映画評

五郎の 入り口に戻る
日付:2014/7/1

1800円1080円950 円560円-1800 円値段別題 名一覧 | Title Index


560 円-Part15(Part14へ | -1800円へ)

国葬:STATE FUNERAL(2020/11/22)

今日の一言:個人崇拝

1953年、スターリンが死んだ。そして盛大な国葬が営まれた。独裁者が死んだ時、「さてどうするか」は誰も検討がつかない。とにかくスターリンは独裁者だったから(死んだにもかかわらず)葬儀の様子をちゃんと映画化する必要がある。さもないと粛清される、と誰かが考えのだろう。

しかしその映画は没となり、フィルムだけが残された。それを編集して公開されたのがこの映画。というわけで、淡々と国葬の様子が映し出される。

最初にスピーカーがスターリンの死を告げる。そこでとにかく「主語」が長い。覚えちゃいないが共産党中央委員会に、政治局になんとかかんとか。要するに「スターリンが死んだ」という情報を伝えるために、詳細な医学的情報までずらずらつけて放送する。まあ誰かが「丁寧にやれ」とか指令したのだろうな。飛行場に各国から次々と弔問団が到着する。そのうちの飛行機の何機かは米国製DC-3の改造型。共産圏がこれでいいのかと思うが、まあ実態はそういうことだったのだろう。

映画の終わりにスターリンが自国民を2000万人以上投獄、虐殺し、さらに1000万人以上を餓死させたとのテロップが入る。しかし映像の中の女性たちの涙は、たとえば金日成が死んだ後のわざとらしい泣き叫びとは異なり心からの涙のように見える。そりゃ「今日ソ連があるのはスターリンのおかげ」と頭から信じ込まされていればねえ。思うに政治家とは「正しい判断を下すこと」が仕事ではなく「国民に自分は偉大だと信じ込ませる」ことができればいいのではなかろうか。今の米国の大統領といい。

葬儀のスピーチまで丁寧に映像は映し出す。ベリヤとかマレンコフとか実物を見るのは興味深いことだが、話としては退屈。今後数世紀にわたって党中央委員会はレーニンとスターリンの意思をつぐとか言っているが、その四十年後にはソ連は崩壊してしまった。そう考えれば「政治の行き過ぎ」の教育的コンテンツとも思えるが、今日の米国をみるとその効果も怪しいものだ。この映画で涙を流していた女性たちは、その後スターリンについてどう意見を変えたのか変えなかったのか。そんなことを考えながら映画館を後にする。


テネット:TENET(2020/09/21)

今日の一言:2流スパイ映画+ギミック

名無しの主人公は敵に捕まる。自白するよりはと錠剤による死を選ぶ、がそれは「選抜試験」だった。

というわけで、TENETというキーワードだけ与えられて後はがんばってねということになる。そこから起こることは端的に言えば

「武器商人の悪い人が、全世界を道連れに死のうとしますがみんなでがんばってくいとめました」

という2流スパイ映画。

いや、スパイ映画だから2流というのではない。この映画の新機軸は「時間を逆行する」弾丸だったり人間。でもって監督としては

「ほーら、このシーンにいたわけのわからないコレは、実は未来から逆行してきたものだったんだよ。すごいだろー。辻褄あってるだろうー」

とご満悦なのだろうが、映画を面白くするのになんの役にもたっていない。ただの小細工。最後の戦闘シーンとか、普通の時間部隊と逆行部隊が並行してあれこれやっているが、ごちゃごちゃするだけで古典的な「間一髪のところを助けました」でしかない。だからまずそれを剥ぎ取る。すると後に何が残るか?

人間が描かれているか?名無しの主人公は悪者の奥様に妙に入れ込む。美人だからねえという以外の理由が思い浮かばない。この奥様が衝動的に旦那を海に突き落としたり、かと思うと銃を向けてびびってみたり。美人という以外になんの存在価値もない。他の登場人物は記憶にすら残っていない。だから2流。

クリストファーノーランという人はちょっと変質狂的なところがあるようだ。それは過去には映画の面白さに繋がっていたのかもしれないが、この映画をみると、変質狂の度が進みあっちの世界に足を踏み入れたように思える。映画の登場人物すらストーリーを理解しておらず、監督に質問しまくっていたと聞く。そりゃ監督以外の誰にもこの話、そして面白さは理解できない。まだ「観客に説明する気なんかないよー」という年齢にはなっていないように思うが。


2分の1の魔法:ONWARD(2020/08/22)

今日の一言:バカがバカなことをする102分

かつてピクサーという偉大なスタジオがあった。 しかしディズニーによる買収を経てその内実は全く変わってしまったようだ。

いや、本作にもいい点はある。コンピュータグラフィックスの進歩には本当に目を見張る。単なる写実でなく、しかしリアリティをもって背景を描くのは素晴らしい。

他に何かあったっけ?

今のピクサーには明白な欠点がある。人間を描けないのだ(いや、キャラクターというべきか。本作の主人公はエルフみたいだから)映画の冒頭主人公一家が文字通り「ドタバタ」する。それはしつこく、出てくるキャラクター全て頭が悪そうで、見ていていらいらする。バカがバカなことをする。これはこの映画の基調。もうこの時点で時間と金を無駄にしたことを知る。

主人公は自分が幼い頃になくなった父に会いたがっているようだ。しかしなぜそう父に執着するのかは観客にはわからない。おまけにいつのまにかその対象は「お兄ちゃんでいいや」ということになっている。これも観客には(以下同文)

このお兄ちゃんはいい年して魔法のカードゲームに入れ込みしょっちゅう警察沙汰になっている幼稚で迷惑なオタク。しかし(これまた)いつのまにか魔法のエキスパートになり思い込みだけによる判断がことごとく正解となる。お話を進めるにはそれでいいかもしれないが、観客は「ぽかん」とするばかり。

母親役も印象に残らないが、その吹き替えの下手さには閉口した。後で調べればディズニーには珍しい「芸のない芸能人」起用なのだな。そんなことまでして客を呼ぼうとは、ディズニーもこの作品がダメなことを自覚しているのだろうか。

かくして画面上でいろいろな物体が動いた後に見慣れたディズニーのシンデレラ城が映し出される。どうやら終わったらしい。足早に映画館を後にする。



囚われた国家:CAPTIVE STATE(2020/04/3)

今日の一言:カメラブレすぎ

米国で公開され評判よろしくないことは知っていた。しかしここ数週間新作がリリースされないのだよ。それでもあえて公開するというのは、配給元が赤字と知っても現金が欲しいとかいろいろな理由があるんだろうな。

というわけで、宇宙人が攻めてきてあっという間に人類は降伏してしまう。今やアメリカ(なぜシカゴ?)は異星人の支配下にある。しかしそれに反抗するレジスタンスがあれこれ企てるのであった。

映画の冒頭いきなりカップルが車で暴走しだす。でもって全身ウニの宇宙人にやられる、、らしい。この映画全般に言えることだがカメラがブレすぎおまけにやたら暗く何が起こっているかわからない。この時点でもう絶望していた。

ストーリーについてあまり説明することなく映画が進む。なんだか支配者が降りてくるイベントで爆弾テロをやるわけだな。でもってそのあとレジスタンスは制圧されるが、、ってなぜレジスタンスたちがあっというまに見つけられるかもよくわからない。多分説明する気がないのだと思う。カメラは相変わらずブレブレ。宇宙人の造形は悲しいほどチープ。ハンターとかいう狩専門の人たちが来るのだが、これもチープ。ジョングッドマンはいつもの怪演を見せるが、見所があるとすればそれだけか。エンドロールで唐突に人類の勝利があったような気もするが、もうどうでもいい。ため息をつきながら映画館を後にする。


ジュディ 虹の彼方に:JUDY!(2020/03/08)

今日の一言:主演女優賞おめでとう(棒読み)


現代日本なら、橋本環奈ちゃんがふくよかになっても誰も覚醒剤を飲ませようとはしない(多分)だから当時に比べればいい時代になったと実感はできる。

オズの魔法使いで知られるジュディ・ガーランド。彼女がその後どんな人生を辿ったかwikipediaで知って驚愕したのは数年前のこと。この映画が主に描いているのは死亡する半年前に行われたロンドンでの公演の様子。

彼女の不幸な生い立ちには同情するが、その結果であるダメ芸人の姿を共感を持って見られるかというのは別の話。ボヘミアン・ラプソディやロケットマンもつまるところ「ダメ芸人」の姿ではあるのだが、何が違うのだろう?

主演女優の努力はすばらしい。というかブリジット・ジョーンズの頃はふくよかで可愛かったゼルヴィガーも加齢にともない容姿の衰えが著しい。だからこそこの役ができたとも言える。当時のジュディーガーランドとそっくり。歌も実際に歌っているらしく、それも加点ポイント。しかし如何せん話に乗れないからせっかくの熱演も「オスカーとってよかったね」としかならない。

調べてみれば、この映画で描かれるロンドン公演はほとんど創作なのだな。ゲイのカップルも最後の観客の合唱も。なぜ観客が優しく合唱したり、いきなり物を投げつけるのかがさっぱりわからないのはこの映画の作りが悪い故か。映画の観客はおいてけぼりである。上映中何度時計をみたことか。

かくして装飾過剰の文字で彼女の死を告げるテロップとともに映画は終わりをむかえる。エンドロールが流れている間に席を立つ。



ターミネーター:ニュー・フェイト:TERMINATOR: DARK FATE!(2019/11/9)

今日の一言:あーはいはい


この映画を見るべきか迷っているあなた。簡単なテストをします。今回のターミネーターの新機軸は?

悪いターミネーターが骨格と液体金属の肉に分離します。

これを読んで「はあ?」と思ったあなた。この映画のことは忘れて他の映画を見ましょう。興行収入で苦戦しているらしいとニュースが伝わったところで日本公開。

観てわかった。問題は宣伝方法ではない。中身だ。

最初のターミネータは恐ろしい映画だった。ターミネータを液体金属にした新機軸が光ったのがターミネーター2。ターミネーター3は「どっかん一発」でハッピーエンドにならなかったのがよかった。

そこでターミネーターは息切れになったのだと思う。

スカイネットは破壊したけど、やっぱり別の悪いAIができちゃいました。というわけで話は振り出しに戻る。未来の指導者(ジョン・コナーじゃないよ)を殺すために悪いターミネーターが送り込まれ、守るターミネーターみたいに強い人もやってきて。ね、どっかで聴いた話でしょ?

この映画はそうした「あーはいはい。そうですね」の連続でできている。飛行機にのってみたり、ダムに落ちてみたりいろいろ大変ですね。しかし観ているほうはわかっているのだ。そんなことやっているうちは絶対悪いターミネーターをやっつけられない。冒頭のカーチェイスとか真面目に作っているのだろうけど、見ている方はあくびがでる。最後は予算がなくなったのか夜の戦闘にするから何が起こっているかわからないし。

守ってくれる人が機械じゃなくてサイボーグとか。少しは変えてあるのだけど「だから何?」ああ、時計をみればまだ1時間しかたっていない。

あ、もう一つ新機軸があった。今回は謎のメキシコ推し。冒頭やたらとスペイン語が飛び交うし、エンドロールの例の音楽もメキシカン風(メキシカン風知らんけど)長年続いたこのシリーズもそろそろ成仏かな。


シャザム! :Shazam!(2019/5/5)

今日の一言:頑張れ僕らのストロング

今ひとつ調子がでないDCシリーズ。とはいえこの作品はアメリカでの評判が大変よろしい。というわけで期待と不安相半ばする状態で見に行った。

映画の冒頭、メガネの少年がイライラする行動をとって、仙人のような男から力の継承を断られる。そのあと別の少年が出てくる。こちらも見ていてちょっとイライラする。警官を閉じ込め、勝手にデータにアクセスするのってそれくらいの「罰」で許してもらえるんでしょうか。学校のカーストはわかるけど車ぶつけるのって犯罪では、でもって今まで世界中の色々な人に渡さなかった力を、彼が簡単に継承できるのはなぜなんだろう、とか面倒なことを考えてはいかんのだな。

頭の中身が14歳のままスーパーヒーローになるという発想はすばらしいと思う。だから結局(作中でも突っ込まれているが)無駄なことしかしないのもいいだろう。しかしそこでとまってしまっている。ヒーローの友達はありがちな「ヒーローは僕の友達だから、僕が指定したところに来てくれるんだよ」ネタをやり、もうなんといったらいいのか。

さて、今回の敵はマークストロング。これも台詞で説明されるが、シャザムが自分の力を認識していないうちに、やっつけろということらしい。パコパコ殴り合っているうちシャザムは強くなっていくのだが、なぜそうなるかもわからない。なんなんだこの映画は。頑張れ、ストロング。この映画に真っ当な結末を迎えさせられるのは君だけだ! その鬱陶しいガキどもを一掃するんだ!

しかし悲しいかな私の願いは届かない。いつも思うけど、こういうヒーロー同士の殴り合いは普通にやっているうちは絶対決着つかないんだから、あまり長くやるのはどうなんだろうね、と思っているうちやはりストロングがやっつけられ、どうでもいいエンディングを迎える。


アリータ:バトル・エンジェル :ALITA: BATTLE ANGEL(2019/3/1)

今日の一言:イケメン無罪

空に一つだけ都市が浮かんでおり、下の住人はなぜか皆そこに行きたいと思っている。下も荒れてるとはいえそんなに悪いところに見えないがなあ、という具合にこの映画は観客を置き去りにしていく。

そこに落ちてきた美少女。拾ったのがクリストフ・ヴァルツ。この映画の価値は彼の「優しくも悲しみをたたえた表情」につきる。

他は全てがペラペラで一文の価値もない。突然イケメン青年が現れアリタくんは惚れるのだがこの青年顔の作り以外に存在意義がない。自分も結局追い剥ぎで悪い奴の手先になって有田を罠に追い込むのだが、それを大して反省する様子もない。なのに有田くんはやたらとこの男に入れ込む。その入れ込み方にヤンデレの気持ち悪さがあればまだ金をもらえる芸になったのだろうが、そこまでの徹底もない。

経緯はよく覚えていないが、ローラーゲームもどきに有田が出場する。日米対抗ローラーゲームってかすかに覚えている。本家はプロレスまがいの見世物だったがよく映画で使われるなあ。この場面、チープなCGが動くだけであくびが出る。あのね、君たち。トム・クルーズの爪の垢でも(以下省略)

えっ、まだ話が進んでないのに時間が(つまり何度も時計を見たのだ)というところで、唐突に話は終わる。昨今珍しい3D上映といい、とにかく観客から金を搾り取るつもりか。続編で稼ごうというのもいいけど、こんな出来では誰も見ないよ。私の予想では空中都市も上でみている男の正体が明かされることはないと思うのだけど。


クリード 炎の宿敵 :CREED II (2019/1/20)

今日の一言:30年前

この映画の下敷きとなっているロッキー4は1985年公開とのこと。当時の私はまだあまり映画を観ていなかったが「しょうもない映画だなあ」と思った記憶はある。

それから34年。ソ連はなくなりロシアとなり、共産主義時代の地味な町並みはラスベガス底抜けの華やかさになった。当時この変化を誰が想像できただろう。とはいえ、最後に観衆が米国のボクサーに歓声を送るところとはあいかわらずのロッキーシリーズ。思えば当時は新入社員で独身だったか。一口に30年といっても、、と映画に関係ないことを考えていたのには理由がある。

ロッキー4はロッキーシリーズの行き詰まりを「米ソ冷戦」に押し付けることで成り立った映画だった。このクリード2はいったい何を目指したのだろう。ただぼんやりしている。

思えばロッキー4の方が珍品の楽しさがあったか。この映画にはいろいろな要素はあるが、バラバラ。娘に母親の聴覚障害が遺伝するところとか、そもそも娘とか、相手側の嫁事情とか。別にそんなものなくても「強いやつにやられて復活する」でいいと思うのだが。

敵役はただのマザコンロボットで人間っぽくない。戦いが始まる。時計をみるとまだ1時間。ということは負けるな。そのあとお約束通り復活して勝つのだが、なぜ復活したのか、なぜ強くなかったのか観客である私には伝わってこない。だから最後の勝利にはあくびしかでない。

唯一良いのはクリードのどこか愛嬌のある情けなさ。これだけは金の取れる芸と思うが。


Part14へ | -1800円へ


注釈