Fake Business

2014-11-28 07:01

素人がこういうデモに歓喜するのはわかる。そうだからメディアも取り上げる。

ユカイ工学はPepperに対応するソリューションとして「マホウノツエ」を公開した。赤外線通信機能を備えたマホウノツエをPepperが手に持ち、Pepperがテレビやエアコンを魔法でコントロールしているかのような光景を作り出した。

「魔法」をイメージしたというデバイス、ログバーのRingもPepperのためのUIとして活用可能だ。会場で見せたビデオでは、Ringのを付けた指の動き、つまりジェスチャーによりPepperを呼ぶ様子や、今日の予定をPepperに聞く様子が描かれていた。

引用元:PepperとRingの共演に見る近未来のUI - TechCrunch

こう考えるべきなのだと思う。私がメディアを運営していて、広告を募集するとする。うちのサイトに広告をだしていただければ、これだけの人が見てくれます、とやるためにはとにかく人目を集めなくてはならない。

であれば、とにかく「ウケル」記事を載せよう。というわけで

「メリケンサック」

のRingとロボットのPepperを組み合わせる。

そしてプロならばこれに

「近未来のUI」

という題名を付ける。世の中金だ。金を得なくては話が先に進まない。

私も仕事ならそうするだろう。そしてエンジニアとしての私は血涙を流す。こんなのは「近未来」ではない。過去10年以上にわたって何度も何度も語られては霧消する。米国のダイエット食品のCMでこういうのがあった。

「本当の狂気ってなんだか知っている?同じことを何度も何度も何度も繰り返すことだ」

CMでは「だからあんたのダイエット方法はまちがっている」と続くわけだが、こうしたMonkey Demo(今作りました)もその類である。

メリケンサックを指輪と偽り金を集める人間をメディアが称揚し続ける。私はTechcrunchの記事を愛読しているがTech crunch Japanのやることには嫌悪感を禁じ得ない。じゃあお前がやってみろ、と言われたら同じようなことをするしかないのだけどね。(しかもずっと下手にやると思う)


慶応大学とAO入試

2014-11-27 06:57

先日慶応大学のORFに行ってきた。毎年文句をいいながらも行くのは場所が近くて行きやすいのと、毎回一つか二つは意義のある話が聞けるからだ。

というわけで私も年をとってきたので良い話から始めよう。クマムシについていろいろ説明が聞けたのは大変楽しかった。動物の分類には形態学の観点と、遺伝子の観点があり、クマムシに関して言うとそれぞれの意見がいつまでも噛み合わないのだそうな。とか、クマムシは単独で子孫を残すがそれで特に問題がない、とかときどきオスが生まれるがそれがなんの役にも立たない、とか。ああ、生き物は面白い。

もう一つよかったのはロボットをインタエースとして使おうとしている研究室の説明だ。いや彼らの展示自体には全く感銘を受けなかった。

感銘を受けたのは得体の知れぬへんなおじさんの「これは失敗パターンだ」という声に学生さんがちゃんと耳を傾けてくれたことだ。しかしあれだね、なんでこう先行研究に無関心でいられるかね。論文という一部の人が神聖視するシステムの大きな問題点の一つは「失敗が記録されない」ところにある。過去に有望と思われた手法がどうして行き詰まったか。誰もそれを記録にとどめない。私が「ユーザインタフェース失敗の本質」を電子出版しても3部も売れないだろうし。

さて

ここからは恒例のORF Sucksの話だ。そもそものサイトの「アクセスページ」からしてどこでやっていて、どうやって行けば良いのかがわからない。「東京ミッドタウン」は広いし、しかもそこへのアクセスは日本人の常識なんですかねえ?その代わりサイト大言壮語だけはてんこ盛り。こうした性質は公式サイトにとどまるものではない。

ちゃんと説明してくれる人1に対して「通路で仲間内のおしゃべりを楽しむ学生」は30の割合で存在している。まあ考えてみれば査読なしの全国大会よりもっと底までさらって展示しているのだかしょうがないか。

説明してくれる人も先に挙げた二人を除いては

「遠大な理想と、しょぼい実施内容と、相手の言葉尻だけを捉えた小賢しい理屈」

をこね回す人が目立つ。おそらくこれが慶応SFCの体質なのだろう。抽象的な大言壮語と小賢しい理屈が称揚される世界なのだと思う。特に自動運転の説明をしてくれた学生さんは是非惑星トヨタに就職するといいのではないかな。人間自分の気風にあったところで働くのが一番だ。

私は物事を否定的に見過ぎているだろうか。そうかもしれない。しかしORF開催と並行してこうした体質を象徴するような出来事があった。私は出席しなかったが、こういうセッションが行われていたのだそうな。

さまざまな分野に進み始めたU20の学生が、いま打ち込んでいる活動について話します。芸術、IT、社会活動など普段はなかなか交わらないそれぞれの活動が、自分の選んだ道という切り口で繋がり、混じり合い、化学反応を生み出します。最後には、点と点がつながっていって、一本の糸となります。

※事前登録不要・入場無料

<登壇者>
青木大和(法学部 政治学科 2年 / 若手活動家 / 政治活動家 / 学生NPO「僕らの一歩が日本を変える。」代表)

引用元:プレミアムセッション「分野の壁を超える」

でもってここに出席していた学生さんが騒動を引き起こした。

186:名無しさん@0新周年@\(^o^)/:2014/11/22(土) 20:12:55.56 ID:dLocPj4W0.net
小学4年生が作ったらしい「どうして解散するんですか?」という
安倍政権批判のウェブサイトがSNS上で話題に

「僕らの一歩が日本を変える。」というNPO団体(代表:青木大和)が
JPドメインを取得していたことが判明

同じタイミングで、サイト(英語版)の画像プロパティから
「/tehu/Downloads/DSC_0268.jpg」という記述が発見される
慶應SFCのTehu君が作成したと判明

199:名無しさん@0新周年@\(^o^)/:2014/11/22(土) 20:14:56.98 ID:iIOYFs7N0.net
>>186
青木大和も慶応
tehuも慶応

引用元:自称小学生「どうして解散するんですか?」、慶応SFCのtehuさんと、菅直人の息子と接点を持つ青木氏が代表を務めるNPO法人「僕らの一歩が日本を変える」が関与を認める。

さらにこの出来事に関連してAO義塾などというAO入試専門の塾が存在し、驚異の合格率を誇っており、AO入試のために青木氏が関与しているNPOへの参加がアピールポイントになり、、なおとめどもなく話が広がっていく。いや、すごい。何がすごいといってこの青木氏たちの行動が私がORFに行って感じる違和感の明確な説明になっているところだ。たしかにこういう学生をどんどん入学させるシステムがあれば、ああいう雰囲気になるわな。

誤解してほしくないのだが、私はORFのレベルが低いと言っているのではない。何かで読んだセリフだが

「何事も85%はクズなのだ」

というのは真理であり、東大の発表だろうと有名な国際会議だろが85%はクズである。15%の優秀な人というのは、どこでも似たような雰囲気を持っている。面白いのは85%のクズにその団体の性質が垣間見える点にある。

ご存じの方はあまり居ないかもしれないが、某小学4年生が在籍していた慶應法学部の入学者の、実に6~7割近くが推薦入試を経て入学しているのである。この比率は日本の大学でもトップクラスであったように記憶している。そして、特にAO(FIT)入試では、御存知の通り「面接」「論文」などで合否の大部分が決まる。海外の大学のようにSATなどの筆記試験は存在しない。すると、受験生はどれだけ面接で「取り繕うか」を覚える。取り繕うことが出来た人ほど、合格につながるからだ。
しかし、ただ取り繕うだけではダメである。ちょっとした「ばれないレベルの嘘」を織り交ぜることが大切なのだ。例えば、親戚の家の雪かきをしたことを「ボランティア活動で雪かきを行いました」などという、そのような「嘘」を織り交ぜることが合格の秘訣なのである。
活動の中身なんて殆ど無い、名ばかりのNPOに所属し、面接では大きな顔で「NPO法人で高校3年間、活動しました!」と主張すれば合格に一歩近づくということだ。

面接のみが重視されるということはすなわち、「いかにバレない嘘をついて自分を大きく見せるか」の試験になってしまっているのである。そして、その試験に晴れて合格した慶應生は「嘘をつく」ことの味をしめてしまう。努力もせず、適当に自分を「大きく盛る」だけで、人生がうまく行ってしまったのだ、そう思うのも当然だろう。

引用元:「嘘つき」が偉いとされる慶應の伝統について。


Innovationを起こすには

2014-11-20 07:07

というわけで重要なのはイノベーションである。問題はそれをどうやって起こしたらいいのかわからない点だ。

というわけでよくあるのが「若い人の自由な発想に期待する!」という言葉である。この年になるとこの言葉を聞いた途端「ああ、ダメだな」と確信できる。

シャープの社長が言っていることにいいことと悪いことがあるので引用する。まずいいこと。

何か新しいことをしようと思った時に、7割の人が賛成して、3割の人が反対したら、それ失敗しますわ。9割の人が反対して、1割の人が賛成したら成功します。それぐらい新しいもんて、普通の考えから見たら訳わからんもんなんです

引用元:(この人に聞きたい)脱トップダウン、かじ取りは?:朝日新聞デジタル

これは正しい。しかしこれは間違っている。

アニメの声優の声で「べ、べつに、あなたにほめてほしくて掃除したんじゃないんだからね」などと話すおしゃべり機能付きの少し変わった掃除機だ。高橋社長は「全然売れへん」と苦笑いするが、「社長がどう思おうが関係なく、こういう商品を出していくのはいいことだ」と話した。

引用元:Yahoo!ニュース - シャープ「おもろい家電」再び 失敗も評価する新制度 (朝日新聞デジタル)

自由な発想といった途端に「アニメ」しか思い浮かばないのが常人というものだ。

最近思うのだ。Innovativeな発想というのは、ブレストから生まれるものではない。それは

「高度な緊張を要する生活」

をおくることができる個人から生まれるものだ、と。新しいことを考える人間というのは、常に新しいことを考えている。そしてアイディアはどこで生まれるかわからないが、それを育てるための土壌を作る努力を怠ってはならない。

土壌とは何か?すでに何度も失敗したもの、ありきたりなものを認識しそれを嫌悪するメンタリティ。それに解決策は見つからなくても他人が「まあそういうもんだよ」と思っている事に対して「どう考えてもおかしい」と問題意識を持ち付けること。

こうした土壌が常に無意識下で動いている人は突然変なことを言い出す。もっていた問題意識に、なにかがヒットした瞬間「アイディア」が生まれる。こうしたプロセスは生活の中で常に行われているものであり、「イノベーティブ発想論」の講義をとったり、会議室で数時間をすごしたからといって生まれるものではない。

そうした事実を無視して「若い人の」とか「女性の」とかいう人間が上にいるような組織では決して「新しいもの」は生まれてこない。アニメ声で喋る掃除機なんてどこが新しいんだ?

と思ったのだが

米国式の「優秀な経営者がトップダウンで物事を進める」だけが正解ではなかろう。我が国は伝統的に「ボトムアップが得意」なのであった。であれば萌え掃除機がでてくることを許容しなければ、他のまともな案も下からでてこない、といことなのかもしれないし、そうした異なった方法論で成功に至らない、、とは誰も言えない。なんとも悠長なとは思うけどね。


HMDの運命

2014-11-19 07:02

GoogleがGlassを発表する前、HMDはある程度の生存空間を見つけていた。最初は誰もが「これはエンターテイメントに向く」と考えたのだが、結局市場は「業務用」に存在していた。手がふさがった状態でもどうしても画面を確認したい。そうした用途にHMDは向いていたのだ。

そこでGoogleがGlassを発表した。巨人が再びサイコロを振ったのだ。そして出た目は同じだったようだ。

私の予言は、Glassがこの時代のSegwayになることだった。大変革をもたらすと喧伝されながら、倉庫で働く人とショッピングモールを巡回する警察官しか使わかった乗り物だ。実際、Glassはこの監視の時代と完璧なペアをなすかもしれない。

引用元:デベロッパーが離れ、Google Glassは第2のセグウェイになりつつある - TechCrunch

この「何度も繰り返された失敗」を笑うことは簡単だ。しかし笑っているだけではなんの進歩もない。今回の失敗から、次に

「人間の顔にディスプレイをつけよう」

とする人間は何かを学べるはずだと思う。世の中には他人の失敗から何も学ばない人間が溢れている。

それを持ち上げ続けるメディアも存在する。しかしそうではなく着実に歩を進めてくれる人もいるはずだし、そういう人にとってGoogle Glassの「失敗」はとても意味のあるものだったのではないか。

またHMDは「業務用」に戻るのだろう。少なくともしばらくの間は。次の挑戦はいつ誰がどんな形で行うのだろうか。


ブレストは時間の無駄

2014-11-18 07:08

ブレストというのが大嫌いである。だいたい声の大きくて

「何も考えず反射的に言葉を発する」

人が場を制し、ありきたりな結論に落ちつく。特にわが国ではそもそも結論は「落ち着くところに落ち着く」ことになっている。

アイディアの最初のきっかけはほんの些細な会話や、できごとや、あるいは全く関係ないことをしている時に生まれる。つまりそれは生まれた時には極めて個人的なものなのだ。それを「みんなが議論してアイディアを出す」なんてのはどう考えても馬鹿げている。

アイデアを思いつくや、皆の前に立って、その漠然とした思いつきを説明できる・・・そんなひとを私は知りません。アイデアは他のひとが入る余地のないほど排他的で、かつもろいものです。アイデアを具現化する具体的なモノを作って初めてすべてが変わるのです。これはもっとも根源的な変化です。なぜならもはや思いついたひとに限定されないからです。オープンになり、解釈を加えることが可能になります。実際に存在するものになり、多くのひとが関われるのです。もっとも難しいのはアイデアではありません。それを実際に現実のモノにすることです。アイデアに実体を与えること、それが非常に難しいのです。

引用元:難しいのはアイデアではない:Jony Ive | maclalala2

デザインの方法論にはいろいろなものがあるが、「科学的」に考えるのであれば、まず「成功している人、組織はどうしているのか」を研究するべきだと思う。ところが現実には

「ろくなものを作ったことはないけども、デザインの方法論を述べるのは大得意」

な人が大手をふって闊歩している。これはどう考えても馬鹿げている。いや、その人自身がすごいものを生み出せなくてもいいんだよ。その理論に従ったら「こんなすごいものを生み出しました」という例がなくちゃ。

問題は

ではAppleの方法論に学びましょう、といってもIveの言葉はなかなか解釈が難しい。結果はあるが、その過程はわからないのだ。Iveは「アイディアは会話から生まれる」といっている。それはブレストとは異なるものだ。ではなぜ会話からアイディアが生まれるのか。こういうのは研究とは呼んでもらえないんですかねえ。


たかがメールアプリ

2014-11-17 06:57

先日中学校の同窓会的な集まりがあった。「今何やってるの?」と聞かれリリースしたばかりの自信作(iOSアプリ)を見せた。

女の子たちは全く反応を示さなかった。「普通の人」にとってアプリのインタフェースがどうだとかは「どうでもいい」ことなのだと思う。

私が最初に勤めていた会社の友達と話しをすることもある。彼らと話していると

「この会社にとってはアプリは”そんなもの、どこか外注に作らせておけ”というものなんだろうな」

と思う。

彼らにとってはこうしたエピソードは異なる太陽系でのできごとのように思えるだろう。

Googleエンジニアたちは、エンジニアに典型的な強迫神経症的やり方で、社内のGoogle+やフォーラムに長文記事を掲載し、サポートされなくなったユースケースを、どんなに細かいものであっても残らず列挙した。エンジニアが毎日使っている機能を奪うほど恐ろしいことはない。さらに、文字をアイコンに変え行間を広げる決定が下されると、Googleエンジニアたちの怒りは頂点に達し、Gmailチームのオフィスを、よろいかぶとを身にまとい、たいまつと剣を持って襲撃する準備が整えられた(その手の代物を所有しているGoogleエンジニアが多いことに驚くだろう)。

引用元:GoogleがGmailとInboxを分けた理由 - TechCrunch

「たかがメールアプリ(この記事はWebインタフェースだが)」のインタフェース変更に対してこれだけの怒りを持つ人たちが大勢いる。彼らと惑星トヨタの住人をどう比べよう。売上高だろうか、利益率だろうか。

いやそうではない。考えるべきは自分が何に興味を持ち、何を生業としようといているかだ。ちなみに私はGoogleが新しく出したInBoxというアプリを大変気に入っている。少し前までMailboxというアプリを愛用していたが、あっさりこちらに乗り換えた。そしてこのアプリのいくつかの動きに驚嘆するとともに、悔しい思いをしている。私はToyotaがものすごい利益をだした、というニュースを聞いても別になんとも思わない。そういうことなのだと思う。


Nokia復活の日

2014-11-14 07:14

という煽り気味の題名をつけたが、言わんとするところは

「Microsoftはハードビジネスを放出するのだろうか?」

という点。ナデラの「プラットフォームのプロバイダー、ツールのプロバイダー」という定義は見事だ。この動きには少し驚いた。

今日(米国時間11/12)、Microsoftはデベロッパー・ツールのクロスプラットフォーム化の努力を一歩押し進め、近く.NETをMacとLinuxに移植することを発表した。同時に、.NETのサーバ・サイド(クライアントの.NETではない)のコア・スタックを次のバージョンからオープンソース化するという。

引用元:Microsoft、.NETをMac、Linuxに移植、サーバ・サイドをオープンソース化すると発表 - TechCrunch

ということは

ハード、OSの垣根を越えてMicrosoftの.NET,Azure,Officeが動くことがMicrosoftの望みということになる。となると誰がWindows PhoneとかWindows印のTablet,それにわけがわからないSurfaceなんか使うというのだろう?

Nadella氏がCEOに就任するまで、「Windowsで最初に最高のものを提供する」というのが、Officeや「Skype」を含むMicrosoftのアプリおよびサービスの指針だった。もしそうした考え方が今も残っていたら、Microsoftは先週のiOS向けOfficeの発表を、対応するバージョンのWindows Phone向けOfficeの準備が整うまで延期していたかもしれない。

 しかし、そうはならなかった。むしろ、先週以降はモバイルデバイスで最高のOffice体験を利用したかったら、Windowsタブレットを下に置いてiPadを手に取るべき、という状況になっている。

引用元:秘密を守れるようになったマイクロソフト--過去に絶対に考えられなかった4つのミラクル - (page 2) - ZDNet Japan

これはバルマー時代からの劇的な変化だ。こうなるとそもそもMicrosoftがハードウェアを手がける意味がわからなくなってくる。いや、こう書くべきだろう。今やOfficeや.NETはどのプラットフォームでも動く。そうであれば、Windows PhoneそれにSurfaceは

「その条件下であっても、他プラットフォームと比較し最高の体験を提供できる」

ものでなければならない。

つまり

話は当たり前のことに回帰したのだ。もう「Microsoftのハードをお買い上げくだされば、Officeがタダでついてきます。だからハード買ってね」とは言えない。ナデラはハード部門を「甘やかしていた」生命維持装置のコードを切った。これはWindows/XBOXも同様。

バルマーは最近のインタビューで「直接ハードウェアをてがけるのは、市場からのフィードバックを得るため」と言っていた。だから彼はあれこれハードウェアビジネスを手がけることにしたのだが、さてナデラはどうするんだろね。今後数年でNokia Phone/Surface/XBOXはどうなるんだろう。


Softbankに関するあれこれ

2014-11-13 07:30

最近のSoftbankに関して私がもっとも「なるほど」と思ったのはこの文章だ。

 「ただし、今後は国内No.1の地位を死に物狂いで取りに行くような積極的な投資をすることは考えられません。割引のキャンペーンなども、ドコモとKDDIに後れをとらないようについていくことになるでしょう。現在の顧客ベースを維持して安定的なキャッシュフローを得ていくことが、投資資金のためには必要なのです」(菊池アナリスト)

引用元:もはや通信会社にあらず!“投資会社”ソフトバンクの次のターゲットは?|ニュース3面鏡|ダイヤモンド・オンライン

つまるところ、ソフトバンクは投資会社であり、通信業はそのための資金をかせぐ手段にすぎない。そう考えれば参入当初はいろいろな施策で目を引いたが最近は「横並び」しか考えていない姿勢が説明できる、というものだ。

つまり彼らは「新しい製品、サービスを作って世の中を変えていく」ことに本質的に興味を抱いていない。やりたいのは

「投資をして、資金をふやしさらに投資して儲ける」

ことなのだろうと思う。我々はその過程で「ISDN使い放題で月1万円」などというNTTのふざけた提案をゴミ箱に放り込むことで利益を得られるわけだ。

さて、とはいっても通信キャリアとしてのソフトバンクからはこれからはあまり利益が見込めない。(ユーザとして)なんだかんだいっても日本の通信会社はしこたま儲けている。これは「うまくやった」ということなのだろう。

ふと考えたのだが、米国の航空会社はなぜああも儲かっていないのか?飛行機というのは米国社会にとって欠くことのできないインフラであるはず。なのになぜしょっちゅう倒産しているのだろう。日本の通信会社のようにカルテルを(実質的に)組み収益を確保することができない理由が何ああったんだろうなあ。。。と真面目に調べる気もないのであった。


IT企業を一言で言うと

2014-11-12 06:52

いくつか面白い記事を見つけた。

Appleはデバイスを売る会社だ。それがAppleの本質だ。Googleはデータの処理と広告の販売を本質とする会社だ。Googleのビジネスはユーザーに不快感を与えずに広告を表示できる能力にかかっており、その点のGoogleの仕事ぶりは文句のつけようがない。

引用元:MicrosoftのCEO、サティヤ・ナデラ、Apple、Googleと比較して自社の本質を的確に指摘 - TechCrunch

これらの言葉にはぐうの根もでない。なるほど、伊達にMicrosoftのCEOはしていないと思う。自分の会社についてはどうだろう。

デベロッパーがアプリケーションを開発できるようにするプラットフォームを提供し、また誰であれコンピューティングに関連する人々が所望の成果物を作れるようにする数々のツールを提供するところでこそ、Microsoftが真価を発揮し、本当の差別化を行えるのだと私は考えている。プラットフォームのプロバイダー、ツールのプロバイダーであることこそ、Microsoftの根本的なアイデンティティなのだ。

引用元:MicrosoftのCEO、サティヤ・ナデラ、Apple、Googleと比較して自社の本質を的確に指摘 - TechCrunch

この言葉に従えば「マルチプラットフォーム上で動くOfficeをある程度無償で提供する」というのは「理にかなった行為」ということになる。またAzureを提供することで、サーバー側のプラットフォームを提供するということにもなる。つまり「MicrosoftはAzureとOfficeの会社である」、という宣言のように思える。

さて

「サーバー側の開発プラットフォーム」といえば、ナデラを除いてまず思い出すのがAWSである。そのAmazonについてナデラはどう言うのだろうか。Amazonはもしとんでもなく愚かでないのだとすれば、得体のしれない姿を志向しているように思える。

アマゾンのコンシューマハードウェア戦略はとても理解できない。・・・アマゾン製品の合理的な説明ができないからだ。唯一考えられるのはこういうこと — アマゾンがハードウェアを作り続けるのは、それがひどいものであることを理解していないから、そしてメディアに対する理解が根本的に欠けているからとしか考えられない。アマゾンのサイトで宣伝しまくってたくさん売ることはできる。あたかも成功したという誤った印象を与えて・・・

引用元:アマゾンはエコーチェンバー | maclalala2

Amazonはタブレット、それに携帯電話、最近は奇妙な音声インタフェース付きの何かを出したらしい。

Amazon

引用元:Joy of Tech

Amazonが最初にTabletを出した時は大騒ぎだったが、最近は「またか」という雰囲気である。一体彼らは何をしようとしているのだろうか、あるいは単にバカなのだろうか。Amazonはなんの会社なのだろう。ECの会社でないことだけは確かだ。

こういう世界の巨人達に比べると日本の「メガベンチャー」の姿は寂しいばかりだ。DeNAはオークションから出会い系、はてまたクズゲームの会社になり、GREEはSNSからクズゲーム。MixiもSNSからクズゲーム。CyberAgentだけは「インターネット広告」で一貫しているか。「それが何?」という言葉は脳裏から消えないが。


エネルギーは感染する

2014-11-11 06:53

いろいろある問題のうち、これがもっとも大きいものだと思う。

エリック・シュミット:
新しいアイデアは常に存在します。そして人は、新しいアイデアを生み出すか、そうでなければ生み出す人と知り合うことができます。私はこれまで、新しいアイデアを生み出す人々と付き合えてこれて、非常に幸運でした。エネルギーは感染します。そういう人たちと知り合うことが大切なのです。

引用元:「エネルギーは感染する」「アイデアを生み出す人と知り合うこと」、Googleの元CEOエリック・シュミット氏が「新しい働き方」について語る - GIGAZINE


エネルギーは発散する。周りのエネルギーが低ければ、ただ冷えて黒いかたまりになるだけだ。

この本の中で書いている唯一の「やらなけれならないこと」は「すばらしい製品を作ること」です。インターネットとグローバル化のおかげで多くのことが可能になりました。信じてください、素晴らしい製品があれば、顧客もお金もついてきます。

引用元:「エネルギーは感染する」「アイデアを生み出す人と知り合うこと」、Googleの元CEOエリック・シュミット氏が「新しい働き方」について語る - GIGAZINE

くだらないKPIとかそういうものを掲げて何にもならん。なるのならSONYは世界一の企業であり続けているはずだ。

問題はこの単純な原則を無視して「管理」を行う人間がはびこること。そこにはおそらく原因がある。


地図のない場所への航海

2014-11-10 06:44

2007年、iPhoneのプレゼンテーションでSteve Jobsが言ったことだが

「Appleは過去に何度か”全てを変える”製品を発表してきた」

というのは正しい。Apple Watchがそうなるかどうか私にはまだわからないが、「例によって」Appleは地図のない場所へ乗り出したのだと思う。なぜか。

iGen.frが、信頼出来る情報筋の話しとして、ステンレススチールの「Apple Watch」は500ドル(約56,000円)から販売され、ゴールドを使用した「Apple Watch Edition」は、4,000〜5,000ドル(約45〜56万円)で販売されるようだと伝えています。

引用元:iGen.fr:Apple Watchは500ドル〜、Apple Watch Editionは4,000ドル〜? | Watch | Macお宝鑑定団 blog(羅針盤)

「スマートウォッチ」はすでに何種類か発売されているが、こんなに高い製品はない。理由は簡単でApple Watchは他の会社のスマートウォッチとは全く異なるものだからだ。それはこの価格を見てもわかる。

さて

問題はこの超高額な製品を一体何台生産すべきか?という点にある。特にApple Watch Editionだ。正直見当がつかない。競合製品が何台だからとか今までの弊社の製品が何台だとかは全く根拠にならない。

そもそもこの価格にどんな根拠があるのか?製造原価+マージンがどうのこうのは言えるが、そもそもマージンは何%が適当なのか?新しい製品を作る、とはこうした「答えのない問題」に蛮勇をふるって回答していくことでもある。

私の関心は「果たしてApple Watchはファッションアイテムとして成功するのか」という点にある。この場合の成功とは何を意味するんだろうね?電車にのったとき目につくほど多くの人がApple Watch Editionを手につけていることではないことは確かだが。


Webの延長アプリの作り方

2014-11-06 06:52

最近明白になってきたことだが、WebとアプリのUIというのは根本からして違う。WebのUIの進化はまあ牛歩の如くである。いつまでたってもおなじようなことをしている。

それに対してアプリのUIは新しいアイディアがどんどんうまれ、そのなかの良いものが広まっていく。こういう力学の差を考えないで講演をするとこういうことになる。



この初期コンセプトも、ドキュメントをしっかり書くといった重厚なプロセスでやっているとフィードバックを素早く反映できない。
実際にどうやっているかというと、紙に書く。

引用元:伊藤直也氏が語る、モバイルアプリケーション開発のいまとこれから(前編)~Salesforce Developer Conference Tokyo 2013 - Publickey

まず「スタートアップはUIに力をいれている」は正しい。しかし次の「紙に書く」は間違っている。それは2009年ごろまでのやり方だ。

動きのデザインを行うためには、紙では全く不十分。そのためにFacebookはOrigamiを作った、、という話を伊藤氏は全く知らないのだろうか?さらにはこの「間違い」

それよりも近道は、UIKit Frameworkを普通に使うこと。UIKitというのは素直に使うとiOSらしいものになるようにできています。

引用元:伊藤直也氏が語る、モバイルアプリケーション開発のいまとこれから(前編)~Salesforce Developer Conference Tokyo 2013 - Publickey

これは一つの「正しいやり方」ではある。私も受託開発ならこういうことを声高に主張する。iOSの標準のやり方が一番!ユーザも戸惑いません(そして開発のリスクが低減できます)

しかし

伊藤氏の言葉の問題点は、彼が挙げた「UI開発に力をいれたアプリ」が標準的なUIKit Frameworkの使い方をしていない点にある。左下にある+のメニューボタンなんて全く標準的なものではない。

しかし

こうした「新しい試み」にたいして皆がよいと思うと誰かがフリーで公開してくれる。さらに広まるといつかAppleがiOSに取り入れる。たしかPull to refreshもそういう経緯をたどっている。

元々は Tweetie という Twitter クライアントで最初に搭載されました。Tweetie は Twitter for iPhone(公式アプリ)の前身です。

Twitter のタイムラインは上に行くほど最新なので、上端でさらに引っ張って更新する操作は自然そのもの。この操作のスマートさが流行り、iOS アプリに数多くのフォロワーを生み、取り入れられました。

引用元:縦長になって引っ張りやすくなった iPhone 5 で、色んな「引っ張って更新」を比べてみよう! (フェンリル | デベロッパーズブログ)

つまり「UIに力を入れているスタートアップ」は決して「iOS標準の画面部品」ばかり使ってアプリを作ってなどいない。彼らは常に「こっちのほうがいい」と新しい提案をしている。Facebookなんかそれようのアニメーションエンジンから画面表示エンジンまで作って公開している。

だからこの伊藤氏の講演は実に「ああ、Webばかりやってた人がアプリを語るとこうなるのね」というものだ。そりゃWebだとUIの自由度が少ないからみな同じようなことしかできないけど、アプリの世界はどんどん変化しているのだよ。


暴君が斬られる時

2014-11-05 06:47

先日こんな記事を見た。

GoogleにAndroidをもたらしたアンディー・ルービンが同社を離れることになった。Wall Street Journalによれば,、ルービンは今後先進テクノロジー・ハードウェア製品を開発するスタートアップを育成するインキュベーターを設立するという。

引用元:アンドロイドの父、アンディー・ルービンがGoogleを離れてハードウェア・インキュベーター創立へ - TechCrunch

ラリーがなんといおうと、これはルービンのクビにほかならない。GoogleはChromeとAndroidという二つのOSをもっている。そして現在Google内で日の出の勢いなのがChromeを統括していた男だ。

消息筋によれば、ルービンはとんでもないボスだったとのこと。なんでも自分で決めたがり部下に過酷な要求を課し、「おれおれ」と言いまくる。なぜAndroidの標準ブラウザは(少し前まで)Chromeでなかったか?おかしいではないか。iPhoneのブラウザはSafari, WIndows PhoneのブラウザはIE。それがあたりまえなのに。ではその答えを教えよう。

今回は、「どうしてAndroidに標準装備のブラウザはChromeではないの?」という質問に答えます。

(中略)

一方、Androidには「ブラウザ」(以下、標準ブラウザ)という名前のWebブラウザが標準装備されてきました。最先端の機能を求めハイスピードで開発が進められるChromeとは異なり、こちらは多くのAndroid端末で動作するよう設計された安定志向のブラウザです。標準ブラウザは基本的にAndroidの一部で、独立したアプリとして配布されるChromeとは性格が異なるのです。

それに、同じGoogleから提供されるソフトウェアとはいえ、AndroidとChromeでは開発チームが異なります。Chromeは「Chrome OS」というWebアプリ実行プラットフォームの中核的存在でもあり、標準ブラウザと同列に評価してはいけない部分もあります。

引用元:どうしてAndroidに標準装備のブラウザはChromeではないの? - いまさら聞けないAndroidのなぜ | マイナビニュース

おそらくこの記事を書いた人は事情を知っていて、なおかつぼやかしているのだと思うが読んだ方はなんのことかわからない。私が要約しよう。なぜAndroidの標準ブラウザがChromeではないか?

理由は簡単。暴君ルービンが「Chromeなんか使えるか!俺様がブラウザも開発するんだ」と主張したからである。

こういう暴君はいろいろな場面で有用である。特に小さなスタートアップでは必要悪ともなり得る。しかし暴君の常として組織が成熟し大きくなると斬られる運命にある。

古今東西普遍の事象がまた起こったということにすぎない。そういえばフォーストールとかシノフスキーとか何やってるんだろうね。


日本シリーズ

2014-11-04 07:23

昭和30〜40年代生まれの人であれば

「小学校で、先生が授業を中断しこっそり日本シリーズをテレビでみせてくれた」

という話を聞き

「なるほど、そういうこともあったかもしれない」

と思うだろう。それくらい日本シリーズは、そしてプロ野球というのは日本人の生活の一部であったのだ。

そんなことを思い出しながら先日小学校5年と3年の子供達と話をした。

「君たち先週日本シリーズがあったのを知っている?」

「言葉だけは知っている」

「そもそも野球のルール知ってる?」

「知ってる。とにかく打って走ればいいんでしょ?」

もはや今の小学生は野球のルールすら知らない。その彼らと彼女たちが野球放送に興味を持つことなどまずありえないだろう。

遅かれ早かれプロ野球はプロレスのような存在になる。散々指摘されていることだが、かつてゴールデンタイムにプロレスが放映されていたことなど今からは想像もつかない。しかしまだプロレスには救いがある。ルールが単純だからだ。ふと目にして「あら面白い」ということもあるだろう。しかし野球はそうはいかない。おそらく今の子供達にとってはビリヤードのような存在なのではないか。なんか玉を棒でつついているのはわかるが、どうやって点がはいっているのかさっぱりわからん。

この凋落の歴史というのは、研究に価するものだと思う。やれクライマックスシリーズが悪いとか、やれ良い選手は大リーグに行ってしまうとか、そもそもスポーツへの興味が分散しているのだ、と個別の説明はつけられるが、この変化には驚くばかりである。日本人の生活の一部分であったものが音も立てずに消えようとしている。

そして一世を風靡したものが滅びるとき、その滅び方は様々だ。目下の関心はいつTVが野球を「その他のスポーツ」扱いするようになるのか。そして年棒が事業規模に見合った水準になるのか、だが。これらはいずれも日本の組織特有の「一朝一夕には何も変わりません」を体現しているように思える。