題 名:巡り巡って

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日付:2007/4/17


養 老の滝への門:千葉県(2007/3/30)

千葉は遠くそして広い。

休みが一日取れること となった。どこへいこう。東北はまだ寒そうだし、北陸は少し遠いかな。東海地方にもいくつか行っていない場所はあるが、また行く機会もあるだろうし。など と考えているうちあることに気がついた。

私 が住んでいるのは神奈川県。考えようによっては千葉県は隣の県だ(東京都ないしは海を挟んではいるが)しかしそこにあるいくつかの珍スポットはあまりに遠 い。何度か行くことを検討したのだが、まる一日かかっていけるかどうか、ということで断念している。近くに見えているようでも千葉は遠いのだ。

こ の際この近くて遠い千葉を巡るというのはどうだろう。そう決めるといくつかスポットをピックアップ。そして巡るための時間表を作り上げる。これでOK.木曜日 のうちに移動しておき一泊して回り始めればなんとかなりそうだ。さて宿を予約するか。

しかしそこでいやな予感が頭をよぎる。一カ所バ スを使うところがあり、案内には「養老渓谷駅からバス25分」と気楽に書いてある。しかし今まで何度これで痛い目にあってきたことか。ちょっとバスの時刻表を調 べようと検索する。

す るとこのバスは日曜日だけに数便運行されることが分かる。私が行くのは金曜日だし、どちらにしてもこの運転間隔では役に立たない。どうしよう。しばらくう ろたえた私は一つの結論を出す。これまで珍スポット巡りは止む終えない場合を除いて公共交通機関を用いて行ってきた。しかし今回それは無理だ。レンタカー を借りよう。そして心残りのない程度に千葉の南部を巡るのだ。

そう考えた私は3月30日の朝木更津で目覚める。木更津と言えばキャッ ツアイ・それ が何のことだかよく知らないがとにかくキャッツアイだ。しかしそんなことはどうでもよい。染みがついたカーペットの張られた廊下を歩いていく。ここの最上 階とその下は結婚式場とそれに付随する施設になっている。ここで結婚式を挙げる人もいるのだろうな。いろいろな場所がありいろいろな生活がある。

チェッ クアウトするとレンタカー屋に向かう。途中廃墟と化したホテルが目に入り、思わず寄り道してしまう。しかし今はそんなものにかまっている暇はない、と自分 に言い聞かせ歩き出す。

看 板が見えたので先を急ぐ。小さな掘っ立て小屋のような場所に女性が一人。頼んでおいたのは軽自動車。なるべく安くということで選んだのだが、数十分後その選択 が別の意味でも正しかった事を知る。あれこれ受け付けてもらうと出発である。まだ木更津の町をでない範囲だと走っているのは軽自動車ばかりだ。確かに近所 をちょろちょろ走るのならこれが一番という気がする。カーナビ様のお告げに従いひたすら走り続ける。そのうち雨がぽつぽつ降ってきた。今日は朝のうちが雨 でその後晴れるという予報だった。朝おきてあまり降っていないからこれは楽勝か、と思ったのだがやはりそうはいかないようだ。そのうち降り方がだんだん激 しくなってきた。風もすごい。密閉された車の中は平和な空間だが、これを公共交通機関で回ろうとしたらえらいことになっていただろうな。

そ のうち 道がだんだん細くなってくる。というか地図上では立派な国道でも実際通ってみると片側一車線の狭い道路だ。そのうちそれも贅沢に思えるようになってきた。 対面してすれちがうのがやっと、というところが増えてきたのである。ああ、やっぱり軽自動車にしておいて正解だった。

そのうち養老渓 谷が近づいて くる。今日最初にいくところは、養老の滝と呼ばれており、検索エンジンで情報を集めるのに苦労する。居酒屋はいいとして、そういえば小さい頃養老の滝(これは東海地方)に行っ たことがあったなあ。道路をカブトムシが集団で歩いていて肝をつぶした記憶があるのだが、あれってやっぱり夢か何かだったのだろうか。
な どと言っ ている場合ではない。目的地が近づいてきたのだ。ナビは「詳細図がありません」とかいっておおざっぱな情報しか示してくれない。養老渓谷駅をすぎ、何もな くなったなと思ったところでふと道路の左側に建物があるのに気がついた。ほれほれとそれを通り過ぎようとしたところで、あわてて駐車場に入る。ここが今日 の目的地だ。

反対側の建物


こ れが 道の反対側にあったれっきとしたホテル。ここに泊まろうかとも考えたのだが、ここまでどうやって来たらいいのだ。養老渓谷駅まで送迎とかあるのかな。い や、今はそんなことを言っている場合ではない
目的とする場所はその反対側にある。私が見た順番に説明していこう。
firstShot

まずはこのよ うに見える。ただの廃屋という気がするが、屋根の上が気になる。近づいてみる。まず見えてくるのは金網に閉ざされた何かだ。
鳥かご
円形の板にはこうかかれている
「不 老長寿 卵と肉を産む 烏骨鶏」
とはいうものの中には何もいる気配がない。その隣にある玄関のくずれ具合からしてやはり鳥がいるとも 思えない。
玄関

上の 写真のなかの柱の一つは、トーテムポールのようになっている。それはこの後に何がくるかを予感させる。
pole
その先にはこんなものがある。 何かがゆがんでいるように見える理由の半分は、これが2枚の写真を貼り合わせてものだからである。残りの半分はこの場所自体が持っている力によるものだ。
壁

よくみると右上に狐だか犬 のような顔が浮かび出ている。その左に書いてある文字は「文明開化」と読める。首だけ埋め込まれた仏像の綺麗さが何とも言えぬアンバランス感をもってい る。

となるとここはなんらかの信仰の場所だったのか、とふと「飛鳥山聖徳院 観世音」を思い出す。その先には養老 の滝に通じているとおぼしき「門」がある。

滝への門

左端に見える「養老の滝」とい う看板だけがまともなのだが、この異様な光景の中ではそれが浮いて見える。上に二つつるされている提灯も何かいやだ。などというのは今こうして雨風の及ば ない部屋の中でキーをたたいているから言えること。そのときの私はとにかくカメラを雨から守り、シャッターを切ることで精一杯だ。私はただシャッターを切 り続ける。

000102
030405
0304

木の形状をそのままに用い彩色したその「彫刻」群、それに「うれしいか 滝の神がた 行楽デ!!」という言葉は今は無き「神秘珍々ニコニコ園」を思い出させる。私は再び誰かの脳内世界が現実世界にあふれ出した空間に入り込んでしまった。

そう思えばこの時豪雨だったのは幸いだったかもしれない。毒気に当てられるより、とにかく雨を避けシャッターを切ることで精一杯だったから。そこから出るとこんな様子だ。

あじさい入り口

この像はなんなのか。あじさい入り口ということは、ここにはあじさいがあったのか。今は単なるやぶにしか見えないが。

謎は深まるばかりだが、雨がひどい。振り返れば屋根の上にそびえ立つ塔が気になる。

謎の塔

道路の反対側にあるみやげものやに駆け込みトイレを借りる。あれはいったい何なのか、と聞こうかと思ったが、店の人は奥にはいってしまった。しかたがない。雨はますますひどくなってきており、また外に行く気にもなれない。最後に一枚だけ写真を撮りその場を後にする。

豪雨

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注釈