボロがでるから黙っていたほうがいいと思うのだが、それを自覚できるくらいならこんなことは言わんわな。

森元が底抜けのバカだというのは前からわかっていたことだからいいとして、この「サマータイム賛成」にはバカ発見器としての機能がある。

少数意見になりそうだが、あえてサマータイム導入を支持したい。

 2004年のアテネ五輪を現地で取材した。やはり猛暑が懸念されたが、それほど暑さは感じなかった。それよりギリシャの人々の夏の過ごし方が印象に残った。

引用元:【視点】サマータイム導入、支持の目線で考えた 「働き方改革」として考えてはどうか (2/3ページ) - SankeiBiz(サンケイビズ)

この記事は「バカが書いた記事」ではなく「頭のまともな人が、なんらかの事情により無理やり執筆した」涙なしには読めない文章である。

その際はこれまで指摘されてきたいくつかのデメリットを、一つひとつ丁寧に解決していかなければならない。長時間労働に対しては、既に動き始めた働き方改革により、かなりの歯止めが期待される。コンピュータなどの時間設定の変更は、律儀で真面目な国民ならば十分乗り切れるはずだ。余暇時間の過ごし方が、エネルギー消費の削減につながるような工夫も必要だ。一方、睡眠不足などによる健康障害問題は、むしろ個人の心構えにより、多くは解消されるはずだ。
 明らかに地球温暖化を原因とする異常気象が、世界を震撼させている。サマータイム制度が少しでも温暖化防止につながるのであれば、我々は躊躇することなく、この新制度に挑戦すべきではないのだろうか。

引用元:サマータイム制度の導入について | 船田 元 公式WEBSITE

これもなかなか見事な「論点」だが、完全に気が狂っているのか、あるいはやむにやまれぬ事情があるのかはよくわからない。

「コンピュータなどの時間設定の変更は、律儀で真面目な国民ならば十分乗り切れるはずだ」

という名文は、気が狂っていなくては書けないとも思える。

どこの世界にも「気が狂った偉い人」というのがおり、多くの人はその愚行の処理に追われる。そういうとき、同じくらい気が狂っている方が幸せなこともあるかもしれない。