題名:Osaka Bay Blues(6章)

五郎の入り口に戻る

日付:1998/1/10

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6章:大阪の女達:

みんなでゾロゾロと歩いて、地下街を抜けて、Tが選んでくれた店に向かうことになった。私はTと話ながら歩いていた。彼女の言うには「大阪の人ってあの最後に来た人ですか」というわけであっさり大阪出身の男がKであることを見抜いた。彼女によればうまくは言えないけど雰囲気が違うそうである。

さて案内されたところは一見庶民的な雰囲気の町にある極めてしゃれたところである。普通の飲み屋のはずなのに、入り口にはほとんどデスコの店員みたいなやつがひかえている。彼らはここでジーパンをはいたやつをけっとばしているのだろうか。重々しい音がして妙にがんじょうそうな扉が開いた。中の通路にはいって目の前にある算盤をはじくととびらが開くのである。結構店のなかはすいていた。非常にしゃれた雰囲気のーといって不当に高級な雰囲気ではなくということでけっこう私はうれしく思いながら席についた。

 

というわけで私が「はいCそこ、Dそこ」といって設定したのが上のような座席である。ここに私が前述した意図が見事に実現されていることに気がつくだろうか。これで私が首尾よくあまればそれまでである。あとはみんながうまくやってくれる筈だ。というか、私の「私の目的は場をセットアップしてみんなを合コンの入り口につれていくことである。従ってその後の事の正否に私はなんら興味をもつものではない」というせりふからすればこの席についた時点で私の仕事は終わりなのである。あとはのんびりみんなの活躍でもながめながら麦酒でも飲むことにしよう。

といいながら世の中そう簡単にはすすまない。ここでこの一次会のCの感想を聞いてみよう。「いやー一次会の最初はつらかったですね。隅にすわらされてどうしようかと思いましたよ。 Kさんに大分助けてもらいましたね」

おこったことは以下の通りである。いきなりKと隣の27歳ねえちゃんは大阪のローカルな話でもりあがり始めた。こうなると私は目の前には横を向いている女の子がいて(これは予定どおりだが)となりには沈黙をまもっているDが座っているということになる。Cはときどき私に関連したネタ でTとしゃべっているが基本的に沈黙している。となると私はどうすればいいのだろう。

とはいいつつも私がおしっこにいっている間に次の話しで盛り上がっていたそうである。Tによれば私の第一印象は、「最初は”なにこのおじさん”と思ったけど、話しているうちにわりと話の会う人だとわかった」うーん。やっぱり私はおじさんなのだ。解っていたこととは言えこうまで言われると結構ショックかもしれない。しかしこれからこういうことは多くなるだろう。強くならなくては。

そんなことはどうでもよろしい。ここでKが他の男の子を尻目に吉本新喜劇のノリをみせてくれることになる。彼と隣の27歳ねえちゃんの会話は文句なしに面白かった。大阪人を二人ならべておくと漫才になるとはよくいわれるところであるが、この日ほどそれを痛感したことはなかった。いままでいやという程合コンをやってきた大坪君だが普通に考えればこのシチュエーションはあまり愉快ではない。しかしこの日は前の二人の会話を見ているだけで楽しかった。後ほどKが他の二人としゃべっているときに私はこの27歳のねえちゃんと話すことができたのだが、本当に楽しい良い子であった。なんでこんなのが27まで彼氏もなしで残っているのかねえ。とはいっても世の中そういうものである。

さて一次会はKの一人勝ちの情勢のもとに幕を下ろそうとしていた。次には2次会が待っているのである。ここまではまあ成功と言えた。もっともTが合コン前に最後まで気にしていたことは「自分だけうまくいかないんじゃないかしら」ということであったから私は彼女への義務を果たしていたとは言い難い。実のところTの前の二人が沈黙している以上私が最初にもくろんだ計画は成功していないことになる。次の2次会の席順はもっと考えなくてはならない。なんていう細かいことは全く考えていなかったのである。とりあえず一人だけ一杯機嫌の大坪君はほれほれと二次回にむかうことになった。

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注釈

隅にすわらされて:一般的に考えれば前が女の子。横も女の子なのだが彼には気に入ってもらえなかったようだ。戻る

 

私に関連したネタ:「大坪さんて変な人なんですよ」とかいう類のねた。戻る

 

楽しい良い子:ついでにいうならTが合コン前に言っていたようにたいへんグラマーな方であった。かといってケバイ感じではない。大坪君得意の言いまわしを使えば「私が自信をもって誰にでも推薦する」といった感じの子。ちなみにこの文章を最初に書いたのは30の時だったので、「27まで残っている」という表現を使っているが、いまだったら「27なんてまだまだ若い」と書くところだ。戻る