題名:巡り巡って

五郎の入り口に戻る

日付:2003/11/2


さざえ堂-正宗寺円通三匝堂:福島県(2003/10/25)

寝ぼけた頭で地下鉄に乗りJRにのり、東京から新幹線にのる。郡山で降りると乗り換えだ。さて、次の電車は、、と観ると結構時間がある。昨日某サイトでいくら条件を変えて検索しても、これより早く会津若松に到着できない、という結果が帰ってきたのはこのためであったか。おそばなどたべながらのんびり待つ。

まもなく来た電車に乗って揺られることしばらく、終点会津若松駅で降りる。駅前からバスに乗ると飯盛山というところで降りる。するといきなり白虎隊に関するものが全開である。ここはその昔白虎隊なる人たちがなにやらしたところであった。

というくらい彼らについては名前だけしかしらない。少しは勉強しようと言うことで、資料館のようなものに入ってみる。しばし展示物を眺めてわかったことと言えば

「戊申戦争の時に、少年達を集めた白虎隊が結成されました。彼らは城から煙が上がったのを観て落城した物と勘違いしみんなで自殺しました」

というところ。今とは価値観が違う時代についてあれこれ言うのは筋違いかもしれないが、何故そのような話がこんなに有名になるのだ。

というわけで勉強はおしまい。目の前には上り階段が果てしなく続いている。250円払えば隣にあるエスカレーターに乗れるらしいのだが、そんなものを使うのは珍スポット魂が許さない、はあはあいいながら階段を上る。あと100円安ければ珍スポット魂を放り出してあれに乗ったかもしれないなあ。

などと考えているうちに登り切ったようだ。いきなりでてくるのが、ローマとドイツのダブル記念碑である。

特にローマのそれは純和風の周りの景色とはどうにも相容れない。ドイツの碑文は占領軍にけずりとられたものを復活させたらしいが、占領軍もこんなものまで削り取ってご苦労なことだ。その先に白虎隊が自決した場所があるが、階段を下らなくてはいけないので、行く気がしない。せっかく得た高度を失ってたまるか。

さて、今日の目標はまだ先にある。階段を少し下ると「階段のない道」という看板がでてくる。ぷらぷら坂を下るとそれは見えてきた。

さざえ堂である。詳しい解説は珍寺大道場のページに譲るが、平たく言えば参拝者がすれ違うことなく一方通行の回廊を歩いていけばたくさんの観音やらなにやらを拝むことができるような構造を持った建物のことらしい。それにしてもここの建物は変わっている。建物全体が螺旋階段そのものといった外観をしているのだ。

眺めているうちにだんだん「水平、垂直」という概念が怪しくなってくる。全ての線が傾いているような気がしてくるのだが、それではまっすぐとはなんだ。入り口の前では女子高生とおぼしき女性が単調な声で「螺旋階段はいくらでもありますが、2重螺旋階段で行きと帰りがすれ違わない物は世界でもここだけ」と説明文章を繰り返している。

400円だかをはらうとさっそく入ってみる。入り口には天皇陛下もいらっしゃったとかヨーロッパにある螺旋階段の写真とかいろいろ貼ってある。そこから延びるスロープには階段がない。緩やかな勾配をもった床板に横に木がうちつけてあるだけである。

そのゆるやかな坂を登っていく。内側には柱があり、なにやら絵のような物とその説明がかかっているが、その絵がなんなのかはよくわからない。公式サイトによれば、その昔は三十三観音があったのだが、神仏分離令のために取り外してしまったとのこと。そこまで律儀に分離しなくてもいいと思うのだが。現在は皇朝24孝の絵が飾ってある。

くるくると廻っているうちに頂上に着いた。ここで上り階段から下り階段に移ることになる。

いつのまにかここには入場時もらったしおりに名前やら願いをかいて結びつけておく場所になったようだ。なんとか天皇の場所はそうしたしおりで埋まっている。

下りも緩やかなのでのんびり降りることができる。頭のすぐ上から足音やら話し声が響いてくるところからみると、ここは上り階段と下り階段が上下に重なったような構造になっているのだろう。こうして自分で歩いてみて初めてこの解説図の意味がわかるという物だ。

一度入り口をでてまた外からこの異様な建物を眺める。とにかく構成する線のほとんど全てがゆがんでいるような気がしてくる。よく観れば土台とも言うべき地面に接する部分からして傾斜を持っている。

よくこれを設計して組み立てた物だと感心する。入り口付近に「三重の塔、五重塔は外から観る物。さざえ堂は登って眺める物」と書いてあるが、確かにこの建物は二重螺旋階段を成立させる、そのためだけに作られた物だ。私にはこの建物を作り上げた人間のしたたかなロック魂が感じられるのだが。

などとなかなか感動したことはしたのだが、この山一帯にどことなく「珍」の雰囲気が漂っているような気がするのは何故だろう。白虎隊ゆかりのあれこれがあるのはいいとしよう。さざえ堂を眺めているとどこか傾いているような気がしてくるから、ピサの斜塔と比べるのもよいか、それをそのまま文字にし、こうした石碑にまでしてしまうのはいかがなものか。

あちこちにあるさざえ堂の宣伝とおぼしきこれだってどこか変だ。

そもそもこのお姉さんは誰なのだ。

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注釈