私のMacintosh

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日付:2008/4/1


45章:Mac Book Air

Mac Book Airが発表されたとき、私は某所にこう書いた。

「これは薄いコンピュータでもなく、軽いコンピュータでもない。

これは美しいコンピュータだ。」

さて、問題です。この頃やたらと

”美しいものを作らなくてはならない”

などと戯言を吐いている人間はこのマシンを買うべきでしょうか、そうでな いでしょうか。結論は簡単だが、初代Mac Book Airに乗り換えるには躊躇する理由がいくつもあった。薄く軽くするためハードディスクは1.8inch,容量は64GByteしかない。今のハードディ スク使用状況を考えると、到底その容量に すべてをおさめることはできない。例えば、外付けハードディスクに全体を置いておいて、詰め込める部分だけMac Book Airに移すような賢いシステムをAppleが作ってくれないかしら、などと考えていても何もかわらない。またUSBポートは一つしかなく、有線LANの 口もない。さっそく買った人のレポートを読んでも

”いくらなんでも削り過ぎ”

という声が多いようだ。

とはいえ、Appleが出すようになっていた”整備済み品”の告知がでるたび、あとワンクリックで購入、というところまでは行ったのである。 しかし間際で正気に戻る。落ち着け。お前は今Mac Bookを使っているし、十分早いじゃないか。そりゃ独身の頃だったら買っていたかもしれないが、家族はどうする。お前はそんなに稼いでいないだろう?

などと自問自答を繰り返す事幾星霜。2010年の秋にMac Book Airがリニューアルされた。それまでしばらく大きな変更がなく、iPhone,iPadの好調もあり、もうMac Book Airは消えてしまうのではないか、などと考えていた矢先の出来事だった。

とはいえ何か期待していた訳ではない。朝寝ぼけた頭で(毎度の事だが、発表は日本時間の夜中に行われるので、私が情報を得るのは翌朝だ)サイトをみ る。すると今回は大幅に変更された事を知る。

まず日本人が切望してやまなかった”13インチより小さいMac”が復活だ。キーボードの大きさを確保しようとすると13インチが最低ライン と、 いつか誰かが言ったような気がする。ああ、もうAppleから小さいノートはでないのね、と思ったところにこの知らせ。とはいえ今や私は血気盛んな若者で はなく、老眼に悩む年寄りである。11インチの画面はどう考えても小さすぎる。そろそろ画面拡大機能を常用しようかという年頃なのだ。というわけで11イ ンチは候補から消える。

第二に価格が下がっている。最初のMac Book Airは実に高かった。それゆえ家族持ちは躊躇せざるをえなかったのだが、今回は最低価格だと10万円を切る。その昔Mac Classicが”$1,000Mac"と宣伝されたことがあった。性能は今一だけど安いからいいやと思っていたのは遠い昔の出来事。今やそれよ り安い値段で薄く速いノートが手に入るのである。

第3に、インタフェースが少し増えている。USBポートが一つ追加され、またSDカードスロットがついた。これだけあれば、普段の使用には困らない かもしれない。

最後にこれが一番重要かつうれしい点だが、記憶装置の容量が最大で256GByteになったことに加え、すべてがSSDになった。いつのまにSSD はこれほど安くなったのだろう。これだけの容量があれば何も切り捨てることなく移行ができるはずだ。もちろん

”もう一声で512GByte"

あればもっといいのだが、いつまでも高望みしていてもしょうがない。

とはいえマイナス要因もある。IntelのCore2duoとかいうCPUをつんだMacに触ったとき、Power PCG4との性能差に驚いた。それ以来私は

”Core2Duoは早い”

と思っていたのだが、いつのまにかCPUが代替わりしていたらしい。ネットでの評判を観ると

”CPUがCore 2 Duoなのがなあ。。。エンコーディンには非力だ”とかなんとかいう声が聞こえてくる。

しかし実際に触った人が増えるにつれCPUの非力さを補ってありあまるメリットが報告されるようになる。SSDが無茶苦茶早いらしいのだ。もうこれ は買うしかないではないか。

折しも再度仕事で使うコンピュータ環境に変化が訪れようとしていた。せっかくParallelsによって統合されたWindowsとMacだがふた たび分離する必要に迫られたのだ。これは前向きな変化と考えよう。使っているMac BookのHD容量は256Gだが、そろそろ残りが怪しくなってきたのである。今Windows用に使っている60GBが使えればまだまだ持つだろう。

というわけで私はApple Storeであれこれ選び、”購入”ボタンをぐい、っと押す。12月20日である。出荷は2−3日となっているのになぜかお届け予定日は29−30日だ。 この計算はどうなっているのか。ちみちみ。20+2はいくつかね?などと文句をいっていてもしょうがない。

それからは日に何度もApple Storeの”お客様の注文の状況”ページを開く毎日である。しかし2−3日たっても変化がない。2−3営業日となっているから、クリスマス休暇に 入ったということなのだろうか。でも米国内で作っているわけもないもんなあ。中国の旧正月ってこの時期だっけなどと思っているうち、ステータスが変わっ た。やったやった。それでいつ届くの?29日には帰省することに なっており、できれば新しいマシンを担いで帰りたいと思っている。つまりそれまでにデータの移行まで終了しなくてはならないわけだ。早く届けてくれい。

などと祈る事数日。会社から帰ってみれば大きな段ボール箱が置いてある。これに違いない。さっそく開封する。開封の儀とかそういう面倒なことはなし である。予想通り小さく、余分な物が一切ついていない。ここからどうやってデータを移行するかについてはあれこれ考えていた。前にMac Bookへデータを移行したときは、Time Capsuleからリストアをしてあっというまにデータが移ったと記憶している。しかし直前にMac Bookのハードディスクへ加えられた変更はこの方法では移行されないかもしれない。

というわけでMac Bookから直接Airにデータを移す事を考える。その昔は2台をFire Wireで連結したが、今やそのインタフェースはAirに存在しない。調べてみればethernet直結でいいそうだ。少し前は

”クロスケーブルにストレートケーブル”

というややこしい呪文があったものだが、そういう配慮も不要とのこと。あれこれやって接続し、なんだか動き始めたのを見て寝る。きっと明日の朝には 奇麗にデータが移行していることであろう。

という予測の元に目覚めたのだが、なぜか”残りXX分”という表示がでている。あれ、大きすぎて終わらなかったかしら。しばらくまってみるか、と思 うがいつまでたっても残り時間が減らない。うーん。これは失敗か。仕方がないから同期をキャンセルする。素直にTime Capsuleからデータを移そう。

そう思ってあれこれやり始める。最初に”ユーザアカウントを設定して下さい”とかなんとか表示がでる。いつも私が使っているアカウントを入力すると

”それはもう使ってます”

と言われる。はて?だってデータ移行キャンセルしたじゃないかと思うが仮のIDを作り立ち上げてみる。その時点で噂通り起動が異様に早い事に気がつ く。

調べてみればちゃんとデータは移行できているようだ。しかし10分だかなんだか残して終わったのも事実。本当に大丈夫なのだろうか。というわ けでいつものアカウントにログイン。特におかしいところはなさそうである。とにかくこのまま使ってみるか。

あれこれやっているうちSSDを用いた新しいシステムの力に驚かされることになる。例えばこうだ。気になった記事とかあるとEvernoteという アプリを立ち上げ、そこに記録する。とても便利なアプリなのだが、起動するまでにやたらと時間がかかる。

ところがAir上で行うと文字通り一瞬で終わる。そうかぁ。ハードディスクのせいで遅かったんだねえ。CPUじゃなかったんだ、と一人納得している がとにかく早い物は早い。また圧倒的にではないが、軽くなった事も私にとってはありがたい。体力が衰えるお年頃でもあるし。というわけでご機嫌のうちに正 月休みをAirとすごした私は、家に帰り久しぶりにMac Bookと対面する。するとそれがやけに分厚く、重く思えてくる。

正月明けの初日、私はMac Bookを会社に持っていく。もうこのMac Bookが大坪家に戻る事もない。彼は会社専用となるのだ。久しぶりにBoot Campでブートする。新しく作った空っぽのアカウントからも正常にブートする事を確認すると、Mac上のデータをすべて消去する。

大文字の”O”や”」”が入力できない、とか細かいトラブルを抱えたMacだったが考えてみれば大きな不具合もなく3年弱使ったのだな。

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注釈