題名:HappyDays-4章

五郎の入り口に戻る

 

日付:1998/4/15


4章:Girls working in department store

その日私は7時半過ぎ にブレザーを着て、アタッシュケースをもって名古屋駅に下り立った。そしてCが企画した合コンリターンマッチ、「某社の男の子対松坂屋名古屋駅店の女の子合コン」に向かうことになった。

金曜日、東京に出張していた私は、仕事の後名古屋には直接帰らず千葉にいる姉のところに泊まっていたのである。姉の3人の子供にいいように遊ばれていたような気もするが、会社と寮の往復をしている私にとっては、こういった時間はなによりも貴重なものに思えるのである。

さて待ち合わせ場所であるところのななちゃん人形に向って歩き始めた。最近は名鉄の入口に多分ラテン系であろう連中がたくさんたむろしている。ここもいつか米国の危険な地帯のようになってしまうのかな、などと思ってみる。普通の人はこのことに対してかなり無頓着なようである。

歩いている間ほとんど私は無念無想であった。別にこの合コンに大きな期待をかけているわけでもない。しかしC達と電話番号交換大会をやった女の子というのがどういう人なのか見てみたい。私が知る限りにおいてCはあまり合コンで積極的な行動にでるタイプではなかったはずだ。その彼がactionを起こした 相手には興味があった。

 

ななちゃん人形の下についてみるとCが既に来ていた。そして彼は相手の顔を覚えているかどうか自信がないと言い出した。彼は相手の幹事と

「ななちゃん人形の右足に触っているからね」

と約束していたそうである。もしかしたら、むこうもCの顔を覚えていないかもしれない。その危険性を考えるとき、我々はその約束通りのポシジョンにいる方が得策であると考えられた。

それではというわけで、ななちゃん人形の右足の上に腰を下ろした瞬間Cが相手をみつけた。

相手は黒い服できめたわりとはっきりとした顔立ちの女性である。この人がCの話した相手、後にパンスト1号とよばれる女性であった。彼女の弁によると女性は全員集まっているという。こちらは遅刻の常習犯のMr.Kを待たなくてはいけない。とはいっても彼にしては例外的に約束の時間丁度に現れた。

さっそくということで我々はレジャックに向い始めたのである。

この間つて同志のCとパンスト1号が話して前を歩き、その後ろを私達残りの男女がてれてれとついていくということになったのである。その道筋でMr.Kは「わるいけど私は調子がわるい」と言いだした。この男が調子がよくて元気びんびんでいるのを見たことがないとはいわないが、非常にまれである。たいていの場合飲みすぎて気持ちが悪いという顔をしている。彼の弁によると前日朝の2時までバニーガールのしっぽをおいかけまわしていたからなんだそうであるが。こうなるとMr.Kは盛り上げ役として期待できないかもしれない。なんとなくいやな予感にとらわれながらも私達は予約の場所に着いたのである。

場所はレジャック5階の櫓茶屋であった。私はここに大昔に来たことがある。だれとなんで来たのか全く覚えていないが、あまり楽しい会でなかったことだけは覚えている。

さて案内されたこじんまりとした席について、Cがはいそっち。はいあっちと言った。そこで決ったのが以下に示す配置である。

さてここで幹事であるところのCとパンスト1号が対角線上に離れて座っていることに気がつくだろう。これが古くからの合コンの伝統 に従ったのかあるいは何かの意図があったのかは明確ではない。とにかくしばらくのオーダやらなにやらの後に会話が始まった。まずは自己紹介である。

 

男の自己紹介は誰も興味をもたないと思うので省略。女の子に関して言えば、彼女達は名古屋駅の松坂屋に勤めるデパートガールなのである。

まず最初にしゃべったのが幹事であるところのパンスト1号である。彼女は一番勤めが長く、(ちなみにCと同期であるが)パンスト2号といっしょの場所で働いているのである。非常に楽しい、パワフルな人であった。次にしゃべったのが香水1号である。彼女は化粧品売場の香水売場にいるのである。どういう理由か知らないが、傘も同じ場所でとりあつかっているのだそうだ。外観はなんというか目鼻だちのはっきりとした、きっと性格もはっきりしているであろう人。3人目はパンスト2号である。(彼女は一番若い)パンスト1号といっしょのパンスト売場で働いている彼女は、3人のなかでは一番一般うけするタイプであったかもしれない。

彼女の自己紹介の最中に「各売場ではどんな商品を扱っているか」が話題となった。聞いてみると不思議なことに彼女達の売場ではパンストは扱っているが、他の下着類は扱っていないのだそうである。パンストと他の下着類の間のどこに線があるかはいまだかって一度もパンストを使ったことのない私の知るところではない。

さて自己紹介の後にフリータイムとなって会話が進んで行った。

どういう感じで会話が進んでいたか。この合コンにあっては3対3という小人数であるにもかかわらず時にはみんなで話すタイプ、時には二人の世界が3つできるタイプで話しが進んでいた。

みんなで話すタイプでどのような会話が進んでいたか。記憶はかなりあやふやだが、Cが合コン前にパンスト1号から聞いていた「おつぼね」さまの話題が語られていた。その「おつぼねさま」は彼女たちの職場にいる女性、40才でお母さまと二人でくらしているのだそうである。そしてその家にはダイと称する犬が飼われていて、その犬を夜になるとおつぼねさまとお母さまは○○しているのだそうである。それはまるでバター○ではないかとMr.Kが指摘したが、おつぼねさまはバター○という言葉をしらなかったのだそうである。したがってたんにいじくりまわしているだけのようだ。

話しがあぶない方向にむかってしまったが、この後この合コンにおいては3人と等分に話す機会があったのである。

さてはっと気がつくとMr.Kとパンスト1号がなにやら真面目に話している。というわけで私にはパンスト2号と話す機会がうまれた。彼女となにを話したかというとこれもあまり誇りにはできない話しである。

「なんでパンスト売場で下着を売らないの?」という話しから、女の子の買物につきあって行くと、時として女性の下着売場を通らなければならない。これは結構男の子にとって恥ずかしいものだという話しをした。そうすると彼女は確かに男の人はなんとなく恥ずかしそうに歩いて行くと言った。次の瞬間に私の頭をよぎったものは、女性の下着売場によくかざってある女性下着用のマネキン(というかなんというか)であった。あの胴体部分しかなくてなんだか光っているやつである。そしてまたその次の瞬間、マネキンの男性版が頭をよぎった。彼女にその話しをすると「そんなものがあるわけないじゃないですか」と言われてしまった。しかしそれからしばらくのあいだ、私の頭からは男性の股間部分だけのマネキンがなぜか内側から光りながら男性用ビキニパンツをつけている光景がはなれなかったのである。

さて次に香水1号と話す機会にめぐまれた。ところが何を話したか全く覚えていない。もっともこのとき隣でMr.Kが「僕は心が安らげる所が欲しいんだ」などとパンスト1号にむかって話していたのは覚えている。

最後に話す機会ができたのはパンスト1号であった。(ということはだいたいそれまでパンスト1号はMr.Kと話していたことになる。)とは言ってもまたもや何を話していたか覚えていない。そうこうしているうちに突然彼女が「2次会はカラオケにいこう。いまから電話して予約するね」と叫んだ。

なんて気がきいてるんだ。いままでの我々の合コンのパターンというのは次のようだった。

何の計画もなく一次会を終る。

2次会に行こうと話しをして、結局どこに行くか決まらないまま、時間が遅くなり帰ってしまう。

または

カラオケに行こうと言ってあちこち回る。しかし結局どこのカラオケも空いてなくてしょうがないので帰る。

過去の失敗から学ばないのは某社のみではない。我々もおなじ失敗をくりかえしているじゃないか。

 

などという反省はどうでもよろしい。なぜか彼女が予約をしに電話をかけにいくのに私もつきあうことになった。

電話をかけて、2軒目で調度良い時間に予約がとれるカラオケボックスをみつけた。その電話の応対の手際のよさに私が感心していると、彼女は[じゃこの話しをみんなに伝えてね。私中村に行くから。」と言った。

彼女がつけ加えたところによると、中村とは個人名ではなく、いまは三越に吸収されてしまったその昔名古屋に存在したデパートの名前で、彼女達の間では「トイレに行く」ことを「中村に行く」というのだそうである。なんて素敵なネーミングなんだ。

感動しながら席に戻ってその話しをみんなに伝えた。パンスト1号が帰ってきて、私が彼女が気がつくことを誉め讃えていると、Mr.Kが「だから年はとりたくないね」と言った。

実のところこの合コンにおいてMr.Kはこれに類する暴言を5ー6回吐いている。しかしそれでも微笑みをたやさないのがパンスト1号の偉大なところだ。(一言Mr.Kの名誉のために書いておくと、彼は最後にちゃんと「いろいろ暴言をはいてすいません」と謝っていたのである。彼女の答えは「暴言と解っているだけ君はえらいぞ」であった)

 

さて結構な盛り上がりのうちに1次会は幕を下ろそうとしていた。そしてこれからしゅくしゅくと2次会に向かうのである。

 

この1次会から2次会に向かう道の途中というのは、結構それぞれの思惑が出る場所なのであるが、実のところ私はほとんどなにも覚えていない。途中で妙なおじさんに女の子二人がからまれかかったようなきがするが、Mr.Kがさっさとおいかえしてしまった。こういう時にも実にたよりがいのある男である。女の子二人?ということは、残りの一人のパンスト1号はCと2ショットで歩いていたのかもしれない。まあ幹事同志の行動として妥当なものと考えることもできる。もちろん別の解釈もできる。

 

さて2次回のカラオケボックスについた。そして席は最初こんな状態だった。

 

この図において私とMr.Kはまだ座っていないのである。これではまるでかなり距離をおいた集団見合い状態だ。ここでMr.Kがいきなりしきりだして、パンスト2号を男の子側の席に座らせ、自分はその隣に座った。従って最終的な配置は次のようになった。

 

これだとかわいそうなのはパンスト1号である。両手に花なのがパンスト2号。香水1号の隣には一応私がいる。しかしながらカラオケに行くと私は歌うのに集中してしまい、隣に女性がいようがいまいが関係なくなってしまうのであまり彼女をEntertainすることはできないのである。

さて、このあと延々1時間半にわたってカラオケは続いた。みんな上手だったが、実のところそんなことはどうでもよろしい。歌をそっちのけにして、Mr.Kはパンスト2号にいきなり「頬つんつん攻撃」にでて仲良しこよしである。Cもときどきパンスト2号と楽しげに話している。そういった「両手に花」の光景を目の当たりにしているパンスト1号と香水1号の心境はいかがであっただろうか。しかしながら香水1号が仮に少しでも不満に思っていたとしたらそれはとなりでわめきちらしているか、半分寝ている私にも責任があるのである。

さてこのなかで一番早く終電がなくなるのはパンスト1号である。というわけで11時をすぎたあたりからみんなは帰りの心配を始めたのである。となりに座っていた香水1号がいきなり私に聞いた。

「あなたはどこに住んでいるの」

「北区」

「あら近いじゃない」

「あんたどこに住んでるの?」

「千種区」

これはあるいは伝統的な「いやーちょうど僕の帰り道にすんでるじゃないか攻撃」の変形版であったかもしれない。 あるいはたんに彼女の冗談だったかもしれない。しかしひとつだけ確かなことは私が次にいったせりふである

「ぜんぜん方向がちがうじゃねえか。名古屋市という以外なんの関係もないじゃないか」

なるほどこれでまた私は一つのチャンスを棒にふったわけだ。

さてなんだかんだといってそこからみんなで駅の方に向かうことになった。このときの人間の配置というのがこの合コンの収支決算を示していると思う。先頭にCと話しているパンスト1号。そこから少し離れた感じで香水1号。5メートルほど後ろに一人でなにかしきりに考え事をしているような顔をしてる私。10メートルはなれて二人の世界を構成しているMr.Kとパンスト2号。

 

さてこの図式のなかで私がなにを考えていたか。久しく行っていないエロ映画館をみつけて、その場所を覚えようと必死だったのである。

私はエロ映画が好きであった。アダルトビデオもいいけれど、エロ映画にはそれにはない良さがあったのである。しかしアダルトビデオが非常にポピュラーになるに従って、エロ映画は瀕死の状態にあるようだ。それに伴いエロ映画館の数はしばらく日本を離れている間に激減していたのである。

したがって思いがけず道のわきにエロ映画館をみつけた時の感動といったらなかった。そしてその生き残りの映画館の位置を覚えようと必死だったである。当時私は完全に方向感覚を失っていた。

ほかの連中がどうしていたか覚えていないが、後ろでMr.Kが「誰か一緒に伏見まで歩いてくれたら車でおくっていくぞー」とかなんとか言っていたのは覚えている。

さてMr.Kの努力も虚しく私を除いた4人は結局名鉄方面へ、私と香水1号はJRもしくは地下鉄方面にいくことになった。そこでさようならといって私は寮にもどり、やすらかな眠りについた。

 

このあと10月2ー3日にCとパンスト1号はそれぞれ複数の男の子と女の子をひきつれてキャンプに行くのである。翌日C経由Mr.Kの戦果について聞いたところCは言った。Mr.Kは確かになにかを得たと。もっとも彼は単につてがほしかっただけなんだそうであるが。彼も彼の友達に対して合コンのつてを作ってくるという義務を負っていたのである。

さてMr.Kはまあいいとして、次に合コンの間中ずっと考えていた疑問を口にした。Cに「パンスト1号はあんたのことを気に入っているのではないか」と聞いたのである。彼は。。。。なんと応えたかは伏せ字にしておこう。ひとつだけ言えることは、パンスト1号が非常に性格のよい女の子だということである。この点においてふたりの意見は一致した。しかしそれとこれとは別問題ということに関しても我々の意見は一致した。まあ世の中こういうものだ。簡単にカップルができたらおもしろくないじゃないか。

 


注釈

7時半過ぎ:土曜日であるにも関わらずなぜこんなに始まりの時間が遅いか?彼女たちは当日も働いていたからである。本文に戻る

 

合コン:トピック一覧)このころは(HappyDaysの前後を読んでいただくとわかるが)合コン付けの毎日であった。本文に戻る

 

彼がactionを起こした: 別にCが個人的に気に入ってactionを起こしたといっているつもりはない。本文に戻る

 

古くからの合コンの伝統: 「男と女の幹事同士は離れて座るべきだ」(トピック一覧)と言う原則。幹事同士というのはお互い知っているので、別にくっつく必要はないのではないかというところから来ている。本文に戻る

 

過去の失敗から学ばないのは某社のみではない:当時はこう書いたが、これはもっと広く世の中にあてはまる言葉だということに気がついた。「失敗に正面から向き合い、そこから教訓を得て次に生かせた人間は非常にまれ」(トピック一覧)ということなのでははないかと思い始めた。まず90%の人は「失敗を失敗と認めないー目をそらし、話をそらし、事実をねじまげること」で対処する。これは「失敗を失敗として認め、成功へのきっかけにする」とは全く違う話である。

事実大半の人がいかに上手に事実をねじまげるかは、みていて驚嘆するものがある。かつては「事実を認めるのがいやなので、意識的にちょっとずれた話をしている」と思っていた。しかしどうも最近の観察によると、心のそこからねじまがった事実を信じている人も多いように思える。 本文に戻る

 

中村: 正式名称は「オリエンタル中村」という。東山公園か星が丘にも支店をもっていたのだが、全てなくなってしまった。本文に戻る

 

いやーちょうど僕の帰り道にすんでるじゃないか攻撃:トピック一覧参照)要するに女の子がどこに住んでいても、宴会場所から女の子の家を結んだ直線上に男の子の家が移動するという伝統的な攻撃である。本文に戻る