題名:HappyDays-1-3章

五郎の入り口に戻る

 

日付:1998/10/16

1章

2章

3章


1章:TKDのために

 

ある日例によって私は仕事が忙しいにもかかわらず女性社員である旧姓TKDと無駄話しをしていた。

TKDは5月に結婚して現在はおなかが大きいのである。従って話題は当然新婚生活、また母親になる心境などからはじまった。そのうち話題は妙な方向へ進んで行った。彼女にはお姉さんがいる。(ちなみに3つTKDより年上だそうである)そしてそのお姉さんの友達が前からTKDに当社の男性を紹介して欲しいと言っているのだそうである。

そうはいっても話しは簡単には進まない。TKDの知り合いの男性社員と言えば、まず彼女の同期社員となる。しかし彼らは姉の友達より3つ年下なのである。かといってTKDの立場として、3つ以上年上の先輩社員にいきなり

「女の子を紹介しましょうか」

とは言いずらい。そんなこんなと言っているうちに相手は「年下でもかまわない」と言い出したそうである。

さてそういう話しを聞くと私の右手は自動的にあがって「私はどうですか」と言ってしまうのである。後先考えずに。

そうはいったものの、最初は自分を紹介して欲しいと思ったわけではない。私は各所に「今度合コンがあったら一緒に行こうね」という空手形を乱発していた。へらへらと言っているうちはいいのだが、私にも少しは残っている良心というものがときどき顔をだす。空手形もたまにはちゃんとした手形にしなくてはいけない。というわけで、なんとか合コンを実現したいと思っていたのである。

TKDに「では合コンをやりましょう」と言うと、彼女はじゃあそう伝えますと言った。というわけで非常にあてにならない合コンの予定ができたわけである。

 

それから何日かがすぎた。仕事が忙しいにもかかわらずときどき私はTKDと無駄話をしていた。そのうち彼女がこう言った。合コンの話しをしたと。そしてその幹事たる私に関しての説明を行う際に10000倍くらいに実物よりも良く話したと言うことなのである。その結果として相手の女の子が言い出したことというのが「そんなにいい人だったら合コンやってほかの女の子にとられちゃうと困るから二人で会うことにしたい」

なかなかおもしろいじゃねえか。別に私のほうに断る理由はないのである。したがって電話番号と私のプロフィールを書いて渡して、「いつでも電話してとつたえてね」と言ったのである。

さて日取りのほうだがまだ彼女から電話がないうちにTKDを通じた交渉であっさり決った。9月の4日土曜日である。この日の夕方からは私は合コンがあったのであるが、 とりあえず昼は暇である。したがって昼に会おうという話しにした。

その週の月曜日にTKDは、「今日には大坪さんに電話するように伝えておきましたから」と言った。というわけでその晩私はわくわくして寮の一室で待っていた。しかしながら待てどくらせど電話はこない。そのうちに私は眠くなった。というわけで枕元に電話をおいて寝たのである。

はっと気がつくと朝の6時である。起床の時間だ。なるほど理由はわからないが電話がこなかったわけだ。

まあいろいろと忙しいこともあるから電話がこないこともあるだろう。というわけで火曜日水曜日と電話を枕元において寝たのであるが、結局なにもおこらないまま朝を迎えることになった。

木曜日にTKDと話しをしていたとき、TKDは「えっ。まだ電話がきてないんですか?今日こそは電話するように言っておきます」と言った。私はただ「にこにこ」していた。

その晩およそ10時半ころ電話が鳴った。電話にでてみれ相手は女性である。ということは可能性は一つしかないわけだ。はたして相手はTKDの姉の友達であるところのMD-後の中山美穂-であった。

相手はかなり緊張しているようであったが結構よくしゃべった。そこで彼女が言った台詞「えーっとやっぱりふたりで会うのは恥ずかしいので、2対2にしませんか。それで土曜日は誰かの引っ越しの手伝いをしなくちゃいけないので一週間のばしてくれませんか」ちなみに最初の予定ではこのおよそ48時間後には彼女と会っているはずであった。Wellどんな相手であれこれでだいたい彼女に対する態度は決った。

 

全て彼女の出した条件を承諾したあと、私は相手の容貌について質問した。2対2になったところでおたがいのプロフィールを知ならければ相手を捜すことができないのである。

「外観はこれは言うとおこられるんですけど。。。中山美穂なんです。」

「Wao!そうすると目はぱっちりしているわけだ」

「いえ、目は桐島かれんなんです」

なるほどこれでどういう外観の相手かはだいたい想像がついた。とは言っても、ここで私が素直に中山美穂+桐島かれんを思い浮かべたと思わないでほしい。過去の経験からすると自分をどうどうと有名芸能人にたとえることができる女性というのは。。。。(以下省略)

 

さて翌日私は誰をつれていくかを考えた。相手の年齢のことがあるので、誰でもいいというわけではない。ぼーっとしていて最初に頭にうかんだ名前-自爆男にした。そしてさっそく彼に打診してみると二つ返事で承諾してくれた。

例によって忙しい仕事の間にこんどはCと話しをしていると、彼は「なぜ私をつれていってくれないんですか」と言った。なるほどこれは私が悪かった。彼は自爆男と同じ年なのである。何故Cの名前がうかばなかったかよくわからないが、「絶対次に合コンをつなげて、それにCを招待するから」と約束してしまった。これでひとつまた余分な義務をしょいこんだわけだ。

 

「おっとこの不況だというのにXXは求人公告をだしているじゃないか。なに?いや感心しただけだよ。会社をやめたりするわけないじゃないか。ところでこの雑誌借りてもいい?」

 

 

2章:もうひとつの物語りの始まり

 

私がYD合コンに行ったその日(9月4日)、Cは彼の友達が主催したところの別の合コンに行っていた。私と彼はおたがいが別の合コンに行くということを知っていた。

YD合コンは非常に興味深いものであった。さて一方のCであるが、翌日かなり上機嫌で、彼が出席した合コンの模様を話してくれた。そしてなんと感心したことに最後に大電話番号交換大会をやっておたがいの電話番号を全て掌握したというのである。これはおそらく画期的なできごとである。合コンにおいてこういった類の交流が行われるためにはかなりの好運を必要とする。そしてなによりもこの好運はCが自分で作り出したものであるところを強調したい。

さてその日の夕方S(♀)とCは話しをしていた。そして(会話から推察するに)CはSに向って「大坪さんってお嬢様(YD合コンの女性参加者は全て筋金入りのお嬢様であった) と合コンしたんですよ。いいですよね。それにひきかえ私は。。。ぶつぶつ」とかなんとか言っていたらしい。そこに行った私は彼が自分が合コンでつかんだ幸せを柵にあげ、他人の幸せなストーリーを語り、自分だけが不幸せであるかのようにふるまうのはフェアではないと指摘した。そしてCがつかんだ好運のストーリーをすべてSに話した。ついでにこれはSにとっても非常にいい機会であるから「このように男の子の言うことを信じてはいけませんよ」と言った。

さてCは次にあるであろう彼が出席した合コンのリターンマッチに私をまぜてくれると約束した。そして私も「中山美穂」に会ったときにかならず次につながる合コンの話しをつくって、Cを招待すると約束している。Give and Take というやつである。

 

3章:中山美穂との出会い

 

1993年9月11日。私は中日ビルの一階で相手の女の子と自爆男を待っていた。

例によって例のごとくこの待ち合わせ場所は混雑していた。私はいつものよれよれした格好である。初対面の相手を待つというのはいつもどきどきする。まさか中山美穂のような女の子が本当に来ると思うほど私は若くない。それでもやはり緊張するものである。

実のところ私は必ずというかだいたいの場合待ち合わせ場所には早く着くので、大抵しこたま相手を待つはめになる。かといって人を待って立っている状態というのはあまり好きではない。なら時間間際にくればいいじゃないかと思うかもしれないが、そうはいかないのが人間の心理の変なところである。

さてそうこうしているうちに約束の時間となったがまだ相手はこない。女の子の二人連れをみかけるたびに物欲しそうな顔をしているのだが、相手からは冷たく無視されるだけだ。

まあたいてい女の子は遅れてくるよなと自分にいいきかせていたところ、いきなりドアを開けて、こちらにむかって歩いてくる女性二人連れが目に入った。

 

相手が中山に似ているかどうかはコメントしない。とにもかくにもこれがTKDの姉の友達こと「中山美穂」とその友達なのである。私はへらへらと笑ってあいさつをした。そうこうしているうちに自爆男も姿をあらわした。ここで特筆すべきは彼女がつれてきた友達の美しさであろう。世間では幹事最大の法則などといって、幹事は自分よりも容貌のすぐれた人間はつれてこないということになっているが、この「友達」はそのくだらない法則をふきとばすのに充分なくらい美しかった。私は最初その美しさと落ちつきからきっと婚約者でもいるのではないか、もしかしたら人妻なのではないかと思って、一生懸命左手の薬指をチェックしていたのである。

4人揃ったところでどこに行こうかという相談になった。私は彼女達がなんの案ももっていなかった場合にそなえて一応腹案はもっていたのであるが、彼女達は「やまちゃんに行こう」と言った。やまちゃんというのは幻の手羽先で有名な飲み屋である。私は気どらない飲み屋が好きなのでもちろん異存はない。さっそく4人でなかよく飲み屋に向かった。

さて飲み屋にはいってみんなで会話となったわけである。

初対面の男女4人の会話であるから別にそんなとっぴな話題があるわけではない。普通にしゃべっていたが、特筆事項がないので内容について全然覚えていない。一つだけ覚えている異様な話題というのが、女の子たちからの男の子たちに対する質問、「どこの大学をでてるんですか」攻撃であった。ことわっておくがこれは飲み会であって御見合いの席ではないのである。できれば飲み会ではこういう恐ろしい話題は避けてもらいたいものだ。

さて今回一緒に行った自爆男というのは非常におもしろい特性をもっているのである。最初は進められないと飲まない。ある程度以上のませてリミットを越えると、自分で酒の瓶をかかえて他人がとめるのもきかずに飲み出すのである。こうなるとしばらくは非常に宴会うけのする人間となるのだが、最後には自爆することになる。

というわけで、リミットを越えるか越えないかの線で制御すれば非常におもしろい男となり、なおかつ自爆せずにすむわけだ。わたしはそういった最適制御をこころがけたが、この日は少し飲ませ方がたりなかったかもしれない。しかし自爆されるよりは何倍もましである。

そうこうしている間に、男性二人の視線がどうしても中山美穂ではなく、友達のほうにかたよってしまうのはこれはしょうがないことであろう。したがって幹事最大の法則が真実かどうかしらないが、合コンにおいて異性の注目を集めたければ、その法則を守ったほうがいいかもしれない。

さてなにを話したか覚えていないので、あっさりととばして店をでてしまおう。やまちゃんを選んだことが幸して、しこたま食べて飲んだのに一人2000円でおつりがきた。さて店での会話はまあうまくいった。ここで私は自爆男、及びCへの義務をはたさなくてはいけない。

女の子二人がおといれに行っているあいだ、男の二人は道端に座っていた。

「おい自爆男。感想はどうだね」

「あのつての女の子(中山美穂のこと)も個性的でいいと思うんですけど、やはり私はあの友達のほうが。この後名刺攻撃にでようと思ってるんです。」

「よしおじさんにまかせておきなさい」

女の子二人を加えた4人は栄駅まで歩きはじめたのである。ここで、私は中山美穂と話すことにした。そしてあとの二人と距離をとることをこころがけた。後に残るのは自爆男と友達である。自爆男。私の屍をのりこえていってくれ。

中山美穂と話すふりをしながら、耳は後ろを向いていたのである。彼らの会話は以下のような調子だった。

「これ僕の電話番号ですから。」

「あらありがとう」

「それで、あの電話番号教えてもらえませんでしょうか」

「ああ。こちらから電話しますから」

この会話をみて成功とみるか、失敗とみるかは人によるだろう。とにかく打席にたってバットを振ることが大切だ。3割バッターだって10回中7回は凡打に終るんだから。

こうして自爆男が攻撃をしかけているあいだ、私はCへの義務に生きていた。次の合コンの話しをしたのである。10月に4人4人くらいでやりましょうという約束をとりつけた。これで私は全ての義務を果たしたことになる。

そうこうしているうちに私と自爆男は一緒に寮に帰った。そしてやすらかな眠りにつくことになった。

 

翌日の日曜日。相手からお礼の電話が留守電にはいっていた。そして二日後にこちらからかけなおしてお礼をのべた。そして次の合コンのメンバを選ぶ段になったのである。とはいっても判断要素は少なかった。自爆男。約束したC、そしてA(以前合コンではなく飲み会として参加してくれと頼んでいたからである),そしてかなり前に合コンがあったら呼んでやるといいながらいままで約束をはたしていなかったSBである。Cと自爆男への義務を果たした今となってはもちろん私は欠席だ。彼らの好運を他の空の下から祈っていることにしよう。

 

次の章へ(HappyDays4章に続く


注釈

合コン:この合コンについては「YD合コン」を参照のこと。本文に戻る

 

枕元に電話をおいて寝た:寝る時間といってもふつうの人間だったらおきているはずの10時である。従って私が寝たあとに彼女が電話してきてもちゃんと気づくようにということで、枕元に電話をおいたわけである。本文に戻る

 

彼が出席した合コンのリターンマッチ:このリターンマッチは実際に行われた。Happydays4章を参照のこと。本文に戻る

 

幹事最大の法則:(トピック一覧)トピック一覧経由、HappyDays11章を見てもらうと他にこの法則の例外にでくわした例がでている。本文に戻る