題名:巡り巡って

五郎の入り口に戻る

日付:2004/5/4


飛鳥山聖徳院 観世音 : 東京都(2004/4/25)

4月の晴れた休日、映画を見終わった私は京浜東北線にのり、家とは反対の方向、北へ向かう。すわってぼんやりすることしばらく。上野を通り過ぎ降りたのは王子という駅である。

ここには飛鳥山という公園があるらしいのだが、などと考える間もなくホームの脇にこんもりした山が見えている。きっとあれだろう。ここで問題です。今日の目的地はどこでしょう。珍寺大道場の記述を頭の中で思い返しながら、まあとりあえず飛鳥山の入り口に向かうか、と歩き始めた時気がつく。あそこに見える飲食店の並び。ひょっとするとあれが今日の目的地ではなかろうか。

大して期待もせず近づいていくとある物が目に入る。その瞬間毛が逆立つような感覚を覚える。ここだ。

ただの民家とおぼしき場所に存在するこの像。半ば唖然として一度その前を通り過ぎる。その先には何軒か小さな飲み屋が並んでいる。夜になれば鮮やかに見えるのかもしれないそれらは日の光を浴びてその小さく古びた外観を見せている。

あの建物はこの並びの一番端にある。こちらから観ていくと普通の民家に見える。

しかしよく観ると中央に先ほどと同じ像があることがわかる。そしてその像の周りだけを拡大すると様子は大分変わってくる。

左右を像にまもられた扉は左右の高さがあまりにも食い違い、そしてチェーンで閉じられている。それだけではたらなぬように自転車とおぼしき物体が門を塞ぐように縛り付けられている。少し姿勢を低くし、すだれの奥を覗くとほのかな明かりが見える。つまりこの建物は生きているのだ。いくつも犬印が貼ってあるところをみると犬もいるのだろう。

その先は普通の住宅のように見えるが、何かが違う。2階の床下に何かが見える。あれ、と思い見上げると奇妙な物が見える。これはなんだ。(次の写真は違う角度から撮った物である)

右下にあるのが前掲した門。しかし2階につきだしているこの物体はなんなのか。周りを2階の構造物に覆われておりその正体を知ることはできない。もっともその物体の先っぽ近くで寝ている猫ちゃんはそんなことを気にしていないようなのだけど。

その先には小さな観音堂がある。局部的に観ればそれはそれほど奇妙な物ではないかもしれない。(扉に書いてある文様が何か私にはわからないが)ちゃんとしたお花もあるし。

しかしその上にはなにやら奇妙な形の物体が存在している。そして角度を変えてみたときそのさらに後ろに何かが存在していることを知るのだった。

いまこうして落ち着いて写真を見れば、後ろにある何かに雨漏り防止用のシートとおぼしきものが掛けられているのがわかる。しかしそのときの私はその道をはさんだ反対側にある物に心を奪われていた。

首の落ちた像である。それを観ていると何とも言えぬ感覚に襲われている。ここは何なのか。この空間は何だというのか。

動揺しながらも先に進む。よく気をつけてみると観音堂の隣にもう一つ小さな建物が有ることに気がつく。

瓦が落ち、くずれかかったこの小さな建物はなんなのか。そして手前にあるこの像は。心の中で冷や汗を流しシャッターを切り続ける私の脇を何人かの人が通り過ぎる。彼らはここを観て何も感じないというのか。いや、私とて最初通り過ぎた時はこんな場所だとは夢想だにしなかった。

こうしてみれば向こうには王子駅が、そして手前には普通の家がある、と思いたいところだ。しかし今の私には画面左下に見える二本の突起物が気になってしかたがない。あるサイトによればここは二十数年前からうち捨てられた寺だったとのこと。その後何かの理由により壊されないまま二階建ての家に取り込まれようとしている。

その後坂道を上り飛鳥山公園に向かった。暖かい春の日曜日。公園は光と親子連れであふれている。しかし私の頭からはあの異様な雰囲気が離れない。一回りしただけで坂道をおり王子駅に向かう。もう一度振り返ってみると最初と同じ像がこちらにほほえみかけている。

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注釈