IveがUIを統括するという意味

2012-10-31 06:56

ちびっこSteve JobsことForstallが首になったことに関して、いろいろな噂が流れている。彼はあまり周囲から好かれる人物ではなかったようだが、それはそれ。

彼は自分の会社を立ち上げるべきではなかろうかと思う。Steve Jobsがそうしたように。周りと上手くやることはできないが有能な人物というのは確かに存在し、そうした人にとって「勤め人」であることはあまりいい選択肢ではない。

と、彼の就職先を考えるより私は今後のAppleに期待したいと思うのだ。ここ数年、Appleの製品を使っていて「?」と思うようなデザインに出くわすことがあった。今回の騒動で、それがForstallの影響であったことを知った。

address book

ドラッグしてページを捲れることを学んだユーザーは
アドレスブックで同じ動作を行う可能性があります。
想像通りに機能しないことはストレスであり混乱も招きます。

via: Appleが推奨するSkeuomorphic Designとそのメリットデメリット │ Design Spice

「Skeuomorphismデザイン」というのだそうな。まず第一に私はこうしたデザインが好きではない。そもそもコンピュータのディスプレイに表示された物体と、現実の物体は明らかに異なるものだ。それの外見だけを似せるというのは非常に「小賢しい」態度に思える。
こうした「擬人化エージェント」のように。


 
フジテレビは1日、コンピューターグラフィックス(CG)キャラの杏梨(あんり)ルネさんを「デジタルアナウンサー」として採用したと発表。

via: フジテレビが新人女子アナとして作ったCGキャラがしょぼいwwww腕おかしいwww名前は杏梨(あんり)ルネ | wan2o.com

第二に、例えばiMacやiPhoneに見られるミニマルでシンプル、美しさを極めたようなデザインと、いくつかのApple製ソフトウエアに見られる「現実を模した」ごてごてした装飾的なデザインがどう見ても相容れないように見えたことだ。つまり一貫性に欠けていたのである。なぜあんな美しいハードを作る会社が、こんなごてごてした(一部の)ソフトを作るのか?

それが不思議だったのだが、どうやらそれはApple社内の権力構想を表していたようだ。Iveはこう述べている。

ハードウェアにおけるシンプルさは、ソフトウェアと常にマッチしてきたわけではない。iPadやiPhone、iPod touchのOSであるiOSの登場後、そうした状態は「スキュアモーフィズム」(skeuomorphism)という言葉で表現されているが、これはつまり、古いデザインにおける装飾的特徴を、新しいデザインにもそのまま持ち込む傾向のことだ。

わたしがこの問題に言及すると、アイヴは一瞬表情を曇らせた。しかしその仕草は、彼がそうした言い回しが嫌いであることを示すというよりも、同情を示すものであった。少なくとも私にはそう見えた。彼はその問題について議論する代わりに、外交辞令的な返答を行う。「私は製品のアイデアについて他のチームと共に考え、共に仕事をすることだけに集中している。そのうえでハードウェアを開発する。それがわれわれの責任なんだ。あなたが言っている要素については、私自身はあまり関係していないと思う」

via: The Telegraphによるジョナサン・アイヴへのインタビュー (2) | 田園Mac

こうした「ごてごてした」要素はForstall、それにSteve Jobsが持ち込んだものだったらしい。

Inside Apple, tension has brewed for years over the issue. Apple iOS SVP Scott Forstall is said to push for skeuomorphic design, while industrial designer Jony Ive and other Apple higher-ups are said to oppose the direction. "You could tell who did the product based on how much glitz was in the UI," says one source intimately familiar with Apple's design process.

But before Forstall, it was Steve Jobs who encouraged the skeuomorphic approach, some say.

via: Daring Fireball: Forstall Out; Ive Up

Steve Jobsがなくなり、Forstallが首になった今、Iveが全てのUIを統括することになった。その結果はおそらくゆっくり現れてくるだろう。少なくとも現在のように

「シンプルさとロココ風の過剰な装飾」

が同居した状態はだんだん解消されていくことを期待したい。

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どんな人間でも、打率10割は達成できない。デザインに関しては、Forstall氏は間違っていたと思うが、OS XをiPhoneのOSとして使用し、しかもそれを成功させたことについては偉大な業績と言って差し支えないと思う。最初にiPhoneの発表があった時、一番驚いたのは、それがOS Xで動いていることだった。そしてiOSでプログラミングをしているとそのことを日々実感する。他の「組み込みOS」とはケタ違いだ。

それだけでもForstall氏の名前は歴史に残る価値がある、、と外からは思える。もちろんこの「決断と実行」には他の多くの人が関わったのだろうけど。

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話はもとに戻る。ミニマルでシンプルなデザインを好む私としては、Windows のMetroには常に敬意を払っている。あのシンプルさ、割り切りはすばらしい。(実際に使っていないからそう思うのかもしれないけど)

これは私の「メタファー原理主義」への反感ともつながっている。Metroのタイルは何のメタファーにもなっていない。それでちゃんと機能している。この事実について考えれば「デスクトップ」なんてのがメタファーとして機能していないことに誰もが気がつくはずだ。

そもそもiOSはユーザにファイル構造を意識させないような方向に進化し続けている。つまりデスクトップメタファーなんてのは過去の遺物なのだ。

と考えているところに「デジタルネイティブ(笑)」の若者が「デスクトップアイコン」を使ったプログラムなんか得意げに発表しているのを見ると、なんだかなあと思う。

 Old MacintoshやDOSの時代によく見られたような、何となく懐かしい感じがするデスクトップのジョークソフトを、今の時代の大学生が作っているのが衝撃的。

via: UXClip(7):プログラムを「どや!」と発表し合う、明治大学アブノーマルプログラミング (1/3) - @IT

この記事を書いた人は「衝撃的」と書いている.私の意見は"Pathetic"である。


ちびっ子Steve JobsことScott Forstallの最後

2012-10-30 06:51

まあ考えてみれば、避けられない帰結だったわけだな。

さて、それはそれとして今回のMapが出来の悪い製品であることには違いない。そしてそれに一番の責任を持っているのは、Forstallである。見方によってはSiriに続く「ストライク2」であると言うこともできる。

via: ごんざれふ

Senior Vice Presidentにとってストライク2はアウトの宣告だったようだ。

Apple just announced in a press release this afternoon that SVP of iOS software Scott Forstall is leaving Apple next year.

via: In a huge shift, Apple announces Scott Forstall and John '#Fire' Browett are leaving the company | 9to5Mac

Additionally Jony Ivy will "provide leadership and direction for Human Interface (HI) across the company in addition to his role as the leader of Industrial Design."

via: In a huge shift, Apple announces Scott Forstall and John '#Fire' Browett are leaving the company | 9to5Mac

おそらくは「デザイン担当」のIveと「ソフトウェア担当」のForstallの間での抗争は問題化していたのではなかろうか。結果がiPhone5+iOS6だ。宝石のような美しいハードウェアの中にゴミのようなMapが鎮座している。

Tim Cookがだした「Mapの品質に関するお詫び」はForstallへの死刑宣告でもあったのだ。

決着の付け方として、Forstallはクビになり、Iveがインタフェース全般に関して責任を持つことになった。

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さて、次に首が飛ぶ候補筆頭にあるのがシノフスキーである。Windows RTに関しては「使っていない人間の評価は高く、しばらく使い込んだ人間の評価は低い」という傾向は変わっていない。

実際ハードのできはいいようだし、Metroもかっこよく見える。しかし次の動画を見ると、実際に使おうとした際に何が起こるかわかると思う。

従来のWindowsと同じ画面をタッチで使うのは想像以上に滑稽だし、「細かなバグ」がたくさん残っていることが伺える。少なくとも今のWindows RTは"Death by thousands cuts"といった状況のようだ。

今や出口が見えない苦境に陥った日本の家電メーカーはWindows8の「ビッグウェーブ」に賭けたようだ。去年3Dテレビに賭けたように。

樋口氏によると、年内に予定されている約1,000機種のWindows 8 PCの内、250機種以上が日本の製品の数で、これは世界最多だという。

via: 【PC Watch】 日本マイクロソフト、Windows 8発売記者発表会を開催 ~日本は世界最多の250機種以上のPCが発売に

そして結果は今のところ芳しくない。3Dテレビが今年は消えてしまったように。

Windows 8が発売になった10月26日~28日までの3日間のWindows 8搭載PCの販売台数が、Windows 7が発売時の3日間に比べて、わずか3分の1に留まっていることがBCNの調べで分かった。

via: 【PC Watch】 Windows 8 PC発売3日間の販売台数は、Windows7出荷時のわずか3分の1留まりに

きっとWindows9はもっと良いOSになると思う。それまで我々はどうしたらいいだろうか?うちの母はかたくなにWindowsから動こうとしない。そして母にWIndows8を使えというのは無理だ。Windows7パソコンがある間に、新型に買い換えるよう説得するか。。


Microsoft Surfaceに関する評価

2012-10-29 06:49

ちなみにここで書いているSurfaceはIntel版のそれではなく、ARM版
です。というかこういう普通の人には何のことかわからない説明をしなければならない時点で、問題だと思うのだが。

Surfaceについていろいろなレビューを読んだ。ハードウェアの作りがしっかりしており高級感があることについては意見が一致しているようだ。

Surfaceは、マイクロソフトがアップル以上にアップル的なことを実現しようとした製品です。すみずみまでこだわってデザインされたことが随所に現れています。ディテールへのこだわりが山ほどあり、たとえばキックスタンドには、それらしいクリック音を出すためにカスタムデザインされたヒンジが付いていたりします。

via: Surface RTレビュー:この大いなる落胆 : ギズモード・ジャパン

ここまで読んで、家電メーカーのハード担当者は恥じ入るように。

問題はソフトウェアだ。これに関しては

仕事は、まあできます。でも生産性はMicrosoft Officeの「プレビュー」(β)版に制限されます。また、OfficeはWindows RTのデスクトップモードで使うのですが、Windows 8であればこのモードで古いソフトウェアをインストールできて、そこがポイントなのに、Windows RTではそれができません。デスクトップモードは、Windows RTではほぼ役に立たないのにそこにあって、むしろRTの限界を意識させることになっています。

via: Surface RTレビュー:この大いなる落胆 : ギズモード・ジャパン

という意見と

Windows RT tablets have similar form factors to the iPad and leading Android tablets, and offer near-equal battery life, performance, and user experience, but they also give you the added benefit of strong productivity applications and the power of Windows Desktop.

via: AnandTech - The Windows RT Review

WindowsRTタブレットは、iPadやAndroidタブレットと同じような性能、機能を持っている上に、従来のデスクトップ上でのソフトを使って、あれこれ仕事をすることができる。

という意見があるようだ。

つまるところWindows RTでは何ができるのか?

まずMetroインタフェース(宣伝で使われている、画面にあれこれ四角いのが表示されている画面)が使える。あの画面に新しいソフトをインストールすることができる。

ここで一つわからないのが、Metroアプリは、普通のPC上のWIndows8でも使えるのかそうでないかがはっきりしない点だ。共通して使えるアプリがあることはわかるのだが、ネイティブコードでごりごり書いたアプリが共通して使えるわけはないよね。

この場合、MicrosoftのAppstore(正式名称は知らん)からだけインストールが可能である。

また、従来のPCと同じ様な画面も使える。ここでは、Microsoft officeが無料でインストールされている。

ところが、ここでは元々のPCで使っていたソフトは動かない。この従来のPCと同じ様な画面にソフトを新しくインストールすることはできない?(ここがよくわからない)

↑が正しいとすると、Windows RTの従来のPCと同じ画面では、マイクロソフトが最初から載せたアプリが動くだけ、ということになる。なんだそれは。

Windows RTの公式FAQにはこう書いてある。

WindowsRTはこんなにすごいんだよ、という宣伝が並んだ後に

Windows RT には含まれていない機能もあります。

Windows ストアから直接アプリをインストールできますが、Windows RT のデスクトップにアプリをインストールすることはできません。

via: Windows RT: よく寄せられる質問 - Microsoft Windows ヘルプ

従来のソフトは動きませんよ、ということをここから読み取るのはなかなかの読解力を必要とするだろう。

となると、「そもそもOfficeなんかなくして、Metroだけにすればいいじゃないか」と誰もが思う。しかしそこはMicrosoftの「妥協しない姿勢」なんだそうな。

マイクロソフトの Windows プレジデント Steven Sinofsky 氏による長文でくり返し強調されるのは、 " no-compromise " (妥協のない) という表現。従来の x86/64 アプリとバイナリ互換のないARM版 Windowsにあえてデスクトップ環境を用意していることは、この no-compromise の例として説明されています。いわく、過去を断ちきりシンプルに、純粋にするためデスクトップを撤廃してはどうかとの声もあったものの、「便利でユーザーにとって負担が少ないものを諦めることは妥協であり、PCの進化にあるべきではない」。

via: マイクロソフト、ARM版 Windows 8 の詳細を公表。デスクトップ環境とOffice 15を搭載 - Engadget Japanese

ここらへんになると濃度の高いシノフスキー粒子にやられてわけがわからなくなる。

Intel版Surfaceは一定の成功をおさめるかもしれないが、Windows RTは多分このままひっそりと消えて行くのではないかと思う。

Microsoft Surfaceが欲しい10の理由、というコラムがあるのだが、そこで述べられている理由が当てはまるのは、ほとんどInterl版Surfaceのことだ。そして10番目の理由は

10.これは始まりにすぎない

 MicrosoftはこのSurfaceの最初のバージョンで大きな波紋を投げかけた。Surfaceはその薄くて軽いタブレットの中に、われわれが夢見ていた機能を詰め込んでいる。しかし(同社が最近掲載した求人情報に基づく)うわさによれば、MicrosoftはSurfaceチームを拡大しており、すでに次のバージョンに取り組んでいるようだ。

via: マイクロソフトのタブレット「Surface」が欲しい10の理由 - (page 3) - CNET Japan

Microsoftがしつこく製品を改良していくことは、実績がしめしており、おそらくはSurfaceもそうなるだろう。そしてその改良には「Windows RTの破棄」も含まれることを私は確信している。そう考えると

樋口 米国で発表されたSurfaceは、Windows RTベースのものです。Windows RTの観点からいえば、デバイスメーカーも、日本での状況が米国とは異なるという判断があったのではないでしょうか。

via: 【大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」】 日本マイクロソフト、樋口社長に緊急インタビュー ~Windows 8発売に強い手応え。Surfaceはこのタイミングでは出さない

日本でSurface(ARM版のほうね)を発売しないという決断がどのようになされたのかわからないが(この文章を読む限り、日本マイクロソフトの社長は決断に関与していないように見える)それは賢明な判断だったということになる。

それとともに、Windows8はタブレットではなく、PC用のOSとして扱われることになるのではなかろうか。Windows9でMetroがどのような扱いになるかはなかなか興味深い問題だと思う。


おうちにkoboがきた

2012-10-25 07:02

いや、いままで散々けなしていたくせになぜだと問われれば、楽天カンファレンスのライトニングトークで社外から参加した人には全員もれなくプレゼントだったのだな。

太っ腹だなあと思っていたが、今朝こんなニュースを観た。

楽天銀行カード作ったら、クソ電子ブック koboをタダで送ってきた。48を卒業したら、家電ヲタに返り咲きそう(^。^) pic.twitter.com/hxG8MbqH

via: Amazon「Kindle」の黒船来航、一方国内では楽天カード会員に楽天「Kobo」が勝手に送りつけられる事案が発生 : 市況かぶ全力2階建

よっぽどあまってるんだろうなあ、とは考えてはいけない。スピード!スピード!スピード!なのだ。

でもって

いや、物にふれずにけなすのはけしからん。というわけでさっそく使ってみようとした。

噂通り、箱は異常に固くなかなか本体を取り出せなかった。こういうところに「強迫神経症」てきな人間がいるかいないかの差がでるのだな。

でもってマニュアルを読み、無線LAN経由でセットアップを行う。この時点でタッチパネルの反応の悪さにいらいらする。無線LANアクセスポイントのパスワードが丸見えになるのは冗談かと思った。

なんでもkoboは消費電力の少ない電子ペーパーを使っているから、画面の反応速度やタッチの精度をiPadなんかと比べるのは間違いだ、、とまあ知っている人はいうのだろうがこの反応は冗談としか思えない。というか、時計を5年巻き戻せば、これがタッチパネルの「常識的」な反応だったのだよね。iPhoneが異常なだけで。

そのうち準備ができたようだ。というわけでさっそく無料の青空文庫が数冊読めるようになっている。本を読んでいる間はあまりイライラしない。しかし例えば「新しい本」を探そうとすると、いくつもの戦いにうちかつ必要がある。

まず画面が不必要に書き換わるのが見える。まあこれは目をつぶろう。自分もよくやるから。次に「無料の本」で探すと、青空文庫が全部でてきてほしいのだが、そのうち一部しかでてこない。

検索しようと思えば、またあのタッチパネルと格闘し、著者名を入力しなければならない。そこらへんでアウト。うちにはiPad2がある。なぜこんな使いづらいもので本を読まなければならないのかがわからない。

もちろんこれはアンフェアな比較だ。koboのメリットは「カバンに気軽に放り込み、充電を気にせず使いつづけられる」ところにあるのだと思う。私はそうした使い方をしていない。

よし、じゃあ金をだして本を買うか、、ということになるのだがどうも現在こういう調子のようだ。

まず「紙という物理媒体が要らないのだから、きっと安いだろう」と思う。ところが不可思議な日本の出版事情によりそうではないようだ。

新刊以外の既刊本については、Amazonのマーケットプレイスなどの中古本まで競合に入れて比較すると、これは電子書籍には勝ち目はほとんどない。

via: "知ったかぶり"したい人のための電子書籍入門--(1)導入編 - (page 6) - CNET Japan

これほど消費者を馬鹿にした話もないと思うが、なんと紙の本と電子出版を比べると、場合によっては電子出版のほうがすこし安いが、中古まで考えると高いのだそうな。そんなもの誰が買うんだ。

おまけに

とりわけ、買った本が読めなくなる危険性はたびたび指摘される問題だ。ひとつはストア側にまつわるもので、ストアの閉鎖・終息などにともない、購入済みの本であっても再ダウンロードができなくなるというもの。つい先日も、楽天が運営する電子書籍ストア「Raboo」が閉鎖されるにあたり、他ストアへの引き継ぎといった対応が取られずに批判を浴びるケースがあったばかりだ。

via: "知ったかぶり"したい人のための電子書籍入門--(1)導入編 - (page 4) - CNET Japan

いつ読めなくなるかは、運営者のご機嫌次第、ということらしい。となると電子出版のメリットってなんなんだ?

私が思いつくのは「読み捨てる雑誌を買うこと」くらいである。昔Mac Lifeとか、Mac User日本語版を買っていた。ああいう雑誌は面白いが2ヶ月も経てば価値がなくなる。捨てるのも一苦労だ(当時は会社の独身寮に住んでいたので、ゴミ箱の隣においておけば、いつのまにかなくあんっていたが)ああした情報なんかは確かに電子出版に向いているかもしれない。

しかし今やそうした軽い情報はインターネットで無料で手に入る。おまけにkoboはドットの荒い白黒だ。写真とかを主体にした情報には向かないだろう。となると何をこの上で買えというのか?

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思うに映像業界と出版業界は同じ穴にハマっていると思う。既得権益を保護することに熱心なあまり、長く緩慢な死に向かっているという穴に。

じゃあ望みはないのか?といえばこんな意見がある。

・たとえばPixivが、お絵描きの教本を100円で発売しだしたら?
・たとえば保険会社が、健康や医療についての本を100円で発売したら?
・たとえばAKBが、コンプリートで握手券モデルで48冊の100円の本を販売しだしたら?

クズ本だったらば問題ない。だが彼らが、一定品質以上の本を、永久につかえる広告としてバラマキはじめたらどうなるか?
これが電子書籍時代における、出版社の最大のライバルになりうる。

via: どんなに頑張っても、出版社は電子書籍の価格を防衛できない | fladdict

おそらく既得権益にしがみつく人たちを抹消していくのは、こうした試みだと思う。つまり全くの部外者、それによって金を儲けなくてもいい人達による市場破壊だ。

つまり「電子書籍」とは「紙の書籍」とは全く別物であるべきだし、そうなり得る。読者層も、読む動機も、そしてビジネスモデルも全く別物でありえるのだ。

であれば、楽天はどうでもよい

「年内に日本語書籍20万冊」

なんて目標は忘れて、koboの上の「読書」とはどうあるべきかを真剣に考えたほうがよい。楽天が約束を守るなんて誰も思ってないし、既存の枠組み-出版-で戦っている限り、絶対紙の本には勝てないんだからさ。

もう評判はこれ以上下がらないくらい下がってるんだから、失うものないでしょ?楽天のような会社に期待されるのは、それこそ孫氏がADSLモデムをばらまいていたように

「嫌われながらも、既得権益を破壊してく」

役割なんだから。つまり「楽天出版」を作り、そこで質のある程度高く、かつ読み捨てで構わないような「書籍」を次々に発明し、それを一冊99円でばら撒くんだよ。

その時は是非「UI開発失敗の本質」を出版させてくださいな。お安くしとくよ。


人工知能セミナー「情報の曖昧化」に出席してきたよ

2012-10-24 06:53

というわけで昨日の午後は標題のセミナーに出席してきた。

というわけで内容について滔々と書くべきなのかもしれんが、どちらかといえば聞いている間Twitterで話したりしたことをネタに書いてみようと思う。

まず京都大学の中村さんが「ネタバレ」について語る。インターネットが発達する前は、たとえばNFLのスーパーボールの結果を知りたくなければ、Nifty-serveのフォーラムで「情報規制」をすれば事足りた。

しかし今やWebやらTwitterやらFacebookでもってどこから情報が飛び込んでくるかわからない。しかし試合を見終わるまで結果がしりたくなければどうすればよいのか。

もちろんいろいろな手法で「ネタバレ情報」を検知することはできるが、所詮100%の精度は望めない。そこを例えば「似たような偽情報をたくさん散りばめる」などの方法で解決しようとするところが面白い。というか私が思うところの「アルゴリズムとインタラクションは車輪の両輪」からみれば見事な具現化である。

真面目な話は中村さんの論文を読んでもらうとして、強敵はTwitterである。断片的な言葉が飛び交うだけだから、フィルタリングのしようがないのだ。この点を質問したところ「その間はしょうがないからTwitterにアクセスしなかった」とのこと。私は「結局事前に"この人はいつもサッカーについてつぶやいている"という情報を元に、人で切るしかないのかな」とコメントした。

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2番めは信州大学小松氏による「情報の氾濫とユーザの認知的特性」人間の認知に関して、私のような素人にもちゃんとわかるように説明してくれたのがうれしい。

本題と少しそれるのだが、一番おもしろかったのが
「短期記憶では7くらいチャンクしか保持できない」
という実例だった。チャンクとは何か?これは情報の「固まり」である。

例をあげよう

SADOUOFTCONKOOM

だと覚えられないが

SOFTBANKAUDOCOMO

だとすぐ覚えられる。なぜかといえば、前者はランダムに並んでいるから文字数そのまま全部覚えなくては行けない。後者は、Softbank Au Docomoだから3つということ。

なぜこれを面白いと思ったかと言えば、「熟練者の認知と記憶」に関連していると思うからだ。

どういうことか?例えばサッカーに詳しい人は、私が見ても「みんな走ってるなあ」というような画面をみて「ここにスペースがある」とか「今のDFの動きはおかしい」と認識することができる。American Footballでも同様、あるいは将棋でも同じ事だ。

なぜこんなことができるのだろうか?思うに熟達した人は、いくつかのパターンを頭の中に持っているのではなかろうかね。でもってその「チャンク」がどのように組み合わさっているかだけを認識しているのだと。

とか考えているうちに話は進む。中村さんも引用していたが

「アガサ・クリスティーの本を、結末を教えた場合とそうでない場合でおもしろさを比較したが、おもしろさは変わらなかった」

という有名な論文があるらしい。小松氏のこの論文への反論が「被験者は、早く終えて謝礼をもらって帰ることばかり考えていたに違いない。だから、ネタバレが影響しなかったのだ」というものだった。これについては判断を差し控えたい。

しかし

そこから派生してこんなことを考えた。

刑事コロンボは、犯人は最初からネタバレしているわけだから、「どうやってあばかれるのか」がネタバレだったわけだなあ。あれはやっぱり最後のオチがばらされると面白さ半減なのだろうか。今みても面白いことはおもしろいが。

via: Twitter / grgr56: 刑事コロンボは、犯人は最初からネタバレしているわけだ ...

これに関しては、中村さんから以下のコメントが来た。

コロンボは何度見ても面白いですが,ワクワク感は薄れてますよね

via: Twitter / nakamura: コロンボは何度見ても面白いですが,ワクワク感は薄れて ...

ということで「おもしろさ」というものは非常に複合的なものであり、(特にアガサ・クリスティーの名作においては)それを単純に比較することはできない、というのが先ほどの論文が意味しているところではなかろうかなあ。

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次が東工大 高村氏による「自然言語処理技術による文書自動要約の基礎と応用可能性」
基本的には「自動要約」のお話。話の途中で「本来だったら、機械が文章の意味を理解して要約すればいいのですが、それができないので、表層的な手がかりでやるしかない」というコメントされていたように思う。

こういった面からも、自然言語処理とか文書処理というのはある程度行き詰まった領域なのかなあと素人は失礼な事を考えるのであた。Office2007にはあった「文章要約機能」がOffice2010から削除された、という。文書要約の必要性が薄れたとは思えないので、やはりいつまでたっても精度が向上しないという問題があったのだろう。


自然言語処理は結局のところ「コンピュータは意味を理解するのは無理」という大前提の上で、あれこれアルゴリズムをこねくり回しているのがここ数十年続いているように思う。となるとまたHALはどこに行った、、というボヤキになるのでここらへんでやめておく。

もう一つ印象的だったのが「リード法」という最初の数文をとる方法があり、新聞記事の漸くだとどんなすごいアルゴリズムを使ってもこれには勝てないのだそうな。これも結局新聞記事は「人間」が最初に要旨をもってくるということで「考えることは人間にしかできません」という事実に直面するわけだ。とかなんとか言っているが、こういうことを正直に述べる高村氏はすごいと思う。

と要約の話しを聞いているうち、こんなことをつぶやいた。

新幹線の扉の上に流れる文章にはいつも感心させられる。企業のCMになると途端に文体が変わることがわかる。企業CMを読んでいるとイライラする。

via: Twitter / grgr56: 新幹線の扉の上に流れる文章にはいつも感心させられる。 ...

と間髪をいれず中村氏から賛同のコメントをもらった。新幹線に流れるニュースというのは、実に見事に文を圧縮している。それを読んだあとに

「未来、創造、たのしさを作る企業。いつもわくわく●●から。●●電工」

とかいうどうしようもないバズワードの固まりのような文章を見せられるとイライラする。新幹線に広告を出している企業は、コンシューマー相手というよりはB toBで商売をしている企業が多いように思う。広告代理店に口車に乗せられているかどうかはしらんが、もう少し文章を考えたほうがいいと思う。

などと考えているうち話は終盤になる。情報要約と、曖昧化がどのように関連するかについて情報要約で最新のトピックが情報曖昧化に面白い形で応用できそうだ、という話は実に興味深かった。

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最後は大阪大学の土方氏である。まず「有害情報フィルタリング」と「ネタバレ防止」は全然違い、後者のほうがとても難しい、ということを力説する。例として挙げられた言葉を検索してみて驚いた。

JK.JC,ホ別イチゴで@三也

世の中にはいろいろな世界があるのだな。

でもってネタバレである。「イベントの詳細までは知りたくないが、何かが起こっていることだけを知りたい」という例であげられた研究がおもしろかった。しかしもっとインパクトがあったのが

「痛車イベント」

の実例だった。と言われても読んでいる側はなんともわからんわな。しかしあれは「痛い」
一昨年のインタラクションで、Tweetの時間変化と地理情報をマップしたものを観た。

カートグラムを用いた空間のアフォーダンスの可視化

これはすごい。やっていることは比較的シンプルで、GeoタグつきのTweetを数に応じて地図上にプロットしたもの。

何がすごいといって、(動画が見つけられないのが残念だが)本当に「都市が呼吸している」ように見えるのだ。朝が来ると人が集まる箇所がふくらみ、深夜にしぼむ。これを世界規模で見えるようにしたら、朝のウェーブとか、アフリカに広まる民主化の波が可視化できるのではないか。

via: ごんざれふ

この研究ともちょっと関連しているかもしれん。「通常の都市の呼吸」をデータとしてとっておき、そこからの逸脱を「突発的なイベント発生」として検知するととてもおもしろいのではなかろうかな、と自分で作るきがない人間は考えるのだった。

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でもってその後パネルディスカッションがあった。聞いているうちに思いついたことを最後に質問した。

ネタバレ防止の技術は「まずい書き込み警告」に応用できないだろうか。読みたくない情報を検知できるのであれば、「誰かが読むとまずい情報」を書き込む際にも事前に検知できるだろう。最近Twitterが馬鹿発見器と化しているが、こうした「発言の安全性を増す」という方向性もあるのではなかろうか、と。

全くの思いつきのideaだが、それをちゃんと聞いてくれるところが、発表者さんたちのすごいところだなあと思う。

その後こんなTweetを観た。

情報の曖昧化は可視化の観点からも注目してます。曖昧化したい部位をわざと下手な手描き風で表示すると効果があるというユーザテスト結果も発表されてますw

via: Twitter / 1T0T: @nakamura @100kw ...

この発言の趣旨と合っているかどうか全くわからんのだが

「わざと情報を曖昧にすることで、注目を集め、人間の想像を掻き立てる」

という方向性もあるのではないだろうか、と思った。いわゆるプレゼンの「もんたメソッド」ですよ。文の一部が隠されていると「そこに何があるのだろう?」と思うでしょ?あるいはこの例(クリックすると品位に欠ける「とおもわれる」写真がでます。Parental Discretion Advised)

http://minus-k.com/nejitsu/loader/up198675.jpg
http://maimi.shigurui.com/maimi/maimie15825.jpg

これなどまさしく「情報を曖昧にすることで、人間の想像力をかき立てた」例だと思う。機械がどう頑張ったところで、人間の想像力を超えることはできんのだ。だったらどうやってその想像力を掻き立てるかを考えたほうがいいのではないか、、などと

といわけで、情報の曖昧化、というキーワードにはもっといろいろな可能性が秘められていると思うわけだ。

というわけで、聞いた話自体もためになったし、そこから派生して考えたことにもあれこれ広がりがあるように思う。こういう新しい分野が生まれる瞬間、というのは不安と可能性がごちゃまぜで楽しい時期でもあるな、と傍観者は思うのであった。

その後の懇親会にとても行きたかったのだが、いかんせんその日は、子供をお迎えに行ってご飯を食べさせなくてはならない日なのであった。大慌てで帰り、洗濯物をたたみ、ご飯の準備(温め直すだけ)をやって、、という日常がまた戻ってくる。


シノフスキー粒子について(あるいはYet another Steve)

2012-10-23 06:46

少し前にこんなチャートが話題になった。

このチャートにおいて、Microsoftでは、いくつものグループがお互いに銃を向け合っている。

こうした文化を作った一員はSteven Sinofskyにある、、という意見があるらしい。

"In my opinion, Steven Sinofsky epitomizes that," said Charlie Kindel, a 21-year Microsoft veteran, who said he dealt with Sinofsky many times in his tenure at the company.

via: Steven Sinofsky: Microsoft's controversial Mr. Windows 8 | Microsoft - CNET News

私がなぜシノフスキー氏などという名前を知っているかといえば、昨今Windows関連で必ず名前と顔がでてくるからだ。彼はどんな人物なのだろうか?

前述の記事によれば、彼の最大の功績は、惨劇に終わったWindows Vistaを収拾し、Windows 7への成功に導いたことなのだそうな。つまりきちんと開発を管理し、ちゃんとした製品を出荷する、ということに長けているとのこと。

なぜそれが可能かと言えば


One former senior executive referred to the approach as "Soviet central-planning."


via: Steven Sinofsky: Microsoft's controversial Mr. Windows 8 | Microsoft - CNET News

ソビエトの計画経済のようなものと揶揄するむきもあるようだ。

さて

なぜ私がこの記事を引用しているかといえば、Windows8に関する奇妙な決定が、Microsoftにとっての効率を優先する立場からなされたのではないか、と考えたからだ。

Microsoftにとってタブレットとは、PCの延長である。それが既存の膨大なPCのインストールベースを活かす方法だ。であるから(UI上の問題は無視して)PCとタブレットのOSを統合する。これで開発コストを下げ、製品を予定どおり出荷することが可能になる。

そうした統合OSは成功しなければならない。従ってPCユーザが従来どおりのデスクトップにとどまることは許容できない。だから全てのPCユーザにメトロ(細かいことはいいとして)の使用を強制する。タブレットの何倍もの広さがあるPCの画面にそうしたUIが最適かどうかなど二の次だ。

こうした「ユーザの利便性を無視しして開発の効率を優先する」立場というのが奇妙に思えていたのだが、この記事を読んで

「なるほど。この人ならこういう判断をするだろう」

と合点がいった。

いずれにせよ、Windows8の出荷は目前である。またあのわざとらしい「WIndows8発売記念イベント」が行われるかと思うとうんざりするが、まあ目と耳を塞げばいいだけだ。各社からは続々と「新PC」が発表されているようだけど、結局のところWindowsユーザはどう反応するんだろうね。


楽天テクノロジーカンファレンス2012で発表してきたよ

2012-10-22 06:47

というわけで先週の土曜日は楽天テクノロジーカンファレンスだった。

楽天技術研究所が主体になって年に一度イベントをやっていることは知っていたが参加したことはなかった。過去2年くらいは「学会の派生系」のようなイメージだったのだけどね。

今年は広報ページからして英語である。私はライトニングトーク(4分のプレゼン)に申し込んだのだが、これも英語でやれ、とのこと。去年のライトニングトークのUstreamをみると、最初の2枚だけ英語であと日本語とかやっていたようだが、今年はそんなことはあるまい。

最初申し込むと「申し込多数の場合はCompetitionをやって発表者を決めます」と書いてある。そもそもそんなにたくさん申し込みあるんだろうか。英語だし、と思っていること一週間。「おめでとう。Competitionに通ったよ」と通知が来る。これって定型文なのか、本当にCompetitionをやったのか。まあそんなことは気にしないことにしよう。

これまでは、論文を出してもらって査読とかやっていたようだが、今年はそもそも一般発表がない。(ライトニングトークを除いて)最初から招待した人に講演をしてもらうようだ。

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というわけで11時過ぎに楽天につく。いたるところに、ピンクのシャツを来た人がたっており、誘導してくれる。実に親切だ。本日こうした運営側のホスピタリティには率直に感動した。

一番最初のプログラムは「カフェテリアでのランチ」丁度私が入ったところからオープンだったようだ。魚のから揚げのようなものを頼んだ。その後から来た人たちが食べるのを見ていたが、皆一様に

「スマホを取り出し写真をとってから食べる」

をやっていたのが笑えた。

それからセッション開始の12時までは少し間がある。ぼんやりと座る。この日はカフェテリアに隣接した部屋でのセッションを聞いていた。以下感想をずらずらと。


(その1)Exploring User Wish Through Mindmapping (Kenji Hiranabe)

マインドマップを用いて、ユーザの曖昧な願望を視覚化しようという話。前置きが長い。いきなり自分が得意なScrum(開発手法の一種?)について延々熱弁を振るいだす。自分でも
「なんでScrumについて話してるんだ」
と言い、時間が無くなったと言い訳が始まる。当たり前だ。
人間は言葉よりイメージを覚えるのが得意なので、Mind mapでイメージ的に視覚化するとよい、という話を半分くらいしていた。結局Mind Mapについて何が言いたかったのかポイントは解らずじまい。

英語で話す事にはなれているようだが、多分彼の話は日本語で聞いてもわけがわからないと思う。何かに対する熱意があることだけはよくわかった。それが何かは知らないが。

これが終わったところで、楽天CEO三木谷氏の講演がある。「皆様、4Fにおいでください」と呼びかけがある。そりゃCEOの講演があるのに、参加者が他の場所で屯していては困るわな。

あまり聞く気はなかったのだが、促されるまま4Fに向かう。ちなみにエレベーターには全て楽天社員が乗っており、何階にまいります、とアナウンスしてくれる。いや、すばらしい。

三木谷氏の講演は途中から聞いた。前に何かの記事で「三木谷氏自信あまり英語はうまくない」と聞いたことがあったのだが、発音はなかなかきれいだった。しかしプレゼンとして観た時に平板であったことは否めない。

この日私が「楽天」から受けた印象というのは、三木谷氏のスピーチによるものではないく、このカンファレンスを作りあげた楽天社員一人一人のホスピタリティから受けた物が大きい。このことはまた後で(以下略)

というわけで講演を聞くと13Fに戻る。

(その2)Design Thinking Jeff Patton
現行のAgile processには欠けているものが多くある、と主張。Agileプロセスを使って、プロダクトをリリースしているのに、「失敗続き」と士気が落ちているチームがあった。何が問題か?以下列挙。

・Understand the problem before solve them. そもそも何の問題を解こうとしているのか、それを考えずに開発にかかってしまうことが多い。
これはありそうな話だ。それScrumだ、やれRuby on railsだ、とか「手段」に入れ込む人は多いが、問題を理解しないことには、開発しても意味が無い。

・Safety is not success
ノードストロームではウォーターフォール式にチェックを厳格に行った。その結果、全てのinnovationが消えてしまった。
ウォーターフォール式の開発がうまくいかない、ということは誰もが知っている。しかしいつまでもそれがなくならないことについて考える必要がある。つまりメリットがあるわけだ。
ウォーターフローの利点は、個人にとって「安全」であること。うまく行かなかった時に、「自分じゃない誰か」を非難できる。ソフトウェアの開発が遅れたのは、仕様が出るのが遅れたからだ、とか、無茶苦茶な仕様がでてきたからだ、と非難できる。しかし製品を作るには向いていない。

・Velocity is not value
目的はソフトウェアを作ることではない。目的は世界を変えることだ。クズのようなソフトを素早くリリースしても何にもならない。

・Balanced team not clietn-vendor
Value, Usability, Feasibilityを理解できる人間がチームとして働くことが必要。またお互いの概念を共通化した上で、議論することが必要。視覚化が重要。概念を視覚化、共通化しないうえで議論をしても時間の無駄

・Deliberate discovery ...(読み取れませんでした)
ユーザと同じ環境に行き、ユーザがどのようにシステムを使うか学び、それをチームで共有する。

というわけでしめくくりに

"With design thinking, team fails often. But at the end, it is better."
このデザイン思考を用いると、チームはより多く失敗刷る。しかし最終的な結果はよくなる

とのこと。

映画MatrixでBlue pillとRed Pillを選べという場面がある。Red pill(現実)に直面するべきだ。

この日一番おもしろかった講演。この話を聞いて「なんだ、当たり前のことじゃないか」と思うなら、あなたはまだMatrixにつながれている可能性が高い。

特に「スピードは価値ではない」という主張は、楽天が「スピードスピードスピード」を社是にしていることを考えると「そんなこと言っていいのか」と心配にもなるが真実でもある。これについては後に再度触れる。

(その3)How to resolve Conflict - Rumiko Seya
紛争地域で、紛争が終了した後に兵士達に職を探したりして、紛争無しで暮らせるするようにするサポートをする組織で働いているとのこと。
元少年兵士達に何がしたいか、と聞くとほぼ全員が学校に行きたいと答える。しかし学校に行ったことがない少年をいきなり学校に行かせることはできない。だからまず職業訓練をして、金をためた上で学校に行く事を指導する。

少年兵士というシステムはまさしく「悪魔の兵器」だ。子供は平気で死ぬとか人殺しとかを口にする。(自分もそうだった)それが何を意味するかがわかっていないからだ。その子供たちに武器を持たせ、多くの人を殺しそしてその人間の将来をも奪う。(書きながら気がついたが、これはAK47などの自動火器によって可能になったシステムでもあるな)

というわけで大変興味深い内容のはずなのだが、プレゼンテーションとしては改良の余地が多々あると感じる。一番問題なのは「受取り手がどう反応するか」について考えた形跡があまり見えないことだ。Me factorが強すぎる。

こういう話しを、聞き取り手に構えさせず、しかしまじめに伝えるのは難しいと思う。しかしそれにチャレンジしてほしかったなあとも思う。

このあとライトニングトークの会場である4Fに降りる。例によって

「ああ、俺は何をしてるんだ。こんなことをせずに子どもと遊んでいればよかったじゃないか」

と後悔の念にさいなまれる。

しばしの後ライトニングトークの時間となる。PCをかかえて前に行く。今回使うのは「本邦初公開」のプレゼンシステムGozenである。もっともそんなことを気にしているのは世界広しと言えども私だけである。何が問題かといえば、このソフトを長時間立ち上げておいたことがないことにようやく気がついたからだ。つまりプレゼンのあまり前にソフトを立ち上げあると、本番の時に動かないかもしれないのだ(理由は省略)

などと不安を抱えながら、案内された座席に座る。

順番がだんだん近づいてくる。前の人が発表をしている最中に、次の人は前に案内され、自分のPCを使う場合は既に接続をしておく。いや、ここらへんのサポートは実に素晴らしい。昼ごろに接続確認をやったのだが、専門の人がついており、本体とのミラーリングでやるのか、2nd ディスプレイとして使うのか、その場合の解像度は、とかちゃんと打ち合わせ済みである。

制限時間は4分。超過するとドラがなる仕組みである。いつも思うのだが、こういうとき余裕で時間オーバーする人ってどういう準備をしてるんだろうね。4分だから、10分もあれば2回は練習ができるし、どれだけ時間がかかるかもわかるだろうに。

というわけでとうとう私の前の人になる。PCを接続するとあとは運を天に任せるしかない。前の人のプレゼンを見ていると、ああ、こういうのが受けるんだろうなと思う。

というわけで拍手とともに前の人がおしまい。PCをもってよたよたと演台に立つ。

Hi, My name is Goro Otsubo

と練習通りしゃべる。私のプレゼンは、日本語訳が画面に表示されるので親切とも言えるし、(自分で言うか)アドリブが効かないとも言える。

途中何度か言葉を間違えたが、基本的には練習通りいった。笑いを取ろうとしたところでもちゃんと笑いが起こったし。会場を見渡すが、ちゃんと顔をあげて聞いてくれているようだ。

聞く方にとっては、たった4分であるが、しゃべる方にとっては永遠とも言えるほど長い時間だ。しかし何事にも終わりは来る。Thanks,といい演台を降りる。

すべての発表が終わると、Rakuten awardの表彰。しかし私は一人でぼんやりしたい気分である。13Fに行こうとかと思ったが、Beer Bashの準備でいけないようだ。仕方がないから1Fに降りる。

英語を話す白人二人が同じエレベータに乗っている。こちらを見ると

「ああ、あの不動産のなんとかを発表していたね」と話しかけてくれた。Yesその通りです。あれはおもしろいねえと言ってくれる。デザインも開発も自分でやったのか?と問われるので「そのとおり。まあ一人プロジェクトだね」と答える。

この時、今日英語で発表をした意義が初めて実感できたと思う。こういうふうに「あれは面白かったよ」と声をかけてくれる日本人は滅多にいない。いたとしても、お互い顔を知っている場合が多い。(そもそもお前の話がつまらんのではないか、という可能性もあるが無視する)

英語でしゃべることにより、そうした英語圏の人にも聞いてもらい反応をもらうことができたわけだ。これは大きな収穫だった。

さて1Fでしばしぼんやりした後、13Fに戻る。人がたくさんいて大混雑である。とりあえず何か食べるものを、ということでおとなしく列に並ぶ。皿に目一杯食料をとると、座る場所を探す。ここで思いもかけず知り合いにあうことができた。座ると話しながらひたすら食べる。

そのうちAwardの発表がある。ライトニングトークをした人は前へ、と言われるので前に行く。ここで別の発表者から「あれはおもしろかったよ」と声をかけてもらえた(これも英語圏の人だった)

そしてライトニングトーク賞の発表。なるほどこういうのが賞をとるんだなあと思う。それが終わると脱兎のごとくエレベータを駆け下りる。このあとまだ予定があるのだ。

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感想を一言で言えば「大変興味深く面白かった」と答える。もちろんいくつか改善の余地はあるだろうが、この楽天のイベントがあれこれ試行錯誤を繰り返しながら、おもしろい形に進化したことは率直にすばらしいと思う。

また運営に携わった人たちの気遣い、心配りにも感動した。この熱意は「会社の仕事」だからではなく「自分たちのイベント」といった意識を持たないとでてこないものだと思う。

そうした社員達の工夫、気持ちを考えながら手にとった「Kobo」を眺める。

社外からライトニングトークに参加した人には、全員Koboがプレゼントされたのだな。でもって箱を開けるところから「噂通り」困難に直面する。画面が頻繁にフラッシュすることとか、タッチの悪さは、電子ペーパーだから問わないことにするが。

このKoboをめぐる騒動で、三木谷氏の言動はどう控えめに見てもほめられたものではなかった。

――対応を終えた後もインターネット上での騒ぎが収まっていない。

三木谷:
時間の問題じゃないでしょうか。
実際に騒いでいる人の数を数えると、まずたいしたことないと思いますよ。
騒いでいるのはせいぜい2000~3000人でしょう。
致命的な問題があった訳でもないし、コンテンツの売り上げは「超」がつくほど順調ですし。
反省すべき点がゼロとは決して言いません。
しかし、問題点にきちんとスピーディに対応できたし、これは大成功だったと思います。

via: 楽天三木谷社長がkobo騒動について語る「騒いでいるのはせいぜい2000~3000人でしょう。致命的な問題があった訳でもない」:ハムスター速報

テクノロジーカンファレンスに参加した人はほぼ間違いなく楽天という企業に好印象を持ったと思うが、それを台無しにするトップが存在するというのもまた事実である。

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などということはさておき、こうした発表の機会を与えていただいたことについて深く感謝したいと思う。イベント自体、招待講演ばかりだったわけで、同じ演台に私のようなチンピラが立つことなど夢にも思わないわけだが、別枠であってもいろいろな人にプレゼンをさせてもらえたのは、得難い経験だった。

来年は、、どうなるんでしょうね。


Windows8に触ってみたんだった

2012-10-19 06:52

そういえばCEATECのソニーブースでWindows8にさわってみたんだった。

20インチ弱の大きなディスプレイをもったPCのようなもので動いていた。説明するおじさんが

「画面を上から下までずいっとやってください」

といっている。それをやるとスタートメニューがでるとかなんとかだったな。
つかている間、何度もその操作をしなければならなかった。おまけに画面がでかいもんだから、途中で手を離すとちゃんと動作してくれないし。

シノフスキー氏がなんと言おうと、7インチのタブレットと23インチのPC画面を同じ動作で操作させるのは馬鹿げている。今の段階では「タブレットとPCのOSを統一したのは間違っている」と断言せざるを得ない。

しかしMicrosoftはそうは思っていないようだ。WIndows7までと同じような操作ができないようにした。全画面のModern Interfaceを経なくてはならないようにしたのだ。

しかし結局それに誰が従うというのだろう?

It seems that you can't hold a good utility down. We've received confirmation from Samsung reps that while S Launcher will not ship with Samsung's Windows 8 devices, it will be available for download when the products hit store shelves.

via: Samsung Windows 8 PCs Will Have Start Menu After All

SamsungのPCでは、スタートメニューっぽいユーティリティをダウンロードして使えるようになるんだとさ。しかし私の母が使うことを考えるとこの「ユーティリティをダウンロード」というのはとてつもなく困難なステップだ。

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さらに混乱に輪をかけるだろうと思われるのが、Windows RTとWindows 8の関係だ。

Nate2

I told some of them I was interested in Surface with Windows 8, and waited to see if they'd correct me and tell me it had Windows RT. (None did.)

via: With Surface looming, Microsoft fails to explain Windows 8 vs. Windows RT to consumers | The Verge

現在存在しているWindowsアプリのほとんどはWindows RTでは動かない。今はほとんどアプリがないWindows App Storeにあるものしか動かないのだ。
しかし同じような形をしていても、来年発売されるWindows8が動くタブレットではそれらは(多分)動く。なぜか?話しは長いので省略。とにかくそうなのだ。そして↑の記事によれば、Microsoftストアの店員にここらへんの説明を求めても碌な答えが帰って来なかったのだそうな。

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でもってこのCMだが

私も以下の意見に同感だ。

If I didn't know better, I'd say Microsoft's Next Big Thing was a keyboard.

via: Microsoft's New Commercial for the Surface -- Shawn Blanc

もしSurfaceについて詳しくなければ、Microsoftが出す「すごい製品」とはキーボードのことだと思うだろう。

見れば見るほど不思議なCMだ。タブレットにみんながキーボードをはめたり、外したりしている。あるいは後ろについているスタンドを開けたり閉めたりしている。

するとみんな楽しくなるらしく、踊ったり飛んだりはねたりする。あのキーボードとスタンドには何か呪いでもかかっているのだろうか。何も知らない人がみれば多分そう解釈するだろう。

もちろん素晴らしいハードウェア(今のところの評価はそうだ)を作った側からみれば「この素晴らしさをみてくれ」というところかもしれないが。

マイクロソフトの本社役員スティーブン・シノフスキー氏自らが、Surfaceをスケボーにして本社敷地内で乗っています。

via: マイクロソフトSurfaceを、役員自らスケボー代わりに... : ギズモード・ジャパン

これをみても、シノフスキー氏ってちょっとずれてるんじゃないかという懸念が高まるのだが。


Topが「やらない」と決めること

2012-10-18 06:44

iPhone発売直後には

「頼む。孫社長。これを日本で売ってくれた、家族全員Softbankにする」

といったのは私です。当時はKDDI死にかけてたしね。利益がどうのじゃなくて、おかしなことばかりやる会社だったから。

しかし

トップが変わるとこれほど変わるのかと思う。

LTEのネットワークが本当にスピーディで使いやすく、電池もあまり減らないといった、そういうところに企業はもっともっと集中していくべきだ。私は顧客から気持ちが離れると、企業はどこにいくか分からないという考えを持っている。ソフトバンクにも考えがあると思うが、当社はそういう思いで会社を続けていきたいし、オペレーションしていきたいと思う。(ソフトバンクが)派手なのはいいと思うが、(自身は)性格が地味なのでそんなふうにやりたい」(田中氏)

via: KDDI田中社長、ソフトバンクの戦略に「数ではなく質で訴求」 - CNET Japan

この言葉は強い。この言葉と比べてみると、孫社長の言葉は顧客よりも、自分の願望に向いているように思える。

もちろん「自分の願望」を追求するのは悪いことではない。そしてそれは日本でiPhoneを発売してほしい、というユーザの声と一致していたわけではあるが。

プラチナバンドがどうのと言ったところでSoftabankがつながりやすくなったという声はどこからも聞こえてこない。スマホに放射能測定機能をつけてみたが、だーれも使っていないようだ。(Google先生にお伺いを立ててもびっくりするほど何もでてこない)

どの立場にある人間でも

「やることを決める」

ことよりも

「やらないことを決める」

ことのほうがはるかに重要で、難しい。

――海外キャリアとのアライアンスなどについては?

 (ソフトバンクが買収した)Sprintもそうだったが、もう1年も前から証券会社が常に持ち込む企業リストに入っていた。僕がどう思っていたかというと、自分たちは一体何なんだろうと常に思い返していて、このディール(取引)についてはお断りしていたのが現実。

via: KDDI田中社長、ソフトバンクの戦略に「数ではなく質で訴求」 - CNET Japan

一見よさそうに聞こえる話であっても

「自分達はなんなのか。そうした観点で自分達のためになるか」

を考え抜き、あわないとなればきっぱり断る。当たり前のようだが、たいていの人間にはこれができない。

当家は貧乏なので、私がもつ携帯は当分月945円回線のままだろうが、何かの間違いでキャリアの携帯を持つことになれば、KDDIにしよう。少なくとも田中氏が社長でいる間は。


今日は10月17日。そしてSurfaceは26日には発売される

2012-10-17 07:05

昨日Surfaceの出来はどうなんだろうねえ、、と書いた直後にMicrosoftからSurface関連の情報がでてきた。またMicrosoft本社のデザインスタジオでのツアーもあったそうだ。

このツアーの情報がよくわからない。いくつかのメディアが書いているのだが、どこかまどろっこしい例えばこうだ。

全体として大いに印象に残るツアーであったが、ソフトウェアに関する説明がとても少なかったのが面白く感じられた。これはMicrosoftがデバイスのエレガントさの重要性に目覚めたということなのか、ポスト・パソコン時代のソフトウェアのあり方に不安を抱いている現れなのか興味深いところだ。

via: Microsoft本社の魔法のショップでSurfaceにタッチしてきた―デザインのインスピレーションはモレスキン

で結局6月にろくに機能していなかったソフトはどうだったわけ?というわけであれこれ調べてみると、確かにツアーは行い、ハードウェアの説明はたっぷり行ったらしいのだが、肝心の製品には「少ししか」触らせてもらえなかったようだ。

The truth is, we didn't need a tour of Microsoft's facilities to feel intrigued by Surface: our appetites were already piqued enough. Still, it remains slightly worrisome that after a splashy launch event and a privileged peek at the company's labs, we still haven't gotten much hands-on time with Microsoft's Windows 8 halo device.

via: Microsoft Surface: inside the three-year secret project to build the first great Windows tablet -- Engadget

その少しの時間の間にタッチキーボードに触った人たちは、その機能性と感触についてよい印象をもったらしい。しかし「自分であれこれ試したい」という要望はかなえられなかったと。

Microsoftの直販ページでは、「今オーダーすれば26日に届けます」と言っている。輸送に2−3日かかるとして、残された時間は一週間もない。というか今からハードの改修は不可能だからできることはソフトをアップデートすることくらいだ。

となると再び(余計な)懸念が起こってくる。本当にSurfaceは機能するのだろうか?まああと10日で分ることだが。

でもって

その価格だが、これは驚いた。

ようやく正式に発表された Windows RT 版の価格は、ストレージ32GBモデルのタブレット単体が499ドル、厚さ3mmのマルチタッチフルキーボードつきカバー Touch Cover 付属モデルが599ドル、ストレージ64GBで Touch Cover つきが699ドル。

via: マイクロソフト Surface Windows RT は8か国で販売、詳細スペック公開 - Engadget Japanese

Microsoftが自社でハードウェアを作り出すこと自体が破天荒なのだから、きっと「OEMが発狂するような」価格をつけてくるだろうと思ったのだが、全く常識的な価格設定だったからだ。ちなみに記憶容量が同じもので比べると、iPad2と全く同じ。New iPadより$100安い。

これがまだ「キーボードは標準装備でこの値段」だったら驚きだったのだが、あれほど宣伝しているキーボードは別売りでしかも$100とるのだそうな。

Wall Street Journalは「Microsoftが第4四半期分として300万台から500万台のSurfaceタブレットをアジアのメーカーに発注した」と報じた。この台数はAmazonのKindle FireやGoogleのNexus 7に匹敵する量だ。

via: Microsoftは独自ノート、Surfaceの売れ行きに自信―第4四半期分に300万から500万台を発注(WSJ)

Microsoftはこれで十分売れるだろうと思っているらしいが、

ただ気になるのは、新世代 Atom プロセッサの " Clover Trail " を載せたWindows 8 タブレットが、筐体サイズや重さも同等、バッテリー駆動時間も8時間前後で各社から販売されること。Windows RTデバイスはSurface 以外にも数社から予告されていますが、マイクロソフト的な位置づけをどうしてゆくのかは興味深いところです。

via: マイクロソフト Surface タブレット、Windows RT版は499ドルから。Touch Cover 付属は100ドル増し - Engadget Japanese

こうなるとなあ。結局ARM CPUを搭載したTabletというのはひっそりと消えて行くのではなかろうか。。Atomを使えば十分安くできるのであればソフト互換性の問題を抱えてまでARMを使う意味がないもんね。

ここらへんどうにもMicrosoft的な「迷い」が見えるような気がする。タブレットも必要、デスクトップはもちろん!と2つの異なる要求に提示された妥協しない解決策は

「両方載せること」

だった。ハードウェア企業になるぞ!という意志と、でもOEMとは仲良くしなくちゃだよね、という日常の知恵に対する「妥協しない解決策」が

誰も幸せにならない価格設定

なんではなかろうかなあ。


あれこれの断片

2012-10-16 06:46

というわけで、今日は細かな断片をあれこれと。

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ソフトバンクがSprintを買収した。Sprintといえば、なんというかやることなす事うまくいかない、という印象があったので「これは弱者連合か」とも思った。

 孫氏が特に強調したのがV字回復のノウハウだ。同社は2004年に赤字体質の日本テレコムを、2006年に赤字転落寸前のボーダフォンジャパンを、2010年に経営破綻したウィルコムを買収し、いずれも黒字へと転換させた経験を持つ。

via: スプリント買収に"2つの疑問"--孫社長、解決に「自信がある」 - CNET Japan

これを読むと一瞬なるほど、と思う。しかしそれは日本国内のことではないか、という言い方もできる。しかし結局世界一しか残れないとすれば、ソフトバンクはいつかこの壁にぶつかっていたはずだ。それにチャレジしようという心意気には感服する。

また別の方が書いていたことだが

ま、弱小キャリアと言ったって、日本の端末メーカーはろくに相手にしてもらえてなかったんだから、それに比べりゃ本体を買収しちゃったソフトバンクはエライわな。
 ヌカミソ樽に頭突っ込んで反省してろ >撤退した端末メーカー

via: Sprintに買う価値なんてあったのか: 無指向な嗜好

DocomoもAT&Tに16%出資でどうのこうのだが結局金の無駄遣いに終わった。結局本体を買収して自分の一部にし、その責任も背負い込むことまでやらなくてはならんのだ。

この結果がどうなるかはまだ分からない。しかし相次いで大型の買収を成功させ自分のビジョンを実現させよう、という姿勢に学ぶべき経営者は多いはずだ。(私は経営者じゃないから知らんよ)

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さて、もうすぐWindows8とMicrosoft Surfaceが発売される。Windows8に関してもっとも好意的な記事は以下の様なものだ

確かにWindows 8はデスクトップとタブレット/タッチOSのへんてこな合体のように感じる。最新のOS XでiOSライクのLaunchpadを支障なく無視できるのとは異なり、Metroを完全に視界から消すことはできない。しかし、このMetroを扱わなくてはいけない僅かな時間も、実はそう悪くはない。慣れるのに少し時間はかかるし、デスクトップにはちょっと場違いに見えるのは確かだ。完全にこれを自然に感じられるようになることはないだろうが、一部の人たちが思い込ませようとしているような致命的問題ではない。

via: 脅しを信じてはいけない。Windows 8はあなたが思っているよりずっと良い

私としてはMicrosoftがこのような愚かな決断をした理由を知りたいと思うが、まあそれは問わないことにしよう。それより興味があるのは、6月にはろくに動作していなかったSurfaceが本当に発売されるのか、ということだ。そしてMicrosoftご自慢のキーボードの使い心地はどうなんだろうね。

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というわけでそもそもプレゼンテーションという名前でくくられるものは、何種類存在しているのだろうか、と考える日々である。

未だに存在意義の分からないものとして「資料の読み上げ」というものがある。あれは一体何のためにやっているのかわからないが、会社生活ではよくでくわす。文字を読むのと同時に勝手なペースで同じ音声を流し込まれても認知負荷が高まるばかりだ。

でもってこんな記事がある。

「Prezi」は、遊び心満載のプレゼンテーションが
簡単に作成できるツールです。

テキストやズーム、フロウする動きまで、かなり自由に編集でき、
YouTubeの動画も貼り付けることができるようになりました。

via: 「Prezi」を使ったプレゼンがスゴい! - NAVER まとめ

書いていること自体は「ふーん。楽しそうだね(棒読み)」としかいいようがないが、面白いのはこの文章についたコメントである。

ここらへんを読んでいると「研究発表のプレゼンとは、退屈であってもロジカルであるべき」とか「会社のプレゼンとは新規であってはいけない」とかいろいろな言外の前提が見えてくる。

というか研究発表のプレゼンってのは一体なんなんだろうね。世の中には論文至上主義なる人がおり、論文をたくさんのページを使って書くことに大変な情熱を注ぎ、価値を認めるようだ。

であれば、論文配って終わりにしたほうがどれだけいいかわからない。せいぜいデモビデオをつけておけばOK.各自論文を読むのだったら、自分のペースで自由に読めるし。

というわけでWISSの発表は「ではみなさんこれから15分で論文を読んでいただき、質問があればお願いします」といって壇上で立っていよう、、などということはもちろんやらない。私なりになぜWISSでプレゼンをするのか、という問に対する答えを出すつもりである、などとネタバレしていいのだろうか。(誰も読んでません)

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さて、最近話題の森口氏である。

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via: 【画像】 森口尚史氏がヤバイwwwwwwwwww|ラビット速報

いろいろな議論があるようだが、私は「新聞記者は知恵を持つべきだ」と主張したい。いやさ、顔見て少し話せばわかるでしょ。この人が世界的な偉業を達成する人かどうかなんて。

もちろん世の中には詐欺師という職業があり、そうした人は外観や仕草をつかって欺くことに長けているわけだが、そんな高級な手段を弄する人でもないし。

論理というのは時としてとんでもない大間違いをやらかす。何度か書いたことだが、日本が米英に宣戦布告した時にも「合理的な戦争終結の見通し」は存在していたのだ。

頭のよい人が、どのように理論整然と「米英に対して戦争をはじめる必要がある」と説こうとも「お前は馬鹿か」と言うのが知恵者というものである。

あともう一つ気がついたのは、研究者という職業を名乗っている人の中にはこんな人もいるのだなあ、と任期付きのポストを転々として、東大とかハーバードとかハクのつきそうな名前をつければ、結構世の中渡れるものらしい(月6万のアパートぐらしで良ければ)今回は森口氏が取り上げられたわけだけど、同じように「怪しげな研究者」ってどれくらい存在しているんだろうね。


五十にして天命を知る

2012-10-15 07:11

というわけで、40の声を聞いたのはついこないだのような気がするがもうすぐ50になる。
20台のころ、母が高校時代の同期会にいって「みんな年はとってるけど中身は全然変わってないよ」と言ってた。その時はそんなもんか、と思って聞いていたが自分がその年になると実感できる。あれは本当だ。

いや、少しは変化がある。丸くなるとか枯れるという言葉から人が想像するのとは反対の方向に。

安田登氏によると、「四十にして惑わず」の「惑」は昔は「域」と同じく「区切る、制限する」という意味で、つまり「四十になったら自分を制限するな」というのが本来の意味ではないかと推測し、内田樹氏もそのほうが次の「五十にして天命を知る」のつながりが良いと賛同している。

via: OL男子の4コマ書評 : 内田樹氏×安田登氏の論語新説「四十歳になったらむしろ迷え」と論語4コマ化のためのメモ

この解釈によれば、40にしてロックの魂を得ることになる。そして50は「こっち」と方向が決まるというころだ。今朝こんな文章を観た。

 七十歳だという串田和美さんが、
 枯れて落ち着くのではなく、
 肉体と思考とが転げ回るような芝居をやるとは、
 正直言って想像していませんでした。
 串田さん自身と、笹野高史、小日向文世という、
 自由劇場からの同志のようなふたりを軸にした、
 俳優たちも、全力で遊ぶコドモのようでもありました。
 
 なんなんだろう、こんなふうな、
 年齢が高くなってからの情熱って。
 じぶんの考えてきたこと、やってきたことの
 すべてを並べて触って確かめたいのでしょうか。
 ちっとも大人ぶってないのです。
 多くて、大きくて、初々しい。
 自ら望んで取り込んだ「過剰」を感じるのです。

via: ほぼ日刊イトイ新聞 - 目次

この言葉を読んで思い出したのは、宮崎駿である。千と千尋はまだわけがわかったが、その後のハウルの動く城、それにポニョは正直わけがわからない。

「もう、つじつまとか整合性とか、わしゃ知らんの! 今回は無意識のリミッター全面解除して作っちゃうんでよろしく! 母親が危険運転して事故ってペシャンコになったとしても、どうせこれはアニメなんだから死なないし口から空気入れで膨らませれば元に戻るの! アニメだから魚が半魚人になって人間になってもいいの! 作品がグチャグチャで、バカとか狂人とか思われてもいいの! 理由とかつじつまなんて面白くないの! アニメってそういうものなの! 面白ければわしゃなんでもいいの!」

という意思表示だと解釈しました。ここまで開き直っている人に対して、作品の整合性がムチャクチャじゃないかとか、人として許せないと言って非難するのは、まったくその通りなんですけど、おそらく言っても無駄なのではないかと思います。

via: パンダとポニョ(3): たけくまメモ

宮崎氏は71歳。まあ孔子のころとは人間の年齢が異なるから一概には言えないが、彼は60代の時に

四十にして惑わず

の悟りを得たのではあるまいか。

というわけで風邪気味なので、唐突に終わる。


まず形からはいろう

2012-10-12 06:40

昨今キャリアから●●モデルの発表が相次いでいる。でもって昨日はDocomoの発表があった。少しだけUstreamでみた。

後ろに表示された「プレゼン資料」をみるとまだ文字が多すぎるが、笑っちゃうくらい昨今の米国企業の発表風景に似ている。巨大なスクリーンの前に社長がたって説明する、というやつだ。

プレゼンの巧拙については問うまい。ゴミみたいなパワポをめくり続ける他の日本企業に比べれば、形だけでもなんとかしよう、という意気込みは買いたい。ソフトバンクも同じようにスタイルが米国流になっていたな。

しかし

この舞台で「大人気コミックのワンピースモデルです」とかいって情けないフィギュアを取り出すのはどうかと思うよ。多分やらされている社長が一番実感しているだろうけど。


あと最後が

「ご清聴ありがとうございました」

だったのはもどうかと思う。様式美はこんなところまで進出してきているのだな。



次のiPhoneを夢想する

2012-10-11 06:46

いや、NFCがのるとかそういう話じゃないよ。

iPad miniが発売されることは、もはや規定事実として扱われているようだ。私としては、AppleがiPadとiPad miniをどのように位置づけるのかに興味を持っている。少し小さくて半額ぐらいに安い。これはなんなのでしょうね。画面解像度はどうするのか、という点も気になる。

さて、こんな記事を見つけた。

「iPhone 6」は、Ive氏が求めているように、「純粋に優れた」ものになるだろう。そして、顧客の選択を迷路のように複雑にしたり、そのサプライチェーンや財務面のけん引力の効率を低下させたりせずに、ディスプレイサイズが異なる2つ以上のモデルを提供する可能性がある。

via: 「iPhone 6」には複数モデルが必要か--アップルのモバイル製品戦略の今後 - (page 2) - CNET Japan

iPadが2種類になるなら、iPhoneだって2種類あってもいいじゃないか、というものである。現時点ではそれはないな、と勝手に思っているが私の予想は大抵外れる。

最初に

「次のiPhoneは画面が縦に長くなる」

という記事を読んだ時「そんな馬鹿な」と思った。大きくするなら縦横比を変えずにやるにきまっている。そうでないとアプリ開発者は地獄だ、と思ったものだが結果はご覧の通り。

画面サイズとは別に私が注目しているのは色のバリエーションだ。今回iPod touchではカラーをあれこれ出してきた。

NokiaがLumiaのカラーバリエーションの豊富さに対して、白黒のiPhoneをからかっているCMもある。

確かにカラーバリエーションは必要だ、という結論にAppleが到達したとしても私は驚かない。あの美しい筐体にカラーを付けるのは恐ろしく大変かもしれないが、あるいはAppleなら解決するかもしれない。(iPhone4の白をだすだけであれほど大変だったのだ)

きっとApple社内のどこかでは、すでにiPhone6(多分登場は2年後だろう)の開発があれやこれやの試行錯誤と共に行われているに違いない。楽しみだなあ。

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でもってうってかわり、こちらは「大規模修理が記事としても取り上げられてない」ソニーのタブレット。

ソニーは5日、Androidタブレット「Xperia Tablet S」の一部製品で、IPX4相当の防滴性能を維持できない可能性があると発表した。販売を一時停止し、販売済みの製品は無償で点検、修理を行なう。

via: 【PC Watch】 ソニー、「Xperia Tablet S」の販売を一時停止 ~IPX4防滴を維持できない可能性

まあ昔はAppleもバッテリが発火するPowerbookとか出してたしなあ、とか感慨にふけっている場合ではない。このニュースで何よりも驚くのは、誰も話題にしないことだ。

20年前なら「ソニーがタブレットをだす」というだけで「どんなものがでてくるだろう」と誰もが期待したものだが。。

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というわけで、半死半生の日本の家電メーカーをシリ目に、Microsoftはハード企業たる野心を公にしだした。

"There will be times when we build specific devices for specific purposes," explains Ballmer.

via: Ballmer to Microsoft shareholders: 'a fundamental shift [is] underway in our business' | The Verge

JobsがiPhoneのプレゼンで引用したAlan kayの言葉

「People who are really serious about software should make their own hardware.」
「ソフトウェアに対して本当に真剣な人は、独自のハードウェアを作るべきだ。」

via: アラン・ケイ - Wikipedia

の持つ意味を、学びそして大きな方向転換を図っているということか。この経営者の判断と以下の記事を比べると、秋の物悲しさがより深くなるような気がする。

上司 君もこういう団体(上司が参加する経済産業省の外郭団体)に所属なり参加していたら、リストラにあわずにすんだのにね。

via: 私はこうして退職を強要された/NECリストラ 面談一問一答メモ (3/3)(しんぶん赤旗) - BLOGOS(ブロゴス)

お役所の外郭団体に所属していたら、リストラされない、ってこの期に及んでまだそんなこと言ってるのか。


昨日の続き

2012-10-10 06:43

本来は昨日引用するべきだったのだが忘れていた。

無敵のように見えていた「iPod」の、  最大のライバルを、  「アップル社」はじぶんでつくってしまった。  電話にくっつけて「iPhone」にしてね。    たぶん、「iPhone」を持っていたら、  ほとんどのユーザーなら、じぶんの音楽ライブラリーは、  そのなかにぜんぶ取りこめることだろう。  つまり「iPod」のような音楽プレイヤーは、  電話を買えばついてくるというわけだ。  しかも、新しい曲は「iPhone」でダウンロードできる。  「iPod」は、じぶんの会社のライバルに道を譲った。  これ、ほんとにすげぇなぁと思うんですよね。  じぶんのところの強力な製品を、  別のじぶんの新製品で乗り越えちゃうっていうの。  こういうの、「おもしろい」って思うんですよ。   (中略)

テレビとか家電をつくっていた会社が、もし、
 「こういうものが、やがて価格競争にさらされて、
  古臭くなって商売にならなくなるんだよ。
  おもしろいだろう」なんて言いながら、
 最盛期に仕事をしていたとしたら、
 いまごろ、なにか生んでいたという気もするんだよね。

ほぼ日刊イトイ新聞より引用

自らの成功を否定することは難しいことだが、そうでなければやがて環境から否定される。環境はどんどん変化していくからだ。

前にも引用したが、それを防ぐためには

産物ではなく、プロセスに同一化すること、そして単に保持・所有するプロセスにではなく大胆に選択し、適応するプロセスに同一化することは、こ れまで集団的に実現することが難しかった。

共和国初期のローマ人、15世紀末から16世紀初頭のイタリア人、エリザベス女王時代のイギリス人は目的にとって有益だと判断された過去の遺産 の大部分を 保全しつつ、新しい機会を捉えることに非常に長けていたように思える。

via: 失敗の本質の一部

Sonyだから、Panasonicの社員だから偉いのではない。新しいものに挑戦し、形にしてきたプロセスが偉大なのだ、ということをどこかで忘れてしまうわけだ。プロセスに一体化するのではなく、組織(あるいは組織名)に人間が一体化し、それが変化することに全力をあげて反対する、と。

であるからして「俺の目が黒いうちはTV事業はあきらめない」とか言っているおじいさん、あるいは「そのサービスはSonyの4文字にふさわしいものか?」と問いかける若者ばかりになるわけだな。

私はApple原理主義者だから言うのだが、その点最近のAppleはすごい。糸井氏が指摘している通り、iPhoneを出すことにより、iPodをニッチ製品に押しこめた。それ以前にSonyのウォークマン発表の直前にAppleが

「iPod miniは最も成功したiPodだ。だから今日それを置き換える」

と宣言したJobsがiPod nanoを取り出した時の衝撃を忘れることはできない。それを承知の上でか、気が付かないでか

国内の月間台数シェアは、現在ソニーが2011年3月から6カ月連続で1位を獲得していることを紹介。「最新のWalkmanのラインナップを推進力として、さらに販売台数を伸ばしながらシェアNo.1を堅持したい」と意欲を見せた。

via: 「Zシリーズは"Walkman"史上最高音質」 - 新イメージキャラクターの西野カナさんも登場 - Phile-web

デジタルオーディオプレーヤーでのシェア1位を誇らしげに語る姿には同情を禁じ得ない。

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組織に一体化する、とは組織が発狂していてもその論理を拒否できない、ということでもある。

昨日みたこの記事。

上司 君もこういう団体(上司が参加する経済産業省の外郭団体)に所属なり参加していたら、リストラにあわずにすんだのにね。

 男性 自慢話ですか? それに今、リストラと言いましたね。やっぱり退職強要じゃないですか。

 上司 いや、君は今の仕事を続けることは非常に厳しい。(急いで言葉を変えた)

 男性 私は辞めないし、今の職場に残って頑張ります。

 上司 意見は平行線だね。また面談する。

 男性 苦痛だから面談はやめてください。残ると言っています。

 上司 理解が得られていないようだ。

 男性 理解とはどういうことですか? (退職の)施策に応募することですか?

 上司 私がこれ以上、言えないことはわかるだろう?

via: 私はこうして退職を強要された/NECリストラ 面談一問一答メモ

言われるほうも地獄と思うが、まともな神経を持っている人なら言う方も地獄だと思う。これを何人にも対して行わなければならないのだ。しかもおそらくは管理職だから労組に泣きつくこともできないし。

NECみたいな一流企業に入社して、順当に出世しているとこういう役回りが回ってくる。本当にどこに何があるかわからない。


CEATEC2012に行ったよ

2012-10-09 07:00

というわけでCEATECにいってきた。一時に比べると、出展者数も、来場者数も随分減った。来年からは東京ビッグサイトでいいのではなかろうか。

特に驚いたのが、自転車、自動車関連のスペースが巨大になっていたこと。一角は「ここは東京モーターショーか」というくらい自動車だった。

さて、CEATECでおもしろいのは、運がよければ会社の担当者に近い人とお話ができることである。特に印象に残った会話を以下に。

Panasonicのスマート家電展示で、冷蔵庫にスマホを近づけると、節電の情報がわかります、というのを担当者が説明している。

Q:家電の寿命は長いと思うが、その間ずっとスマホアプリを維持する、ということか
A:7年の修理部品の保持が義務付けられているが、それに相当する期間アプリを維持する。

感想:すごいなあ。7年後にはAndroidはどうなってるんだろうね。それでもどんな形態であってもアプリを維持する、という判断はやはり大企業にしかできない。

Q:冷蔵庫の節電を可能にする、とのことだがそもそも冷蔵庫の消費電力に興味をもつ人はいるのか?
A:調査によるが、2−3割といったところ。こうやって説明していても、そもそも冷蔵庫の消費電力なんか気にしたことがない、という人は多い。

感想:エコは大義であっても、人間の欲望とリンクしていない。大義のために欲望を制限するのは日本人の得意技だが、原発反対と唱える人も冷房ががんがん使っているのだ。
この「大義と欲望のズレ」はこのあとも出てきます。

Q:おそらく社内で検討され、却下されたと思うのだが冷蔵庫内にカメラ取り付け、何がはいっているかスマホで見られるだけでもいいのではないか?
A:確かにそうした発想はあるし、私も欲しいと思う。しかしいつも鮮明な画像が撮影できるとは限らず、クレームに繋がる。またそれなら賞味期限も撮影できなくてはいけないのでは、とかいろいろ議論があり、結局実現できない。

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この会話からするに、私が「有名」と思う説明は本当にこの会社の人間の発言なのだろう。

「技術はある」。パナソニックの担当者はこう強い口調で話しながらも、商品化しない理由
について「100%の安全性を確保できない」と説明する。

例えば、掃除ロボットが仏壇にぶつかり、ろうそくが倒れ、火事になる▽階段から落下し、
下にいる人にあたる▽よちよち歩きの赤ちゃんの歩行を邪魔し転倒させる-などだという。

家庭で使う家電製品の第一条件は「安全性」だ。一方、日本の製造業は「リスクを極端に
嫌う」傾向が強いため、開発の技術力がありながら、獲得できる市場をみすみす逃している
ケースも指摘されている。

via: 株式・経済ちゃんねる 日本の家電各社が「ルンバ」を作れない理由→「仏壇にぶつかり、ろうそくが倒れると火事になる」

結局「100%の安全性」を確保するためには何もやらないのが一番。かくして誰も欲しいと思わない「節電情報を確認できるスマート家電」が製品化されるわけだ。

私が最初に勤めた「にほんのだいきぎょう」では何事においても、「現実より建前」が優先された。おそらくPanasonicも同じ病気にかかっているのだと思う。リスクを避け、会議で承認しやすい製品を作ろうと思ったら、アンケート結果を元に「大義」を優先させるべきだ。

問題は

それが消費者の考え方と全く合致しないところにある。私を含め消費者は欲望に基づき行動する。体重が増える、健康に悪いと思っていてもジャンクフードを口にする。二酸化炭素が温暖化と頭で知っていても、クーラーを使いまくる。

かくして

小のリスクを回避するあまり大のリスク(倒産)へと突き進んでいくのであった。

いや、日本の大企業がこういう思考をするところばかりとは限らない。KDDIの奇跡の復活には正直驚かされた。2010年に「auが各社に検討を依頼した事項」を聞いた時には「この会社はもうだめだ」と本気で思ったものだが、今やそんなことはどこふく風である。Android auと連呼したかと思えば、それをあっさりすててiPhoneを取り扱う。もちろん2010年に検討していた内容なんかはとっくの昔にゴミ箱行きだ。

となるとつまるところ、経営者の力量次第ということになるんだろうか。私はPanasonicの株持っているし、系列会社に勤めている親族もいるから頑張って欲しいのだけど。


プレゼンテーションにおけるMVCモデル

2012-10-05 07:01

というわけで、12月にWISSで発表することになった。もうどんどんネタバレしちゃうよー!(誰も読んでません)というか通勤途中に思いついたことを書いておく。

先日Gorotteを使っていて、こんな文章を発掘した。

地図が地図として役に立つのは、その情報の豊かさからではなくて、むしろ街に備わっている無限の情報が適度に抜け落ちているからである。「街の情報の全てを地図には盛り込まない」という知性がある。

via: Twitter / shingoemoto: 地図が地図として役に立つのは、その情報の豊かさからで ...

街に備わっている無限の情報を、取り込みモデルとして構築するのは偉大な仕事。しかしそれを人間に提示する際にはモデル構築と同じ程度の労力を必要とする。人間に必要な情報はどれか。それをどのように提示すればよいか。つまりViewを構築する必要があるのだ。膨大な情報の中から、人間に必要なエッセンスを抽出し、そして再構成する。これがViewの役割だ。

これは人間が使うシステムを作ろうとする場合に常に念頭に置かなければならない事柄だ。

「ModelとViewは分離する。両方とも同じくらい重要である」

あたりまえと思う?よくある間違いというのは「こんなにすごいModelを作ったんだから、全部ユーザに提示しなきゃ」というものである。その結果は、例えばSongriumのようになる。

一番最近目にしたものだから、例として挙げただけだが、こうした類の「ModelとVIewの混同」は無数に存在している。その結果ユーザにとって「何のことかわからん」システムが出来上がる。

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さて、話はプレゼンテーションである。昨日ARPEGGiO Channelなるもので、プレゼンを見ていた。ここしばらく、Windows SurfaceやiPhone5やGoogle Nexusのプレゼンを観た後だったので、これはまさしく異次元の体験だった。あたかも20年前にタイムスリップしたかのように感じた。「スライド」の一枚を以下に示す。

arpeggio.jpg

これが

「ModelとViewを混在させた」

スライドの典型的な例である。Ustreamの画面では何が書いてあるのかさっぱりわからないが、おそらく書いてある内容は正しいのであろう。それを手元に持ち、丹念に読めばARPEGGioなるシステムがどのような「Model」か理解できるのだと思う。日本を代表する一流企業の社員だからそこらへんは抜かりがないだろう。

しかしこれはViewではない。これを出されて何のことか理解できる人間はまず存在しないと思う。じゃあそもそもこのスライドは何のために存在しているのか、とModelとViewを区別する立場からは問いたいところだ。

世の中には「配布資料の読み上げ」の意味をもった「プレゼンテーション」なるものも存在する。私には未だにその存在意義が理解できないが存在するのは確かだ。多分この発表ではそれを指向したのではなかろうか。そうであればModelだけ存在しておりViewがないのは理解できる。

しかし私はそんなプレゼンテーションをやろうとは思わない。ModelとViewは分離すべきだし、そもそも別物だ。作った物を全部スライドに載せるような「聴衆不在型」のプレゼンは唾棄すべき存在だ。

ではプレゼンターは何か?Controllerである。MVCモデルは批判を浴び、かつ何度も代替案が提案されながらも数十年の歳月を生き抜いてきている。これは驚くべきことだ。そしてプレゼンテーションにおいてもMVCモデルを考えることを提案したい。

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という話しを朝歩いている途中に思いついたんだけどどうですかね。思いついたことをそのままブログに垂れ流すのはView不在ではないのか、と心の中から大きな声が聞こえるが無視する。


電気自動車はどこから普及するのか

2012-10-04 07:01

破壊的イノベーションはその定義により、そもそも市場がどこにあるのかわからない。だから顧客の声なんか聞いても無駄だし、調査も、理論的な裏付けもできない。あれこれやってみて何が響くか確かめるしか無いのだ。

先日NHKの朝のニュースで面白い話しをやっていた。寝ぼけ眼で聞いた話だから間違っているかもしれないが概略こんな話だった。

秋田の農家にとっては、ガソリンのほうが、電気より遠い存在であり不便。ガソリンスタンドまで20kmあり、収穫で忙しい時はいく時間がないという。それゆえ、家で充電できる電気自動車のほうがたよりになるのだそうな。

これには驚いた。例えば私が電気自動車を買おうとすれば、まず充電できないことで躓く。マンションの立体駐車場にそんな設備ないもんね。次に遠出の時に充電できるかどうかが気になる。

だから結局「電気自動車だめだね」ということになるわけだ。しかし秋田の農家にとっては話は全く逆だ。自動車は家の軒先に駐車できる。そして確かに往復40km走ろうと思えば小一時間は浪費してしまう。

電気自動車普及の鍵は案外こんなところにあるのかもしれん。こういうのがあるから、破壊的イノベーション普及の話は面白いなあ。

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もう一つ。これは破壊的イノベーションではないが、不幸にしてこの学校に負けた高校にとっては「破壊的イノベーション」とも見えるだろう。

そんな開成高校野球部の戦略は以下のようなものだ。

まず、1番から6番まで、できる限り強い打球を打てる選手を並べていく。もっとも強い打者は2番。そして、ひたすら強振する。一番チャンスがあるのは8番、9番からはじめるイニングで、彼らがうまいことヒットやフォアボールで出塁した場合だ。下位打線を抑えられなかったことで動揺する相手ピッチャーに1番が強振して長打、そして最強の2番打者が打つ。弱いチームに打たれたことにショックを受けている相手を逃さず、後続がとにかく振り抜いて連打を食らわせして大量点を取るイニングを作り、そのままドサクサに紛れて勝つ、のだそうだ。

超進学校の勝てるセオリーは「ドサクサ」なのである。そして、実際そうやって勝ち上がってきたことは、冒頭の戦績で見た通りだ。

via: 『弱くても勝てます』 超進学校の「異常な」セオリー - HONZ

試合中、「野球をしようとするな!」という青木監督からの罵声が飛ぶ。「ピッチャーをしようとするな!」とピッチャーに指示を出し、ヒットを打っても「なんだそのスイングは!」と激怒。思いきりのよい空振りには「ナイス空振り!」と褒め、「ドサクサ! ドサクサ!」と連呼する。勝ったある試合の後には「これじゃまるで強いチームじゃないか」と怒りまくる。極めつけは「大体、打つのは球じゃない、物体なんだよ」とのお言葉。ほとんど禅問答である。

via: 『弱くても勝てます』 超進学校の「異常な」セオリー - HONZ

いや楽しい。アマチュアなんだからこれでいいじゃないか。最近は野球というものをさっぱりみないが、インターネットの発達のおかげで、例えば青森代表のチームがほとんど県外出身者で占められていることは知っている。

そうやって試合に勝ち、学校の名前を挙げるのもまあ一つの道だろうが、「俺が俺が」でドサクサに紛れて勝つやり方でもいいじゃないか。どうせプロになって食っていける人間なんて一握りなんだから、それぞれのやり方で楽しくやればいい、と思うのだが。


何を大切にするのか

2012-10-03 07:15

今となっては遠い昔のことだが、AppleはQuadraとかCentrisとかよく違いのわからないMacのシリーズを出していた。Quadraは68040を使い、Centrisはそこから数値演算プロセッサを除いたCPUを使っていた、、とか誰がそんなものわかるんだ。

しかし当時のMac雑誌(そんなものがあったのだ)にはCentris担当者が誇らしげにインタビューに答えていた姿が掲載されていた。この「無駄に増えた製品ライン」というのは社内的にはとても便利なものなのだろう。ポスト増えるしね。

というわけで外から見てはわからない「大人の事情」で奇妙な発表がされることがある。まず親愛なるフジテレビのこれ。

フジテレビは1日、コンピューターグラフィックス(CG)キャラの杏梨(あんり)ルネさんを「デジタルアナウンサー」として採用したと発表。東京・六本木のライブハウス「ニコファーレ」で杏梨さんの"入社式"を行った。

via: 痛いニュース(ノ∀`) : フジテレビの女子アナに採用されたCGキャラ「杏梨ルネ」さんがひどすぎると話題に - ライブドアブログ

もうどこから突っ込んでいいのかわからないようなキャラクターだが、こうしたキャラクターを出してしまう、というフジテレビの内部にはとても興味がある。何をどうしたらこういうことが「会社」として行われるのだろう。無視できないコネを持った駄目なオタク社員が暴れだした、とかそういう物語でもあるのだろうか。

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そして次は親愛なるマクドナルド。

【本日から】レジの所のメニュー表がなくなります.入口においてあるメニュー表や,レジ上部にあるメニューをご覧になり,ご注文をお決めになってから,カウンターにお進み頂ければと思います.最初は戸惑う事もあるとは思いますが,どうぞご協力よろしくお願い致します

via: Twitter / McDonalds_infor: 【本日から】レジの所のメニュー表がなくなります.入口 ...

これも多分とても頭の良い人が、「ビッグデータの解析(笑)」なんかして思いついたのではなかろうか。理由はよくわからないが、レジのメニュー表をなくすと売上があがるという結論を導き出したのだろう。

この判断を非難することは簡単だが、おそらくはマクドナルドにも立派な言い分がある。営利企業が利益の最大化を追求して何が悪い。そもそも100円のコーヒーで数時間も粘るような奴は客ではない、とかなんとかね。

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世の中には、サービスを提供する側と利用する側に対称性が成り立つ場合と成り立たない場合がある。Apple社のエグゼクティブはおそらく全員iPhoneを使っていると思う。彼らは自分たちが持ちたい、持って恥ずかしくない製品を作ることを考えていると思う。

逆の例がパチンコ、ソーシャルゲーム(笑)の類だ。口には出していないが、彼らはこの信条を持っているに違いない。

「世の中には2種類の人間がいる。取る奴と取られる奴と」

対称性が崩れた世界では、「自分が持っていて恥ずかしくない」などと考える必要はない。未だに「DeNAに勤務してます」とか「グリーに勤めています」と堂々と言える人の神経が信じられないが、彼らにとってはそれは当然のことなのだ。

さて、マクドナルドだが、おそらく彼らは「対称性」を持たない世界に生きようとしているのだと思う。自分がユーザの立場ならばレジのメニュー表がないと困る。しかし儲ける立場からすればそれを無くしたい、と。

「ユーザの立場で物を見る」

とかは猫でもいいそうなセリフだが、それが本当かテストされるのはこうした判断をする時だと思う。

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サービスを受ける顧客よりも、利益、あるいは組織内融和を大切にする時、杏梨ルネが登場し、メニューが消える。私はこうした行為を一概に非難することはできない。そもそも対称性がなりたたないサービスのほうが世の中には多いと思うからだ。それに貧乏だから、時間を潰すときにはマクドナルドにいくしかないしね。注文の時に

「あれ?メニュー表なくなったんですか?どうしてですか?」

とでも聞いてみよう。


KATAの発生と衰退

2012-10-02 06:51

さて、何度か「日本人はKATAが大好き」ということを書いている。前に引用したかもしれないが、オンラインゲームでも日本人はすぐに「KATA」を創りだすのだそうな。

ネットゲームをやってて本当に国民性が現れるな、と思うのは、日本人は「暗黙のルール」をすぐに完成して、それを共有してない人を「晒しスレ」で影からたたくのが頻繁にあること。

via: ネットゲームでも日本人独特の暗黙のルールが作られる - Togetter

おもしろいのはこのKATAは結構あっさり捨てられたりすることだ。私の姉の結婚式では「仲人」をたてるのは当たり前だった。ところが昨今はほとんどそんなことをしないのだそうな。

先日プロ野球の巨人が優勝した。誰か知ってる?日本テレビはその試合を「試合終了まで」放映したとのこと。(昔はそういうことがよくあったなあ)でもってその視聴率だが

日テレが巨人の優勝決定戦となる9/21の試合を急遽放送、こちらは11.2%でした。

via: 9月の巨人戦視聴率|プロ野球の視聴率を語るblog

この数字を、10年前の数字と比べてみよう。

巨人の優勝決定戦がナイターで地上波中継されたのは2002年以来で、その時の視聴率は29.1%でした。

via: 9月の巨人戦視聴率|プロ野球の視聴率を語るblog

10年前は、なんと3割の人が巨人優勝の瞬間を見ていたのだ。これは今から考えると驚く他無い。引用したサイトを見てもらえばわかるが、当時は優勝が決まった後の消化試合でさえ12%を超える視聴率を持っていたのだ。

ちなみにさらに8年前、1994年の中日×巨人の優勝決定戦の視聴率は48.8%である。これってあれかな。名古屋駅に街頭TVが出現し、俺が合コンやっていた時のことかな。

つまり

日本人にとって「プロ野球」というKATAはこの15年余りで急速に衰退したことになる。今や幼稚園卒園式で「将来なりたいもの」について語らせれば、3:1でサッカー選手が優勢だ。子供のころは

「なんで名古屋では巨人の帽子売ってないの?」

と泣いた私でさえ、最近の選手はだれも知らん。顔と名前が一致するのは巨人の阿部、高橋、それに楽天の田中くらいだ。ダルビッシュはアメリカいっちゃったし。

「それは危機のように見えるかもしれないが、幻想の終わりにすぎない」というのはGMワインバーグの名言である。そしてプロ野球の終焉という「危機」に瀕した人は、幻想を維持しようと楽しいコメントを発してくれる。

21日に日テレ系で午後7時から生中継された巨人・ヤクルト戦(東京D)の平均視聴率は、ビデオリサーチ調べで11・2%だった。 

21日の試合は、時間帯によって地上波かBS日テレ、どちらかで放送する「トップ&リレー中継」を行わず、両チャンネルで終始重複して放送されたため「(11・2%は)実際には15%以上の価値がある。より多くの人に見ていただけたのでは」と日テレ関係者は話している。

via: 9月の巨人戦視聴率|プロ野球の視聴率を語るblog

いろいろあったが、WBCというオープン戦もどきに今回も参加するそうだ。利権を持っている人は全力で「盛り上げよう」とするだろう。その中でまたこのような「傑作」が生まれることを期待したい。

ちなみに最近は「葬式」とか「戒名」というKATAも失われつつあるそうだ。誠に結構。

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さて、親愛なる米国だが、この国は進歩するところと妙にKATAにこだわるところがあるのが興味深い。未だにインチだマイルだポンドだなどと言っているのは世界中でこの国だけではなかろうか。いや、これはKATAではなく、別のメンタリティなのかもしれんが、それについて語れるほど私は彼の国の文化にくわしくないのであった。


Apple原理主義者を続けるということ

2012-10-01 07:31

というわけで、AppleのCEO Tim Cookがこのような声明を出した。

お客様へ

Appleは、お客様に最高の体験をお届けする、世界で最高レベルの製品を作ることに取り組み続けています。しかし、先週提供を開始した新しいマップは、自分たちに課したその基準に達することができませんでした。お客様にご迷惑をおかけてしていることに対し、心よりお詫び申し上げます。現在私たちは、マップをより良いものにするために最善を尽くしています。

via: アップル - マップについてのTim Cookからのメッセージ

これを読み、私は感慨に耽る。このCookの声明がどのような意味を持っているかは、この言葉と比べてみれば解る。

一方で、冬モデルで頻発した不具合については、同社執行役員の髙田克美氏が「ウェブ上でいろいろご指摘いただいている声は聞いている。ソフトウェアに起因する不具合などがあったのは事実。今回の夏モデルについては、開発プロセスの中での品質基準を高めた」と語った。

引用元:ASCII.jp:色々あった冬モデルとは違う? 富士通が夏スマホ発表会

これは、富士通のARROWSが以下のようなすごい不具合満載だったことを踏まえての発言である。

富士通が満を持して発売したハイスペックAndroidスマートフォン・ARROWS Zは数多くの伝説を残しました。そろそろARROWSの2012年夏モデルが発表されそうなので、その前に第1世代ARROWSが残した伝説を振り返り、その偉大さを胸に刻みましょう!

※ARROWS Zを使用されている方には不快に感じられる描写を含んでいる可能性があります。ご了承ください。

引用元:史上最凶の迷作?ARROWS Zが作り上げた伝説のまとめ - Gadget People跡地:ガジェットアクセサリーのまとめサイト

仮に上記記事に書かれている言葉が正しかったとしてだが

ソフトウェアに起因する不具合などがあったのは事実

という言葉は非常に興味深い。おそらく富士通の人間は未だに「ソフトウェアはハードウェアの付け足し」と思ってるんだろうな。

この富士通役員の言葉とCookの言葉を比べる時、「そもそも目指す所」に大きな差があることに気がつく。いや、一時はAppleも今の富士通のような製品を平気でリリースしていたのだけどね。

こういうのは、スタイルの問題でありあーだこーだと言って解決するものでもない。富士通原理主義者(そんな人がいるかどうかは別として)であるよりは、Apple原理主義者であってよかったなあ、と思う。

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新しいiPhoneのデザインで、スピーカーの穴はなんだか良くないなと思っていた。

しかし先日実物を見てその考えを変えた。これはかっこいい。

というわけで、iPhone5のハードの美しさは疑いようがない。MapがそのQualityに比べ劣っていることは確かだ。一部の隙もないファッションに身を固めた人が、穴の空いた靴下を履いているような状況である。一番恥ずかしいと思っているのは本人だろう。だから治すだろう。どんな手段を使うかは知らないが、とぼんやり想像する。

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さて、それはそれとして今回のMapが出来の悪い製品であることには違いない。そしてそれに一番の責任を持っているのは、Forstallである。見方によってはSiriに続く「ストライク2」であると言うこともできる。

"Siri has been an embarrassment for Apple," writes Business Insider's Jay Yarow in a piece titled The Apple Maps Disaster Is Really Bad News For Apple's 'CEO-In-Waiting'. "This is his second consecutive high-profile screw up with iOS software."

via: Does Apple have a Scott Forstall problem? - Apple 2.0 - Fortune Tech

私が先ほど挙げた「穴の空いた靴下」の比喩は、Appleが一つにまとまっていないと適用されない。ハードウェア担当、ソフトウェア担当などといがみ合い出しては、「ソフトウェアに問題があったようだ」の富士通になってしまう。

Forstall has such a fraught relationship with other members of the executive team -- including Jony Ive and Bob Mansfield -- that they avoid meetings with him unless Tim Cook is present.

via: Does Apple have a Scott Forstall problem? - Apple 2.0 - Fortune Tech

他の役員は、Tim Cook立ち会いの元でなければForstallとミーティングしない、というほど亀裂が生じている、、、という説もあるそうな。Cookはこの事態をどう修正するのだろうね。