This can not be true.

2017-05-31 07:23

先日教育なんちゃらExpoという展示会に行って来た。教育業界にいるわけではないが、目的がはっきりしている分、興味をもっていろいいろな話を聞くことができた。

その中に「学校いじめ把握システム」のようなものがあった。なんでも学校に対してではなく、市の教育委員会が直接いじめの実態を把握できるためのアンケートとかそういうのであった。通報する先は学校と市の教育委員会。しかし昨今のニュースを聞いていると、果たしてそれに意味があるのだろうかと疑問に思えて来る。

市教委によると、文部科学省から県教育委員会を通して、いじめ防止対策推進法の「重大事態に該当しない」とした文言を撤回するよう指導があったという。

 中島さんの両親は、第三者委員会の調査は中立性や遺族への配慮を欠いているとして、調査中止と解散を文科省と市教委に申し入れていた。市教委は昨年3月、「いじめによる重大事態に該当しない」と議決した上で、第三者委を設置していた。

引用元:「いじめ該当しない」撤回=配慮欠いたと謝罪―市教委、中3自殺・茨城 (時事通信) - Yahoo!ニュース

先日横浜であった「150万円脅し取られていた事案もいじめじゃない」とか、とにかく何が起ころうと学校と市の教育委員会というところには「これはいじめではない」と主張する強い動機が存在するようだ。

生徒側は、いじめと認定するよう求めているが、岡田教育長は「第三者委員会の答申を覆すのは難しい」と述べた。
 男子生徒はいじめを受けていた小学5年の時、同級生から「賠償金をもらっているだろう」と言われ、自宅から現金を持ち出して1回5万~10万円を渡していた。
 市の第三者委が昨年11月にまとめた報告書は、「金銭授受はいじめから逃れるためだった」と指摘した上で、「おごりおごられる関係で、いじめとは認定できない」と判断した

引用元:金銭要求「いじめ認定困難」=教育長が見解、原発避難-横浜:時事ドットコム

でもってとにかく「第三者委員会」と設置し、責任をそちらに押し付けるのが常套手段らしい。しかしなぜ彼らがこうした「いじめは存在するはずがない」という態度をとるかについての考察はあまりお目にかかれない。

そして、あくまで「教職員数が十分でなかった」などの、行政の責任に関わる判断はしないで、「どの程度校長が悪かったのか」の判定を行うのでしょう。
その結果、軽くて、「戒告」(教育委員会に校長を呼びだして説教する、という屈辱的な罰)、最悪の場合は、「免職」ということもあり得るのだと思います。

引用元:学校は何故いじめを隠すのか (教育委員会含め)(なぜいじめ報告を隠蔽?) - その他(教育・科学・学問) 解決済 | 教えて!goo

唯一みつかったのがこれである。つまり「いじめが存在するのは、教員及びその上司たる校長、はてまた教育委員会が悪いからであり、罰する」という誤ったKPIの設定によるものではないか。

「指導力のない教員のせいで、教育が荒廃している」「だから、教員に成績をつけて、ダメなヤツはクビにする」
このような論理で、「数値目標」が導入され、例えば「いじめをゼロにする」という目標がどの程度達成されるかで、次の年の給料も決めましょう、という流れがあります。

引用元:学校は何故いじめを隠すのか (教育委員会含め)(なぜいじめ報告を隠蔽?) - その他(教育・科学・学問) 解決済 | 教えて!goo

教育というものの管理は本当に難しい。一時もてはやされた「民間の活力活用」でソフトバンク大学なんかできたがろくな結果になっていない。そしてこの馬鹿げた「数値目標」も同じようなものではなかろうか。

こうした「KPIを通じた目標管理」の問題は、システムがそのKPI最適化に邁進することである。具体的に言えば「いじめ0」を達成するため口が裂けても「これはいじめでした」と言わないことが最善の策になる。

どの組織でも、トップが命じた目標と現実が乖離した場合、「悪いのは末端だ」ということになる。しかしそれは日本的な間違った管理の仕方。日本が負けてるから、お前ら練習機に爆弾積んで特攻してこい、と変わるところはない。

これほど末端が現実と乖離しているのに、号令を出した文部科学省と政権がなんの責任も問われないのはおかしな話だ。よし、じゃあ次の選挙で民主党(あれ、今名前違うんだっけ)にならないのが困ったところだが。


北朝鮮のサラリーマン

2017-05-30 07:14

先日こんな記事を見つけた。

悪辣な強盗アメリカと傀儡の逆賊(韓国)は肝に銘じよ!
度重なる警告にかかわらず 核戦争の挑発策動に狂い暴れるものなら
我々の核宝剣は無慈悲な鉄槌を落とす。
白頭山革命強軍は何事にも空言は言わない!

引用元:北朝鮮の「ビラ爆弾」を韓国土産でもらったので翻訳してみた

北朝鮮はせっせとこういうビラを韓国の国境地帯に撒いているんだそうな。お仕事お疲れ様です。でもってこれは

「ダメな仕事」

の典型例であり、新入社員教育で使うべきではないかと思う。

このビラって「やった感」しかないんですよ。北朝鮮国内目線というか。「こんなのばら撒いてやりましたぜ!」って上司に向けての報告用じゃないですか。新入社員のみんなもこういう仕事する大人にならないようにね。

伝えたいときは優しく平坦に簡単に書かないと。これじゃビラを拾った農家のおじさんの心は動きません。

「いま経済制裁解除すれば手数料半額!」
「いつ祖国統一するの?今でしょ!」
「トランプに髪型疑惑!」

とかなんとかのキャッチコピーをわかりやすくつけて、「そうだ、核もあるから撃っちゃうよ?」ってスマートに脅さないと。

引用元:北朝鮮の「ビラ爆弾」を韓国土産でもらったので翻訳してみた

全く同感である。これは完全に「内向き」の仕事。本当にターゲットすべき韓国の人たちではなく、北朝鮮内部で「上司にハンコを押してもらう」ために書かれた文章だ。

不思議なことだがこの「そもそも誰に向けて書かれた文章なのか」についてとても鈍感な人というのは多いようだ。とはいえ、わが国でも先日東芝が発表したこの文章を見ると、おそらく北朝鮮のことを笑えない。

東芝の紙芝居、これ書いたことある。罵声と怒号浴びせる銀行と投資家納得させるために、現状無視して鉛筆なめるどころか、実現可能性はないけどとにかく絵に描いた餅をたくさん並べるやつ。担当者も現実の資金繰りとか忘れて物語をいかに膨らませられるかが腕の見せ所で。

引用元:たにやんさんのツイート

というか多分今東芝が言うことは、全て真実や一般消費者とはなんの関係もないところに行っているのではないか。彼らの目には銀行と投資家と投資家、それに「お前ら、なんとかしろ!」と怒鳴りつけるばかりの上役なのだろう。

この「内向きの度合い」に何かいい名前はないだろうか。「うちだ指数」とか。こういう概念を広めるのにネーミングというのは大変重要だとわかっているのだが、残念ながら私にはネーミングセンスがないのであった。


国の大きさ

2017-05-29 07:13

昔父が言った言葉が、未だに頭の中に残っている。鹿児島に行った時、「明治の元勲」たちの家がどこにあったかの地図があった。(私も見た)それを見ると、あの明治維新を成し遂げ、そのあとの近代化を推し進めた人たちは「小さな街のご近所さん」だったことがわかる、と。

中国がオリンピックで強くなった時「そりゃ世界人口の相当の数が中国人なんだから、どの種目でも強い人がいるよね」と思った。しかしどうも話はそう簡単ではない。なぜそんなことを今朝言いだしたかといえば、

埼玉県がイスラエル並の人口・経済規模を有していることに東京都民は危機感を持つべきでは

引用元:柞刈湯葉(イスカリユバ)さんのツイート

このTweetの意図を捻じ曲げて考えて見たい。政治的なことは除いて、IT関連のテクノロジーだけに注目したとしても、イスラエルの存在感は埼玉県の比ではない。我が家の愛車についているモバイルアイの製品、それにIntelのイスラエルチーム。埼玉にIntelがCPUの設計チームをおくなんて聞いたこともないし、埼玉から世界的Tech企業が誕生したこともない。

これはどういうことなのか。

姉は常にこう言っている。

「塾にいくとか、どの学校にはいるとかどうでもいいのよ。全部遺伝子で決まってるんだから」

姉は周りで子供達が育ち、どうなるかをずっと観察してきている。その結果からこう言っているのだろう。彼女の言葉には説得力がある。

しかし

もし姉の理論が全面的に正しいとすると、人口が多い国のほうが、優秀なDNAを持った人をたくさん抱えていることになる。(比率ではなく、絶対数として)ならば中国万歳、という結論になる。

しかし

サッカーでボスニア・ヘルツェゴビナに歯が立たない、とかイスラエルは埼玉県と同じ規模の人口だとか、小さな町のお隣さんの明治の元勲という話を聞くと、どうもそれだけではないような気がして来る。確かにDNAとその母数によるところは大きいのだろう。しかし

「氏より育ち」

も確かなのかもしれない。つまりこの社会は、適当な環境におけば大きく花開く多くの才能を見殺しにしているのかもしれない。

話は飛ぶ。少女は自転車に乗ってという映画がある。いろいろな面で心に残る映画だが、今日描きたいのは一点。サウジアラビアにおいて、女性がどれほど抑圧された環境にいるか。かの国では女性は自転車にのることが、大きな冒険なのだ。

何がいいたいかというと

世界中にこうして可能性をつぶされているDNAはどれほどあるのだろう?彼女たちの中には適当な教育を受ければ、それこそ明治の元勲に劣らぬ働きをする人たちがたくさんいてもおかしくない。しかしたまたまそれがサウジアラビアの女性として生まれただけで可能性は0になる。

時々考える。億万長者になったら、いろいろな国から留学生をひきうける基金を作りたい、と。たまたま先進国に生まれたがために税金を無駄にしている人たちに金を注ぎ込むより、その方がよっぽど人類のためになると思うのだ。

となると

「人の才を見抜く」というとても困難なことがキーテクノロジーになるわけだけど、どうですかね。人工知能で一発。シンギュラリティがどうのと喚いている人は是非そういうものを作ってほしいと思うのだけど、シンギュラリティ大好きな人はそもそも論理的にものを考えないから言っても無駄なのであった。



Slowish TV

2017-05-22 07:20

Apple TVのCBSでSunday Morningというコーナーを見るのが好きである。とにかくのんびりとした景色が映し出される。平和だ。家ではけたたましい喋り声に満ちたTVを付けっ放しにしていないと落ち着かない病気の人が一人いる。その人がでかければCBSのSunday Morningである。

そこでノルウェーのSlow TVというものをやっていた。暖炉で薪が燃える様子をひたすら写し続ける。あるいは鉄道旅の様子をひたすら実況する。

とにかく日本のTVは騒がしい。わびさびだの、余白の美だのは遠い世界の寝言のように音と色と情報を詰め込まないと不安に陥るらしい。この病気についてはいろいろ考えなければならないが、今日述べたいのはSlow TVではなく、"Slowish TV"である。

話はこうだ。今やケーブルTVも含めればTVのチャンネル数というのは莫大に増えつつある。つまり万人受けする映像ばかり作らなくてもいいのだ。とはいえ予算は少ない。どうするか。

Slow TVでは「何も起こらない」Slowish TVは「長さはSlow TVと同じくらいだが何かが起こる」

事件を後で映像にする時は、「無駄な時間」を全部カットする。だから短い時間に出来事が立て続けに起こったように思える。しかし現実はそんなものではない。ひどい事件でもほとんどの時間は何も起こっていないのだ。

美しい山間の小川を水が流れて行く。1時間後に人影が現れる。人はだんだん増えて行き、、、

おそらく相当の暇人というのが世のなかに存在し、この様子をtwitterで告げる。すると多くの人がチャンネルを合わせる。何がおこるのか。しかし肩すかしのように人々は消える。

「何が起こるか、いつ起こるかわからない」この番組を全部見る暇な人は少数でもいいのだ。今やその少数の人が強力な発信手段を持つようになった。24時間の間に起こる事件はほんの些細なもの。些細なことでも構わない。それをリアルタイムで目撃するため人はチャンネルを合わせる。

これなら制作費もあまりかかんないと思うのだが、どうですかねえ。シナリオライターに十分な金と時間をあげて、いい「作品」を作ればいけるような気がするんですけど。誰も見ないよな「釣りチャンネル」とか流しているくらいなら、こんなチャンネルが一つあってもいいんじゃないですか。


アンケート万歳

2017-05-19 07:05

なんとなく社内の雰囲気が悪い。これはどういうことだろう。いつからこうなってしまったのか。こういう時にはこのサービスを使おう。

人材サービスを提供するアトラエの新サービス「wevox」は定期的なサーベイを実施することで、社員の仕事や会社とのエンゲージメントを数値化しようとしている。

wevoxを使うにはまず社員のデータをエクセルなどでアップロードする。登録した社員には定期的に同僚との関係、上司との関係、承認・関心、健康、自己成長、理念/戦略/事業、職務といった項目に関するサーベイが届く。これらの項目には社員のエンゲージメントにおける学術的な裏付けがあるという。サーベイを実施する頻度は週1回、月2回などが選べる。

引用元:社内の雰囲気が悪い理由は――アトラエの新サービス「wevox」は社員のエンゲージメントを可視化する | TechCrunch Japan

週に一回アンケートが送付され「あなたは幸せに働いていますか?」と聞かれる。解答しないとそのうち総務か経営者から

「アンケートに回答するように。回答率が悪いグループは個別に呼び出します」と連絡がくる。

ほとんどの組織ではそのうちアンケートの結果が改善されるはずだ。人は状況に驚くほど素早く適応する。ほとんどの人は

「とりあえず”私たちは会社のおかげで毎日幸せに働いています”と回答するのが一番面倒がおきない」

ことを理解するだろうから。あるいは「会社が答えて欲しいと思っている模範解答」が社内に掲示されたとしても驚かない。

---

会社が社員にアンケートを取る。この目的はなんだろう?教科書的には

「社員の「あるがまま」の状況を把握し、問題がある場合には改善手段を取る」

となる。しかし長い間会社で働いているが、こんな目的でアンケートをとる組織にいたことがない。アンケートの目的は

「会社がすばらしいことをしていることを確認する」

である。従って、アンケート結果が思わしくない部署は敵である。こんな素晴らしい会社でなぜ君達は不満を述べているのか。きっとその部署のマネージャーが悪いのか、あるいは部署そのものが悪いのなら解散させるぞ。

つまり

社員アンケートには、多かれ少なかれ北朝鮮の投票のような側面がある。であれば「会社マンセー」と叫ぶのが一番正しく、かつ合理的な行動であることがわかってもらえるだろう。

---

冒頭の引用に戻る。こんなサービスを使う会社がどちらの目的でアンケートをとっているか。現場にでて、実際に従業員と本音の会話ができない経営者がいることだけは間違いない。こういうサービスを事業として展開したいのはわかるが、それを導入された会社の従業員のことを思うとため息しか出ない。



経済学の目指すところ

2017-05-18 07:17

私のいとこに経済学部にはいった人がいた。彼は言った。

「経済学は辛い学問だよ。全然役に立たないから」

同じことをもっとエレガントに元FRB議長がこう言っている。

6.経済学について
「経済学とは高度に洗練された思考分野であり、過去の政策がなぜ誤っていたかを具体的に政策立案者に説明することに長けている。未来についてはそれほどでもない」

引用元:CNN.co.jp : 「人生の展開を恐れるな」 FRB議長が贈る10の人生訓 - (2/3)

いや経済学にもいろいろな分野があり、というまともな議論は傍に置いておく。でもって最近この本を読んでいる。

専門家の直感があたるとき、当たらない時に関して書かれた章があり、なかなか面白い。結論としては

「予測の対象が、規則性に従うもので、かつその規則性を学ぶ機会が十分に与えられているものであれば、直感は役にたつ」

である。

でもって

経済というものが「規則性に従うもので、その規則性を学ぶ機会が十分ある」ものでないことは明白だろう。従って経済学者がTVで述べていることは、ほぼ間違いなくAKBが言っていることと大差がない。

面白いのはここから。

では彼らは何に対して「最適化」しているのか?ということになる。ベン(元FRB議長)の言葉と考え併せるとき、ある結論が導かれる。

「経済学者は、自分がどんな発言をすれば政策立案者の歓心を得ることができるか、について十分な学習機会を与えられているため、それに習熟しており、うまくやってのける」

つまり経済学者は「経済の動き」に精通しているのではなく、それに付随した「政策立案者の心理」により精通しているのではないかと思われるのだ。

これは理論の結果が(多くの場合)実験などで検証できる物理学と違うところ。こちらは多くの人が一致できる「客観的な真実」があるため、そちらに対して最適化されやすい。しかしそんな「客観的な真実」がない場合、学問は何に最適化すればいいだろう?経済学が出した結論が「政策立案者の歓心を最大化する」ということだったのではなかろうか。

---

というほど私は経済学を無用の学問と思っているわけではない。経済学の分野になるかどうか知らないが、リーマンショックが米国経済に与えた影響と、バブルが日本の経済に与えた影響を比べるとき、「やはりなにがしかの知識やら経験は存在する」と考えざるを得ない。とはいえ、こういうネタに使うのが楽しいのも事実だ。


Life without WWDC

2017-05-17 07:30

Appleが主宰する年に一度の開発者向けイベント、WWDCに参加できることが途方もない贅沢だ、ということは十分認識している。しかしあの体験の価値は言葉ではとても言い表せられない。自分がXcodeを使い、Swiftでプログラムを書いている幸せを噛みしめることができる一週間がどれほどの価値を持つか。

そして

近年珍しいことだが、今年はハードウェアのアナウンスがいくつも予想されている。Apple版の音声コマンドで起動するアシスタント、10.5インチiPadに加え、今朝こんなニュースが飛び込んで来た。

Appleは、WWDC2017において、Microsoftの新たな競争製品だけでなく、減少傾向にあるiPadの販売を相殺する目的で、3台の新しいノートPCを発表する計画だと伝えています。

引用元:Bloomberg:Apple、WWDC2017でKaby Lake搭載MacBook Proを発表? | Rumor | Macお宝鑑定団 blog(羅針盤)

これこそ私が待ち望んでいたもの。去年新型Mac Bookが発表されると予想していて空振りに終わったが今年は何がでるのだろうか?

いや

わかっている。こうやって期待だけ高まり結局「新しいOSの発表」だけに終わり(これについては後述)二日後には全てを忘れることを。これまでも何度もそうして来たのだ。

だから

キーノートの全貌が明らかになる6/6の朝まではあれこれ想像しようではないか。Tim.Mac Book Airはディスコンにしていいと思う。その代わりにMac Book 12inchの値段を下げ、そしてMac Book 14inchを追加するんだ。そうすればMac Book+Mac Book proで綺麗なラインナップになる。iPad 10.5inchは発表しなくてもいい。なぜならWWDCで発表する意味がないから。WWDCはあくまでも開発者向け会議なのだ。そのかわりに音声アシスタントは発表してくれ。そして開発者たちは皆毎日明らかになる音声用の新しいAPIに一喜一憂する。

最近

自分にとっての贅沢がどのくらいのものか、と考えることがある。前にも書いたが、一年に3回、二週間ずつ農民の家に引きこもる。それにWWDCのチケットに外れても開催地に行きAlt confにボランティアをする。それに加えてアメリカの砂漠を車で走りいろいろなところをめぐる。

今でも十分贅沢をしているが、時々そんな「身分不相応」なことを考えたりもする。

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さて、今年iOS11が発表される。これはブルームバーグしか報じていないことだが、ここでユーザインタフェースに何か変更があるかもしれない。

iOS7でがらりとデザインが変更された時の衝撃は今でも覚えている。はたしてそれが現実のものとなるだろうか?ハードウェアと違いソフトウェアは秘密を保つのがやりやすい。いや、わかっている。こうして期待だけ高まり(以下略)


我が身の幸運

2017-05-16 07:07

電車でいきなり「この人痴漢です!」と言われた場合、結局どうすればいいのか(もちろん身に覚えがないとしての話だが)これは定期的にでてくる話題だが、いつまでたっても「決定的な解決策」がない。

それどころか、つい10年前までは「解決策が存在しない状態」だったことを知り愕然とする。

「どうせ逮捕された時点で人生終わりだから危険を冒しても逃げた方がいい」みたいなネット通説は誤りだ。正確にいうと、10年前ならある程度正しかったかもしれないが、今は誤りになりつつある。

引用元:痴漢を疑われても逃げるべきではない理由 - 弁護士三浦義隆のブログ

10年前なら、「この人痴漢です」の時点で人生おしまい。自殺覚悟で逃走するしかなかったというのだ。

しかも

この記事を信じれば「そうした状況は徐々に改善されつつある」とのこと。逆に言えば、いまでも運が悪ければ人生おしまい、ということである。

共謀罪がどうのとかわめいている国会議員の先生たちも、電車でとなりにたった女性が「この人痴漢です!」の一言で逮捕される、この現実に少しでも立ち向かってみてはどうでしょうか。それともあれですか。やっぱり司法も人の子ですから国会議員の先生だと大抵のことでは逮捕されないから大丈夫と思ってるんでしょうか。




Techcrunchの蹉跌

2017-05-15 07:01

私のRSSリーダーでは結構入れ替えが起こる。Engadget日本語版は外したまま復活する兆しがない。Techcrunchは一旦外したが最近復活した。Engadetよりは「マシ」と思えるからだ。

「あやしい」「主張がおかしい」「中身がない」と主観的に判断したとき、そのノーの判断が偽陽性の可能性も当然あるけどスルーすることが多い。メディアはレピュテーション商売なので一定以上のリスクは取れない。だからUPQは1度も取り上げてない

引用元:Ken Nishimura / 西村賢さんのツイート

そうした私の判断はいいとして、こうやってドヤ顏で主張されるとこの件についてコメントが欲しくなるところだ。

実は去年のTechCrunch Tokyoのスタートアップバトルでは、Ringのログバーを優勝とすることについて審査員の間で意見が割れた。応用の幅が広そうで独自性が高いという意味では、「目線が高い」野心的なプロダクトだけれども、端的に言って「風呂敷を広げただけちゃうの?」という意見もあった。美麗な動画で可能性を語り、ごくシンプルな電灯のオン・オフのデモを1つやったのはいいけれど、結局使い物になるプロダクトを本当に実現できるのかどうか疑わしいのではないか、という懐疑的な意見があったのだ。ハードウェア系のスタートアップの人たちに意見を求めてみても、入手可能なバッテリや通信モジュールのサイズや性能から言って「指輪サイズ」は、かなり無理があるのではないか、という話もあった。

この辺のことをログバー創業者の吉田卓郎氏にステージ裏で聞いたところ、むしろ何故デバイスの実現性に疑問を持たれるのか分からないという回答だった。

引用元:指輪型ウェアラブルデバイス「Ring」がKickstarterでキャンペーン開始、2014年7月出荷予定 | TechCrunch Japan

指につけるメリケンサックを開発したログバーを優勝させたのはなんらかの商売の一環と思っていた。しかし編集長の言葉を信じるとすれば、それは「汚い取引」ではなく「途方もなく愚か」だったということになる。前掲の引用部分のあとは、ログバー社長の妄想をそのままコピペしておいて「UPQは怪しいと思ってました!」とドヤ顏で言われてもねえ。

さて、そのログバーだがこの企業も不思議なもので、さっぱりものが売れている気配がないのに求人募集だけは元気に行っているし倒産する気配もない。UPQが行なっていた商売をするためには億単位の資金の裏付けが必要、というのは誰かが検証していた。その金の出所はDMMだが、ログバーにはどこから誰が金を出しているんだろうね?

自分たちの資金であれば、勝手に使い方を決めてもらえばよい。しかし願わくばもう少しましな企業に投資ができないものだろうか?

5月の瞬殺

2017-05-12 07:41

ウォーターゲート事件は、かすかに記憶に残っている。とはいえそれが何だったかを知ったのはここ数年のことである。当時4−5年生だったはずだが小学生なんてそんなもんだね。

さて

ウォーターゲート事件は日本では最後の「弾劾可決か?」という頃にならないと大きなニュースにならななかったのだろうと推測する。しかしひょっとするとだが、我々はそれクラスの大きなスキャンダルの入り口を目にしているのかもしれない。

<トランプ政権が突如コミー長官を解任したその裏には、「ロシア疑惑」に関して切羽詰まった事情があるとしか考えられない>

引用元:FBIコミー長官解任劇の奇々怪々 | 冷泉彰彦 | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

FBIの長官がいきなり解任された。彼はオバマ政権時に任命された人で、大統領選直前にヒラリーのメール問題について捜査の再開を決めた人でもある。彼なしにはトランプ大統領は誕生しなかったかもしれない。

というわけで彼は引き続きFBIの長官になった。任期は10年。それがいきなり解任である。そもそも彼が気に入らないのなら政権移行時に解任すればよいのだが。かくて

Why? Why now?

という二つの疑問が誰の頭にも過ぎることになる。

大統領による電撃的な解任というと、土曜日の夜の虐殺が頭をよぎる人もいるだろう。かくしてRichard Nixon LibaryはこんなTweetをする。

FUN FACT: President Nixon never fired the Director of the FBI #FBIDirector #notNixonian

引用元:RichardNixonLibraryさんのツイート

確かにその通りだ。そもそも大統領によるFBI長官の解任は24年前、ヒラリーの旦那によって行われただけで、他に類がない。あのNixonですらそんなことはしていない。なのになぜトランプはここで突然FBIを解任したのか。

Trump政権はこの件に関してむにょむにょわけのわからないことを言っている。しかし仮に特別検査官が任命され大統領選へのロシアの関与を調査することになると、影響がどこまで及ぶのかは誰にもわからない。

トランプはなぜこのような「疑惑を自ら証明する」ような行動をとったのか。彼が底抜けに愚かなのは誰が知っているがそれほど馬鹿なのか。いずれにせよ"Just because he did not do a good job"という言い訳で騙されるのはトランプ信者(驚くべきことに米国民のかなりの数をしめるが)だけだろう。唯一なしうる合理的な解釈は(トランプ相手に合理的な推論をするのが適当かどうかは別として)そういうリスクをとってまでもFBI長官を解任しないと困る事情がトランプにあった、というもの。

トランプは火消しに成功するだろうか?それともアメリカは大好きな「正義」を貫けるだろうか?


未来のAndroid

2017-05-11 07:31

Swiftが最初にアナウンスされたとき「Objective-Cと混在できるなら安心だ」と思った。

それから書くプログラムはほとんどSwift.最近ようやく自覚がでてきたのだが、Swiftでプログラムを書くと、使っているAPIはObjective-Cと共通でも、プログラムのスタイルが変わっていくのだな。今の所は他人が公開したソースを読むことでしか学べないが、そのうちSwift書法みたいな本がでるといいと思う。そろそろ言語仕様も落ち着いて来たし。

さて

そうなると、Androidの将来が気になる。長い時間をかけ1から作りより、ありものを組み合わせてSpeed重視、というのがWebの文化。しかしAndroidは予想以上の成功を収めた(多分そうだよね)今になってその「ツケ」が回って来たのではなかろうか。

未だに開発言語はJavaである。そりゃJavaも悪くないけど(本当のことを言えば5以降触っていない)Swiftに比べるとねえ。またカーネルについてもいろいろ悩みがあるようだ。

Linuxとの軋轢で開発が思うように進められない問題(あのGoogle製スマホのPixelですら2014年末リリースのLinux Kernel 3.18で止まっちまってる!)

引用元:脱LinuxのGoogle新OS「Fuchsia」UIが初公開。4画面分割も余裕です|ギズモード・ジャパン

日本のSIerがあまた(間接的に)雇用しているプログラマーなら言われた環境で粛々と作業するだけだが、Googleがあまた雇用しているスーパープログラマーたちがなぜこの環境に甘んじていられるのか。今年は行けないWWDCだが、Swiftチームのプレゼンにはいつも異様な熱量を感じる。プログラミング言語に興味を持つ人は多いが、その腕を十分に振るう機会というのはそう多くない。

というわけで、Android後継をどうする?という議論がGoogle社内ではあちこちで行われているにちがいないと想像するのだ。技術的にどうする。現在とのコンパチビリティをどうする。そう考えると、当初「どう考えてもむちゃくちゃ」と思われた「iPhoneにOS Xを搭載する」という判断はとっても正しかったのだな。それを実現するエンジニアの能力にも驚嘆するが。

---

と書いたはいいが、若い人にはこの意味がわからんのではないか、と思い追記しておく。

今はどうか知らないが、少し前までカーナビはiTronで動いていた。これはOSとも呼びたくないような代物で、iOSが最新式の自動小銃とすれば、iTronはそこらへんに転がっている石である。

その上でプログラマは苦労して苦労して苦労して画像を一枚表示する。組み込みソフト開発とはそんなものだ、と誰もが思っていたのだ。iPhoneがでるまでは。今から10年前、私はiOSにCore Animationが載っていることに驚愕していた。アニメーションをシステムがデフォルトでサポートするなんて!それくらいソフトウェア開発にとってiPhoneというのは異常な製品だったのだ。


女性を差別しないなんてサイテー!

2017-05-10 07:18

私のような理屈っぽい人間でも、年をとるにつれ「合理的であるより現実的であるべき」ということを学ぶ。理屈を振り回しても現実は少しも動かない。だから女性を含んだ会合では必ず男性の負担が大きくなることに異を唱えない。それが我が国における社会常識だからだ。

これは女性差別ではないか、と言えば合理性の神は微笑んでくれるかもしれないが、実際の社会生活は困難になる。

さて

かなり年がいってから気がついたことだが、女性には女性特有の思考方法がある。その中の一つに

「女性がやることは無条件に正しい。それに対する攻撃は女性差別」

というものがある。

Ai Yoshitaniさんのツイート: "賛成!UPQは、『硬直化した日本の製造業に楔を打ち込める企業』になる可能性があるんじゃないかなーと私は勝手に思ってるんですよね。 今回はUPQの負の部分が

引用元:じゃすじゃすさんのツイート

以前ブロガーイベントに行ったことがあるUPQがまたもやトラブルを起こした。それに対するある会社の女性社長のコメントがこれである。

ちなみにこの社長は「じゃすじゃす」さんではない。なぜかと言えば、社長は直後に自分のTweetを削除したから。そしてこういうTweetを残している。

普段あんまり興味ないくせに、女性エンジニアや女性起業家が叩かれていると、つい擁護したくなる自分の心理に名前をつけたい。

引用元:Ai Yoshitaniさんのツイート

このTweetは大変興味深い。UPQにはEngadget津田氏のような狂信的な支持者が未だについているがこの社長はそうした人間ではない。少なくとも自分のTweetに対する反響を知り、自らを発言を省みるだけの知性を持っている。

その「女性」にしてこの脊髄反射的な反応。これはどうしたことか。

女性はある種の「目立つ女性」について無条件の支持を表明する傾向がある。私はこのことを知ってる。なぜなら私が結婚した相手はかつて

「田中真紀子ってすごい。彼女が批判されるのは女性で、男に都合の悪いことを発言するから」

と公言していたからだ。ちなみに田中氏の無能さが誰の目にも明白になったころには

「蓮舫って結構いいんじゃない?」

と言っていた。

こうした傾向は私の配偶者にとどまるものではない。何かのコラムでひたすら田中真紀子を擁護する女性記者の記事を読んだことを覚えている。彼女がやったことは、男性優位の政治界に風穴を開けることだったのです、とかなんとか。

こうした思考の背後にあるものを想像して見よう。おそらくいくつかの前提がある。

・女性は常に差別/攻撃を受ける立場にいる弱いものである

・であるからどんな手段であっても、男性を批判/攻撃するのは正しい。喝采を送るべきだ。

・その女性に対する非難は女性を差別する感情から来ている不当なものである。

こうした感情は滅多に言語化されることはない。UPQに関して言えば前述の「硬直化した日本の製造業に楔を打ち込める企業」とかあるいは

日本人ミスに厳しい。ミスを防ぐにはコストがかかるし、スピードも失われる。UPQの良さってスピードと安さなんだから…
日本社会、こういうミスを多少は許容できたほうが、イノベーションが起こりやすいんじゃないかな。

引用元:池澤あやか / いけあやさんのツイート

といった「理論武装」がなされる。しかし(前述の社長は自覚があるようだが)それらの言葉は批判されている「女性」がどんな人かも確かめないうちに発せられている。自称アイドルも何も調べないうちに発言している。

そこらへん、確実にそうなのか把握してないんですが、いわゆる広板組み合わせ系なんですかね?

引用元:池澤あやか / いけあやさんのツイート

つまりそうした後付けの理屈はすべてカモフラージュであり、本音は前掲したいくつかの前提なのではなかろうか。

女性というだけで自動的にこうした思考ルーチンが働く。これは立派な「差別」なのではないかと思うのだが、女性達自身にはそうした自覚はないようだ。かくして本日の表題「女性を差別しないなんてサイテー!」という言葉が頭に浮かぶ。

確かに歴史を顧みればそうした言葉がでてくる背景もわかる。しかし21世紀にもなったので、少しは状況が改善されることに期待したくもなる。まずは前掲の社長の「この感情に名前をつける」とこから始めたいのだが、私にそうしたネーミングセンスは決定的に欠けているのであった。


This is Japan

2017-05-09 07:50

DeNAにパットンという投手がいるらしい。いや、懐かしいとかそういう話ではない。彼がこういう感想を述べたのだそうな。

例えば、キャンプ中の練習でもっと効率の良い方法があるのになぜそうしないのかとコーチに聞くと、コーチに「誰だお前だ」というような顔をされながら、さらにプレーそのものよりも困惑する説明が返ってくると明かしている。
 
 (中略)
 
 「これは、彼らが質問に完全に答える理由を持っていないことさえも意味する。私は、日本で行われる大抵のことは、歴史や伝統への尊敬から、常にそのようにされてきたから行われていると結論付けた」と日本の文化を分析するパットン。

引用元:DeNA・パットンが見る日本の野球文化 「これが日本のスタイルと言い聞かせよう」 | ベースボールチャンネル(BaseBall Channel)

これに対するはてなブックマークのコメント(支持を集めているもの)がまた素晴らしい。

主張は凄くわかるが、これは日本文化の問題ではなく、米国も同じだと思う。例えば散々リスクが喧伝されている中四日登板を続ける理由について米国の野球関係者に問うても、納得できる答えが返ってくるか疑問。


Outfielder 「もっと効率の良い方法があるのになぜそうしないのか」「これは、彼らが質問に完全に答える理由を持っていないことさえも意味する」意識高い系中途入社あるある

引用元:はてなブックマーク - DeNA・パットンが見る日本の野球文化 「これが日本のスタイルと言い聞かせよう」 | ベースボールチャンネル(BaseBall Channel)

「アメリカ球界も非合理的」「意識高い系中途入社がいいそうなこと」といった言葉が多く支持されているのだ。少なくともこの記事にコメントを残している人たちの意識はここから少しも変わっていないように思える。

「(西垣氏は)『仕事をするときには時間軸を考えてほしい。プログラマーからエンジニア、プロジェクトマネージャになっていく中で、仕事というのは少しずつ見えてくるものだ』と説明。これを受けて、田口氏(司会のインプレスR&Dの田口潤氏)が学生に『10年は泥のように働けます、という人は』と挙手を求めたところ、手を挙げた学生は1人もいなかった」

引用元:全文表示 | 「入社10年は泥のように働け」 IT業界はみんなそうなのか : J-CASTニュース

こうした現実に直面すれば、パットンもThis is Japanと肩をすくめるしかない。何度も実証されていることだが、日本のプロ野球というのは米国の3Aと2Aの中間くらいの存在。それでいて給料は米国の何十倍ももらっている。この「成功したビジネスモデル」に文句をつけるお前は誰だ?と聞きたくもなるだろう。最近は国際試合で全く歯が立たないことも「常識」になりつつあるが、かといって給与水準が下がったわけでもない。勝利を目標としないBaseBallならぬ野球は独自の進化を遂げていく。太鼓の音に合わせ、同じ歌を歌う観客は増えているそうだしビジネス的には全く困っていない。仮に中高の野球部の数が減り野球人口が減ったとしてもそれがなんなのだ?

日本野球の未来は暗い。こう言い切ってしまうと、驚く人が多いだろう。熱心なファンは、プロ野球や高校野球の人気は盤石だと感じているかもしれない。

引用元:ファン減少続く日本野球の「超不安」な未来 (東洋経済オンライン) - Yahoo!ニュース

日本の大企業にも同じ病気があるのではなかろうか。困ったことに多くの大企業は国内だけにとどまっていることができない。それゆえ東芝になったり海外投資で莫大な損失を出し続けるドコモになったりする。

思うに

日本が復活できるとすれば、こうした「お前らみたいな新参者は黙って従って入ればいいんだ」という「自分たちのやり方に対する無条件の信仰」が崩れた時じゃないのかな。国土が焼け野原になることなしにそうした変化が起きるといいのだけれど。


見る将

2017-05-08 07:43

iPhone上の将棋アプリで、全部で20あるレベルの下から2番目にも10%の確率でしか勝てない私ではあるが、最近「将棋を観る」ことの面白さを知りつつある。

正直言えば「見事な手筋」とか「すごい攻防」とかはさっぱりわからない。解説付きで「ああ、そうなんですか」と思うだけ。では何を「観ている」かといえば、将棋をさす人間の有様。

例えば、昨年の王将戦についてかかれた素晴らしい記事がある。この記事を読めばほとんどの人が木村八段を応援したくなるだろう。(今年の王将戦予選でも健闘しているようだ)

では将棋を指すのがコンピューターだったらどうだろうか。それでも私は興味を持って「人の有様を観る」ことができるだろうか?

先日Ponanzaというプログラムが将棋の名人に勝った、という報道があった。このPonanza対名人は2番勝負であり、第二戦は5月20日に行われる。私のような素人からみても、人間がコンピューターに将棋で勝てないことは明白のように思われる。もうコンピュータは独自の進化を遂げるしかないのではないか。

さて、この2番勝負の間である、ゴールデンウィークに第27回世界コンピューター将棋選手権なるイベントが行われるとひょんなことから知った。なんと人間の名人に勝ったPonanza(より強いバージョン)が予選で負けたという。

今回このPonanzaは「万全の体制」「牛刀割鶏」と思われていた。

天彦が最強Ponanzaと戦っておるのだが、もはや生身の人間の佐藤天彦がPonanzaに勝てると信じている人は誰もいないに違いない。素手での戦いに自動小銃を持った奴が相手では、天変地異でもない限り勝てるわけがないのである。

そのPonanzaが
• 将棋で初めて実用レベルのディープラーニングに成功
• ディープラーニングライブラリChainerを使用
とは全くもっておだやかではない。

(中略)

その後の情報を加えるとPonanzaチームの3人の新規参加者が死ぬほど優秀
• 齋藤真樹 東北大学岡谷研究室卒業、専門ディープラーニング
• 藤田康博 東京大学鶴岡研究室卒業 専門ゲーム木探索
• 秋葉拓哉 プログラミングコンテスト「TopCoder」でトップクラスのレッドコーダー
こんな連中入った時点で手がつけられない。
Ponanzaは大規模クラスタしなくてもWCSCで優勝出来るというのに、多種構成 (CPU500core以上、GPU100基以上)を採用。なんなのこのエクストラオーバースペックは(苦笑)

Ponanza Chainerの登場で参加メンバー的にもハードウェア的にもコンピュータ将棋ですら終わった感がある。ただ強くしたいだけでここまでやるのは狂気に近い。もはや優勝以外に価値を求めているのだろう。

引用元:ついに将棋を終わらせにきた感ありPonanza_Chainer | 台湾猫大厦

このPonanza_Chainerが鎧袖一触、全てのコンピュータ将棋プログラムをなぎ倒し、コンピュータ将棋選手権を終わらせるに違いない、と私のような素人でも思う。資金、人的資源、CPU資源使いたい放題。しかも元になったのはこれまで(すでに)無敵を誇ってきたPonanzaである。

Ponanza Chainerの登場で、メンバー的にも、ハード的にも、もうコンピュータ将棋、終わったな…。こりゃ、ペンペン草、一本も生えませんわ。

引用元:やねうら王さんのツイート

Ponanza製作者山本氏のこの言葉にも説得力があるというものだ。

今年の世界コンピュータ将棋選手権のPonanzaはたぶんめちゃめちゃ強いことになる。過去現在、そして下手したら今後数年の未来までも含めて史上最強の将棋プログラムになるかもしれない。

引用元:山本一成@Ponanza電王さんのツイート

まだ始まってもいない戦いの結果どころか数年先の結果まで視野に入れている。そして年をとった人はガダルカナル島総攻撃前に打たれた電文を思い出すかもしれない。

同二十一日の電文にいたっては、今日ではとうてい信じ得ないほどの必勝確信に溺れている。電文に曰く、

「殲滅戦前日の感慨無量なり。二十三日にはガ島攻略は完了する見込みにして、それより約五日の後、軍の直轄部隊大部分は直ちにツラギ、レンネル、サンクリスト バルに転進して、これらを占領する予定なり。ラビ攻略(注、ニュウーギニア戦)の部署はガ島において行うを可とするにつき、参謀長以下若干の幕僚は、ただちに前進準備ありたし」

とある。すでに占領を終わった後に打ってしかるべき電報が、攻撃をはじめない前に打たれている。自惚れという言葉だけでは説明不十分なる思い上がりようであった。」

引用元:帝国陸軍の最後 第2巻P76

そのPonanza_Chainerがelmoというプログラムに破れた。そして5月5日に決勝が行われる。予選を勝ち抜いた8っつのプログラムによる総当たり方式。予想通り全勝でPonanza_Chainerとelmoが激突する。

その結果はどうだったか?

elmo、たった1台のPCでponanza chainer(1092コアXeon+128GPU+4.8TBメモリ)に2連勝し、全勝優勝。

引用元:けいくんさんのツイート

Ponanzaは確かに強かったが、開発者を含め議論を巻き起こす存在でもあった。プログラムは公開されておらず、独自の進化を続けている。そして開発者の山本氏はビッグ・マウスがお得意のよう。しかも強い。絵に描いたような「プロレスのヒール(悪役)」である。

戦い終わって

手前で頭を下げているのがelmoの開発者。顔が見えているのがPonanza開発者の山本氏。

ちなみに山本氏は「今後数年にわたって勝つ」とのTweetをしただけでなく、5/11には本の発売も控えていたようだ。

人工知能はどのようにして 「名人」を超えたのか?ー最強の将棋AIポナンザの開発者が教える機械学習・深層学習・強化学習の本質 https://www.amazon.co.jp/dp/4478102546/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_i01.ybTG9E9E8 … via
人工知能とはいったいなにか、一生懸命書きました。5月11日発売です。ぜひ読んでね!

引用元:山本一成@Ponanza電王さんのツイー

「最強の将棋AIポナンザ」この言葉が発売の一週間前に冗談に堕するとは誰が想像しただろう。

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ものすごい資源を投入したドリームチームに、たった一人で挑んだ挑戦者が勝利する。これはまさに少年ジャンプの王道パターンであり、いやもっと世界にも通じる普遍的な「感動ストーリー」。ヒールがやられる。ゴリアテがダビデに倒される。この偉大な物語があまり話題になっていないように見えるのは驚きでもある。

将棋というのは本当に面白い。ルールが明確に定められており、決着が誰の目にも明らか。やれ「採点者が買収されていたにちがいない」とかいう言葉が飛び交うフィギュアなんとかとは大違い。そして勝負はあくまでも駒の動きで決められる。指しているのが誰だとか、年齢がどちらが上だとか肩書きがどうとか一切関係がない。

それとともに

コンピュータプログラムの開発というのは、ともすれば物量勝負になり「計算機と人を集めたほうが勝つのさ」と思いがちな昨今である。実際そうとしか思えない現実があるのだが、それでも時々このような形で

「一人の努力と才能が無敵の巨人を倒す」

物語に出会えるのは興味深いことだ。今から来年の世界コンピューター将棋選手権が楽しみだ。




適者生存

2017-05-02 07:25

生き残るのは、もっとも強いものではない。もっとも環境に適応したもの。その場で生き延びるために何が必要かを見極め、それに注力したものが生き延びる。

かくしてこういうことが起こる。

つまり、「出来もしない、やりたくもないが、オジサン受けするネタ(Must)を出すと、ビジコンで優勝できる」という現象が発生します。
これがビジネスコンテストがうまくいかない大きな理由です。
当人の意思やケイパビリティではなく、審査員が理解可能でやるべきだと考えられていることを出すと優勝してしまうのです。

引用元:なぜビジネスコンテストからビジネスが生まれないのか? – ところてん – Medium

世の中にはビジネスコンテストなるものがあるそうな。でもってオジサンたちが若者たちの「自由な発想」を評価して優勝者をきめる。そういうばこの前会社でやったリクルートイベントでも「ビジネスコンテストがどうの」と言っていた人がいたな。

この場合に適応すべき環境とは「点数をつけるオジサンたちの頭の中」である。かくしてオジサンが理解可能なことを述べた人間が優勝し、実際のビジネスには全く役にたたない。

そういうわけで、審査員は往々にしてWillとCanが評価できないので、Mustをロジカルシンキングでガチガチに理論武装してやるだけで、簡単に優勝することができます。
加えて、審査員のオジサンはリサーチが甘いので、タイムマシンビジネスを出してあげるだけで、コロッと落ちたりします。
そのため、学生向けのコンテストなどでは、この手のロジカルシンキングができるが、コードも書けなければ、事業に対するやる気がない連中が優勝を掻っ攫い、もらった賞金で遊んで終了ということになります。
そりゃそんなビジコンからはビジネスは生まれません。

引用元:なぜビジネスコンテストからビジネスが生まれないのか? – ところてん – Medium

これはいかん、ということでビジネスコンテスト主催者にKPIが設定される。そこからどれだけ実際のビジネスが生まれたか。こんどは主催者側が「適応する」番だ。

すでにビジネス化されており、PoCが回り始めた事業に対して、ビジコンに出ないか?と主催者が声をかけ、その事業を優勝させるということが起こりつつあります。

引用元:なぜビジネスコンテストからビジネスが生まれないのか? – ところてん – Medium

回り始める車に乗るのだからこれほど確実なことはない。これがKPIの弊害の一つだと思う。KPIというのは複雑な現実のうち少数の指標だけを取り出して、それを絶対視するもの。かくして

「他のところは切り捨てていいんだな」

ということになり、こういう現象が起こる。

かつてWISHというイベントが行われていた。

日本のウェブの未来を担うような可能性のある「サービス」や「端末」を支援するイベントWISH 2010

引用元:WISH 2010本日開催=全編ustreamで配信【湯川】 | TechWave テックウェーブ

これもひどいものだった。おそらく「審査員とお友達であること」が有力なKPIだったのではなかろうか。かくして製品もまだ販売していなかったCEREVOが受賞することとなる。

ふと考えたんだが、アカデミアの世界ってこういう「適者生存」の塊なのではないか?Webサービスに関して言えば「やる気のある人間はコンテストなんか出さないで、起業する」ということが言えるのだが、アカデミアってそれがそもそも存在しないし。

いろいろ大変だなあ。


作家になること

2017-05-01 07:26

作家になりたい。なぜそう思うのか。

事の起こりはこの記事である。

朝と夕のご飯がきっちり用意されている旅館もいいけれど、自炊ができる台所付きの宿に憧れる。それも貸別荘のような明るい雰囲気ではなく、温泉街の片隅にある寂れた湯治宿だったら最高だろう。

引用元:巨大な自炊湯治宿、「農民の家」は最高だった - デイリーポータルZ:@nifty

いや、すばらしい。温泉にはいり、付近を散歩し、演芸会を見るのだ。その昔、北海道で見た演芸はいまでも記憶に残っている。

「あたし直美って名前だからあまりあだなつけられなくて。でも「かえる」って言われてたことがあるんです。そしたらおみやげがかえるの耳かきばかりになって」

引用元:巡り巡って-北の京芦別-北海道大観音

それでもってプログラムを作ったり文章を書いたりするのだ。朝昼晩と3回ご飯を作る。失敗しても自分で食べればよいし、栄養バランスや箸の上げ下げ、食洗機への設置方法とか部屋の掃除方法について懇切丁寧な指導をいただくこともない。

ネットの接続は1日一回に制限し、そこでメールをまとめてダウンロードしたり、(今では滅んだと思うが)巡回ソフトを使ってサイトをまとめて閲覧する。これなら時間を有意義に使えるだろう。夜は虫の音を聞きながら座禅を組む。ああ、なんと素晴らしい。

問題は

私が東京にあるオフィスに勤務するサラリーマンである、というところにある。そこに通わはなくてはならないのだ。これでは湯治場生活も実現しようがない。嗚呼。どうすればいいのか。

Wait a minute.

「城の崎にて」じゃないけど、作家というものは旅館に長期滞在して作品を書くというではないか。というわけで作家になれば、湯治場に一週間や二週間閉じこもっていても許されると思うのだ。最近気が付いたのだが、暑さが堪え難い時期、寒さが骨身にしみる時期、花粉が舞う時期というのはほぼ二週間なのだな。だからその間だけ農民の家にお邪魔する。

というわけで

私は作家になることに決めた。サラリーマンとしてやっていける年齢を超えたら「作家」と書いた名刺を作ろう。それで年に3回農民の家に閉じこもる。お金がなくなれば帰る。

そこまで何年かかるんだろう。