題名:巡り巡って

五郎の入り口に戻る

日付:2002/10/17


川崎大師:神奈川県(2002/10/14)

関東の名刹、真言宗智山派・大本山金剛山金乗院平間寺(通称厄除弘法大師または川崎大師)は、もろもろの災厄をことごとく消除する厄除大師として、霊験あらたかなことは、むかしから有名であります。

川崎大師のサイトより

かくのごとく川崎大師というのはちゃんとしたお寺であり、私がここで取り上げるようなあやしげな場所ではない(らしい)しかしそれでもちょっとした異常さを見つけることは不可能ではない。

京浜急行のその名も大師線という路線にのることしばらく。とある駅でおりてとことこ歩く。そのうち「川崎大師」という看板やら門やらが見えてくる。言われるとおりに通りを曲がるとそのうちとん、とんという音が聞こえてくる。何かと思えば門前からのびる通りで飴を売っており、その「とんとん」というのは包丁でまな板をたたく音である。

この前来たときはもっと景気がよかったと思うのだが、今日はこのいかにもやる気のなさそうなお兄さんだけが目に付いた。飴の効用として咳止めはわからんでもないが「呆け封じ」というのは行きすぎではなかろうか。しかし通販で書けばどっかから文句が出そうな文句も、お寺の前だったら許されるというのがこの世の中かもしれん。

とんとんと軽快な音を聞きながら進むと、もう少しゆっくりしたテンポで小さな音が機械的に響いていることに気がつく。その音はどこから、と見ると

男女2体のマネキンが包丁をとんとんやっている。横では本物のおじさんがとんとんやっていたりするのだが、彼らはそれとは関係なしに包丁を降り続け、そして時々物憂げに首をふったり手を動かしたりする。とん とん とん。 その響きと彼らの表情は見る者を陰気な気分にさせる。

そこから門をくぐるとちゃんとしたお寺がある。ふと気がつくと横に西洋のものとも東洋のものともつかぬ像があったりもするのだが基本は普通のお寺だ。しかし私はそこを足早に歩き抜ける。目的地はもう少し先にあるのだ。やがてそれは見えてきた。自動車交通安全祈祷殿である。

見ての通り建物の前に車が止まり人々が手など合わせている。ここは「自動車交通並びに乗員の安全祈願」をしてくれるところらしい。それと関係があるとも無いともわからないのだがその建物は異様な格好をしていたはず。写真を撮ろうと思ってきたのに今日は改修中ではないか。ここまではるばるきたのに、ええい、と地団駄を踏む。しかたない。模型の写真でがまんしよう。

私は寺院の構造など何も知らないがこのような建物を日本ではあまりみたことがない。どっかにいわれでも書いてないかと見ているうち、緑色の袈裟を身にまとった坊主がでてきてなにやら唱え始めた。一通りうなり終わって皆様に交通安全がほにゃほにゃと言うとおしまい。前の方から順次退場してくださいとなる。すると順番を待っている車の列から順次御入場。さながら交通安全祈願のドライブスルーである。

というところで川崎大師見物はおしまい。腰を下ろして少し休憩する。鶴の池と称するところには作り物の鶴数匹と本物の亀がうじゃうじゃいる。しかしあんなにたくさん重なっていて下の方の亀は大変ではないのかななどと考えるがそれはきっと余分なことなのだろう。

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注釈