Power of stupid question

2013-03-25 06:57

というわけで、何かと物議を醸し出すドン・ノーマンである。Emotional Designはどこへいったのか、とか聞きたいことはあるのだが、今朝こんな文章を見つけた。

One of my concerns has been design education, where the focus has been centered too much upon craft skills and too little on gaining a deeper understanding of design principles, of human psychology, technology and society. As a result, designers often attempt to solve problems about which they know nothing. I have also come to believe that in such ignorance lies great power: The ability to ask stupid questions.

via: Rethinking Design Thinking - Core77

「デザインの教育」について、それがあまりにも技巧に偏り、人間の心理、技術、そして社会についての理解、そしてデザインの指針について疎かにしているのではないか、と懸念している。結果としてデザイナーはしばしば全く理解していない問題を解こうとする。またそのような態度は「馬鹿な質問をする能力」を奪っていると信じるようになった。


馬鹿な質問とは何か?あまりにも基本的と思えるが、その問に対して誰もが返答に窮するような問だ。

This is where breakthroughs come from. We need to question the obvious, to reformulate our beliefs, and to redefine existing solutions, approaches, and beliefs. That is design thinking.

via: Rethinking Design Thinking - Core77

そうした問について真面目に考えることでブレークスルーが起こりうる。それこそがDesign Thinkingだ、と主張している。

この主張には賛同する点が多い。多くの場合Stupid Questionを発しただけでは他人の想像力を喚起することはできず、Stupid Question に基づくStupid Prototypeを示してようやくそれが何を意味するか他人にわかってもらえる、と考えているはそれはいいとしよう。

たとえば私が先日書いた「カーナビ開発なんか全部やめて、スマホ、タブレットとのインタフェースだけ用意しろ」というのは、自動車業界においては間違いなくStupid Questionだ。和を持って尊しとなす、の我が国では「そうはいってもねえ」ということで聞かなかったことにされるのが関の山。

とかいていると気が滅入ってくるので、話しを前向きにしよう。このStupid Question の一つの形態というのは「実はこれいらないじゃないか」というものである。その問を発した瞬間、「それは言ってはいけない」という無言の視線を感じたとすれば正解である可能性が高い。とかなんとかStupid Questionについて考えるとまた一章くらいかけるような気がしてきた。Real Stupid QuestionとNot so stupid questionの違いとかね。


スタートアップが捨てるもの、残るもの

2013-03-22 07:03

というわけで、最近私が一番良く使っているメーラーはMailboxである。この名前はどうかと思う。ググってもみつからんではないか。Google先生にお伺いを立てた時、ちゃんと見つかる名前を考えるのが第一歩ですよ。

とかいうくだらない講釈をふっとばして、MailboxがDrop Boxに買収された。これは見事な「ベンチャー企業の成功物語」だ。

これまで十分な資金と数百万人のユーザーを持つ小さなスタートアップが、同じような転換を試みるところを何度も見てきたが、いずれも失敗に終っている。

via: OrchestraからMailboxへ。 奇跡の転換を可能にした7つの理由 | TechCrunch Japan

Mailboxはもともとtodo-リストを共有するOrchestraというアプリを作っていたのだそうな。ところがそれが之以上大きくなる見込みがない、という判断に基づき、それを捨て、1からMailboxを作ったと。

Mailboxの成功にはいくつかの要素があることに気がつく。

・技術系で影響力のあるユーザにベータテストを依頼し、絶賛されるだけのメールアプリを作る開発能力

・現在存在している製品を切り捨て、新しい方向に一から取り組むことを決断するマネージメント能力

・長期ベータと予約システム(これは実に楽しかった。待ち行列が0になったとき-すなわち私がアプリを使えるようになったとき-もう待ち行列が減る喜びを感じられないか、と失望したものである)を発明したマーケティング能力

この3つが組み合わさった時に生まれたのがMailboxという伝説だ。そしてMailboxは何か?と言われれば「それを作り上げた人々の能力」という答えが一番ぴったりするだろう。彼らはOrchestraという既に存在している製品とそのユーザを躊躇なく切り捨てた。なかなかできることではない。しかし彼らにとって「既存の製品、ユーザ」は彼らが守りぬくものではなかったのだ。製品を捨て方向を転換しても、それに関わった人たちの能力は残る。

この成功がニュースになるのは、それが滅多に起こらないことだからでもある。しかしここは「コップには水が半分はいっている」立場を取ろう。こうしたことは起こりうるのだ。

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逆に確立された大企業では、才能ある人達がたくさん勤めていながら、とんでもなく馬鹿なことが起こりうる。

そんなSurface RTのウェブサイトに掲載されている「おすすめのタイプを選ぶ」というページが、発売前からネットでツッコミを食らっている。というのも、比較対象として隣に並べられている「Surface Pro」が国内未発売でスペックが空欄になっているため、製品を選ぶための比較表として機能していないのだ。

via: 【やじうまWatch】まさかの一択......おすすめのSurfaceを選ぶページが斜め上の展開 -INTERNET Watch

天下のMicrosoft日本法人がこうした馬鹿な事をやる。おそらくMicrosoftの社員誰に聞いてもこの頁を「馬鹿げている」というだろうが、集団になるとこれが生まれる。「組織」というものの面白さを垣間見ることができる。


Androidというプラットフォームは存在しない

2013-03-21 06:47

もう何度目かよくわからんが、書いておく。

「Androidはプラットフォームではなく、OSだ」

というわけでApple原理主義者の目には最近いくつかの記事が目にとまる。

Android の最大の成長マーケットは、アマゾンの Kindle Fire と中国のマーケットのものだ。Kindle Fire は Android の枝分かれしたバージョンを使い、開発にはアマゾンの SDK が必須で、アマゾン専用の App Store を使わねばならない。中国の Android デバイスの 90% は Goolge Play Store を使用せず、代わりに1ダース以上の中国のサービスプロバイダーの App Store と結びついている。

via: 果たして Android タブレットは 2013 年には iPad を追い抜くか? | maclalala2

Amazonが出しているタブレットは、確かにAndroidをベースにしているが、Android上でGoogleが出しているサービスを使えるわけではないし、App Storeも別。中国にあまた存在するあやしげな中華デバイスも同様だ。

であれば、それらのシェアを合算して「Androidが圧倒的」などというのは馬鹿げている。それならiTronはとっくの昔に世界を制覇しているはずだ。

グーグルは招待されていなかった。Android について触れたのは全部を振り返ってもたったの1回だけだった。前から分かっていたが、サムスンは Android ブランドを Galaxy ブランドに置き換えようと望んでいるのだ。

via: グーグルはどこまでアンドロイドを支配しているか | maclalala2

そして携帯電話で利益をあげている2社のうち、一社はAndroidではなくGalaxyがプラットフォームだと主張している。

私が言いたいのは、「ホンモノの」Androidを利用している人が実際にはほとんどいない、ということ。ホンモノをつかっている人の割合は2%以下ではないかと私は思っている。

via: Android OSの威信を保つためにグーグルがすべきこと « WIRED.jp

というわけでこうした主張もでてくるわけだ。オープンプラットフォームバンザイとか言っているうちにAndroidは混沌とした空間になりつつある。それはPC用のOSと同じような状況かもしれないが、携帯情報端末は個々人とより密接に結びついているだけに始末が悪い。どこにいるか、何をみているかを全て監視するマルウェアがあたえるダメージはPC向けのそれの比ではない。

というわけで、真実は(これは何かの記事で読んだことだが、今その記事をみつけられない)

Androidは誰にもコントロールできなくなっている

ということではなかろうか。Googleだろうが、Amazonだろうが彼らにできるのは「自分が開発した端末の上での自分が開発したOSのコントロールが可能」ということだけなのだ。

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とかなんとかいっても、Androidのシェアとかアプリ数は順調に伸びている。それを横目でみながら悔しがっていると思われるのがMicrosoftである。

THE VERGEは20日(現地時間)、米マイクロソフトが開発者に対して、アプリ1本公開するごとに100ドルの報酬を与えるキャンペーンを開始したと伝えています。

via: 米マイクロソフト、最終手段へ...アプリ1本公開ごとに100ドルの報酬配布 | ガジェット速報

というわけで、最終手段だ。楽天レシピとやっていることは同じ。「コンテンツを作ってくれれば、金を払います」というやつ。過去にこうした試みが成功したことがない(と私は思っている)のを100も承知の上でやらざるを得ないほど追い込まれているのか、あるいは何も考えていないのか。

IDCはうれしいことを言ってくれるが、本当の状況はどうなんだろうね。


社会人として必要な資質

2013-03-19 06:48

学生さんの研究発表を聞いてコメントすることがある。

先日聞いたものは「羊頭狗肉」としか形容できないものだった。最初のコンセプトを聞いたところで誰もが

「をを、これはおもしろい」

と身を乗り出す。

ところがその学生さんがやっている「評価実験」は肝心なところを教示で与えた上での、ソフトのユーザビリティ評価。最初に舞い上がった希望がしゅるしゅるとしぼむ。言っていることとやっていることが全然違うじゃないか。

それを指摘した所、回答は

「今のシステムはまだまです。皆様の意見をいただいてよくしていきたいと思っています」

この回答を聞いて2重の意味でがっかりした。

まず一点目。話が全然通じていないということだ。やっていることが「不十分」なのではなくて「間違っている」と指摘したのだが「まだまだ不十分なのでがんばります」。東京から大阪に向かいます、と宣言した上で北に向けてひたすら走っていることを指摘したのだが、返ってきたのは一生懸命北に進みます、という回答。こう言われると「がんばってください」としか言い様がない。

しかし

本当にがっかりしたのはそういうことではない。これは社会にでてから必要な資質だ。特に出世しようと思えば。出世する人間は、自分が利害関係にある人以外の言葉はほとんど聞かない。部下に意見を言ってくれとはいうが、それを聞くとは誰も言っていない。嘘だと思ったら上役に「本当のこと」を言ってご覧。

研究会でコメントする人間は、その学生さんにとって何の利害関係にもない。「そんなこと」をいちいち真に受けて悩んだりするほうがずっとよろしくない。

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働く上での「立派な言葉」は世の中に多く存在しているし、インターネットの普及でそれらに容易に触れるようにもなった。

しかし

最近Wikipediaで、帝国陸軍の将校たちがどんな運命をたどったのかを見ている。他人には自決を強要し、自分は逃げた上で天寿を全うした人間がいかに多いことか。こういう組織にあっては「責任感があり、立派な人」ほど早く戦死、もしくは自決し、生き残るのは「立派な言葉」の反対に生きている人ばかりだったに違いない。無責任で、上司だけにぺこぺこし、部下を必要以上に痛めつけ、そして自らが招いた結果、自らへの批難を顧みない人達。(辻とか服部とか富永とか牟田口とか)

それが帝国陸軍のみの現象だなどと誰がいえよう。世の中とはそうしたものだ、と考えるとき、私が言っていることが正しいなどとどうして言えるだろうか。

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そう考えると、研究の場で学生さんにどうコメントするべきか、と考えることになる。自分が信じることや「キレイ事」をいうことはたやすいが、それは現実世界と合致していない。現実世界において私が何をしているかをみれば、それは明白だ。「間違った事」を声高に言うのは果たして責任ある行動だろうか。

というわけで相手の反応をみつつ発言する、ということになる。話しを聞いてくれそうな人には積極的に議論する。聞く耳持たない人にはにっこりと笑って「がんばってください」と言う。これでお互いHappyだ。


オノマトペの壁

2013-03-18 07:06

オノマトペというものがある。定義を引用すれば

擬音語

物が発する音や真似て字句で描写した句のこと。

カー」「サラサラ」「ワンワン」など

擬態語

状態や心情など、音のしないものを音によって表す言葉。

ツンツン」「デレデレ」「ニヤニヤ」など


via: オノマトペとは (オノマトペとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

日本語ではこのオノマトペが非常に多いのだそうな。というわけで、関連する学会でこのテーマをとりあげた研究をよく見かけるようになった。

しかし

それらの多くは「面白い」から先に進めず壁にぶつかっているように思うのだ。先日聞いた研究で

商品レビューについたオノマトペをクラスターに分けると、お米と炊飯器が同じカテゴリーになりました

というのがあった。これは近年まれに見る大ヒットだと思う。「常識的」に考えればそうなんだけどさ、家電製品と食材は普通同じカテゴリーにはいらない。

この話しを聞いて「それがどうした」と思う人も多かろう。もちろん私が知らないだけだと思うが、オノマトペ研究で私が記憶に残っている「ヒット」はこれだけである。

例えば今日こんな記事を見つけた。

次に松井氏は、ICCでの「触覚的なオノマトペ」という取り組みについて触れた。これは「物理世界の触り心地を感性語によって分類しようという試み」だったという。感性語というのはオノマトペのことだ。オノマトペを操作できる触覚パレットのようなものを作ろうと思ったのだという。

 ただ、この研究ではオノマトペは人によって個人差があるものだということを自覚しておいたほうがいいし、オノマトペは記号的に使われているということしか分からなかったという。

via: 【森山和道の「ヒトと機械の境界面」】YCAM「TECHTILE」集中ワークショップレポート ~触感を採集記録・再生する「テクタイル・ツールキット」と触感をめぐる議論

まずアプローチの仕方によっては必ずぶつかる「個人差」の壁というのがある。同じオノマトペでも人によって使い方が違うかもしれないのだ。オノマトペではないが、これは言語全般に言えることで、いつか被験者が「こってり、こってり」といって食べ物のメニュー探索をしていたが、それを後ろから見ていた私は「これのどこが"こってり"だ」と首をひねった。

でもってそこを無理やり難しいアルゴリズムで分類とかクラスタリングとかしてみたところで結局何をやっているかわからない、という結果にもなりかねん。

とかなんとか書いていると「感性インタフェース」とかそうしたものにも共通する悩みのような気がしてきた。と書いていて気がついたのだが、子供はオノマトペを妙な形で使っり、あるいは知らなかったりする。例えば幼稚園年少の子供に

「つるつる」

といっても通じないだろう。

彼らと彼女たちがどのようにオノマトペを習得していくかをよく観察すると、何か得られるところがあったりしないかなあ。

あるいは開き直って「オノマトペは個人的なものなので、その個人に閉じた世界でしか使えません」と断言してしまうとかね。

今日はいつもにもましてまとまりがないがここで唐突におしまい。


転職には理由がある

2013-03-14 06:59

というわけでYahooのマッリサ・メイヤーである。最近何故ニュースになっているかといえば「在宅勤務禁止令」を出したのだそうな。

不振にあえぐヤフーの経営再建への取り組みの一環として、メイヤー氏は社員に対し、「6月以降は全社員が出社して仕事するように」と命じたのだ。

via: ヤフーの在宅勤務禁止巡る論争:日経ビジネスオンライン

ここで、在宅勤務をしたほうが、生産効率が上がるとか、いや、その統計はおかしい、といった議論は的はずれである。いや、議論してもよいがそれはCEOの裁量権内での話だ。生産性議論は、Yahooが計測してみないと結果がでないことである。

それとは別にこの「禁止令」によって一つ明らかになったことがある。彼女自身も子供を出産したばかり。育児と忙しいCEO業務をどのように両立させるのか?家庭にいて子供の面倒をみながら、勤務するというのは一つの方法だろう。しかしそれはできない。なぜなら彼女自身がそれを禁じたから。ではどうするか。

自分は隣の部屋に保育室を設け、保育士と一緒に赤ん坊を会社に連れてきているそうだ。

via: わかっていない

なるほどCEOならそれはできるね。でも一般社員には無理だよね。

Mayerと働いたことがある元Googleの幹部は2度こう言ったとのこと。

"This is a great day for Google, and a nail in the coffin for Yahoo."

via: The Truth About Marissa Mayer: She Has Two Contrasting Reputations - Business Insider

Googleにとっては素晴らしい日。そしてYahooにとっては棺桶に釘が打たれた日。

・Mayerは文字通り一日24時間、週7日働く。
・99%の人間より頭がよい
・他人を使うことができない。だから、彼女の才能を組織の力にすることができない
・彼女にとって「マネージメント」とは脅すか、恥をかかせることだ。
・彼女に5分間会うために、彼女のオフィスの外には人が並んでいた。GoogleのVPも並ばされた。

via: ごんざれふ

私が読んだ記事ではYahoo社員は当初メイヤーの就任を歓迎したそうだ。

しかし彼女がGoogleからYahooに移ったのにはそれなりの理由があることをYahoo社員も知ることになったと思う。

面白い事に日本語記事では、Mayerに関するネガティブな情報は少ないようだ。何か理由でもあるのかね。


間違ったデザイン第一主義

2013-03-13 07:14

少し前、提灯記事満載のITMediaにこんな記事が載った。

 中でも多かったのは、「一覧性が低下した」という声。この印象は「自分たちの実感、印象と合っていた」(伊藤さん)ため、トップページで記事ごとに表示していたブックマークコメントを省いたり、高さを圧縮したタイルデザインを採用するなどし、コンテンツを見渡しやすくする改善を加えていった。

via: ユーザーの反応に「完全に狼狽した」 はてなブックマーク、リニューアルの意図と背景 (2/2) - ITmedia ニュース

記事の題名だけ読むと、はてながユーザのフィードバックを重く受け止めたように思えるが、内容を読むとそうではないことがわかる。ユーザの声は「自分達の印象とあっていた」というわけで「そんなことはわかっていたさ」と自分たちの誤りを認めようとしない。

はてなブックマークはリニューアル後、随分変化してきている。一時はトップページの下半分が動画だらけだったが、さすがにそれは減らしたようだ。

目指したのは、ページをぱらぱらめくるだけで楽しめ、興味あるものを見つけてじっくりと読んでもらえる雑誌のようなデザイン。「コンテンツそのものにスポットを当てつつ、全体を見渡すと、今どういうことが起きているか、"面"として大まかに把握できるデザインにしたかった」(川上さん)

via: ユーザーの反応に「完全に狼狽した」 はてなブックマーク、リニューアルの意図と背景 (1/2) - ITmedia ニュース

1ページで題名を俯瞰できた利点を勝手に「雑誌であるべきだ」と新しいデザインを押し付ける。

もう一つリニューアル後のブックマークをみてうんざりするのは

「広告」

「はてなブログ」

が一等地を占めていることだ。

わかるよ。企業だから収益を挙げなくちゃね。

この記事には、最近の近藤社長の姿が載っている。太ったなあ、と思う。貫禄がついたではなく、太った。それは無意味に肥大化したはてなブックマークのデザインとも重なる。

以上のように、あくまで当ブログに限ってですが、リニューアル以降はてなブックマーク経由、特にトップページ経由での流入が、様々な要因があるとしても、大きく落ち込んでいることが見て取れます。しかし、はてなブログ(ダイアリー)であればトップページで大きくスペースが設けられているので、全く逆に増加しているのかもしれません。

via: リニューアル前後のはてブからの流入数の変化まとめ | Kousyoublog

というわけで、はてなブックマークはスタイリッシュに内向きのサービスとして閉じていくのではないかと予想している。最近は見ているだけで不愉快になるから、よっぽど必要があるとき(暇なときだ)しか見ないんだけどね。


あるメディアのSI屋化

2013-03-12 07:10

最近ITMediaを読むことが減っている。理由は簡単で、「提灯記事」と「読むに値しない底の浅い記事」しかないからだ。

って今見てみたら、ページの背景が全面広告になっている。よほど苦しいのだろうな。(あれ?消えた。ABテストか何かだったのだろうか)

読むに値しない底の浅い記事とは「オルタナティブ・ブログ」というもので、例えばこんな記事だ。個人のブログでもっとおもしろい物は山ほどあるのにこんなのを表紙に載せるとは。

でもって

提灯記事の方だ。最初から「広告記事」と断ってくれればいいのだが、そうはしないようだ。推定ではPanasonic広報部と密接なつながりがあるようで、最近ELUGAの記事をよく見かける。その出だしが素晴らしい。

スマートフォンの売上げランキングでは、"全部入り"の端末が常に上位を占めている。いわゆる"2年縛り"が当たり前になった近年、「機能に不足がなく、長く愛用できるモデルが欲しい」という購入者の心理はよく理解できる。

via: 「ELUGA X P-02E」レビュー(前編)――持ちやすさはどう? 独自UIの使い勝手は? (1/2) - ITmedia Mobile

ちなみに同じ週の携帯販売ランキング(by ITMedia)をみてみると、一位は確かに「全部入り」のXperiaだが、2位から4位は全部入りとはとても言えないiPhoneだ。そして10位にはガラケーが入っている。

これで「全部入りが上位を占めている」と断言する。悲しい事に全部入りのELUGA X P-02Eはドコモ単独のランキングでようやく9位にランクイン。

もちろんITmedaで記事を書いている人もそんなことは百も承知だろう。しかしスポンサーに対して何をいうことができるだろう。かくしてELUGAを褒め称える言葉が並ぶことになる。

こういう記事を読むと、メディアが何によって金を儲けるのかという点について深く考えることになる。ITmediaはいわばSi屋になりつつあるのではなかろうか。特定企業から金をもらい、それの宣伝を掲載する。客観的、かつ読ませる記事を掲載し、それによって広告などで収益を挙げるモデルからは遠のいているのだろう。(こちらは、自社でサービスを開発し、それによって一般ユーザから収入を得るモデルに相当する)

実際一般ユーザからお金をもらうのはとても難しい。お客様の言うものを作って納入し、検収印をもらってお金をもらうほうがはるかに見込みがある。それよりも見込みがあるのは、「人材派遣」である。プロジェクトの成否とは全く関係なく、人を派遣すればお金がもうかる。

というわけで、このままだとITMediaは人材派遣企業になるのではなかろうか。各社の広報部に格安で人を派遣します、とかね。岡田有花氏の記事とか好きだったんだけど、私にとっては巡回路を外れる一歩手前だ。

一時はWISSの記事とか掲載していたマイナビニュースは今や見る影もないし。。


スタートアップと研究と

2013-03-11 07:04

この文章は日米のスタートアップに関するものなのだが

主にスタートアップを中心として、アメリカの人々が経営者に期待するのは、どんなに儲けているかよりもどれだけ人と違う面白い事をやっているかなので、ビジネス的な数字をあまり気にせずに心置きなく今までに無いイノベーションを創り出す事を優先して経営が出来る。そしてユニークなカルチャー会社の方が優秀な人材を獲得しやすい。その一方で日本だと"稼いだ者勝ち", "事業規模が大きい方が凄い", "従業員の平均給与額", "脅威の利益率"等、社内外においても起業家や経営者に対しての評価軸がお金や数字であるのが常識とされている。

via: 日本でイノベーションが生まれにくいと思った3つのポイント | サンフランシスコ・シリコンバレー拠点のクリエイティブエージェンシー・btrax スタッフブログ

先日米国の500 Startupsという会社を訪問した。

500 Startupsは、マイクロVCと、スタートアップ・アクセラレーター・プログラムを提供するインキュベーターの性格を併せ持つ。有望なスタートアップには、事業を立ち上げた初期であるシード段階で投資するほか、それ以降の資金調達ラウンドにも投資している。

via: 米国スーパーエンジェル500 Startupsが 世界から注目される理由|インキュベーションの虚と実|ダイヤモンド・オンライン

そこでいろいろなことを聞いたのだが、印象に残っていることの一つに

「今何をしているかのMission Statementはあまり重要ではない。ほとんどの場合、ここに来て事業は変わるから」

Fail fastの実践例とも言えるかもしれないのだが、ではあなたたちは何を評価して投資先を決めるのか、ということになる。つまり彼らが投資を決定した段階で、その相手が「何をしているか」は"表面的"にはあまり重要ではないということになる。

でもって話は冒頭引用した箇所に戻るわけだ。つまるところ「どれだけ馬鹿馬鹿しい事をしているか」という点が評価になるのかなあ、とぼんやり考えている。

最近、「過剰の精神(abundance mentality)」が業界のバズワードになっている。これはライバルにわずかに差をつける努力をするより、画期的なイノベーションに集中した方が利益が大きいというものだ。この根底にある前提はわれわれは基本的に資源が希少であるような世界にはいないというものだ。

via: Googleの精神―ラリー・ペイジ、「競争なんてくだらない。イノベーションこそすべて」と吼える

私はこの「過剰の精神」が正しいと何の根拠もなく考えている。ラリー・ペイジが言うように

「クレージーでないようなことをやっているのだったら間違ったことをやっているのだ」

via: Googleの精神―ラリー・ペイジ、「競争なんてくだらない。イノベーションこそすべて」と吼える

同じようなことは、私が「研究」を見るときにも言えると思う。私が面白いと思う研究は

・地に足がついていること(つまり現実にちゃんと対面していること)
・馬鹿げていること

この2つのうち両方、もしくはどちらかが存在しているように思う。だから完成度とか、実装能力とかどうでもいいのだ。それが私にとって「馬鹿馬鹿しい。でも人間の根っこに根ざしている」と思えるものであれば。

などとヨタごとを書きながら、また隣の会社の頭をたたき、足を引っ張る作業に戻るか。。


Behind the "Real Story"

2013-03-08 06:40

先日"Real Story"というエントリーを書いた。

たとえばこう考えることもできる。あれは「ヤラセ」だと。実際CBSはあの試合を取材していたのだから、彼を出場させるところまでは「合意」があったのだろう。

しかしMitchellにボールをパスした「敵」のプレーヤー。それにMitchellに何度もシュートさせたプレーヤー達。最後にそれが決まった時、彼に駆け寄った満場の観衆たちの姿に嘘はないと思う。

(最初のビデオではわからなかったが、彼は最後になんどもトライしてゴールを決めている)

これが洋の東西を問わず「稀なストーリー」であることも多分間違いないだろう。Real Storyとはたとえばこのようなものだ。

p1361043566472

週刊少年マガジン 2013年12号掲載の読み切りです

via: 今週のマガジンの読み切り『聲の形』がとにかくすごい作品だった - ゴールデンタイムズ

あるいはスポーツでもこうしたものとは反対の事例を見ることが多い。今野球が何かをやっているようだ。それに生活がかかっている人も多いだろうが、正直うんざりすることが多い。

しかし

Mitchellと彼を祝福した人たちの姿を時々思い出したいと思うのだ。誰かが映画にしてくれはしまいか。静かに真面目な映画に。


Surface RTの行き先

2013-03-07 06:43

さて、私のような物好きにとってはもう終わった製品、Surface RTだが、日本で発売開始になるのだそうな。

日本マイクロソフト(日本MS)は3月1日、10.6型のタブレット端末「Surface RT」を3月15日に発売すると発表した。

via: Surface RTは従来タブレットに対して「競争力ある」--樋口社長が語る本気度 - CNET Japan

でもってこういう提灯記事があれこれ出てくる。

結論から言えば、競争力の高い製品でしょう。この製品に限らず、タブレット市場をより活性かする為にも、個性の強い製品次々と投入されることはWelcomeです。ちなみに、個人的には購買意欲ガンガン沸いていますよ。

via: 「Surface RT」日本発売へ--皆さんのご意見は? - CNET Japan

こういう現実離れした記事は正直な感想かもしれないし、何らかの利害関係に基づくものかもしれない。それは私の知る所ではないが、今朝こういうニュースを観た。

Heise.de and our friends at MobileGeeks are reporting that Samsung will stop selling its ATIV Tab in Germany

via: Samsung will stop sale of Windows RT tablets in Germany due to weak demand, according to reports

サムソンは、ドイツでWindows RTタブレットを売るのを止めるんだそうな。理由:売れないから。

自分にも経験があるが、何かを買おうと思っているときはそれに都合のよい意見ばかり集めてしまう。4月から大学生だ。じゃあなにかPCを買おう。このSurface RTってのは安いし、Windowsも動くらしいしいいんじゃないだろうか。

そういうかわいそうなめにあう学生さんが、、いるかな。

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さて、こちらはFerrariである。iPad miniつきの車を発表したのだそうな。

The FF is also now seamlessly integrated with Apple technologies, thanks to direct access to the infotainment system via SIRI voice commands and the adoption of two iPad Minis as the entertainment system of choice for the rear seat passengers.

via: Ferrari in talks with Apple to broaden in-car entertainment partnership, unveils iPad mini equipped FF coupe | 9to5Mac

前にも書いたが、まじめに高級車を作ろうと思えばこれが「正しい」方法だ。磨きあげた素材、デザインのインパネの中に、ゴミのような端末画面が座している。自動車会社でデザインに責任を持っている人は気が狂っているとしか思えない。(もちろん冗談ですよ)

iPad miniでいいじゃないか。ハードウェアとして美しさ、ソフトウェアの洗練さ、アプリケーションによる機能の豊富さなどはまさしくFerrariのコンソールにふさわしい。もっともカローラにも同じ端末が載せられうる、というところがFerrariオーナーにはちょっと不満かもしれない。しかし10年後、ゴミが化石化したような画面を見させられるよりはよかろう。

時を同じくしてランボルギーニも一台3億とかいう車を出してきた。

よくわからないが、こちらもコノソールにディスプレイはない。3億の車にiTronはないだろう、とは思う。


インタラクション2013に行ってきたよ(その3)

2013-03-06 08:27

というわけでまだ続きます。

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脳の活動部位による分類を用いた動画同時視聴のための基礎検討

動画の種類によっては、右脳を活発化させるもの、左脳を活発化させるものがあるのだそうな。

では「右脳を活発化させる動画と、左脳を活発化させる動画を同時にみられないか?」

ということをやった研究。結論としては「それだとかえって見づらい」とのこと。
そもそもそんなに同時視聴させてどうするの、とも思うが聞いていて

「脳の一部しか使っていないのにはわけがあるのかもしれん」

と思った。というか今回「動画を同時に視聴させる研究」が複数あったように思う。そんなに動画をみてどうするのか、とか考えないのかな。


レビュー文を対象としたあらすじ分類手法の提案とあらすじ非表示システムの開発

今回論文賞受賞。初めて日本語でデモをみることができ「なるほど。これは確かに有効だ」と実感できた。

ネタバレというかあらすじの隠し方に工夫があると面白いかなと思った。例えば「集中しないと読めない」といった文字の表示方法とか。文字がかすんでいるとか、ものすごく線が太っているとか。そうやれば、読み手が集中力に強弱をつけることで、ネタバレ防止ができる。

とても5種類のアルゴリズムを比較するようなガッツと能力がないひとはそういうことを考えたりするわけです。


ライブビデオストリーミングにおける肩乗りアバタTEROOSを用いたテレプレゼンスシステムの提案

人間の肩に、小さな鳥のようなアバター(つまりはカメラ+マイク)がのっている。それが写すものを見ている人の多数決で決めよう、という試み。

なんどか発表を聞いたことがあるのだが、「デバイス原理主義」に落ちているのが残念。そもそもそれをやるとこんな面白いことがあるんですよ、というのをそろそろ実例で示してほしい。それを真面目にやれば「多数決」という安直な決め方はしないと思う。


引出しジェスチャを用いた遠隔ポインティング手法の試作

手元にある画面で、遠くにあるディスプレイ上の物体を選択する試み。
手元画面でまず指二本をおく。その指の間に第3の指を弓矢のようにひきしぼると、遠くのディスプレイにカーソルが、、というもの。

実際にやってみると50肩を患っている人間には、「2本の指の間に別の指を」という動作は敷居が高い。別に指の「間」ではなく「指の延長線上」でもいいではないかと提案したが、年寄りの戯言とと聞き流されてしまった(嘘です)


とまらないかざぐるま: 身体運動による発電の体験から電気の価値を考えさせるエコデザインの開発と評価

これはおもしろかった。電気をつくる厳しさを教えるため、まず風車をもって子供を走らせる。風車が回転したことで作られた電気で今度は風車を回す。すると一瞬で止まってしまう。

電気を作るのはこんなに大変なのですよ、とわからせる試みとのこと。

聞いているうちに、走って電気をためるところまでは一緒だが、たとえばそれを3DSにくっつけると「ためた電気の時間分、3DSが使える」とかのほうがわかりやすいのではないかと思いだした。10分走って、DS10秒かよ、とかのほうが子供に理解してもらえると思うのだが。


色付き文章の動的表示から受ける認知効果

前にもみたことがある「指でなぞったところだけ文字が読める」というインタフェース。今回は「段落ごとに、文字に色をつける」という提案。

これは正直どうかと思った。そもそも段落ごとに色をつけるというのが大雑把すぎる。文章というのは段落でそんなにきっぱり色分けできるようなものなのだろうか?

次に色がけばけばしく、「あざとい」と感じた。やっているとこに、文章というものに対する敬意が伺えない。ケータイ小説とかこんな感じで表示するといいんじゃないだろうか。

もとのコンセプトは面白かったが、ちょっと迷走しているのかもしれない。

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といったところで個別の感想はおしまい。今年も登壇発表、インタラクティブ発表それぞれに面白さがあった。

両方共「現状では未完成だが、想像力を刺激される」というものが印象に残っている。もちろんある程度まとまっていたほうが主張がはっきりわかる、という面もあるのだが、インタラクティブ発表はそこまでできあがっていなくてもいいのではないかと思った。

インタラクティブ発表の一つの捉え方として

「来てくれた人とディスカッションして、新たな気付きを得る」

というものがある。もちろんそれができずに、ただ自分の主張を繰り返す人も多いがまあそれはいいとしよう。

であれば必然的に研究は未完成でもいいわけだ。「これからどこに伸びていくかわからない」状態で示して、その後を考える機会にするとか。

そう考えれば、インタラクティブ発表は査読なしでもいいのではないかと思う。少なくとも去年のように「内容はともかく論文が6Pないと却下」という査読方針には賛成できない。

登壇発表は去年に比べると「マッドサイエンティスト」ぶりが減っていたように思う。これはそもそもの投稿がそうであったかもしれないし、査読で落とされたのかもしれない。よくわからない。

というわけで来年のインタラクションはきっとモアベターよ、とか言っている場合ではないのだが。


Real Story

2013-03-06 06:32

テキサス州エルパソにある高校にサンダーバーズというバスケットボールチームがある。そのチームのマネージャーは障がいをもったミッチェル・マーカス。ミッチェルにとってバスケットボールはとても大事なものだった。

レギュラーシーズンの最終試合、コーチはミッチェルにユニフォームを着るように言った。

インタビュアー「ユニフォームを着る気分はどうだい?」
ミッチェル I am very happy.

ユニフォームを着るだけで彼にはとてもうれしいことだった。しかし誰も知らなかったのはコーチはスコアがどうであれ、最後に彼を出場させる気だったことだ。

インタビュアー「試合に負けるかもしれない。その覚悟はあるの?」
コーチ「ある。彼の大切な時間のためなら」

試合の残り時間1分半、10点リードした状態でコーチはミッチェルを出場させた。

しかしここでお伽話は終わりになる。彼のチームはミッチェルに得点させようとあらゆる事をした。しかしミッチェルのシュートははいらない。

残り時間数秒で、彼はパスを受け取れず、ボールは場外にでた。相手チームのボールになってしまったのだ。

相手チームのプレーヤ、ジョナサン・モンタニアスはボールを受け取る。

ジョナサン「僕は"自分が接して欲しいように、他人に接しなさい"と育てられてきた。ミッチェルにチャンスをあげたかったんだ」

次に起こったこと。ジョナサンはミッチェルの名前を呼び、そして彼にパスをした。

ミッチェルのシュートは見事にバスケットに吸い込まれた。

その瞬間、観客は歓声をあげ、ミッチェルに駆け寄った。その瞬間、そこにいたすべての人間が勝者になったのだ。


インタラクション2013に行ってきたよ(その2)

2013-03-05 07:03

というわけで、インタラクション2013で見聞きしたものの感想(続き)

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熱変色性インクによる喪失感体験を提供可能なカードゲームデザイン

「紙に何か絵を書く。それを「対戦」させる。すると負けた方の絵が消える」というもの。

これは面白いとおもった。まだ萌芽段階だが、「物理的に書いた絵が消える」というのは子供に大いに受けそうだ。そうしたアプリをしっかり作ればだが。

多重赤外光源とIRコースターによる情報識別の基礎検討

今回最もインスピレーションを喚起された研究。

まず5cm角くらいの立方体についているネジをまいて机の上におく。するとそのネジで発電された電力がある間、机の別の位置の上に「何か」が表示される。立方体の下においたフィルタを変えると表示される内容が変わる、というもの。

日頃「ハードウェアの提案はアプリとワンセット」としつこく主張している私だが、これには現時点ではおもしろいアプリが付随していない。しかし想像を喚起してもらえばいいのである。

この研究の面白さは徹底的にアナログを活用しているところにある。でもって「不便益」と組み合わせて考えるわけだ。

現代において、最も貴重なものは「時間」であると考える。しかし多くの人はこのことに気がついていない。20年前夢だった「インターネット常時接続」を手に入れた途端、人間は有益なことをせず、ひたすら2chを読んだり、くだらない情報を送信しあうようになった。それは確かに「無料」かもしれないが、何よりも貴重な「時間」を浪費していることに気が付かないのだ。

このシステムはそれは気が付かせるためのトレーニングシステムとして使える。「まずネジをまかなくては光がつかない」のだ。別の言い方をすると「光がついている時間を得るためには労力を投入しなくてはならない」時間はそれだけ貴重なのだ。

例えばこんなアプリケーションはどうだろう。数人で議論する際に「光が点灯している間しか発言できない」というルールを付与するのだ。すると発言しようする人間はまず立方体を手に入れ、それでネジをまかなくてはならない。

それだけ貴重な時間であれば、発言をコンパクトにまとめ、しかも無駄口を叩かないようになるだろう。発言する前にネジをまく時間を「考える」ことに使うだろう。

スティーブンホーキングは視線キーボードを使って会話する。彼にとって発話とは実にコストがかかる貴重なものなのだ。であれば、発話には重みがあるはず。

このシステムを使えば、そうした状況を体験させることができる。例えば研究室のミーティングで、教授が鬼のような顔をしてネジを巻き始めれば、学生は「これは何かまずいことがある」と心の準備をすることができる。

教授もネジを巻いている間に、少し怒りが治まるかもしれん。いずれにせよお説教は短くまとめざるをえない。

こうしたシステムを常時使うのは現実的ではない。しかしトレーニングツールとして考えれば面白いのではなかろうか。しばらくこれを使うと「自分が普段いかに時間を浪費しているか」ということに気がつく筈だ、、とかなんとか。

説明を聞いたあとしばらくこんなことを考えていました。


例文引用をベースとした英文作成ツール

英文を作成するさいに、一つの文を表示するんじゃなくて、複数表示しておきマウスでドラッグして英文を組み立てる、というもの。

Google翻訳でいいんじゃないかといわれて答えに詰まるようでは困る。こういう発表は少なくとも「こうした場合はうまくいきます!」というチャンピョンデータを提示してほしい。(20名以上で実験しろとか言わないからさ)そうでないと議論にもならない。

視認性確認対話ベースの地下街ナビゲーションシステム

ビルの中で迷った時に、テキストだけではナビゲーションがわからん。というわけでランドマークを指定してナビゲーションを行い、かつ地図上にルートを表示するというもの。

大変実用的でよいと思うのだが、もう一歩「いま自分はどちらを向いているのか。ナビゲーションの指示と同じ方向を向いているのか」の確認機能が欲しい。これを間違えると果てしなく間違った方向に進んで行ってしまう。

写真を付与すればできることだと思う。それは大変だと思うが、ここまで作り上げたのなら是非実現してほしいと思うようなアプリだった。

ourcam: デジタル写真撮影のためのオンサイトプログラミング環境

デジタル写真のフィルタ、撮影タイミングなどを画面上で自由にプログラムできるアプリの研究。

たとえばフィルタの順番を変えるだけで、効果が変化する。撮影タイミングも流し撮りなどを設定できる。

また写真をwebで共有する際、使用したプログラムも共有されるので、それを元に変更したりとかが自由自在。

すばらしく実用的で、今ないのが不思議なくらい。しかもシステムの完成度が高い。「これは金取れますよ」と貧乏なサラリーマンは主張してしまったが、開発された方は「無料で出して普及させたい」とのこと。確かにそうだ。馬鹿な事を言ったと後で反省しきり。しかし有料でも売れるんじゃないかと思うほど効果的でおもしろいアプリだった。

airmeeting: 公共の場の空調設定を合議によって決定するシステムの提案

しかけとしては単純。スマホから「暑い、寒い」の投票を行い、それによって温度を上げたり下げたりするというものだ。

単純だがきっとこのシステムを「現実世界」で運用すればおもしろい知見が山のように得られるに違いない。そもそも温度調節にはタイムラグがあるからものすごく蛇行するとか。あるいは「寒がり」と「暑がり」の間で戦争が起きたり、あるいは人間関係がすごく悪くなるとか。

システムをつくるだけだったら東工大でもできる。IAMASがやるのであれば是非そのような「現実世界に足をつけた」知見を発見してもらいたい、と妙に力説してしまった。いや、おもしろいと思うんだけどなあ。

という話をある人にしたら「結局寒がりを窓際に、暑がりを冷房吹き出しの近くに配置するのが正解では」と言われた。確かにそうかもしれん。

また長くなったので続きは明日。


インタラクション2013に行ってきたよ(その1)

2013-03-04 07:04

というわけで、電車の中で鼻をすする音が聞こえるようになったらインタラクションである。今年も感想をぱらぱらと。とはいっても私インタラクティブ発表は、空いているものしか行っていません。だから賞をとるような人が殺到するものは最初から見ていないのです。

一般発表:節電ボリューム: 節電の手間を軽減するつまみ

ものすごくまとめていうと

「つまみ一つで節電できるようにしよう!」

というもの。発表者も認めていたが、まだ「コンセプト提起段階」であり、これを行うことによって問題点を洗い出すといった段階。

面白かったのが

「人間にはOnする動機はあるがoffする動機はない」

というもの。いつもトイレの電気をつけっぱなしにして子供に怒られる私としては深くうなずかざるをえない。しかし発表者が社内でそういったところ、反対のコメントが多かったのだそうな。まず現実を見ましょうよ。

Primer Streamer: ユーザの関心事へと引き込みを行なう常時映像閲覧システム

これは面白かった。何が面白いといって

「常時装着しているHMDの画面内に、例えば野球のスコアを表示しておくと、視界内にある野球道具に気が付きやすくなる」

というもの。この結果に基づけば、たとえばiPhoneアプリでまるで関係なく表示されている広告と、アプリ内のアイテム選択に相関がある、ということになる。

面白いとともに恐ろしい話だ。有料課金ゲームで、ゲームアイテムと、表示する広告を連動させると売上が上がるとかそんなことが実際に起こりうるのだろうか?

えっ、もうやってるんですか?(空耳)

アクティブ音響センシングを用いた把持状態認識

物体にスピーカーとマイクを取り付ける。物体が音を伝達する特性に応じてマイクの入力が変わる。

それを人間が持つと「指での持ち方」に応じて伝達特性が変わる。それで持ち方が判別できるのだそうな。発表も興味部会が、関連研究に関してチャットで盛り上がっていた内容がまたおもしろかった。

実体で身体動作を提示するロボット会議によるソーシャルテレプレゼンスの強化

人間が「会話」する相手として「ロボット」を使うと遠隔地にいても人間のような緊張感を感じます!という結論が先にあり、それにごてごてくっつけた研究(断言)

どっかで「目の前にいるロボットは単なるロボットだ」ということに気が付き、そんな効果はなくなるんじゃないかなあ、と思うがこういうインタラクションシステム研究の常として

「物珍しさによるポジティブ効果」

しか評価されないのであった。いわば「踊りがすばらしい」のではなく「熊が踊っていることが珍しい」という段階。聞いていて実にイライラする発表。

何がいらいらするか?例えば比較対象としてディスプレイに映し出された「アバター」がある。この「アバター」の造形のやっつけ感といったらない。そりゃこんなものが表示されれば誰も「これは人間だ」とは思わんわな。それで「比較した所有意差がありました!」と断言されてもねえ。

などと思っていると、朝のNHKニュースで「お年寄りの会話にロボットを参加させる」というものが取り上げられ、作成者が「会話機能を鍛えています」とか発言している。こういうCHIshな研究はいつまでもそこにある。(つまり進歩しない、ということ)

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ここからインタラクティブ発表

平面感情分布モデルを用いた直観的な顔文字選択支援システム

感情にあった顔文字を選択するシステム(と称している)何をするかといえば、例によって

「感情を8っつに分類した平面上で、今の感情を入力しそれに強さとか付与すると顔文字が選択される」

というもの。この説明を聞いていて私は確信した。「感性情報」をつかったシステムには「オープンループでも途中の選択ロジックに感性、という言葉が含まれていればよい」という一派が存在するらしい。

このシステムでも、途中の説明は長々しいが

「じゃあ表示された顔文字が自分が意図したものと違ったらどうすればいいんですか?」

という質問にはまともな答えが帰ってこない。せめて

「感性マップをなぞると、それに応じた顔文字が隣のウィンドウにリアルタイムで表示される」

というものになっていれば、自分が意図した顔文字が選択しやすいと思うのだが、ハナかなそうした考えはないようだ。つまり最終結果に対するユーザフィードバックを想定していないのである。去年からこうしたシステムにはいくつかお目にかかるその度にいらいらさせられた。インタラクティブ発表だと発表者相手に議論ができるところがいいところだ。

Round-Table Browsing: 対面共有ウェブ検索を支援する場の創出 -回転寿司メタファによる履歴共有-

多人数で協力して情報を検索するさい、隣の誰が何を検索しているかノートPCの画面のウラに表示するといいですよ。あるいは検索履歴を「回転寿司」のように流しておくといいですよ、という試み。

大型ディスプレイにみんなが検索しているものを分割して表示したほうが一覧性も高くいいのではないかといっても全く話が噛み合わない。履歴を横に流すから回転寿司とか言われてもねえ。これも結論ありきの研究。作成者の熱意だけはよくわかった。


TweetChair: モノへの愛着を利用した健康支援の試み

椅子に座ると、体重を検知して「重いくなったす」とか椅子がfacebookに書き込む。また場合によっては他の人が使う椅子が「こっちは軽くなったす」とか対話をする。

たしかNTTのオープンハウスで似たようなものを数年前にみたことがある。それはコップを落とすと「痛いっす」とかいうものだった。それを指摘したがサーベイしていないのだそうな。

こうした研究は実に「デモ向き」だがすぐ飽きる、という問題点に答えていない。人間が見ていておもしろい会話を持続させるのは困難なのだ。(現状はルールベースで設定された会話を表示しているだけ)こうした試みは何度も繰り返されているのだから、そろそろ「会話に飽きる」という問題に正面からタックルしてほしいものだが。

長くなったので明日に続きます。


ごんざれふ賞 2012-2013

2013-03-01 19:37

さあ、今日という日が待ち遠しくて眠れなかった方もいるんじゃないでしょうか?(そもそもいつ発表するか決まっていませんしアナウンスもしてません)今年もごんざれふ賞の発表がやってまいりました。

去年は「ああ、いい映画がありすぎて一つに選べない」でしたが、今年は「はあ、今年は」とため息をつく、、なんてことはありません。

ちなみに今年から規程を厳格にします。「昨年の3月1日から今年の2月末日までに"私が観た"映画」のなかから選定。いつ制作されたとか、いつ公開されたとかは気にしません。あくまでも私が観た日付が重要です。誰も文句はありませんね?(誰も居ない部屋に虚しく声が響く)では発表です!

作品賞:ロック・オブ・エイジズ

今年一番心に残った作品を虚心で選べばこれなんですよ。80年代ロック全開で思わず泣きそうになったし、知っている筈の歌の新しい良さにも気がついたし。


主演男優賞:オマール・シー@最強の二人
ロバート・ダウニー・Jr@シャーロックホームズ、ダニエル・クレイグ、メル・ギブソン@それでも愛してるもよかったけど、全く予想外だったこの人に決定。彼の演技と言うか役柄の素晴らしさは、そのあと来た「駄目介護人」と比べるとよく解る。彼がEarth wind and fireの曲に合わせて踊るところは今年一番印象に残ったシーンの一つ。

主演女優賞:メリルストリープ@マーガレットサッチャー
彼女が取らなければ誰が取るという見事な演技。顔立ちはあまり似ていないと思うのだけど、スクリーンの中での彼女はサッチャーそのもの(いや、実物をそんなに知っているわけじゃないんだけど)

助演男優賞:ジョージ・クルーニー@ファミリーツリー

いや、クルーニーは主演だろうとか細かい事を気にしていては長生きできませんよ。いいんです。私の中では助演男優賞なんだから。彼がサンダルはいて泡食って友達の家まで走る姿を見れば、誰もが彼が助演男優賞と納得してくれるはず(しません)

助演女優賞:  アマンダ・セイフライド@レ・ミゼラブル
この映画で一番印象的だったのは大きくなったコゼットでした。彼が金持ちのぼんぼと出会うところは、遠い昔の出来事を少しだけ思い出させてくれました。

意外によかったね賞:アウトロー

予告編&ポスターからは期待値0だったけど、観たら意外に良かったです。今後のシリーズ化に期待。

さて、それでは皆さんお待ちかね。「今年観てしまった中で最低だったで賞」の発表です!

今年観てしまった中で最低だったで賞:メリダとおそろしの森
不幸にして今年は-1800円の部が豊作でした。去年のアカデミー賞コンビ、「アーティスト」と「ヒューゴの不思議な発明」に始まり、バトルシップ、アメイジング・スパイダーマン、それにアイアン・スカイと分野も幅広く。しかしその中でも

「あのピクサーがここまで落ちたか」

と嘆かせてくれた「落差」を評価しての受賞です!ピクサーは2年連続受賞。ちなみにあちらの「賞」では最優秀長編アニメーションとか。もうこの賞廃止したらどうでしょう。無理に選出しなくてもいいのに。

というわけで、皆様来年の「ごんざれふ賞」をお楽しみにー。(誰もいない廊下に向かいひたすら手をふり続ける)