遅すぎた結末

2013-07-31 06:33

今朝こんなニュースを観た。

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大手電機メーカーのNECは、赤字が続いている携帯電話事業のうち、海外勢に押されシェアが低迷しているスマートフォンの開発・生産から撤退する方針を固めました。

via: NEC赤字のスマホ事業撤退へ NHKニュース

こう高らかに宣言してからわずか5ヶ月後のことである。

「スマートフォンのモノ作りにかける思いは、SMARTPHONE IS MEDIAS──、これぞスマートフォンと呼ばれるものにしたい。迷ったときはこのメッセージに立ち返り、道しるべとして価値を提供していく」

via: "スマホ=MEDIAS"目指す--NECカシオが2013年春スマホにかける意気込み - CNET Japan

この期間を短いという人もいるかもしれない。逆にそもそも彼らはこの1年何をしていたのだろう、と問うほうが正解なのだと思う。未だ撤退を表明していないパナソニック、シャープ、富士通は何をしているのだろうか?NTTは明白に「お前らはいらんよ」と言っているのに。もちろん

「いや、NTTなんかには頼らない!」

と決意を固めたというのならいいことだが、それだけの覚悟と実行力があるとも思えない。

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いろいろな要因を挙げる人はいるだろう。私はヒラのエンジニアなので、

「日本と他の国の間に存在するソフトウェア開発能力の絶望的な差異」

について指摘しておきたい。ネット関連には「早い技術」と「深い技術」があり、日本のベンチャーは速い技術ばっかりだ、と喝破したのは梅田氏であった。

そういう「深い技術」と「早い技術」がネットの世界にあって、この「深い技術」を極めようという気が、今の日本のネット産業の中に全くないのだろうなということですよね。

via: ネット企業は技術志向の経営を--梅田望夫氏が語るウェブの進化 - (page 3) - CNET Japan

日本にもRubyがあるじゃないかと言われれば確かにそうだ。しかしそれだけだ。結局のとこ、携帯電話メーカーもソフトウェアは「早い技術」としか考えていなかったのではなかろうか。とにかく◯モデルに間に合わせろ、文句を言わず、一週間後のDocomo プレゼンがターゲットだ。そんなことをいくら繰り返しても、深くはならない。

iPhoneが全てをふっ飛ばし、Androidが生まれたところで世界のメーカーは横一線にならんだ。全ては焼け野原でそこから0から再建するスタート。そしてほとんどの日本メーカーはそのレースに完敗した。ガラケーで歯が立たなかった海外市場に再チャレンジするチャンスを与えられたというのに。

これまではSymbianという、よく理解したプラットフォームで、チップセットも自社製で品質は安定していた。しかしスマートフォンではAndroidというオープンプラットフォームで、クアルコムやテキサスインスツルメンツのチップセットを用いて、恥ずかしながら、品質面で課題が残っていた。

via: 富士通の夏モデル発表会、「日本のノウハウをスマホに」 - ケータイ Watch

こんなことを堂々と発言できるようではなんともならない。

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特にシャープは何を考えているんだろうね?というか何も考えていないのだろうが、それが許される状況とも思えないのだが。


2+2=5

2013-07-30 06:27

先日見つけた記事。

楽観主義が荒れ狂っていた。あらゆる新たな統計数値の成功は、それが達成されることで、別に強圧的政策を正当化した。あらゆる挫折は、同じ政策の別な刺激となった。「5カ年計画を4年で」というスローガンは、さらに進んで、国家全土に魔法のシンボル「5-in-4」や「2+2=5」が貼り出され、喚き散らされた。

via: 2+2=5: 忘却からの帰還

この記事を書いた人が知っているかどうか知らないが、某三菱自動車が

機能は 1+1=3
重量、コストは 1+1=1

という標語を本当に下請けにばらまいていたことは知っている。

かくして、旧ソビエト連邦で実績ある「不条理の象徴 2+2=5」は、文学として未来へと語られることとなった。

しかし、「不条理の象徴 2+2=5」を知らぬ者たちは言う。「1+1は3にも4にもなる」と。こういうのを人間力と言うのかな?

via: 2+2=5: 忘却からの帰還

やっかいなのは、この「計算」が当てはまる分野とそうでない分野があることだ。例えばソフトウェア開発だと

1>1000

ということが本当に起こりうる。そしてこの左辺の「1」にいる人は、この不等式が他の分野でも成り立つものだと勘違いする。

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こういう数字があるらしい。

クリーンエネルギーの割合は、約20年前から世界の発電のうちの約13%で止まっている。実際、グリーンエネルギーが増え続けているのは事実である。しかし、化石燃料による発電も同様に増加していて、旧エネルギーと新エネルギーの比率は変わっていない。

via: 20年間、グリーンエネルギーの比率は実は増えていない « WIRED.jp

でもってこれに対する反論。

「中国は、いまや最も再生可能エネルギーに投資をしている国です。インドは風力に大規模な投資を行っています。ブラジルやほかの経済成長の急速な国々も同様です。まだ数字には出ていませんが、このことは、旧エネルギーと新エネルギーの関係がすでに変化していることを明らかにしています」。

via: 20年間、グリーンエネルギーの比率は実は増えていない « WIRED.jp

このロレンツォーニ氏の言葉を読んでいると、中核派とか革マルとか左翼の残党が「我々の闘争は拡大を続けている」とかなんとか書いている文章を思い出す。数字には現れない傾向を読み取ることが大事だ!問題はそうした「傾向」は他人と共有できない、ということだ。

でもってイタリアでは、多分送電でいろいろな問題が起こっているのだと思う。

「2013年5月から6月に、再生可能エネルギーは、イタリアで生み出された電力の50%以上となりました」と、ロレンツォーニは説明する。「歴史的な達成です。電力網の管理にはまだ問題があります。しかし、非常に大きな変化です」。

主な障害は、発電の中断に関するものだ。従来の発電網は、再生可能エネルギーによる発電量が低下したらバランスを取らねばならず、それは簡単なことではない。「電力網の調整能力をコントロールすることは、今後数年の発電における課題です」。

via: 20年間、グリーンエネルギーの比率は実は増えていない « WIRED.jp

日本で自然エネルギーが語られるとき、ここでロレンツォーニ氏ですら認めざるをえない問題が語られることは滅多にない。「数字に表れない傾向を読め!」といったところで電力網の安定には何の役にも立たない。


戦艦大和の最後

2013-07-29 06:46

先日本棚にあった本をぱらぱらとめくってみた。

進歩のないものは決して勝たない。負けて目覚めることが最上の途だ。日本は進歩を軽蔑してきた。わたくし的な潔癖や徳義にこだはって、真の進歩を忘れていた。敗れて目ざめる。それ以外にどうして日本が救はれるか。いま目覚めずしていつ救はれるか。俺たちはその先鋒になるのだ。新生にさきがけて散るのだ」 彼、白淵大尉の持論である。

戦艦大和の最後 p31

進歩が唯一の方法ではない。しかし進歩が激しく、ゲームのルールがどんどん変わっていくような業種では、進歩しなければ死が待っているだけである。

日本の携帯電話事業は、まさにそうした死の瀬戸際にある(正確に言えば、とっくの昔に死んでいた企業がようやくその現実に直面している)

携帯電話を作っていた大企業がいかに誇りと自信に満ちていたかは私はよく知っている。しかし彼らの自信は、自らを変えていくことによるものではなく

「わたくし的な潔癖や徳義にこだはる」

ことによって生まれていたものだった。

ルールが何故決められているのか。それにはどんな意味があり、どこでそれを順守し、どこでそれを無視すべきか。そうしたことを忘れ、「潔癖や徳義」の名の下、会社のルール遵守を強制する。それによって生まれる「美しい書類の山」と「ゴミのような製品」を私たちは何度も目の当たりにしたはずだ。

平和な今であれば、「iPhoneキラー」「iPhoneは売れていない!5年後はiPhoneだってどうなっているかわからない!」という大本営発表を繰り返せばいいと思う。しかし戦争中自分たちが到底及ばない兵器に、仲間や家族たちが殺されていく現実に直面していた人はどう考えただろうか。

白淵大尉の言葉は、現在衰退しつつある日本の大企業に等しく当てはまる。「勝利」が続くと、こうした自己欺瞞に陥るのはどうも日本の伝統芸のようだ。

もちろんこうした傾向がすべて悪いとは思わない。うまくいく部分もあるのだ。地道にひたすら努力を重ねなくてはならない部分では依然として日本企業の強さが発揮されることもあるだろう。

そして徹底的に負けたあと、そこから立ち上がるのも日本の伝統芸としていいのではなかろうか。私が生きている間にそうした姿が見られるといいのだが。


我々の愛したPixarは死んだ。何故だ!

2013-07-26 06:27

ここ数年のピクサーの作品を並べてみよう。

2010年からの4年間で、3作品がかつて作られた作品の続編だ。トイ・ストーリー3はすばらしい出来だったが、カーズ2とメリダは作品として成立していなかった。

カーズ2にいたっては、作品のキーとなる「油もれ」が映像にでていない、というおそまつさ。

それまではピクサーのためにあるのかと思われた長編アニメーション賞からも遠ざかり、暗雲が垂れこめている、、というのは何度か書いた。

先日モンスターズ・ユニバーシティを観た。そして悟ったのだ。ピクサーは死んだ、と。

内容は古典的とも言える

「落ちこぼれグループが、あれこれ活躍して嫌味なエリートグループの鼻をあかす」

物語。しかしそこには何もない。ただ話しをなぞっているだけ。挫折感、爽快感を観客が感じることはない。

これで、3ストライク。バッターアウト。子供を笑わせ、大人をうならせたあのピクサーは何処へ行ってしまったのか?

今後の公開スケジュールを見よう。

2015年に2作品が公開されることになっているが、私の予想ではインサイド・アウトはキャンセルされると思う。

Computer Graphicsの技術が年々向上していることは、私のような素人にもわかる。しかし肝心なお話を作り上げる力はどこかに消えてしまった。

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これも何度か書いたことだが、今ピクサーに一番期待しているのはいつの日か書かれるであろう

"Rise and Fall of Pixar"

である。私は知りたいのだ。SonyやPixarなどあれほど輝いていた企業が何故ここまで没落するのかを。


セットトップボックスとか10 feet UIの運命

2013-07-25 06:34

最近私が見るCMは電車の中及び駅のコンコースに設置されているモニタに映し出されるものである。そこでTSUTAYA stickなるものがあることを知った。

最大の特徴は、本体にリモコンが付属せず、ソフトバンクモバイル製のスマートフォン(iPhone/iPad、Android 2.3以上の対応機種)向けに提供される、専用のリモコンアプリをWi-Fiでスティック端末と連携させることで、リモコンとして動作する仕組みにある。

via: ソフトバンクモバイルとTSUTAYAの相思相愛で実現――「SoftBank SmartTV」の狙い (1/2) - ITmedia LifeStyle

TVに接続するセットトップボックスとか、リモコンとかは、こういう形に収斂するのだと思う。TV側のHDMI端子にスティックだけ接続し、操作は全てスマートフォン、tabletで行う。

要するにこれだけしか要らないのだ。10 feet UIなんてものは過去のバズワードとして葬り去られるべきものだ。巨大な箱もいらんよ。

でもってGoogleが似たような物を発表したのには驚いた。

しかし Chromecast では、スマートフォンなどの端末から Chromecast に無線でコンテンツをストリーミングするのではなく、Chromecast がクラウドからコンテンツを受信して再生する仕組みです。

via: Google、テレビのHDMI端子に挿すChromecast を発表。価格は35ドル - Engadget Japanese

こちらはコンテンツを持っているところと特に組んでいないので、

逆にいえば、プライベートかパブリックかを問わず、何らかの形でクラウドにあるコンテンツしか「Cast」することができません

via: Google、テレビのHDMI端子に挿すChromecast を発表。価格は35ドル - Engadget Japanese

という仕組み。不幸な結果に終わったGoogle TVなども、なかったことにしてこれに進んで行くんだろうな。

かつてSTBで食いつないでいた会社に勤務した経験がある身としてはいろいろ複雑な思いもあるのだが、ユーザとして見ればこれが正しいのだと思う。もちろん、人が全てスマートフォンを持っているわけではないので、従来型のリモコンとかも残るのだろうが、作る方にとっても使う方にとってもこの構成が一番happyだ。

1つだけ難を述べるとすれば、無線だけに頼るのが正しいのか?というところ。TSUTAYA stickのサイトに行くと推奨回線速度なんて書いてあるけど、エンジニアとしてはそう書きたい気持ちはわかるけど、普通のユーザにとっては「そう書かれてもどうすればいいのか」というところだよね。

しかしGoogleのこのデザインのダサさはなんとかならんものか。



leap motionへの熱狂とデバイス原理主義

2013-07-24 06:31

最近Microsoftの蹉跌に関する記事が目に付く。

iPhoneとAndroidの驚異的な成功を見て、 当時のMicrosoftの誰かが「近くすべてのデバイスはタッチ化する。時代に遅れないためにはわれわれも全力でタッチ化を進めることが必要だ」と主張したのだろう。ともあれMicrosoftはその方向に突進した。

via: 「タッチ第一」に賭けたMicrosoftの誤算 | TechCrunch Japan

結果が出た後ならなんとでも言える。ではどうすればよかったのだろうか?私にはこれが未だに分からない。Modern styleのアプリを増やせば、Windows Phoneの世界もHappy.ただのtabletじゃなくて、PCにもなります!この言葉の持つ説得力を否定できた人間がいるだろうか?

ちなみに、ここでMicrosoftがタッチ第一に失敗したことについてはより深い意味合いを感じることも可能である。例えば最近こうした商品が出荷されたらしい。

コンピューターへの入力装置と言えばマウスやキーボードが一般的ですが、新たなスタイルのデバイスとして注目を集めているのが「Leap Motion」です。Leap Motionは、ユーザーの手と指の動きを感知することでコンピューターを直感的に操作することが可能なデバイスです。

via: 手と指の動きを感知して奥行きまで含めた立体的な操作ができる「Leap Motion」は一体何がすごいのかまとめ - GIGAZINE

新しいことを試す研究者がこれに着目するのはわかる。しかし私は主張したい。確かにデバイスは素晴らしい。しかし大切なのはアプリケーションなのだ。そして残念なことにleap motionのサイトに掲載されているデモビデオをみても「素直にタッチすれば?」としか思えない。

画面にタッチしようとしないユーザは、手をひらひらさせることで何をしようとするのか?この問に答えが出ない限り、この製品は「インタション系の研究発表会でみかけるだけ」のデバイスに終わる。

しかしなんだね。こうやってkinectとかleap motionとか発表されると

「徹夜してジェスチャ認識を作りました!」

という「デバイス原理主義」研究が淘汰されるのでいいかもしれん。

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いや、こうした精度を持つ製品を実際に出荷したことにまず驚嘆しよう。対するに我が国のベンチャーはこんな状況だ。

おっと清水をdisるのはそこまでだ。enchantMOONは清水信者のための神具。神棚に祀って1日3回拝むのが正しい使い方。実用にしようなどとは頭オカシイんじゃないの? ありがたく清水にお布施して奉っておけ。ありがたや~ / "e..."

via: Twitter / xev_ra: おっと清水をdisるのはそこまでだ。enchantMOONは ...

何度か引用した文章だが、ただひたすら気持ち悪い、としか言い様がない。

日本スタートアップ環境は極めて特殊である

そもそもスタートアップと言って良いのかさえ分からない。

それはこう言い表せる。


"変質的なまでの人物志向、つーかプロダクトなんてクソ食らえ!!"


日本スタートアップ環境は、企業の評価を人物のみで行う。その人が有名であるか否かでだ。

via: 最近の起業家は気持ち悪い、そしてそもそも起業家ではない。

影響力を持っているプラットフォームベンダー

2013-07-23 06:40

を3つ上げろといわれれば、Apple,GoogleそしてMicrosoftを挙げる人が多かろう。(ちなみにアルファベット順ね)

それぞれの会社は、ソフトウェアからスタートし、(Appleは少し違うが)ハード+ソフトのプラットフォームに進出している。

But it's also interesting that in each case, the companies felt that getting new blood to work on their dominant platform was important. The platform battle is shifting so rapidly, complacency and old thinking simply won't work anymore.

via: Microsoft was wrong: Tablets are not PCs. So now what? | CITEworld

この記事に指摘されている通り、最近3社ともマネージメントの変更を行った。かつてiOSを率いたフォーストール、Windows8を率いたシノフスキー粒子、それにAndroidの生みの親であるアンディ・ルービンがいずれもその立場から追われ、PCとモバイルのプラットフォームが一人の管轄下におかれた。

これは偶然かもしれないし、そうではないかもしれない。いずれにせよここで書かれていることは事実で、プラットフォームの戦争は熾烈でかつ常に変化していく。One commanderの元におかなければならない、ということなのだろう。

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こうした状況を見て年寄りとしては、ここに日本メーカーの名前が上がらないことに少しため息をつきたくなる。

同じころ、NTT Docomoはこんなプレゼンをしていたらしい。

NTTドコモが7月19日、顧客対応力強化に向けた取り組みについての説明会を開催。同社販売部長の鳥塚滋人氏が、事業運営方針やユーザー接点に求められる改革を説明した。

via: スマホ時代に"顧客対応力"を強化するには?――ドコモ販売部長の鳥塚氏が説明 (1/2) - ITmedia Mobile

引用先をみてもらうとわかるが、並んでいるのは笑っちゃうような「古典的スライド」ばかり。

もちろん変化の激しい時代といっても、変わらないもののほうが圧倒的に多いわけで、古典的スライドがいけないと言うわけではない。

いかん、書いていて気が滅入ってきたので今日はこのへんにいたします。


今日はぼんやりと

2013-07-22 06:42

こういうブログを書くようになったからか、原因と結果がはっきりしないのだが、ここ数年いろいろな家電とかに関する記事を読むようになった。

するとあきらかに「?」がつく記事が存在していることがわかる。そしてそうした記事が書かれ、そして掲載される理由についていろいろ妄想を働かせたりするわけだ。先日とても興味深い記事を見つけた。

ツートップ戦略も、スマートフォンの知識が乏しく、選ぶのが難しいフィーチャーフォンユーザーに対して、分かりやすい選択肢を与えて乗り換えを後押しするのが主な狙いだ。どちらかというと"攻め"よりも"守り"の意図が強いものなのである。

 実際、Xperia AやGALAXY S4の販売台数推移が非常に好調な状況を見る限り、この戦略には一定の成果があったと評価できる。

via: それでも純減したNTTドコモの「ツートップ戦略」は失敗だったのか? (日経トレンディネット) - Yahoo!ニュース

2年前にAndroidスマートフォンを購入したユーザーは、2年縛りにより、長い間端末への不満を抱えていた。そうしたユーザーが、使い勝手が改善された現在のAndroidスマートフォンを知らないまま、当時から使い勝手が安定しており、しかも料金的メリットが大きくなったiPhoneに乗り換えることで、NTTドコモの流出が続いている。これが、MNP流出が続く大きな要因の1つになっているのではないだろうか。

via: それでも純減したNTTドコモの「ツートップ戦略」は失敗だったのか? (日経トレンディネット) - Yahoo!ニュース

この記事の興味深い点はいくつかある。まず第一に全く数字的データを挙げずに、「憶測」をつなぎあわせて一本の記事にしている点。そしてその内容が「Docomoの今の方針は間違っていない!もちろん改善すべき点はあるが」で一貫していることである。

ツートップ戦略は守りの戦略だった。守りとは、Docomoのガラケーユーザをスマートフォンに移行させること。ツートップが売れたんだから、その目的は成功した、ってこうやって要約していて何のことかさっぱりわからない。

もちろんこれくらいわけのわからない事を並べるユーザは会社にうようよしている。そうした人間が単独で記事を書いたとも思えるが、気楽な部外者としては「DocomoのiPhone反対派がかかせた記事ではないか」と考えたくもなるわけだ。つまり

「Docomoがやるべきは、iPhoneの販売ではなく、今まで"ゴミ"を使わせていたユーザに対する値引きだ!」

というわけ。ああ、傍からみているには面白いなあ。

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というわけで、このように現実から遊離したふわふわした意見を聞いたあとで、こういう記事を読むのも楽しい。

ソーシャルゲーム業界界隈では「ブラウザかネイティブか」という議論が頻繁に起こる。以前は「う~ん」という感じだったが、今は「ネイティブ」だと実感している。

理由は単純で、「自分がプライベートでネイティブのゲームしか遊んでいないから」だ。GREEのワンピースとか、ブラウザで本当に頑張って作っていると感じている。でも、「頑張って作っている」にすぎなくて、ネイティブには勝てない。

ちょっとでも反応が遅いと嫌だし、もっと言うと、ブラウザのバーが出るだけで今は少し嫌になってしまう。

via: ブラウザでゲームプラットフォームは正直キツいし、ネイティブのギャンブル要素高めの市場も正直キツい | サイプロ ~とあるサイトプロデューサーのブログ~

「ブラウザかネイティブか」論争は得てして宗教論争に陥る事が多い。特にブラウザ派にそうした態度が多いようだ。

今の勢いでHTML5が進化・浸透してくれるのであれば、わざわざ移植コストをかけてAndroidやWindows Mobile向けにネーティブ・アプリを開発するよりは、少なくともUIの部分をすべてHTML+Javascriptにまかせたアーキテクチャでのインタラクティブなアプリの開発というのも十分に可能性があるように思えてきたのだ。

 この「HTML+Javascriptですべて出来るじゃん」という発想は、そもそもマイクロソフト時代のInternet Explorer 4.0やNetDocs(90年代の終わりに開発していたマイクロソフト版Google Docs)のころから持ち合わせて来たもの。

via: Life is beautiful: GoogleのAndroid向けのアプリビジネスはなぜ魅力的ではないか?

過去にスーパーエンジニアだった人がこう述べたのがもう4年前。それからこの論争はずっと続いているが1つだけ確かになったことがある。

HTML5は常に未来に存在している、ということだ。先に挙げた人が、ネイティブの勝ちだと断言している理由は「自分が遊んでいるゲームが全部ネイティブだから」というものだ。マーケティングデータ至上主義の人にはこうしたロジックは受け入れられないと思うが、「ユーザとしてみたとき勝者は明らかでしょ」という理屈はとってもいいと思うんだよね。ここに「べき論」がまざると話はややこしくなるが。

というわけで今日はぼんやりしたままおしまい。


標語を作ろう

2013-07-19 06:36

私が今働いている会社では年に一回「テスト」がある。会社のビジョン、社是、それにガイドラインを「何番目のガイドラインをかけ」と指定された時、正確にかけるかどうか、がかなりの比重を占める。

一年目に受けたときは、句読点の位置が違っていると0点になるのに驚いた。さすがに批難が多かったのか最近は句読点の位置まで問わなくなったが。(ビジョンは別だよ)

その中にこんなのがある

人生・仕事の成果=考え方×熱意×才能
これを「じんせい ぽつ しごとのせいか いこーる かんがえかた ばつ」と覚えるわけだ。

テストが終わりホッとした頭で考えた。自分のサイトを創りだしたときは、こういう標語を自分でも考えていたなあ、と。

というわけで今まで何度か書いたことを標語にしておこう。

必要なこと パッション&&ロジック&&知恵

何かについてとても上手であるためには、まずその事柄に対する「パッション」が無くてはならない。パッションとは要するに「好き」「これに関しては変なものが許せない」という態度。

しかしパッションだけでは駄目。それを支えるロジックがなくてはならない。「これは不合理だが」というものでもいいんだよ。でも不合理と不合理と認識できなくてはだめ。

しかしこの2つだけでは太平洋戦争が起こってしまう。ベトナム戦争が起こってしまう。最後に必要なものは「知恵」だ。どんな分厚い解析報告書があろうと、大東亜共栄圏だ、自由主義国家の砦だとかいうパッションがあろうと、

「駄目なものは駄目」

と言い切る知恵。最後のが一番難しい。ロジックというのは所詮フィクションにすぎない。理屈とトクホンはどこにでも着く。それが「接地しているか否か」すなわち現実に立脚しているかどうかを判断できなくては恐ろしい事が起こる。

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しかし

これだけでも足りないんだよね。最近佐藤雅彦という人の本を読み返している。

この人の異常性を語るエピソードとして

「ルーブックキューブをみていたら、突然内部構造が頭の中に広がり、数時間で解けた」

というのがある。他にも「突然ダンスシーンが頭の中に浮かんだ」とかいうエピソードが語られている。

  • 死にさえつながる不安を管理するアイデア:古代ローマのクリエイターと同じように創造の霊「ジーニアス」との共同作業であるととらえること
  • クリエイティブの力が借り物だと 思うこと。 謎の源から 人生に添えられ― 終えたら 他へ行くものと思うこと。trans エリザベス・ギルバート 創造性をはぐくむには 
  • via: エリザベス・ギルバート "創造性をはぐくむには" | TEDを日本語で読む:TED人気スピーチ日本語訳 - 30秒で把握するTEDプレゼン

    エリザベス・ギルバートの言葉を借りれば、間違いなく佐藤氏には何度も「ジーニアス」が降臨している。

    ギルバート氏はどうやったジーニアスが降臨するかは語っていない。Just do your jobと言っていいるだけだ。確かにそれは正しいように思う。しかしこの「ジーニアスを降臨させる」過程に私はとても興味を抱いている。

    佐藤氏の本を読むと、締め切り間際で追い詰められ、何時間会議してもいいアイディアがでない。眠くてたまらない。開き直って2時間寝る。目覚めたところで「こんなideaは?」というのが出るのだそうな。

    このブログでも何度か書いたことだが、デバッグを諦め、電車に乗った瞬間バグがわかる経験をした人も多いだろう。いや、バグの発見をジーニアスと言われてもといわれるかもしれんが、ここの主眼は「ぽっとした思いつき」がどうやって生まれるのか、それを生み出すためにはどうすればいいか、だ。

    というわけで今日のところは標語をこう改変しておく。

    必要なこと パッション&&ロジック&&知恵 そしてジーニアスの到来を待つ

    Sense of humor

    2013-07-18 06:30

    おそらく欧米(の一部)から学ばなければならないものの一つにSense of humorがあるだろう。この言葉の適当な和訳さえ存在していない状況というのはいかがなものか。

    今朝こんなニュースを見た。

    Bloombergが、工商時報の伝えた内容として、Appleは、9月または10月に発売を予定していたiPhone 5Sの液晶画面サイズを4インチから4.3インチに突然変更することを決め、発売時期を年末までに先送りする可能性があると報じていると伝えています。

    via: MACお宝鑑定団

    そもそもBloombergはメディアじゃない、とかいろいろな意見があるだろう。しかしそれに正面から反論するのも馬鹿馬鹿しい。

    そんな時はどうかくか?

    Apple probably plans its product launches with more care than any other company in the world. The idea that it would get as far as production and then go, "Oh, wait, maybe we should change the screen size" seems about as likely as Jony Ive being shown a range of possible materials and responding, "Whatever, I don't mind" ...

    via: Wildly unlikely report claims larger 4.3-inch display causing iPhone 5S delays | 9to5Mac
    (試訳) Appleは世界で一番製品の発表を慎重に、計画して行う会社だろう。その会社が、既に生産が始まっているものに対して「ちょっと待て。スクリーンサイズ変えたらどうかな?」と言い出す、というのはジョニー・アイブがいろいろな材料を前にして「まーどれでもいいんじゃなーい?」と言うくらいありえないことだ。

    Appleのデザインが細部にまで渡って合理性を最適性を突き詰めて考えていることは広くしられている。そのトップであるアイブが

    「どれでもいいんじゃなーい?」

    と言っているところを想像してい思わず笑ってしまった。

    馬鹿な記事をさらりと笑い飛ばす。どうもこれが私には決定的にできない。あと何年あるかわからん人生だが、少しはこの方面で上達することができるだろうか。


    Build 2013 V.S. WWDC2013

    2013-07-17 06:28

    本日の例によってApple原理ry)

    先日Build 2013というカンファレンスが行われたのだそうな。ホストはMicrosoft.その席上Windows 8.1が発表されたので少し話題になった。

    でもってビデオが公開されていたので見てみた。

    バルマーはいつものバルマー。相変わらずエネルギーに満ちあふれている。とはいえ、何を言っているかはよくわからん。

    でもって次にでてきたのがシノフスキー粒子の後にWindowsを率いることになった女の人。

    Ballmer氏は、多くのユーザーから要望のあったデスクトップモードの機能強化を「洗練されたブレンド」と表現したが、Steve Sinofsky氏が去った後にWindows部門を率いているJulie Larson-Green氏が提供したカフェインは、観衆にほとんど刺激を与えなかった。

    via: Build 2013基調講演の迷走--S・バルマー氏の強気とWindowsの今後 - CNET Japan

    彼女はものすごい勢いでいろいろなことを喋った。おそらく彼女は自分で「私はプレゼンが上手じゃない」と認識しているのだと思う。確かに彼女はSmartだと思う。しかし何かに怯えているかのように見えた。

    Larson-Green氏の後に、MicrosoftのWindows Web Services担当バイスプレジデントであるAntoine Leblond氏が登場し、開発者がWindows 8向けの高品質アプリを作成する上で新しい「Visual Studio 2013」がどのように役立つかを示すデモを行った。Build 2013に集まった開発者たちでさえ、壇上でコードを見せられることに大いに熱狂することはできなかった。

    via: Build 2013基調講演の迷走--S・バルマー氏の強気とWindowsの今後 - (page 2) - CNET Japan

    次にでてきた人もとてもSmartだということはわかった。しかし感じられなかったのは製品への愛だ。Smartでいろいろなことをしゃべりまくる。それは

    「このすごい製品を知ってほしい」

    というよりは、

    「俺はこんなに頭が良いんだ」

    と主張しているように思えた。

    ----
    彼らのプレゼンとWWDC2013 hosted by Appleで壇上に上がった人たちのプレゼンは実に興味深い対照を示している。WWDCのプレゼンでは共通した要素があった。

    「こんなすごいものを作ったんだ。みんな気に入ると思うよ」

    とプレゼンターが究極のドヤ顔でしゃべっていた。そしてそれが実際にすごいので聴衆から拍手や歓声が沸き起こる。

    Build2013のプレゼンはそれに比べると「ここで立派なプレゼンをしないと点数が引かれる」とか「俺様はどんなに頭がいいか示したい」といった別の動機から行われているように思えた。そしておそらくそれはMicrosoftとAppleという2つの企業の文化の差異に根ざしているに違いない、、というのは考え過ぎかな?

    そのスティーブとたまたま「マイクロソフトとアップルのどこが違うか」という話題になった時に、彼が言った言葉が今でも心に残っている。

     「マイクロソフトのプロダクツにはソウル(魂)が無い」

     (中略)

     そんな私にスティーブのこの言葉は本当にショックであった。この言葉以上に、マイクロソフトとアップルの違いを表す言葉はない。

     マイクロソフトのカルチャーは、ビル・ゲイツそのままで、その一番の目標は「勝つ」ことにある。マイクロソフトにとって、「良いものを作る」のはそれ自体が目的ではなく、「市場で勝つ」ための手段である。

    via: Life is beautiful: ソウル(魂)のあるもの作り

    今では原発電波おじさんになってしまった中島氏だが、彼が過去について語ることには依然として重みがある。おそらくBuild2013で壇上に登っていた人達が考えていたのは

    「自分が倒そうとしている相手(もしくは自分を倒そうとしている相手)」

    のことではなかったか。


    iOS7が「強要する」動きのデザイン

    2013-07-16 06:30

    WWDC2013のキーノートを見てもらえばわかるが、IOS7では画面の動きがより豊かになっている。

    それ自体は歓迎すべきことだが、問題はそれをどうやって「デザイン」するか、という問題だ。

    従来は静止画を書き、このボタンを押すとこちらに遷移する、で話はおしまいだった。この方法は絵を書いている人間が「どんな遷移が可能か」ということを理解している範囲で成立する。

    ディティールではなく、フローにフォーカスしてプロトタイプを作る

    via: これからのUIデザインのために、デザインカンプをやめてプロトタイプを作ろう(後編) | MEMOPATCH

    重要なのは静止画ではなく、フローになりつつある。どうもこの大きな動きに気がついていない人が多いようだ。

    iOS7でどのような動きが可能なのか?これを理解せずにiOS7用のアプリは設計できない。そして困ったことに、IllustratorとPhotoshopだけでは動きの設計ができない。

    極端な事を言うが、現時点ではXCode5にさわらずして、iOS7アプリの設計は不可能である。もちろんあなたが紙芝居の世界にとどまろうとするのであればそれは自由だが。

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    従来

    デザイナー絵を書く。エンジニアに渡しプログラムにしてもらう

    というフローが存在したようだ。しかし今はそれが成立しなくなっている。

    デザイン段階で、「プロトタイプ専門のエンジニア」が入る必要があるのだ。もちろん従来Illustrator,PhotoShopを触っていた人がXCode触ってもいいのだが。細かいアイコンは最後に設計すればよい。

    などと私は何を語っているんでしょうかねえ。


    ハードウェアについて語ること/作ること

    2013-07-15 06:34

    何事もそうだが、「語ること」のほうが「作ること」の何万倍も容易である。というか語るだけだったらなんでもありだもんね。

    そんなことを実感させられるニュースをいくつか見た。

    日本マイクロソフト株式会社は、「Surface RT」各モデルの価格を7月15日から一律で1万円値下げする。同社は6月14日から7月14日までの期間限定で同様の値下げキャンペーンを行なっているが、この価格をそのまま新価格とする。

    via: 「Surface RT」価格改定、今後もずっと"一律1万円引き" -INTERNET Watch

    今この結果について語ることは簡単だ。ではどうすればよかったのかと言われても明確な返答はできない。仮に私がMicrosoftにいたとしても、これ以外の決断ができたとは思えない。

    それほどMicorsoftの方針は理にかなってはいたのだ。結果はご覧の通り。

    量販店では4週連続でiPadを上回る販売実績となっている。量販店での展示スペースは小さいのにもかかわらず、こうした実績になったことにわれわれも驚いている。

    via: SurfaceがiPadを上回る販売実績、Windows 8.1はタッチ機能向上--MS樋口社長 - CNET Japan

    こういう発言ができるメンタリティをもっていなかえれば、日本Microsoftのトップは務まらん、ということなのだろう。それを批判するのは簡単だが、じゃあお前が売ってみろと言われても返答につまる。

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    もう一つ例を挙げておく。

    2013年4月23日の発売当日はサーバがパンクするほど予約が殺到し、1日で約3000台の予約を獲得。最終的には当初の予想を大きく上回る5000台を販売し、部材はもちろん工場の組み立てラインの確保や、さらにそれらの品質の確保など、多くの問題が発生したという。

    via: モノづくり最前線レポート(36):手書きタブレット「enchantMOON」をモノづくりの観点から考えてみる (2/2) - MONOist(モノイスト)

    日の丸ベンチャーの「気持ち悪さ」の象徴と私が勝手に思っているこの製品。予想を5倍も上回る注文が殺到してすごいなー。(棒読み)

    でもって第2回の予約受け付けが開始されたのだそうな。

    販売数:限定200台(予約受付中)

    via: enchantMOON - Impress Watch

    7月7日正午にスタートした予約は、まだ受付中。5000台一気にはけた製品が、追加の200台もろくに売れない。何かがおかしいような気がする。

    でもって肝心の製品のできだが

    欠陥は言い過ぎかもしれないけど、少なくとも「いわゆる"中華タブレット"レベル?」と思ったのは事実で、それゆえの先のコメントになったわけです、私は。

    via: enchantMOONの第一発送分を受け取った人たちの呟きまとめ - Togetter

    このページに書かれている「ユーザの声」を聞いていると、CEREVOのデジカメCEREVO CAMを思い出す。あれも商品としては「安っぽい中華製の何か」としか思えなかった。

    かくのごとく批判するのは簡単だが、じゃあお前がもっといいハード作ってみろと言われても返答につまる。

    これは当たり前のことだが、往々にして忘れがちになる。論評とソフト開発とハード開発はそれぞれ全く異なるルールのゲームであり、いずれかの分野に秀でているからといって、それがそのまま他の分野にすぐ適応できるわけではない。

    ハード開発ではやはりAppleが図抜けていると思うが、iCloudとGoogleのサービスを比較すれば、私のようなApple原理主義者であっても、Googleのサービスを使いたくなる。ハード開発とServerベースのサービス開発はまた別のゲームなのだな。

    などと一芸にも秀でていない人間が書いても何の説得力もないか。


    iOS7のデザインについて

    2013-07-12 06:33

    先日社内で発表をした。その時質問を受けた。

    「iOS7のデザインはシンプルで本質的なものだけを残すというのはわかった。しかし、それと奥行きを持ったように見えるホーム画面のデザインは矛盾しないだろうか?」

    私は

    「確かに私もそう思います」

    と答えた。しかしその後にApple原理主義者らしくこう付け加えた。

    最初にAppleがiPhoneを発表した時の事を思い出してほしい。アイコンが丸みをおびた反射をしているように見えたことに、誰もがおどろいた。それからiOS向けのアイコンといえば、あの丸みを帯びた光をつけなくてはならん、と思い込んだ人もいた。

    しかし

    丸みを帯びた光は所詮Fakeである。それで躍動感が表現できたと思っている人は考えが浅い。それは本物の丸みではなく、ユーザが何かをしても反応することはない。

    ではiOS7ではそれをどう解決したか。

    まず静的なデザインはフラットにし、装飾を一切剥ぎ取る。そして躍動感、Livelyな印象は動きで見せる。iOS6の時にもiTunesのつまみが一部ユーザがもつ角度に応じて表示が変わることは知られていた。その試みをAppleは全面に出してきた。Keynoteで示されたようにホーム画面はあたかもアイコンが浮いているかのように見える。躍動感というのは本来静的なものではなく動的なものだ。そう考えればiOS7の新しいデザインコンセプトは理にかなっていることになる。

    とApple原理主義者はAppleの側にたって勝手に物を言うわけですよ。


    弱い犬ほど

    2013-07-11 06:42

    よく吠える。そして弱い会社では、そういう犬がキャンキャン吠えまくっている。

    本当に強い人-そういう人は自分に自信がある人だが-は本当に吠えない。

    この指示に戸惑い、なかなか動き出せないメンバーの中で、抜群の対応力とフォロワシップを見せたのが、2009年に宇宙飛行士候補者に選ばれた油井亀美也飛行士だったという。

     そのとき、リーダーは別にいたが、油井はできること、できないことを切り分けて優先順位をつけ、『こうしたらどうですか? 』とメンバーに工程案を提案した。その案に従ってチームが動き始めると、油井はさりげなく引き下がった。リーダーを立てて、フォロワの立場に戻ったのだ。

    via: 宇宙飛行士界に見る、30代から「伸びる人」 (東洋経済オンライン) - Yahoo!ニュース BUSINESS

    こういう人間がどういう組織でどういう評価を受けるかは実に面白いと思う。評価者側にそうした視点がなければただの

    「あいつは黙って何もしない」

    でおしまいだ。そして私が思っているよりも、そうした評価を下す組織のほうが多いに違いない。

    山口さんは化ける理由をこう話す。「自分ひとりの力では限界がある。多くの支えがあって宇宙に行けるのだと、頭でなく、心で理解した瞬間に『本当の宇宙飛行士になる』のだと思います

    via: 宇宙飛行士界に見る、30代から「伸びる人」 (東洋経済オンライン) - Yahoo!ニュース BUSINESS

    この視点も興味深い。米国海兵隊で彼らが何のために戦うのかといえば、隣にいる戦友と共に生き延びるため、とか映画か何かで読んだ気がする。国民としての義務、戦争の大義などはとなりを弾丸が飛び出した瞬間ふっとんでしまう、と。

    自分のためだけならば逃げるのが正しい選択肢だ。しかしそこで戦うのはなぜか。自分は一人で立っているのではないことを心で理解する、という点で似ているのかな、とぼんやり思う。

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    何故私がこんなことを言い出したかといえば、年をとってきて「言葉が接地しているか否か」が重要だなと思うからだ。「接地している言葉」とは実感があり、言われて皆が「確かにそうだ」と思う言葉。「接地していない言葉」とはキラキラして威勢がよいが、現実世界から遊離している言葉だ。弱い犬がキャンキャン吠える声は、接地していない。

    大企業はこの「接地していない言葉」が大好きである。社是とかビジョンとかはほとんどその類だ。今不振を極めている家電メーカー内部では接地していない言葉がとびかっているのではなかろうかな。

     ――「ほぼ日」は非常にうまくいっている例ですよね。手帳がいまや47万部も売れて、土鍋やハラマキ、書籍などの物販でしっかり稼いでいます。糸井さんは、稼ぐことやおカネに関して、どういうスタンスを持っていますか。

    「お客さんがおカネを払いたくてしょうがないものをつくればいい」って考えてます。だから、稼げないというのは、何かが相手にとって魅力がないんだと思います。

    via: 糸井重里「ブラック企業が生まれる理由」 (東洋経済オンライン) - Yahoo!ニュース BUSINESS

    これは非常にシンプルな言葉だが、実際そうして稼いでいるのだから重みがある。つまり私の定義では接地している。インターネットの普及で「無料」がやたらと多くなったが、その中で彼らは商業的に成功しているのだ。この事実にはもっと多くの人が目を向けるべきだと思う。。。無理か。


    未来のカーナビ

    2013-07-10 06:26

    というわけで何度か言及しているカーナビとiPhoneの関係である。

    先日のWWDCで一番理解ができなかったのか、iOS in the carだった。デモがイマイチものだっただけでなく、その内容が理解できなかった。。しかしいくつか記事を読んでようやくなんのことかわかったような気がする。

    北米では「KT(Kids and Transportation Safety Act)法の完全施行」という重要なキーワードがある。KT法では、駐車場などでクルマが後退する際に子どもを轢いてしまう事故の防止のため、"2014年までに、すべての新型車が1台以上の(後退時にクルマの後方確認をするための)バックモニターカメラを搭載しなければならない"と規定されている。

     そして、このKT法によって普及すると見られているのが、ディスプレイオーディオである。これは車載オーディオにタッチパネルディスプレイとバックモニターカメラ機能を搭載したもの。カーナビ機能は持っておらず、その代わりにスマートフォンとの連携機能が用意されている。カーナビ機能をスマートフォンに任せることで低価格化を実現し、KT法が定める「すべての新型車への標準装備」を実現しようというものだ。

    via: 神尾寿のMobile+Views:あの感動、再び――Appleは新たな時代に踏み出した (4/4) - ITmedia Mobile

    鍵はこのKT法だったのだ。いや前職の最後の頃に「ディスプレイオーディオ」という言葉は聞いていたんだけど、それが何のことかよくわかってなかったんだよね。

    車にオーディオがついているのは当たり前。しかし来年からはそれにバックモニターがもれなくついてくる。であれば、それにスマートフォンを接続すればナビはいらない。

    いいじゃないか。これこそが正しい姿だ。



    リスクを避ける最も良い方法

    2013-07-09 07:12

    それは現在と何も変えないことです。新しいことには常にリスクが付きまとう。そんなあぶなっかしいことをやるようでは、日本の一流企業とは言えません。

    冗談のようだが、この考え方はあたっているのだと思う。

    テレビの視聴者の大半は「シニア」であることを考えると、今回のような措置は仕方ない部分があるとは考える。例えば、スマートビエラに映し出されたニコニコ動画をフジテレビの放送と勘違いしてフジテレビにクレームを入れるという可能性も「無い」とは言えないのだから。

    リテラシーの高いネット放送と、必ずしもリテラシーが高くない国民全体を対象としたテレビ放送という立場の違いが、今回のCM放送却下の本当の原因なのである。一見すると「テレビ放送の利権」を守っているようで、実は守っているのは「視聴者」なのだ。

    なかなか進まない通信と放送の融合ではあるが、それを遅々とさせているものは、視聴者全体のリテラシー、なのかもしれない。

    via: スマートビエラはなぜ、CMを拒否されたのか?(大元 隆志) - 個人 - Yahoo!ニュース

    仏壇のろうそく倒すといけないから、ルンバを作りませんでしたー、と同じようなロジックである。確かに

    「ニコニコ動画の内容についてフジテレビにクレームがはいる!」

    のは見過ごせない巨大なリスクだ。国民を守らなくちゃ!

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    この話のオチは

    「そうまでしてパナソニックが宣伝しようとしている製品が、全くのゴミ

    であるという点。いや、考えると悲しくなるからこの話題はもうよそう。

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    もう一つ先日書いたエントリーの続編。



    サムスンはこのプロモーションのために、ジェイ・Zの新作「Magna Carta Holy Grail」を1枚(コピー)あたり5ドルの条件で合計100万枚分購入、同アルバムが一般にリリースされる3日前の7月4日に「Galaxy」の一部機種のユーザーに向けて無料配布を開始していた。

    ところが、このためにつくられたモバイルアプリをダウンロードしたユーザーの間からは、楽曲を無料で提供する代わりに、端末の着信情報や位置情報、登録されたEメールアドレス(送信先)リスト、ソーシャルメディアのプロフィール情報など、さまざまな個人情報へのアクセスが求められることに対して不満の声が上がっているという。

    via: サムスン、米国で勇み足 - ジェイ・Z最新アルバムの無料配布用アプリに非難の声 - WirelessWire News(ワイヤレスワイヤーニュース)

    少し前まではこういう「ユーザが激怒する暴挙」はソニーの十八番だったが、最近はすっかり丸くなったなあ。というか誰も相手にしてないだけか。

    こういう「製品のプロモーションのため、有名人を起用しよう!」というのは洋の東西を問わず行われることだが、多分考えなおしたほうがいいと思うのだ。こんなことになるよ。

    PORTLAND -- Nearly 300 people camped out overnight in downtown Portland for the grand opening of the new Microsoft store.

    The first 200 people in line got "meet and greet" passes to go back stage with the band Weezer. Weezer will perform downtown Friday night at 7 p.m.

    via: Hundreds camp out for Microsoft store opening | kgw.com Portland

    オレゴン州ポートランドにMicrosoft Shopをオープンする際、先着200名様にバックステージパスがプレゼントされたのだそうな。

    熱心なファンは冷たい雨の中行列を作ったらしい。そして誰もMicrosoft shopには関心がなかった。彼らと彼女たちはただチケットが欲しかっただけなのだ。そしてニュースもそうした取り上げ方しかしてくれない。


    スピード・スピード・スピード...

    2013-07-08 06:31

    ここ数年で激変したものは多い。今日は昨日の延長線上だと多くの人が想定しており、ほとんどの場合それは正しいのだが、それでも時々激変は起こる。

    その昔mixiは日本において支配的な地位を築いていた。連絡はなんでもmixi.Facebookがあるよ、と言われても「日本では実名制は無理だよ」とかいうしたり顔の意見は後を絶たなかった。

    支配的な地位を築いていた企業が没落するパターンにはいくつかあるように思える。イノベーションのジレンマのように「やるべきことを真面目にやったが故に没落する」こともあるが、単に

    「トップを走っている企業がありとあらゆる間違いをやる」

    こともある。PS3でのソニーがそうだったし、mixiもそのケースに分類してよかろう。

    とはいえ、きちんと変化を起こそうとする態度は見習うべきだ。Panasonic,とかSharpに比べればね。ほとんどの企業は何か問題が起こった時、それは部下がちゃんと仕事をしなかったせいだ、と解釈する。

    先週発売された週刊東洋経済(10月13日号)に
    富士通の秋草直之社長の信じられないような迷言が掲載されている。
    大幅な業績下方修正に対する経営責任を問われた秋草社長が
    「くだらない質問だ。従業員が働かないからいけない。
    毎年、事業計画を立て、その通りやりますといって、やらないからおかしなことになる」などと
    ヤケクソのような回答をしているのだ。

    via: 【人事/電機】富士通前社長の野副氏、真っ向から反論--「通院したが病名はない」「社長解職の手続き自体に大問題」 [03/07] | ログ速

    こうした言葉は別に珍しいものではない。しかしmixiはきちんとトップを入れ替えた。それはすばらしい。

    Facebookと異なり、匿名のIDで利用するmixiは「心地よいつながりを作りやすい」とも指摘する。「Facebookは実名ならではの『がんばってる感』が出てしまいがちだが、mixiは緩い感じでつながれる。日本の良い面の匿名文化は需要があるが供給がない状況。それを僕らはやればいいし、FacebookやLINEを追いかける必要はない」。

    via: 「復活愛は求めない」新生mixiはアプリで存在感示す~川崎裕一取締役に聞く - INTERNET Watch

    競合が何をするかを考えるより、自分たちが何をすべきか考える。こうした態度も好感が持てる。

    そして新生mixiはスマホアプリに注力するのだそうな。

    新生ミクシィが注力するスマホアプリ。これまでは、mixiおよびmixiコミュニティの2本のアプリを公開しており、会員数は延べ1000万人を突破。利用率はスマホ向けブラウザー経由の1.6倍に上る。アプリ開発に注力するのは「成長の余地が大きく合理的」(川崎氏)と判断したためだ。

    via: 「復活愛は求めない」新生mixiはアプリで存在感示す~川崎裕一取締役に聞く - INTERNET Watch

    これも同意できる考え方だ。なるほどなるほど、と読んできて次のステップでちょっと頭に「?」マークが浮かぶ。

    スマホアプリの開発基盤に関しては、今後開発する50本のアプリで共通して使用するライブラリにアクセスできる仕組みを構築する。これにより、新規のアプリを開発するときにも「有り物」が使えるため、開発のスピードが大幅に向上する見込みだ。「アプリを2週間でローンチできるようにするのが大命題」(廣木氏)。

    via: 「復活愛は求めない」新生mixiはアプリで存在感示す~川崎裕一取締役に聞く - INTERNET Watch

    引用記事を読むと

    「アプリを50本出す」
    「2週間でローンチ」は決まっているようだが

    それでは今後、どのようなアプリをリリースしていくのか。詳細は明らかにされなかったが、まずは個別の目的に合わせたアプリを提供し、mixi全体のトラフィックを拡大することを狙う。例

    via: 「復活愛は求めない」新生mixiはアプリで存在感示す~川崎裕一取締役に聞く - INTERNET Watch

    肝心の「何をしたいのか」が不明確なままだ。というか多分何も考えていないのだろうと思う。

    二週間でアプリをローンチし、50本出すことはさほど難しいことではない。ちなみに「2週間」というのがローンチまでの期間とすると、発案から開発、検証、App Storeに提出するまで一週間である。毎週新アプリを作って一年で50本。確かにそれは可能だ。「使って意味のある、面白いアプリ」という制約さえ外せば。

    Apple原理主義者としては、Designed by Apple in Californiaに込められたメッセージと比較したくもなる。

    プロダクトがもたらす体験。 人が何を感じるのか。 生活をより良くするのか。 存在する価値があるのか。 私たちは、数少ない素晴らしいものだけに、時間を注ぎ込む。 手が­けるすべてのアイデアが、それを手にする人の暮らしを輝か­せるまで。

    via: Designed by Apple - TV CM - 私たちの サイン (Japan - Japanese /日本 - 日本語 | HD - Our Signature) - YouTube

    もう一つのバージョンではこうしたプロセスが時間がかかるものであることを主張している。

    もちろん全てAppleのやり方が正しいと主張するつもりはない。しかし

    「ゴミアプリを乱造してどうしたいのか」

    という疑問が頭をもたげるのも事実である。肝心なところで「うさぎ跳び50周」になってしまうのがいかにも日本的といえばそうなのだが。


    同盟とか連合とかいうもの

    2013-07-05 06:35

    数日前こんなニュースが流れた。

    Samsung has reportedly delayed the release of its first Tizen OS device, citing a number of setbacks including a need to improve the app store for its mobile operating system

    via: Samsung Delays First Tizen Device Citing App Store Issues | TechnoBuffalo

    App Storeの問題でサムソン(Docomoも大いにからんでいる)の新しいOS Tizenが遅れるということだった。その時はふーんと気にもとめなかったのだが。

    でもってそこからリンクされているスクリーンショットを見る。なんとiOS7そっくりだ。

    そして昨日こんなニュースが流れた。

    Tizen OSが事実上キャンセルとなったことで、Tizen OS搭載端末の販売を予定していたNTTドコモの行方が注目されます。Tizen OSの導入をNTTドコモ内で主導していた人物は地方支局に左遷されたと伝えられており(実際に配置転換されている)、果たしてAndroid以外の新OSが投入されることはあるのでしょうか。

    via: 速報:Tizen OS開発プロジェクト事実上キャンセルへ NTTドコモの行方は不明 | ガジェット速報

    年寄りからみると「やっぱりなあ」という感慨しか持たない。そもそも同盟とか連合とかいうものにロクなものはない。

    「我々自身の思いでも動けないか。自身でも課題意識を持って、と強く考えているメンバーが揃って、Tizenになった」

    via: ドコモ杉村氏、第三のモバイルOSを目指す「Tizen」を語る

    メンバーが揃うのはいいことだが、結局は誰かが中心にならなくちゃねえ。

    その昔働いていた大企業で「超事業部プロジェクト」というのに参加したことがある。複数の事業部にまたがる大きなプロジェクト。すごいなあ。

    起こったことはお互いの貶し合い、足のひっぱりあい。また当時私の上司だった人間が、そういう内輪もめが大好きな人だったし。一年も持たずに分解したな。

    というか、前述のDocomoの記事で「?」と思ってはいたんだよね。話している人が「担当部長」電電公社には担当部長が山ほどいる。そのほとんどは「ただ年をとったおじさん」だ。電電公社では年をとると部長になるらしい。

    これまではドコモの永田清人氏がTizenの代表を務めてきたが、5月初旬に発表された人事異動で、杉村領一氏がTizenの代表を引き継ぐことが明らかにされていた。

    via: ドコモ杉村氏、第三のモバイルOSを目指す「Tizen」を語る

    その前の担当者が「取締役執行役員」だったからねえ。分かる人にはこの人事異動だけで、DocomoにおけるTizenがどのような位置づけになったか理解できたのだろう。


    iPhone6を夢想する

    2013-07-04 06:38

    今日の内容は「いかれたApple原理主義者の妄想」です。そうことわるまでもなくいつもそうですね。

    先日こんな記事を読んだ。

    ハードのデザインがOSの側に影響を及ぼすことがあるのなら、逆にOSのデザインがハードのデザインに影響を及ぼすこともあるはずだ。筆者は密かにiOS 7で採用された要素――例えば半透明や丸い形状が、次のiPhoneの外観に取り入れられるのではないかと期待している。

    via: WWDC 2013所感(後編):新しいアップルと、デザインが持つ本当の意味 (3/5) - ITmedia PC USER

    私も全く同じことを考えていた。今回AppleがWWDCで発表した新しいデザインコンセプト。それに貫かれた美しいiOS7のデザイン。それを考えるとき、「衣」たるべきハードウェアが同じコンセプトで作られないわけはないと思うのだ。それほどまでにiOS7のデザインは徹底している。

    しかしそれはどういうことだろう?

    もう一つAppleが直面している(であろう)問題がある。どうやら廉価版iPhoneは本当に存在するようだ。というか存在しないと話がここで終わるので存在していることにしてください。

    問題は廉価版と高級版にどのような差をつけるかだ。Appleは常に「ユーザにとって最高の経験を提供する」製品を発表している。であれば、廉価版とはいえ

    「コスト削減と値段の差を正当化するため、CPUのクロック下げちゃいました」

    となるわけがない。メモリを減らし、部品の質を落とし、あちこちでほころびを見せる製品を廉価版として売り出す、、、、ある程度はそうなるだろう。しかし性能の差が直接値段の差に結びつくような製品をはたしてAppleが出すだろうか?(多分そうだろうが、ここからApple原理主義者の妄想が始まる)

    iPhone5SはiPhone5と同じような形状になる。廉価版iPhoneもどうやら似たような形らしい。ではどうすればいいのか?

    昨日ある「アイディア」を思いついた。

    岩田さんが、「ほぼ日刊イトイ新聞」という
    ぼくのウェブサイトに来てくれたときにね、

    →アイデアというのは

    複数の問題をいっぺんに解決することだ
    」という

    宮本さんのことばを紹介してくれたんですよ。


    via: 社長の代わりに糸井重里さんが訊く「スーパーマリオ25周年」

    iPhone6は性能的に廉価版iPhoneと大差はないものになる。一番の差別化要因はそのデザインだ。iPhone6は初めて「デザインの差で価格差を正当化する」製品になる。

    携帯は使えればいいよ、という人がいる。そういう人は廉価版を買えばよい。私のように「衣服は清潔で穴が開いていなければよい」という人はユニクロに行く。

    しかしそれでは満足できない人がおり、私が信じられないほどの金額をデザイン、あるいは目に見えない品質に払う。iPhone6はそうした製品になるに違いない。iOS7(あるいはそれがでるときにはiOS8か)の美しいデザインと調和し、手にとったときこれ以外の回答はないと思えるような製品がiPhone6だ。

    2chならば

    「お薬の量増やして置きますねー」

    とかかれそうだな。でもこんなニュースもあるよ。

    米Appleが、フランスの有名ファッションブランド企業Yves Saint Laurentの前CEOを"特別プロジェクト"のために採用し、ティム・クックCEOの直属とした。

    via: Apple、"特別プロジェクト"のためにイヴ・サンローラン前CEOを採用 - ITmedia ニュース

    大学の存在価値は

    2013-07-03 07:12

    明治大学に総合数理学部という学部ができたのだそうな。何故私がそんなことを知っているかといえば、知り合いの研究者(大学関連の)がごっそりそこに移動したからだ。

    カリキュラムの内容などについて詳しく知っているわけではない。しかしいろいろな人の話しを聞くと、従来の「デパート方式:なんでもあります」式な学部ではなく、一点突破式の尖った教育を目指しているようだ。

    それについては、例えば転校するときに大変だよ、とか企業が大学に求めていることは広い範囲の基礎知識だとかいろいろな意見もある。しかしこのように狙いをはっきり定めた試みは嫌いではない。もちろん議論はあるだろうが、新しい試みがなければただエントロピー極大の死に陥るだけである。

    私は文部科学省の出費の元で生きたことがないので、そこらへんの事情についてはわからない。しかし総合数理学部の教員から漏れてくる言葉に少しの危うさを感じるのも事実である。

    総合数理学部では「3つの言葉」を教える.この3つの言葉は社会にでていくうえでとっても重要で,この3つを同時に使いこなせる人のもつ「チカラ」はこれから社会で役に立つこと請け合いである.その3つの言葉とは

    (1)数学という言葉
    (2)プログラムという言葉
    (3)英語

    via: 明治大学総合数理学部はそもそも何が勉強できるところなのか|阿原 一志のブログ

    ここで「数学」と言っているものは「統計」と呼ぶべきではないかと思う。最初にはいった会社の同期に、「私の専門整数論だから、わかんないんです」と事あるごとに繰り返していた人がいた。もちろん半分冗談なのだが、25%くらいは本気の雰囲気があった。そう言われてもねえ。

    「統計」「プログラム」「英語」に絞るのは理解できる。少し気になるのは

    総合数理では上の3つの言葉を習得し,「プレゼン」も「議論」もできる人材を育成するのが目標なのである.

    via: 明治大学総合数理学部はそもそも何が勉強できるところなのか|阿原 一志のブログ

    「プレゼン」「議論」がさらっと一行ですまされている点だ。私はこの総合数理学部に移動した宮下研の学生さんの発表を聞く機会が何度もあった。そして「どうも議論にならない」という感想を持つことが多い。勢いはある。楽しそうにやっているのもわかる。自分が作った物に対する愛情を持っているのもわかる。

    しかしこちらの指摘に対してまともな答えが返ってきたことがない。ただ私が口ごもるのは「そもそも社会で必要とされている能力に、議論やらプレゼンが含まれているのか」全くわからないからだ。私がNTTソフトというNTTグループ内の下請け企業に勤めていた時、社長は鶴保という人だった。それなりに電電公社階層内での地位も高く、社長をやめたあともあちこちの要職についていたようだ。

    しかし

    彼が社員に対して行うスピーチは全くわけがわからなかった。そもそも聞き取れなかった。それでも社長の言葉だから社員は黙って聞かざるをえない。だからプレゼン能力なんて何の役にもたたたない、、と結論づけることもできる。しかしこれは目標だからまあいいとしよう。

    一番気になるのは、総合数理学部の先生たちから漏れ聞こえてくるこうした言葉である。

    さっそくはじめた1年ゼミで,僕はそのことを実感しているのである.学生さんをみていると,学部の3年生くらいのスキルを感じるのだが,実は入学してまだ3ヶ月なんだな,

    via: 明治大学総合数理学部はそもそも何が勉強できるところなのか|阿原 一志のブログ

    これは学生さんたちが読んでいることも理解しての煽りも入っているのだと想像はしている。

    しかし「3ヶ月で3年生くらいのスキル」というのはちょっと気になる言葉だ。逆に言えば、「総合数理学部の判断では、他の大学でやっていることの91.6%は無駄だ」と言っていることになる。

    別の言い方では「総合数理学部では他の大学の12倍の速度で教育をしている」ということになる。

    この「新入生がたった3ヶ月でこんなものを作った!」という言葉は公文の「小学生が微積分を簡単に解く」といった言葉とどこか似たようなものを感じるのだが、それについては触れない。しかし教育の速度が12倍ということは2つの可能性を示唆している。

    ・総合数理学部のカリキュラムおよび教員の質があまりにも高いのでその速度が実現できた

    もしくは

    ・評価基準が間違っている

    --------------

    ちょっとここで私が考える「評価基準」を2つに区分しておこう。「社会にでてから役立つ」スキルについては正直わからない。これについて話すと長くなるからやめるが、別に英語なんかしゃべれなくて、四則演算がろくにできなくても「元請け大企業」に就職さえすれば、英語ペラペラで数学で博士号とった「派遣社員」をゴキブリのように扱うことができ、それで何の問題もない。それを成功というかどうかは個々の判断基準だし。

    私が他の研究を見ていて一番重視するのは「素晴らしいSFのようであること」解こうとしている問題の着眼点がすばらしく、その解決方法が「そんな方法があったか」と思わずうならされるようなものだ。

    そうした評価基準からすると3つの言葉は確かに「必要条件」かもしれない。しかしそれだけで終わっているのはちょっと物足りない気がする。

    というか私は危惧している。プログラムが大好きで、英語でプレゼンもできて怪しげな統計データを振り回し自分の研究成果を楽しそうに発表するが、議論に全くならない学生が量産されるのではないか、と。実際に総合数理学部の教員さんたちの顔ぶれを見ていればそんな懸念は杞憂に終わるだろう、と思いはするのだけどね。


    ダモクレスの剣

    2013-07-02 06:47

    厳しいとも言えるし、分かりやすいとも言える。

    先日「ネット接続がなければXBOX360を使えばいいじゃない」と言った男が首になったらしい。

    ソーシャルゲーム企業 Zynga のCEO Mark Pincus 氏が公式Blog で明らかにしたところによると、マイクロソフトで2007年以来 Xbox 事業を含む IEB 部門のプレジデントを務めてきた Don Mattrick 氏がマイクロソフトを退社し、Zynga に新CEOとして就任します。

    via: 速報:Xboxの責任者ドン・マトリック氏、マイクロソフトを離れZyngaのCEOに就任 - Engadget Japanese


    この1年で、ちびっこスティーブジョブスことフォーストール、シノフスキー粒子、それに「貧乏人はXBOX360を使え」の男か。。

    とはいえ米国企業で、幹部のポジションにいる、ということはダモクレスの剣と同じなのだな。権力と報酬は膨大。そしてミスをした瞬間上から剣が降ってくる。

    Steve Jobsは「掃除をするおじさんと、Vice Presidentの間には大きな差がある」と言ったとかなんだとか。それはJobsだけの考えではないのだろう。

    首にはなっても、あっというまにCEOの職をみつけてくるところがやはりすごい。私は首になったら、職安に並ぶのかな。


    とどのつまりは

    2013-07-01 07:12

    撤退か。。

    パナソニックは、国内の携帯電話事業を大幅に縮小し、今冬以降のスマートフォン(高機能携帯電話)の新製品についてNTTドコモ向けの供給を見送る方向で検討に入った。国内のスマホ事業は軸足を消費者向けから業務用分野に移す一方、米国への参入などで海外市場の拡大を目指す。

    via: パナソニック、国内携帯縮小 スマホ海外に軸足 : ニュース : 関西発 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

    正しい判断だと思う。もう少し早くできなかった、という批判はできるだろうが。

    後願わくば

    海外では米携帯電話3位のスプリント・ネクステルを買収したソフトバンクと組み、米国で初めてスマホを販売する検討を始めた。

    via: パナソニック、国内携帯縮小 スマホ海外に軸足 : ニュース : 関西発 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

    というのは、政治的意味だけをもった冗談であってほしい。「ソフトバンクと組み」とか言ってるけど、まさか閉鎖的な日本市場でも生きて行け無かった製品が、アメリカで生きていけるなんて本気で考えてないよね。

    しかしこの「撤退」という判断の元になっているものについてはよく考える必要があると思うのだ。20年前だったら「パナソニックの携帯。きっといいんだろうな」と思った。それが全く歯がたたなかったのだ。

    ちなみにスマホではなく「携帯電話」ではとっくの昔に海外からパナソニックは撤退している。なぜこんなことになったのか?