映画評

五郎の 入り口に戻る
日付:2011/6/28
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950 円-Part18(Part17へ | 560円へ)

TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー:Talk to me(2023/12/25)(1000円)

今日の一言:丁寧に人間のダメな行動を描く

石膏でできたような腕と手を握ると霊と対面。let you inと唱えれば自分に憑依。そこから始まるあれこれの騒動が描かれる。

この映画を成立させるためには、観客が「やめればいいのに」と思うバカな行動を登場人物にやってもらわなければならない。かくしてこの映画の登場人物は皆バカなのだが、それが丁寧に説明される。主人公の女性がパーティーに来たところで誰かが眉を潜めるし、誰かの弟くんが背伸びをして降霊にチャレンジする理由も、少し説明してくれるシーンがある。

なので

「バカな人間がバカなことをやり続ける映画」が大嫌いな私もなんとか最後まで緊張感を途切れさせずに見ることができた。

怖い映画が苦手の私がなぜ観たかといえば、チェーンソーマンの作者、藤本タツキが絶賛していたからだ。この映画にはチェンソーマンと少し似たところがある。どこかに「正解」があるわけではなく、わけのわからない点もあるが、「人間こういう風にバカだよね」と頷いてしまうところを持っている。

「相手が自傷行動を始めたら、キャーキャー言う前にとりあえず止めようよ」とか思うシーンもあるがそういう細かいところに目くじらを立てなければ楽しい鑑賞体験だった。ずーっと「結局主人公が悪いんだよね」と思っていたのだがそれが裏切られることもなかったし。

ヴァチカンのエクソシスト:The Pope's Exorcist(2023/07/14)

今日の一言:怖くない悪魔祓い

巨大化したラッセル・クロウが悪魔祓いをすると聞いて見に行った。

実在のエクソシストをモデルにしているらしい。でもってこの人がなかなかユーモアに溢れる人だったよう。というわけで映画もあまり深刻にもグロくもならずに進む。

「悪魔憑き」と呼ばれる症状は実在するらしい。しかしそのほとんどは精神疾患とかそういうものだとのこと。しかしある一家がアメリカからスペインにくると「本物」になってしまう。

そこからクマのようなクロウと2枚目の神父があれこれがんばる。アメリカ人のティーンエイジャー二人は最初はちょっと鬱陶しかったが、そのうち気にならなくなる。話はテンポ良く進み

「を、これはシリーズ化する気か?」

と思わせおいてて、モデルになったエクソシストの写真とともに終幕を迎える。映画を見ている時間は十分楽しませてもらった。

しかし

悪魔祓いのあれこれを見ていると「そもそも悪魔はいつできたものか」と思う。だって父と子と精霊の名においてなんて、結構最近できた概念のはず。それが効くということは、悪魔って割と最近の産物なんだろうか。そもそも旧約聖書が書かれてからイエスがでてくるまで「イエス・キリストの名において」とかは使えなかったわけだし

とか真面目に突っ込まないのが正しいのだろう。そんなこととは関係なしに悪魔憑きもエクソシストも存在するわけだし。

参考:

https://ja.wikipedia.org/wiki/スペイン異端審問

https://www.historyvshollywood.com/reelfaces/the-popes-exorcist/

M3GAN/ミーガン:M3GAN(2023/06/10)

今日の一言:後半失速

価格で勝負するロボットなんか作ってもつまらない。よし、プレゼン一週間伸ばしてもらったから汎用人工知能搭載二足歩行ロボットつくっちゃうぞ!

仕事でもこれくらいのホラを吹く人はいる。そしてその言葉に必要以上につっかかる私だが、映画相手に「そもそも汎用人工知能がどれくらい難しいか」とか喚いたりはしない。交通事故で両親を失った姪を引き取ったロボットの技術者。仕事第一だからあんまり子供を育てるとかしたくないんだよね。口では言わないが態度はまさにその通り。というわけで子守ロボットを開発し、上役にも褒められました。

ところがこの子守ロボットよくできすぎていて、だんだんいうことを聞かなくなり、、というわけで途中まではよかった。両親を失った事実とどう対峙すべきか。そういう問題を提起してくれるのなかな、とか期待しながら画面を見続ける。そして彼女を守るミッションを与えられたロボットが暴走し出すところも悪くはない。これは本格的に怖い展開が!

と期待していると

理由はわからないが後半話が投げやりになる。ロボットが少女を守るあまり狂気に取り憑かれるのかと思いきや、最後は「自分が一番」とか言い出すし。ラストは単なるロボット対戦になってしまった。とってつけたように叔母の同僚は助かったことが最後示されるが、となるとあの気の毒なCEOはなんで殺されたかもよくわからない。

というわけで学んだのは「動く機械には、必ず物理的に回路を遮断できるスイッチをつけましょう」という教訓だが普通のエンジニアならそんなこと誰でも知っているよね。

ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー:The Super Mario Bros. Movie(2023/05/05)

今日の一言:ゲームの楽しい映画化

スーパーマリオブラザーズをゲームとしてやったことはないけど、他の人がやっているのを見たことはある。

というわけでゲームの映画化である。ゲームの現実世界ではありえないような設定をどのように物語にするのか。興味をもって画面を見続ける。「練習モード」などかうまく物語に取り込まれる。そしてゲームを超えた映画の動きが楽しい。

ゲームの楽しさとは何かをよく考えた上で映画化した労作というのが印象。よくできているだけに欲がでる。現実世界ではダメなマリオブラザーズがどのようにお互いを信じて姫を救うのかとかもう一段「人間を描いた物語」にできたのではないかなあと高望みをしてしまう。ひたすら陰鬱な話ばかりする可愛い星のキャラクターとか面白い要素があっただけに「もうひと頑張り」と欲がでる。

とはいえ現状でも十分楽しい映画に仕上がっており、それだけで十分料金にみあった仕事はしているけれど。


バイオレント・ナイト:Violent Night(2023/02/04)

今日の一言:悪くないけどもうひと頑張り

サンタは本当にいますか? 答え:います。ゲロを吐きまくるおっさんですが。というわけで、映画の冒頭サンタがバーで飲んだくれる。もう俺は引退だと口をこぼしながら。

彼が訪問したのが超リッチな家庭。恐ろしい母親とあれこれやっているとテロリストに襲撃されるのであった。

そこにプレゼンを配りにきたのがゲロ吐きサンタ。かくしてテロリスト対サンタの戦いが始まる。

このサンタがあまり強過ぎないのがよろしい。彼は千年以上前おそらくバイキングのような殺戮者だった。その過去と今を顧み、彼は「悪い子リスト」に載っているテロリストを殺しまくる。

というようになかなか面白くよくできた映画ではある。何を持って回った言い方をしているかといえば、「もう少しがんばれなかったかなあ」と思うから。超リッチ家族の修復とかなんというかもう少し。300万ドルのうち50万ドルサンタのために、、とかなんだか中途半端だしさあ。息子から翌朝に開けて欲しかったメッセージを開けたところの母親の表情とかはよかったけど。

もう少し良くするためにはどうすればいいのかなあ、と考えながら映画館を後にする。


RRR(2023/01/22)

今日の一言:インド映画の楽しみ方

いやきっとインド映画といってもいろいろあるのだろうけど、私が近年見る映画で、いきなり皆が歌って踊り出すタイプのもの。

映画の舞台は千九百二十年代。インドは英国の植民地。インド人が暴動を起こしそうになったところで、一人のインド人警官がターミネーター並みの活躍をみせる。こいつはなぜ英国のためにここまで働くのか。

さてこの図式では英国人はほぼ悪魔である。(一人だけとってつけたようにいい人がいるが)英国人の悪行を見ていると「中国で作られる抗日映画では日本人もこんな感じなんだろうなあ」と思う。村の少女をいきなり購入れさる。かくしてちょっと太ったおっさんが助けにいくのであった。

インド映画を見るといつも疑問に思うことがある。女性の美に関して彼の国の基準はまあ理解できる。問題は男優だ。このおっさんがインド人にとっては「憧れの映画スター」なんだろうか、と。まあしかしそれは基準の違いだからどうこう言う話ではない。支配者に屈辱感を与えようと思えば、支配国の女性が、同国人の男性より被支配者の男に歓声を送る、というのが一番だなあと思ったり。男は常に女にモテたいものだしね。

そろそろ話が終わるかと思えばINTERVALという文字が。なんとまだ半分らしい。実際に休憩時間があるわけでもなく、ターミネーターが何を目指しているのかがようやく語られる。まだこの話続くのか。しかし一応最後まで眠らずに見ることができた。

最後は主役の男二人だけで、英国人を皆殺しにする。いや、最初からそうしなさいよ、とは突っ込まないのが正しい見方なのだろう。瀕死だった男がそこらへんの薬草をあてがうだけで完全復活するとか、話が無茶苦茶なところは笑い、歌と踊りを楽しみ、戦闘シーンをかっこいいと思えればこの映画も楽しめるんだろうなあ、とぼんやり思いながら映画館を後にする。トイレは大混雑。皆我慢していたのだね。

バッドマン 史上最低のスーパーヒーロー:Super-héros malgré lui/Superwho?(2022/07/23)

今日の一言:女優さんと掃除機は良い

ハリウッドのスーパーヒーローものを起点にしたパロディ。ダメ俳優がバッドマンという映画の主役に抜擢される。その段階でどうしようもないギャグが頻発するがまあ気にしない。

でもってバットモビール(撮影用)に乗り、コスチュームを着た状態で都合よく記憶喪失になった主人公は自分がヒーローと信じ込み..

というお話し。見ている間中

「フランス人はこれ見て笑うのか?あるいは邦画の寒いギャグを見て我々がするような反応をしているのか?」と考えていた。小学生が考えるようなギャグを真顔で捻りも入れずにやられてもねえ。

映画の終盤、本物の悪党と主人公が対決する場面がある。

「頑張れ。悪い奴。そいつらを皆殺しにするんだ!」

と心の底から応援を送るが、当然のごとく主人公は勝利する。しかも戦闘シーンなしで。引退を目の前にした父親が「俺のキャリアが」とどうのこうのいうのは訳がわからないが、そんなことを気にしてはこの映画は見られない。

しかし

いいところを三つ挙げておく。一つは女優の美しさ。米国的とも違うし、最近の日本(というかアジア)的な画一的な美しさとも違う個性をもった女優が画面を彩ってくれる。あと宣伝の都合上「掃除機をいれろ」と言われるのだがその入れ方だけは面白かった。笑った。

最後に少なくとも自分達のやり方で映画を作ろうとしているところ。予告編だけみてうんざりする邦画の山とはどこか違うようにも思える。だから見て無駄とは思わないが、人に勧めようとも思わない。


ソー:ラブ&サンダー:Thor: Love and Thunder(2022/07/09)

今日の一言:悪くないけど...

マイティー・ソーである。このシリーズは私にとって嬉しい驚きの連続だった。さて、今作品はどうだろう。

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー御一行は最初だけ出て消えてしまう。なんだこれは。でもって神様を殺すことを誓った男があれこれやり出す。ソーの一行は神様会議に行くが、こういうのってキリスト教とかイスラム教とかヤハウェ教の人達にとってどうなんだろうね。

会議に出席している神様は日本人にとっては親しみが湧くような神ばかり。ゼウスに喧嘩を売り、とにかく一行は強い奴を倒しに行く。でもってあれこれやって、やっつける。最後の終わり方はさすがソーシリーズ。いや、映画の冒頭で娘を持つ親としてはゲンナリしたのだけど、ちゃんと最後は丸く収まるし。エンドロールの後のシーンもそれなりにすっきり。

とはいえ

そもそもなぜそんなことになったかといえば、ロクでもない神様なんか信じているからいかんのではなかろうか。どうしても信じたいというのなら日本的などうしようもない神様程度で、、というメッセージは特にこの映画には含まれていない。いや、そんな議論を呼ぶ話題を避けたくなるのはわかるが、他に何もない。タイカ・ワイティティ。君はもっとできる人のはずだ。


執拗に同棲カップルを突っ込んだり、前半のGOG御一行の扱いといい、何か横槍が多かったのかなあとぼんやり想像しながら映画館を後にしたが。


ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス:Doctor Strange in the Multiverse of Madness(2022/05/07)

今日の一言:悪くないけど詰め込みすぎか

というわけで最近のマーベルスタジオは「マルチバース」である。並行世界が存在しており、そこを行き来するとちょっとずつ設定が違う世界が存在する。本作はそのマルチバースを正面から扱っているのだが。。。やはりちょっと詰め込みすぎではなかろうか。

今回の敵役はアベンジャーズの時に、額に宝石が埋まっていたおじさんのガールフレンド。アベンジャーズの時はそうでもなかったのだがとにかく強い。正面から戦っては死体の山が築かれるだけ。おまけにマルチバースでいろいろな登場人物が入り乱れるので、話はややこしい。

その「無茶苦茶強い敵」がどうやって負けるかというと、愛情を力で求めてはダメよねという普遍的になところにちゃんと持っていく。それは見事な脚本の力。そこには感心したが、じゃあ感動したかというとそうでもない。

自分で「イタチみたいな顔」と言ってるカンバーバッチもメジャーになったなあと平和に感心して劇場を後にはしたが。


クライ・マッチョ:Cry Macho(2022/01/15)

今日の一言:別にマッチョは泣かない

話は予告編そのまま。いろいろあってイーストウッドはメキシコに住む知人の息子をさらいにいく。まあそこらへんはどうでもいい。きっとこれは旅を経てお互いが学び合いし成長するロードムービーなのだろう。

そう予想していたのだが、オープニングシーケンスで既にちょっと退屈する。おかしい。イーストウッドなのに。いや、しかしきっと何か恐ろしいことが起こるのだ。
そう身構える。途中で良い女性達の家庭とお知り合いになる。ううむ。このシーンは平和だがきっとこれは何かの罠だ。なんせグラン トリノを作った人だぞ。この女性達が悪い奴らに酷い目に遭うとかそんなことが起こるのか。

そう思って身構えているが何も起こらない。旅を通じてお互い学んだかといえばそういうわけでもない。最初は少年が英語-スペイン語の通訳をしているが最後は面倒になったのかイーストウッドがスペイン語を理解し話す。はて。

と首を捻っていたらそのまま映画が終わった。いや、悪いとはいわないけどなんなのだこれは。御年91歳のイーストウッド。この映画をみると、男が最後に求めるものは、自分がモテることなのかなあとは思う。


ヴォイス・オブ・ラブ:Aline(2022/01/04)

今日の一言:悪くない。が長いしぶちぶち

セリーヌディオン(ちなみに映画の中では一度もこの名前で呼ばれない)の人生にヒントを得たフィクション。

カナダの田舎で十四人兄弟の末っ子として生まれたAline。音楽一家なので、いたるところで音楽を披露する。そして彼女は子供の時から並外れた歌唱力を見せる。

12歳でデビュー。なのだが、主演女優がどうにかして背を縮め12歳の彼女を演じる。顔がとっても不自然。しかしそんな観客の不安をよそに彼女は順調に成功していく。こちらは身構える。きっと何かいやなことが起こるのだ。

しかしこの映画に限って言えばあまり大きな壁はない。もちろん声がでなくなったり、八重歯を直し英語を学び(ベルリッツの宣伝ですな)ダンスをマスターするために休業したりくらいか。しかしまあ実生活もそんなものかもしれない。大きな問題と思っていると時がびっくりするぐらい解決してくれたりもする。実際子供ができないと悩んでいた彼らには合計三人の子供に恵まれるのだ。とはいえ、あまりにも「あれはどうなったの?」というシーンが続出する。母親はマネージャーとの交際を強烈に反対していたはずなのだが、次のシーンでは花嫁を満面の笑みで祝福している。Titanicのテーマを聞かされ「これ嫌い」と言っていたわりには堂々と歌っているし。

とはいえ全体としての感じは悪くない。しかしいささか長い。途中時計をみてまだ40分もあるのかと絶望感に襲われる。もっと短くてもよかったのではと思いながら映画館を後にする。


PITY ある不幸な男:Oiktos/Pity(2021/10/9)

今日の一言:全ての受験生に捧ぐ

男がベッドに座ったまま泣いている。だがどうにもその泣きかたが嘘っぽい。

妻は事故で昏睡状態にあり目覚める可能性はない、と男が人々に語る。それを聞いた人は一様に慰めの言葉をかける。世界は彼に同情し、彼は注目を浴びる。

主人公は終始悲しげな表情を崩さない。しかし映画が進むとともに、彼がそうした「かわいそうな自分」に依存していることが見て取れる。明るい曲をピアノで弾く息子を止め、自作の「妻の葬式」で歌う歌を披露する。葬式用のスーツも準備する。彼の中では妻の葬式は世間からの同情が頂点に達する「晴れの舞台」になるはずなのだ。そして妻がいなくなれば、自分は「新たな出会い」を求めることもできる。家事手伝いの女性相手に「結婚していますか?」と聞き、「はい」と答えが返ってきた後の微妙な間。

ところが

妻は奇跡的に復活する。それどころか以前と全く同じように生活している。妻の臨死体験に皆が聞き入る。誰も彼には注目しない。ここで「意味もなく冷蔵庫の扉を開け閉めする」演出はお見事。馴染みのクリーニング屋に言った「妻は以前のまま」という嘘も見破られ、これからどうすればいいのか。どうやってこの映画のオチをつけてくれるのか、と期待しながらスクリーンを見守る。

すると確かに映画は結末を迎える。なるほど。。そうしちゃったかぁ。まあ確かに話の辻褄はあっているけれど、オチていない。というわけで受験生のゲン担ぎにこの映画はいいのではないか。

とはいえ


日本映画だったら、主人公が「お前らに俺の気持ちがわかるかー!」と雨の中で叫ぶだろうし、アメリカ映画だったら、復活した奥様がすごい悪妻で旦那を惨めにさせるところがこれでも描かれるだろう。そうした安直な演出を排除したのは悪くない。ギリシャの静かで美しい日常風景を見るたび、一度だけ行った彼の地が思い出される。

とはいえこの内容ならば90分にして欲しかったと思う。テンポが悪すぎるし、催涙ガスはどう考えても余分。


キャッシュトラック: WRATH OF MAN(2021/10/10)

今日の一言:原題はネタバレ

映画の冒頭、現金輸送トラックが何者かに襲われる。その際犯人が発砲し何人かが犠牲になる。

場面は変わり、警備会社にジェイソン・ステイサムが応募してくる。トレーニングを終えさっそく仕事を始めるといきなり強盗が襲ってくる。しかしステイサムはあっさり強盗を皆殺しにするのであった。こいつは何者だ。

何度か最初の場面が繰り返される。その度にステイサムが何者で何をしようとしているかが明らかになっていく。私のように息子をもつみであれば辛い状況だが、仕事の特殊性ゆえと言えないこともない、とはならんか。

考えてみればステイサムを映画で見ることは2−3本目と言う気もするが、このハゲかっこいいなあ。私より4歳年下なだけなのに。というわけでスターになっているのだろう。彼が冷徹に敵を追い詰めていく。そして最後には人が虫けらのように死んでいく。

人類愛を説くわけでも世界平和を説くわけでもなく、親父の孤独な戦いは幕を下ろす。ちょっとまて、死んだはずだよお富さん、とも思うがこうでないと決着はちかないからまあいいとしよう。この値段分は楽しませてもらったと思うし。


007/ノー・タイム・トゥ・ダイ :No Time to Die(2021/10/02)

今日の一言:ありがとう、ダニエル・クレイグ

話は正直言ってよくわからない。ラミ・マレック演じる悪役が大して強そうに思えないし、ロシア人科学者もどんな人かよくわからないし、なぜスペクターを壊滅させるかもわからないし、ヒロインも特に印象に残らない。

私が愛するアナ・デ・アルマスはキューバ限定のエージェントということであっさり「私の出番はここまで」と宣言する。お前はABEMAの将棋ライブの解説者か。彼女の「三週間トレーニングしたのよん」というおどおどっぷりと、その後の暴れ方は素敵だが。

というなんともしまらない映画なのだが、ラストシーンのダニエル・クレイグの姿をみて目に涙が滲んでいることに気がついた。彼が参加する前の007は「あーはいはい」といったものの連続だった。クレイグ主演シリーズも出来に波はあるが、それでも全く違ったボンド像を提示してくれた。

南部訛り丸出しのアメリカ人とか彼は実にいろいろな役を演じてみせる。それでありながらボンドはボンドだった。彼が最後にミサイルを見上げる表情。これで彼の007もおしまいだ。ありがとう。楽しませてもらいました。


レミニセンス :REMINISCENCE(2021/9/18)

今日の一言:❤︎の抜けた技の羅列

温暖化が進み、半ば水没したマイアミ。現在でも治安は悪いが、さらにひどい状況。その地でヒュー・ジャックマンはお客に過去の記憶を体験させる仕事で日銭を稼いでいる。そこに不思議な女性が現れ「鍵を無くした場所がわからない」と記憶を辿ることを依頼する。鍵が見つかりやれやれと思ったところで、ジャックマンは彼女の歌に引き寄せられる。

その女性と再会したジャックマンは恋仲になってHappyと思っていたらいきなり彼女が失踪した。彼女はどこだーとジャックマンがひたすら探し続ける映画。

真面目に作られている。脚本はよくねられており、無駄な要素がほとんどなく最後には全てが糸で繋がる。彼女の存在は映画の進行とともにあちこちに揺れるが最後は綺麗に収まる。ラブシーンと格闘シーンになるとあくびがでるが、まあそれは不問に付そう。というわけで確かに技は見事なのだが、見終わって10分後心に残っているのは

「マイアミは確かに水没するだろうけど、アメリカなんてあんなに土地があるんだから、内陸に新しく都市つくりゃいいじゃないか」

だけ。なぜこうなってしまうのか。

思うにこの映画には技がいっぱい詰まっているが、「それで何が言いたかったのか?」がない。聞くところによればこの映画の脚本及び監督はWest Worldという人気TVシリーズの制作者とのこと。だから確かに腕はあるのだが、❤︎がない。結果として登場人物の誰もがリアルが人間に感じられずたんなる「映画の登場人物」で終わってしまう。

予告編はよかった。ところがRotten Tomatoesを見ると評価がとても低い。どうしてだろうと思っていたが、観て納得である。


シャン・チー/テン・リングスの伝説 :SHANG-CHI AND THE LEGEND OF THE TEN RINGS(2021/9/5)

今日の一言:東西ドラゴン対決

いや、昔から不思議に思っていたんですよ。欧米でDragonといえば羽の生えたリザードン。中国でDragonといえば空飛ぶマンダかキングギドラの首一本。日本だと中日ドラゴンズで、金鯱?

というわけでだがどうだか知らないが、映画の最後は画面上で東西ドラゴンががおがおと喧嘩をする。しかしCGだから「うん。怪獣映画だね」としか思わない。魔物を閉じ込めた蓋を守っている平和な村。そこに「蓋の向こうには嫁さんがいるんだ」と信じ込んだオヤジが乗り込んでくる。お互い喧嘩を始めるのだが、魔物が飛び出てしまい「協力しないとみんな死ぬ」といわれ、乗り込んできた「悪者」たちがあっさり協力し始めるところがかわいい。

あとはオークワフィナ。私の中では大桑雛。わざとらしくなく、ちょっと力が抜けた振る舞いでこの映画が「ありきたりな映画」に陥るのを少し防いでくれたと思う。Hotel Californiaの絶唱はいつか試してみよう(そんな機会がないことを祈るが)

逆にいえばそれくらいしか良いところがない。主役は絵に描いたような美男子でないとこと無駄に筋肉ムキムキでないところはよい。確かに悪くないのだが、よくもない。他のストーリーも同様。いや、そもそもヒーロー物にそんなの期待する方が無理だという意見もあろう。

そう考えると私の中でMCU映画に対するハードルが勝手に上がっていることに気づく。全てのMCU映画とは言わないが、時々「をを、こんな視点があったか」と驚かせてもらった。残念ながらこの映画にはそうた要素が存在しない。そもそも主人公は何がしたいのか、とか大桑雛の特技がちょっとやっただけの弓矢って何?とかとにかく残念な要素に満ち溢れている。聞くところによると検閲を通るため思いっきり中国の意向を取り入れた挙句、中国では公開されていない、と。いかにもそんな感じ。

アベンジャーズが終わった後MCUがどう展開していくかはこれからの物語。期待半分不安半分で見守ることにしよう。


HOUSE ハウス(2021/8/6)(1000円)

今日の一言:大林監督の始点と終点

名前だけは知っていたが未鑑賞。もうすぐ見放題期間終了の字幕にせかされ、Amazon Primeで鑑賞

映画が始まってすぐ「ちょっと待て」と出演者を確認する。なんと大女優というか有名人が目白押しである。そういえば最近池上季実子って何してるんだろう。あれこの可愛い子は、、なんと大場久美子。それに懐かしの南田洋子。どうでもいい男は尾崎清彦にへんなおじさんとして小林亜星。みんな若いなあと思って考えればもう四十四年前かあ。。

話の筋は単純そのもの。演劇部の女子高生七人が夏合宿のために池上季実子のおばちゃまの家に行く。そこでひとりずつ家に食べられてしまう。以上。

この映画は大林宣彦監督の劇場用初作品なんだそうな。でもって見ていると思い浮かぶのは同監督の最後の作品「海辺の映画館―キネマの玉手箱」両者を比べると、結局監督がやりたかったことが最初から最後まで変わらなかったのだなと思う。よくわからないストーリー。チープな特殊効果。美少女。監督自身の出演にピアノ、そして女優を裸にすることへのこだわり。いや、もちろん間に尾道3部作を作ったりしていたのだが。

とはいえこの作品では画面に若い力がみなぎっている。それは出演者だけでなく、監督も。主人公の継母は出演時常に布をひらひらさせているし高校生はきゃーきゃー騒ぐ。監督は女性をかわいく、美しく撮影することに異常な情熱を傾けており、剥き出しの熱意が画面から伝わってくる。

対するに最後の作品にも監督の熱意はあった。反戦という。しかしその熱意は記号として羅列されるばかりで、画面から観客たる私には伝わってこなかった。反戦ね。はいはい。それは彼が最後に縋った錦の御旗だったか。

そんなことを考えているうち映画は静かに唐突に終わる。私はこの映画に関係した人たちのその後の人生をぼんやり思い返す。



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注釈