題名:Pia1985年3月22日号

五郎の入り口に戻る

日付:1998/11/20

1985年3月22日号YouとPia

説明


1985年3月22日号YouとPia

私がこの欄を読むようになったのは、ぴあを読み始めてからしばらくたってからでした。それまではなんせ無精なものですから、映画の宣伝を見て面白そうだなあと思ってもなかなか腰をあげないのが常だったのですが。

この欄でよく取り上げられる作品、それらを観に行くようになりました。「転校生」を初めて観たのは、TVででした。TV版でしたけれどとても強く印象に残りました。尾道の風景と、SFチックな設定でありながらとても自然に思える中学生の姿が。「廃市」を見に行ったときは雪でした。「転校生」とくらべて、人間の印象がこんなに変わっていいものかとさえ思いました。もちろん小林聡美のことです。夏、静かに、繊細に、ほろんでいく街のうえで、川の音と。この欄にもあったけどまさしく”日本の映画”という感じでした。

6月に公開された「戦場のメリークリスマス」を「時をかける少女」と2本立てで観たのは、2月でした。この映画で印象に残ったのは、ひたすらTakeshiの演技。表情のひとつひとつに、セリフのひとつひとつに、文字通り釘付けになり椅子に沈み込んで動けませんでした。あとでぴあを読んで”圧倒的な存在感”というのか、と思いました。

アイコ一六歳」を観たのは公開から一年たってから。この映画の舞台である名古屋は私の出身地でもあるのですが。若いスタッフと役者さんで作った映画ということを聞いていましたが。言葉でいうと、”若々しい感覚”それだけですけど。自分の高校時代を思い出しました。そしてちっともうまくいかなかったけれども、一生懸命だったことも。それならばきっと今の自分も、将来振り返ることがあれば。

コンサートにも少し行きました。ぴあにあった広告の写真が気にいっただけで、何も知らないで白井貴子のコンサート行って大騒ぎしたり。epoのコンサートも行ったけど。なんと言ってもRC-SUCCESSION!今年も含めて三年連続で武道館に行きました。年々良くなってきている気がする。RCはいつだって思春期なんだもん。思春期には年々背がのびるのさ。トランジスタ・ラジオの歌詞をしみじみといいと思ったのも初めて。もう授業サボって屋上でタバコふかすこともないけれど、内ポケットにいつも、今も、トランジスタ・ラジオ。清志郎が言う。”これからものさばってやるぜ!”そう、僕ものさばってやるんだ。色んな今までとは性質の違う困難につきあたるだろうけど。

 

4月から名古屋に帰って就職します。東京での学生生活は楽しかったように思います。

 

新宿区・膝方歳三


説明

 この文章は、題名の通り1985年3月22日号のぴあ(当時は関東エリアにしか存在しなかった情報誌)の巻末に近い場所にあった(今もあるが大分装いが変わってしまった。今の雰囲気では間違っても私の文章がのることは無かろう)YouとPIAというコーナーに載ったものである。この前に雑誌に文章など投稿したことはなかったし、それからもあまりした気がしない。

何故この文章を書いたかは定かではない。ただふとしたきっかけから、当時研究室で使っていたPC-98に向い、「松」というワープロソフトを使ってこの文章を一生懸命書いていたことを覚えている。

ちなみにこの「ぴあ」に載っているいくつかの記事をひろってみよう。「ターミネータ」の試写会の案内、松田聖子、神田正樹競演の「カリブ・愛のシンフォニー」と富田靖子主演「さびしんぼう」が4月13日土曜日より東宝系大公開。東芝のコンパクトなTVの宣伝には「岡田友希子」がほほえんでいる。FMラジオで「人気の男性アイドルにスポットを当てる5日連続の特集」でとりあげられているのは「吉川晃司、シブがき隊、田原俊彦、近藤真彦、チェッカーズ」である。

今この文章を自分で「打ち写して」見ると、文体は変わっていないが、細かいところは結構変わっていることに気が付く。今は「SFチック」などという言葉は使わないだろうし、会社にはいってからやたらと指摘されたように句点が非常に少ない。

当時ようやく東京での学生生活が気にいってきたところであった。そして「あと2年くらい学生をやろうか」と思って大学院を受けたら見事にすべってしまった。おまけに大学時代ずーっと女性にほとんど縁がなかったのだが、東京を離れる間際になって、妙に縁ができた。(当然のことながら、それらはほんの数週間後には消える運命にあったが)

従って当時の私は東京を離れることに対して、結構感慨が深かったのである。全般的にいいことばかりあった大学生活ではなかったが(悪いことがあったというよりは退屈だった、というのが正確な表現だと思うが)ふとふりかえってみると結構楽しかったな、という思いがこの文章をかかせたのではないだろうか。

 

皮肉なもので、名古屋に帰ってしばらくは「なんで車がないと何もできないんだ」とか「どうして女の子がきれいじゃないんだ」とかわめいていたのは数ヶ月。すっかり田舎の生活が気に入ったころに妙な具合からまた東京ではたらく身分となった。今後がどうなるかはわからない。だいたい今までのところ「これからの人生について」たてた予想は全て外れているのだ。

などといろいろ打ち写している間に考えることはあるのだが、とにかく私はこの文章が自分で気に入っている。だからホームページに載せることにした。

 

ちなみに「ぴあ」はこの文章を載せるにあたっていくつか変更を加えている。上記文章で「ぴあ」となっているのは私のオリジナルでは「貴誌」となっていた。そして最後に次の文がついていた。

 

「貴誌に、特にこのコーナーにお世話になることが多かったように思います。ありがとうございました」

 


注釈

転校生:(参考文献一覧)大林宣彦監督の「尾道3部作」の第一作。これらの映画を観て尾道に足を運んでみようと思った人は多いだろう。本文に戻る

 

廃市:(参考文献一覧)この「YouとPia」というコーナーはページの中央に簡単なイラストと文で、その号ごとに映画や演劇やコンサートをとりあげている。この「廃止」に関しては「日本の映画という感じ。小林聡美はすごくいい」とコメントがついていた。本文に戻る

 

戦場のメリークリスマス:(参考文献一覧)「俺達ひょうきん族」でたけしが、この映画のパロディをやっていたのを覚えている。題名は「戦場のメリーさんの羊」だったか。本文に戻る

 

時をかける少女:(参考文献一覧)原田知世のデビュー映画であり、代表作かもしれない。本文に戻る

 

アイコ一六歳:(参考文献一覧)ちなみにこの映画の舞台である「星ヶ丘高校」なる学校は存在しない。本文に戻る

 

YouとPIAというコーナー:このコーナーの説明を引用しよう「読者の皆さまが作る2ページです。映画・演劇・音楽・美術ほか、ぴあを片手にあなたが見、聞き、感じたことを編集部「YOUとPIA」係まで、気軽にお寄せください。ときめき、感動、怒り、疑問等々、率直な声、よりホットな話題をお待ちしてます。本文に戻る

 

PC-98:これも今は無くなってしまった。ちなみにこの98とは何も記号がつかない98である。本文に戻る

 

ターミネータ:(参考文献一覧)ネットワークでよく使われる終端抵抗を「シュワちゃん」と呼ぶようになった人は結構世の中に多いに違いない。本文に戻る

 

さびしんぼう:(参考文献一覧)All timeで私の好きな映画上位3本を下ることがないと思う。主演の富田靖子は、歌はお世辞にもうまいと言えないが、演技はすばらしい。本文に戻る

 

岡田友希子:彼女をこのしばらく後に訪れた運命については、私と同じ年頃の人は覚えているかも知れない。彼女は大変可憐なアイドルだった。私の同期に「岡田友希子が好きです」と言って、どうどうとフジTVに入社した男が居る。ある日寮で晩飯を食べていた。食堂の端にあるTVでは、NHKのニュースをやっていた。いきなり彼女の顔が写ってなんだろう?と思ったら、彼女が投身自殺したというニュースだった。本文に戻る

 

今までのところ「これからの人生について」たてた予想は全て外れている:(トピック一覧)トピック一覧をたどると他の例がみつかると思う。本文に戻る

 

新宿区・膝方歳三:私はいまでこそ、大抵の場所で本名を名乗っているが、この頃はペンネームを使っている。当時住んでいたのは高田馬場からあるいて5分のアパートであり、この名前は私の愛読書「マカロニほうれん荘」(参考文献一覧)の主人公の名前である。本文に戻る