題名:私のMacintosh

その後の日々

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日付:2000/1/22


17章:その後の日々

1999年の夏にはAccelratorをアップグレードしたが、手元には従来使っていた240MHzのG3アクセラレータが残った。これをどうしたものだろう?世の中にはありがたいことに同じ様な必要性に迫られている人はたくさんおり、さらにありがたいことにそのための掲示板を提供してくれる人がいるのである。ある日私はそこに「240MHzG3カード売ります」と広告をだした。

さてそれから数日して3件ほど問い合わせがあった。一人目の人は「ではその値段で」と私がメールを返したがその後音信不通になった。二人目の人とは話が進んでいる間に3人目の人から連絡があった。あれやこれやの交渉の末、結局240MHzカードはその2人目の人に渡ることになった。私としてはその金額よりもこのカードが無駄にならなくてHappyな気分である。もっとも値段を考えればこのカードは1年たらずの間に価格が1/8に下落したことになるが。

さて、それからしばらく私のPB2400は大変快調に動いていた。アップルケアも何故か仕組みが変更になったがちゃんと更新した。なんといってもまだまだこの2400とはつきあうことになるのだ、、と思っていた矢先ある問題が起こった。

 

朝の通勤電車の中で私はいつもMacintoshをひろげてあれこれやっている。さて、電車で空いている座席に座りこみ「さてさて」と思ってふたを開けようとしたときにちょっと感触が違うのに気がついた。妙に固いのである。そこをちょっと力を入れてあけると全く抵抗がなくなった。うげげげげと思ってみれば、ふたがぶらぶら状態になってしまっている。

うげげげと思って見てみれば、ふた(LCDの画面でもあるわけだが)と本体の間の二つあるちょうつがいのうち一つがお亡くなりになっているようだ。泡を食った私はさっそく横浜のNCRにMacintoshを持ち込んだ。

 

さて、私の説明に伴い診断してくれた人は大変申し訳なさそうに私に話してくれた。まず修理に必要な部品が今在庫にない、ということで私は再度ここにこねばならない。しかし彼が「すまなそうに」私に話したのはそのためだけではない。なんとせっかく更新したアップルケアはこの部分をカバーしていないのだそうである。なんでも「ケースは対象外」ということで、このちょうつがいはいかなる線引きをしたか知らないがその対象外であるところの「ケース」に分類されているとのことだ。

目の前のおじさんは大変すまなそうに対応してくれているが、この人に文句を言ったところでなんともならないことは確かだ。私は「では実費でお願いします」とだけいった。とにかくこのコンピュータがちゃんと動いてくれないと私の人生にはあれこれの問題が生じるのだ。

数日後「部品がはいりました」と連絡があり、私は再びNCR訪問だ。いつも通りのあざやかな手つきで交換されるとふたは見事元通り動いてくれるようになった。

 

他にもいくつか細かい問題は生じた。去年のExpoで一目で気に入り予約をし、購入した外付けバッテリPowerBattery24のおかげでたいていの場合バッテリ切れを気にせずにMacintoshを使えるようになっている。経験によれば、一度充電すれば4時間はもつのだ。これは安い買い物であったわい、、と私はご機嫌であった。なんといっても電源がもつ限りにおいてMacintoshは私の生活を大変楽しいものにしてくれるが、それが切れたとたんに愛するMacintoshは単なる重石と化してしまうのである。

ところがある日気がついた。まだ1時間も使っていないのにバッテリが切れていることに。何だこれは?と思ってみたがちゃんと数時間に渡ってつかえることもある。どうにもおかしいな、、と思ってあれこれチェックした結果私はバッテリではなくそこから本体までのびているケーブルが問題であることに気がついた。どうやらバッテリをいれた鞄をけっとばしてしまったときにケーブルにストレスがかかり、断線であるか、あるいはショートしかかっているようなのである。そう思ってみればコネクタの首のところは(ケーブルの色そのものは黒なのだが)心なしか白く変色しているように見える。

げげげと思い、バッテリの製造メーカーのWeb Siteをチェックしてみるとケーブルの単体売りはやっていないようである。しかし3万円はらったバッテリをこんなことで無にするのも惜しい。だめもとで「ケーブルだけ売ってもらえないでしょうか」とメールをだしたら、すぐに返事がきた。OKだそうである。お金を振り込むと一週間ほどでケーブルが届き、再び私はバッテリ切れの恐怖から逃れられることになった。

 

さて、そうこうしている間に今度はソフトの方で変化があった。OS9のリリースである。昨年8.5がリリースされたときには何も考えずにアップグレードした私だったが、今度はちょっと慎重である。まず発表を何度読んでも「どこがうれしいのか」今ひとつわからなかった。今度のOS9は「インターネットのコパイロット」ということなのだが、それほど新しく便利な機能があるとも思えない。そう思っている間にあれやこれやの問題が報告されだした。一番大きかったのは(私には関係ないとはいえ)DHCP問題、つまりある環境下でインターネット接続を行おうと思うとシステムが立ち上がらない、というやつである。メリットが見えなく、しかもどうも評判がかんばしくない(この問題の他にも恒例の「対応していないアプリケーション」も結構あった)OSであれば無理してアップグレードする必要もないだろう。というわけで今のところ2400のOSは8.6のままである。

 

さてそうこうしている間にも年が終わった。大変話題になった2000年の正月も無事にあけた。1999年の最初の頃には「2000年問題は何人が生き残れるか、ということなのです」と無責任な発言をし、それをどうどうと掲載していた雑誌もそんなことは忘れてミレニアム特集である。この2000年騒ぎに隠れてすっかり忘れていたが、正月ということはMac World Expo San Fransiscoなのである。

この直前からいくつかのハードウェアの発表が噂され始めた。一番有力だったのが次期PowerBookであるところのコードネームPismoである。このExpoに行った人の中にはこの名前の由来となったPisomo Bayのレポートを載っける人までいる騒ぎである。それとともにDual G4のサーバー、あるいはPalm と提携して開発したPDAなどが噂に上っていた。

基調講演は例によってインターネットで放映されるが、時間は朝の2時である。私はそんなことは忘れて安らかな眠りについた。いずれにしても翌朝にはすべてが明らかになっているはずである。

さて、翌朝会社につくと早速Macintoshの情報系のサイト巡りである。しかし不思議なことにあまりExpoに関しての情報が載せられいない。何故だ?と思ってさらに探ってみると早いはなし新しいハードウェアは全く発表されなかったようだ。では全く面白くなかったか?と言えばそんなことはない。新しいMac OS Xのインターフェースの発表があったからだ。

Aquaと呼ばれるその新インタフェースは一見して私に「使ってみたい」と思わせるようなものだった。世の中を支配しているMicrosoft OSのインタフェースは早い話95年から待ったく進歩していないし、さらに悪いことに今後数年進歩する予定もない。私はここで「進歩」という言葉を使ったが「変化」と言うべきだったかもしれない。そしてこのAquaは「進歩」かどうかは使ってみないと解らないが、少なくとも「変化」をもたらしているのである。この世の中にApple社が生き残っていたことに対して感謝の念をささげたのは私だけではないだろう。今の世の中にこうした新しい「変化」を見せてくれる会社はそう多くはないのである。そしてAppleは数少ない、OSとハードウェアを両方とも開発している会社であることも思い出させてくれたのだ。新しいハードウェアと同様に新しいOSもこの会社のExcitingな製品なのだ。

 

さて、この発表の直後には今度はAppleは「問題」の方の顔を見せてくれた。ある情報系のサイトにWindows用のカスタマイズツールを使えばWindowsをAquaのように見せることができる、という情報が掲載された。これは素晴らしい。それでなくても会社で使うWindowsと個人で使うMacintoshのクロースボタンの位置の違いには悩まされている私なのである。Macintoshの場合はWindowの左上にあるクローズボタンが、Windowsの場合は右上にあるのである。今まで何度無意識のうちに(両方のプラットフォームで)あさっての方向にマウスを動かしてしまったことか。しかしこれさえあればその問題も解決だ。そうは思ったものの、珍しく少し忙しかった私は「また後でアクセスしよう」と思ってその日は帰った。

さて、翌日再度そのサイトにアクセスしてみた。しかしそのAquaのように見せるファイルは跡形もなく消えている。何が起こったのだ?サイトを読んでみると顛末が書いてある。なんとファイルの掲載についてApple社からクレームがついたらしい。それとともに、"F*CK Apple"とかいうメッセージが投稿されている。私としては、確かにその意見のいくつかに賛成せざるを得ない。シェアウェアを使ってカスタマイズした結果がMacintoshOSに似ているからといってそれが何なのだ?逆にウィンドウの形状だけでまねできるほどWindowsとMacの違いは小さくないだろうに。

その後読んでみると、どうやらAppleがクレームを付けたのは、リンゴのマークまでがそのソフトでエミュレートされていたから、ということだ。それは確かに法的に正しいかもしれない。しかし果たしてただそれだけだろうか?

昨今Apppleは奇跡的な復活をとげつつある。一時は買収先の噂ばかり飛び交っていた会社が、今ではExpoのたびに新しいExcitingな製品発表の噂にもちきりである。しかしその復活とともにこうした「傲慢な行動」が目に付くようになった、と思うのは私の思い過ごしであろうか?

昨今のAppleの復活を支えた男-彼はこのExpoで正式なCEOになったが-は前CEOが与えた権利によりAppleブランドの時計を販売していたブースの前で「さっさとこの店を閉めろ」と叫んでいたそうである。

前回Appleを追われた時よりも彼は確かに成長しているのかもしれない。しかし仮にこの先Appleが安定指向に向かうとすれば(それはAppleのような企業にとって衰退に必ずつながるものなのだが)この男は再びその地位を追われるかもしれない。私としてはそうした波を乗り切ってこの問題はあるがExcitingな想像力をかき立ててくれる会社が長く残ってくれる事を祈るしかないのだが。

 さて、そう考えていたら、今度はAppleが他人の権利を侵害する、というどじをやらかしてくれた。iBookの発表時から、"Airport"という無線LANの技術が大変注目を集めており、あるい意味iBookよりもそちらのほうが高く評価されている節もある。さて、このAirportがいつまでも発表されない、、と思っていたとき「Airportに関する記述がWeb Siteから削除された」だの「カタログ、パンフレットがすべて引き上げられている」という噂が流れ出し、Macintoshの噂系のサイトは緊張につつまれたのである。

しかし真相はすぐに明らかになった。なんと日本ではAirportと称する無線LAN装置がすでに商標登録されていたのである。問題は技術やお役所の認可などではなく、Appleの商標にあったわけだ。フリーウェアに文句をつける会社が自分で他人の商標を侵害してはたまらない。迅速に引き上げたのはまあ良いことだ、ということなのだろうか。

 

さて、そうこうしている間にMac World Expo Tokyoとなった。今回のExpoでは「新製品が発表されるのでは」という予想と「去年もそうやって大騒ぎして、結局あったのはSan Fransiscoのプレゼンの再現だけだった」という噂がとびかっていた。Tokyoでは時差がないから情報をチェックするのも簡単だ。基調講演が終わったあたりをみはからってあちこちの情報系のサイトにアクセスすれば、どうやら新しい機種が発表されたようである。

ひとつはグラファイトカラーのiBook。これにはたいして興味はない。iBookは写真でみている間は結構いいなとも思うが、実際に物を目の前にしてあの巨大な団扇のなかに座っている小さな液晶をみると「ああ。なんとスペースを無駄遣いしていることか」と悲しくなるからである。

もう一つはPismoとして噂されていたPowerBookだ。発表前には「外見一新」と噂されたものだが、あけてみれば中身は新しくなったものの外見は以前のPowerBookのままである。寸法は同じで重量もほとんどかわらない。とはいってもこれまたあちこちのサイトを観ると、さっそく買い換えた人も多いようである。中には2400からの買い換え組もいて、いかに新しい環境が快適かを語っていたりする。

そういう記事を観ると私も「そろそろ考えようかな」と思わないこともない。しかしながら、重量はまあいいとして、あの大きさを許容するわけにはいかない事情が私には存在していた。

毎朝の通勤電車のなかでいつも2400をひろげてはぱたぱたとホームページに載せる文章を書いたり、あるいはメールを読み書きしている。この電車の中というのは朝異常に早いせいもあって、比較的空いている(朝の5時50分発だからだ)

ところがそれでも両脇にきちんと人が座るほど混むこともある。となるとどうしても自分のひじを横に張り出すわけにはいかなくなる。ちょっとやってみるとわかるが両肘をぴたりと体につけて「脇をしめてキーを打つ」というのはなかなかの難行苦行だ。それ以前に肘をぴたりとつけたまま鞄から2400を出す、というのもこれはこれでなかなか大変な作業なのである。

それでも使っているマシンが2400であればなんとかなる。しかしあの大きなPowerBookをそうした狭い環境で鞄から引っぱり出し、広げ、そして文章を打つなどというのはちょっと想像したくない。というわけで私としてはまたまた2400の改善に走るわけである。

さて、タイミングよくある会社が「バッテリーのリフレッシュ」の案内を出していた。去年のExpoで私が外付けバッテリを購入したENAXという会社だ。なんでもへたったバッテリがリフレッシュされ、おまけに純正品の新品よりも22%容量がアップするのだそうな。私はさっそく申し込んだ。この場合の申し込むというのは単に書類を送るとかいうだけではない。バッテリをはずして送付する必要があるのだ。リフレッシュsれたバッテリが届くまでの間はバッテリ部分がぽかっと空いたままで、外付けバッテリを使って外に持ち出すことになる。理論的に言えばこれでかなり軽くなっていたのだが、私にはあまり違いはわからなかった。逆に本体を持つときバランスが悪いので大変持ちづらい。

さて、いつ返ってくるのかな、、と思っていたら10日あまりで新しくなったバッテリが帰ってきた。それまで穴がぽっかり空いた状態で持ち歩くのになんとなくいやな感じがしていたのもこれで一安心である。使ってみると確かに容量は増えている。前はバッテリ単体では通勤電車の間ももたせることができなかったらこれは大きな進歩だ。 

さて、この時期私がもう一つ心待ちにしていた製品があった。長く噂されていたApple製のPDAである。AppleがPalmと仕事をしている、というのは長く噂され、Appleの人間からのコメントもあった。ではAppleブランドのPDAが発表されるのか?とは誰もが考えるところだ。

さて、私はこの時期老化からくる記憶力の低下に悩まされていた。仕事の予定をすっかり忘れ、ダブルブッキングをすることが数度に及ぶに至り、「これはちゃんとしたスケジューラーか何か買わなくては」と思い出したのである。そこに世の中のPalmの評判を聞くにつれ、「これはそろそろ買ってみるか」と思っていたのであるが、もしAppleから発表されるのであれば、そちらにしたい。。とExpoの発表を楽しみにしていたが(実際Apple PDA登場の噂は根強く存在していたのだ)からぶりに終わった。おまけにExpo中のCEOのインタビューでは「AppleはPDAは開発しない」と断言されるおまけ付きである。

とはいっても情報系のサイトを観ると誰もCEOの言葉を真に受けては居ないようである。iMacにしても「ボンダイブルー以外は考えていない。赤いiMacがあるなどというのはデマだ」と発表があったあとで、5色のiMacが発表された前歴だってあるのだ。とはいってもその製品が仮に存在していたとしてもまだまだ手にはいるのが先なことは確かなようである。私はしばらくリフレッシュされたバッテリとともに2400と歩み続けることになるのだろう。

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注釈