題名:巡り巡って

五郎の入り口に戻る

日付:2004/11/3


LORETTO CHAPEL-Miraculous Stairway:米国NM Santa Fe(2004/10/23)

ここはお国を何千里。はっと気がつけば私は米国New Mexico州のSanta Feにいる。かといって宮沢りえがいるわけでもない。なぜそんなところにいるのか、と聞かれてもこまる。とにかく来てしまったのだ。

ホテルにチェックインはしたが部屋の準備はまだまだ時間がかかる。というわけで重い荷物を背負ったまま観光にでかけたわけだ。この町はとにかく変わっている。生活という雰囲気が全く存在せず、しゃれた画廊やら、美術品を売っているところやらそんな店ばかりがある。そしてその名もAdobeという日干し煉瓦で作られたものを模した構造の建物ばかりがある。

などと感動していてもしょうがないから、ホテルの裏の道に入る。Old Ssanta Fe Trailとかいう通りなのだが、歩いていくと古いとおぼしき教会がある。普通の教会の入り口は閉められており、脇にはいる場所がある。そこでいくばくかの入場料を取られるわけだ。教会には横から入る。

入ってみたところ極めて普通の教会という気がする(いや、教会そんなに行ったことがあるわけじゃないんだけど)特に古いとかそういうわけでもない。しかしこの教会には見所があるのだ。(少なくとも彼らはそう思っている)「奇跡の階段」-Miraculous Stairwayである。

なんだ普通の螺旋階段ではないか、と思い近くを観ればこんな写真がある。

これは合成写真なのだけど、この階段が造られた時は本当にこんな風に手すりがなかったらしい。うむ。これは奇跡というより恐怖の階段だ。理論的には大丈夫とはいえこんなものを上り下りしろ、と言われたら発狂してしまうかもしれない。というか最初からつけろよ、手すり。

ふと気がつくと場内にテープと思しき声が流れ続けている。私のヒアリング能力では全てを聞き取る事はできないが、たぶんこんな話だと思った。

教会に中二階を造ったものの、普通の階段を造るスペースがない。というわけで場所をとらない螺旋階段を造った。これを造ったミステリアスな大工は階段の完成後どこへとも知れず姿を消した(洋の東西を問わずこうしたお話は有るようだが)何がすごいといって壁とか柱とかから支えられておらず、ただ自立しているのがすごい。今はちょっと柱から支柱がでてるけど、それは表通りの自動車の振動に堪えるためなんだよ。

ふーんと思いながら私は聞き続ける。そう聞けばなんだかすごい気がするけど、「奇跡の」はいくらなんでもオーバーではなかろうか。米国人は何でも強烈な形容詞をつけたがるのだけど。

そう思いながら出ようとする。するとあの階段で結婚式をあげた人たちの写真が飾ってある。まあ思い出にはなるかもね。その隣にはこんな模型がある。

日本のお城の中にも大抵木で造ったお城の模型があるけど、こういうのはどっか人間性奥深くに根ざした衝動なのかしら。などと思いながら外に出ると、入ってくるときは気がつかなかった像に気づく。

大工道具を両手に持ったナザレのイエスと思しきおっさんの像である。あーたいくら奇跡の階段といってもこれはないのではなかろうか。そりゃ確かに彼は大工の息子だったかもしれんけどさ。

というわけでこの像を観た瞬間、この教会を「巡り巡って」の珍物件として取り上げることに決定である。

その先にもう一つもっと古い教会があったのだが、こちらは正統派であり、とてもここで取り上げるわけにはいかない。

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注釈