題名:巡り巡って

五郎の入り口に戻る
日付:2022/9/4


府中へ:米軍基地跡:東京都(2022/8/6)

この日朝の4時に起きて散歩をした。そして悟りを得た。人生の苦悩の9割は1日の最低気温が23°になった瞬間消滅する。

ちょっと待て。お前の人生にはそんな苦悩しかないのか、と問い詰めないでほしい。ここ一週間だか何日だかもう思い出せないほど長い間酷暑が続いており、冷房をかけた室内にいても

「あー、何もしたくねー」

という状態だったのだ。

しかし今日はどうだ。散歩に出てもさわやかな風をほおを撫で、もう少し長く歩こうかと考えてしまう。かくして人生に前向きになった私はかねてから考えていた計画を実行することにする。今日を逃すと今度はいつ外出できるかわからない(気温的に)

というわけで

朝ごはんを食べ終わると「ちょっと出てきます」とだけ言い残し家を出る。電車にかたこんかたこんと揺られる。最近は「ああ、この暴力的な熱と日射はなんなのか」と思っていたが今日は「ちょっと暑いかな」くらいで済む。気温の神様ありがとう。

電車に乗ること数十分。府中本町という駅で降りる。すぐそばに巨大な建物が見える。府中競馬場である。しかし今は先を急ぐ。まもなく巨大な神社に突き当たる。人が何人も来ていることに気がつく。今日は広島に原爆が投下された日。そんなことを考えながらひたすら歩き続ける。ふとこんな看板に目を止める。

全景

いや、なんということはないんだが昨今の国際情勢を考えると

「府中国際学生会館」

と「中国」の何かのようみ見えませんか?私だけですか。すいません。

などと誰に謝っているのかわからない独り言を呟きながらもずんずん前に進む。昨日までだったら確実にオーバーヒートし行き倒れになっている状況だが、少し汗をかくだけで済むのがありがたい。そのうち前方になにやら公園のようなものが見えてきた。目的地は近い。さらにがんばって歩く。地図アプリで目的地にしていた府中美術館の脇を通る。ここだけ道の標識がなにやら美術っぽくなっているが、罰当たりの私は美術館に目もくれず進み続ける。道の右手は木と草がおいしげっており、こんな看板もある。

国有地

ここが元米軍基地のエリア。返還された場所は公園などへの転用が進んでいる。しかし2021年9月末に返還されたばかりのエリアを含め、利用方法未定のいわば放置されたエリアが残っている。今日はそこをぐるっと一周しようとしているのだ。ちなみに道の反対側はこんな光景である。

狭い住宅

幅の狭い家を撮ろうと思ってシャッターを押したのだが、手前に映り込んだバイクの人もなかなかのインタパクトである。ひたすら道路を進み続ける。右手にはとにかく深い藪と森があり、中は見通せない。一部通路らしきものも見えるが。

そのうち普通の住宅に突き当たった。そこからは道を右手に曲がり住宅街をくねくね歩き続ける。妙に趣のある変電所が見えてくる。とはいっても今日の目的地はここではない。なんとか元米軍基地から離れぬようにと道を選んで歩き続ける。そうやっているうち不意にこんな光景が現れる。

最初

ある住宅の脇から今日目標としてきた二つのパラボナアンテナが見える。おそらくこの場所にカメラをもって訪れる私のような人間は珍しくないのだろう。近くで人が二人話しているが、私を気にしている様子はない。私は写真を撮り続ける。

最初
最初

しかしこの場所からだと細かいところがわかるようなわからないような。そんなことを考えながら望遠レンズをいっぱいに伸ばす。

アップ
アップ

こうやってみると、アンテナの中心になにか手前に飛び出た部分があるように見える。なんとかこれをわかりやすく横から撮影できないか。その後このエリアの周りを歩きながら何度もトライするが結局成功しない。そうこうしているうち鳥がアンテナの上に止まる。

鳥

この鳥にしてみればこのアンテナが何物であり、誰の管理下にあるかなどどうでもいいことだろう。しかしひょうっとしてここから最大出力で電波が放射されると焼き鳥になったりするのだろうか。

そこからさらに移動する。あのアンテナがこちらを向いているということは、ここらへんの住宅はあのアンテナから放射される電波にさらされていたわけか。であればさまざまな問題もあっただろう。そんなことを考えながら住宅街を歩き続ける。建物とか木が邪魔してなかなかアンテナを見ることができない。その隣の塔はみえるのだが。これが一番よく見えたもの。

住宅越し

そこからまだまだ歩き続ける。道の右側は半ば原生林、左側は住宅街。右川から圧倒的なセミの声が聞こえる。いつまでこの原生林が存在するかわからないが、動物や昆虫にとっては願ってもない生息場所だろう。

そのうち大きな禅寺が見えてくる。ペット霊園でもあるらしく、工事中のフェンスには犬猫のイラストが描かれている。今調べてみればなんと百年以上の歴史を持つと称するペット霊園であった。そこから歩くことしばらく、大きな建物が見えてきた。府中生涯学習センターである。その隣には公園やテニスコートのようなものがあり、そこからもアンテナの一部が見える。

建物越し

改めて写真をみると、裏側の構造物が見えるな。この生涯学習センターの上の方からならうまく見えるのではないかと思ったが、元米軍エリアに面した窓にはなにやら貼られているようにも見える。いずれにせよ、そういう邪な考えで建物に入られても迷惑であろう。というわけで近づけるところまで近づいて、タワーを撮影する。

タワー
タワー

そこからしばらく歩くと、藪の中にこんな看板がある。

手紙

さまざまな言語で立ち入りを禁じているようだが、看板自体が朽ち果てかけている。新しい看板は日本語でしか書かれていないから今はそれで機能するのだろう。その先にはこんな建物跡がある。

足元

Web上の記事を読むと以前はもっとたくさんこのように朽ち果てた建物があったとのこと。しかしその多くは解体されてしまった。これは残ったものか。いずれにせよこのエリアが今後どうなるのかはよくわからない。今日見たアンテナもいつまで残っていることか。

といったところで私は駅に向かって歩き出す。駅の近くでお昼を食べようと思っていた私の視界に巨大な建物が見えてくる。府中競馬場。私はラスベガスに行ってもご飯を食べるだけで1セントも賭け事には使わない人間。だから競馬には興味ないがとにかく建物がでかい。事前に調べたところあそこにもお昼ご飯を食べられる場所があるとのこと。であればちょっと行ってみるかとそちらに向かう。

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注釈