映画評

五郎の 入り口に戻る
日付:2010/12/10
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950 円-Part12(Part11へ | 560円へ)

ハングオーバー!!史上最悪の二日酔い、国境を越える- THE HANGOVER PART II(2011/7/15)

2作目だからこんなもんだろう、としかいいようがない。

前作とほとんと同じ内容。ただ舞台はタイである。米国映画って妙 にタイが好き だなあ。みんなタイのリゾート地に行きたいのかな、とか考えているうち今回の背景が台詞で丁寧に説明される。不安を感じるがもう見始めて しまったものは しょうがない。

前作で私のお気に入りだったヘザー・グラハムはどこへいったんだよ。このお姉さんもわるくないけど。とか思っているうち例によって結婚 式前日にみん な見知らぬ部屋で目覚める。昨日何があったんだ?今度は奥様になる人の弟が消えたぞ。

そこから始まる騒ぎも以下同文である。2作目だからと変に話を広げないのはいいと思うが、かといって同じ話をもう一度やられても「またか」と思うだ けである。

16歳でStanford医学部に進学した天才少年が年相応に大騒ぎするところ、とか深刻な状況にも関わらず下品なギャグで思わずみん なわらってし まうところとか。いい要素はちょこちょこあった気がするんだけどなあ。。前作が脚本に1年かけたとすれば、本作は2ヶ月くらいか。

そのうち映画は平和なエンディングを迎える。Part3が作られるとすればさすがに少しストーリーを変えてくれるかなあ。


アイ・アム・ナンバー4- I am number four(2011/7/8)

ちょっとおまけしてこの値段。プロデューサーは心のない大作を撮る事で有名なマイケル・ベイ。若手にちょっとだけ予算やるから、一本 作ってみろ。う まくあたったらシリーズ化できるような奴をね、とでも言ったか。

映画の冒頭どこかのジャングルで誰かが殺されるが暗すぎて何もわからん。しかし後から思えばあれは予算削減のための手段だったのだな。

舞台変わって車に乗り移動し続ける男性二人。誰がどうみても親子には見えないが、そう偽って生活しているらしい。ナレーションで「僕ら は宇宙人。悪い宇宙人にみんな殺されて、何人かだけ地球に逃げてきてるんだ」とかなんとか説明してくれる。この悪い宇宙人達のチープな事。

でもって二人はオハイオ州にあるパラダイスという小さな街に流れてきた。これが絵に描いたような田舎町。年に一度のビッグイベントは、 移動式遊園地 がやってくる春のフェスティバル。舞台はほとんどこのフェスティバルと高校だがこれも予算削減のための努力であるな。

主人公、ヒロインともどこかAKBを思わせるような容姿。つまり普通の人にまじれば美形なのだが、それだけで金が取れるとは思えない。 ちなみに字幕の人、「いやな高校生達」をチアリーダーとか訳してるけど、フットボールプレーヤーの間違いだと思うよ。(私の読み間違いかな)

でもってあれこれやっているうち悪い宇宙人が追いついてきて大げんかになるわけだ。戦闘シーンは全部夜。最後の大立ち回りはフットボールフィールド でやるから、細かいあれこれを書き込む必要も無い。あわよくば数本は続編が作れる設定とともに映画はお開きとなる。徹頭徹尾チープな映画 なのだが田舎町の 光景とあいまって思ったほど「つきあいきれん」と思わなかったのは確かだ。どうも私は「予算削減の努力」がみえる映画に甘いような気がす る。


スーパー8- Super 8(2011/6/26)(1000円)

映画の冒頭、工場に掲げられた「無災害継続日数」が書き換えられる。何か事故があったのだ。

場面は変わり、主人公とその家族の状況が言葉を使わず示される。4ヶ月後、主人公は仲間と一緒に8mm映画を作っていた。太った少年は やりての監督+プロデューサー。主人公の妻役を出す事にした、と言って呼んでくるのがダコタじゃなくてエル・ファニング。ああ、ここにも才色兼備の 姉妹が。彼女がリハーサルで

「あなたを愛しているの」

と言うときの表情。観客の方も口があんぐり、となる。その後の「今のでよかった(Was that good?)?」という表情との落差も驚きだ。ここまではすばらしかった。

そこで何かを積んだ電車が脱線し、大事故になる。しかしなぜ空軍が出てくるのか。あの積み荷はなんなのだ。そして少年達は自分たちが撮影していたカメラに何かが映っていた事を知る。

予告編を見たときは「撮影していた連中を捕まえろ」という軍とのおっかけっこでもあるのか、と思ったが結果からするとこのフィルムはあ まり重要ではない。脱線を引き起こした生物の先生の遺品で「事件の背景」が解りやすく説明されるあたりから加速度的に普通の映画になっていく、というか本来のJJ Abramsの味がでた、というか。無駄で意図がわからないシーンが続出するのだ。

こんな場面を想像したくもなる。プロデューサーのスピルバーグはAbramsに指導をする。削りなさい。削り過ぎかと思うほど。 E.T.はわけがわかんなかったけど、それでも名画になったのだろう?

聞いたAbramsはそういうものかと思う。それゆえ最初の場面はすばらしかった。しかし遺憾ながら弟子は師匠の心を理解しなかった。 本来の「オタク心」がむらむらと顔を出す。宇宙人の造形はやっぱりこうじゃなくちゃ。クローバー フィールドで使った奴をちょっと手直し。でもって人をぽりぽりたべて、折角軍隊が来てるんだからドンパチもいれよう。憎らしい将軍はグシャっと殺して。。まあマーケティングの都合+E.T.へのオマージュもあるから最後は平和に、などと詰め込んだ結果わけがわからない話になってしまった。えっ、こ んなにオマージュの要素がはいっているのに、って肝心な心がないんだよ。

見ようによっては、列車爆発からエンドロールの直前までカットしてくれた名作になったかもしれん。エンドロールではそれまで製作してい た映画がちゃんと全編流れる。NG集なんぞでお茶を濁すよりずっと立派だ。(エル・ファニングちゃんのゾンビも見られるし)その後流れる「マイ・シャローナ」は少し私をご機嫌な気分にしてくれたのだが。後もう一つよかったところ。写真屋の兄ちゃんが惚れてるお姉さん。いかにも「田舎町のスター」という容貌で笑っちゃいました。


スカイライン-征服- Skyline(2011/6/19)(1000円)

思いっきりB級パニック映画である。そのすがすがしさが気に入った。変態でも奇人でもない人が、限られた予算の中で、真面目にできる限りの映画を 作ったという 気がする。

冒頭なんの前置きもなしに、空から光が降ってくる。部屋に男女がうだうだしているが、「誰かが消えた」と叫び声がする。このオープニン グには少し意表をつかれた。いきなり説明無しに直球勝負かよ、と。

そこから場面は15時間前に戻り、少しずつ背景の説明がされる。しかしそれは映画の本題とは関係がない。そもそもあいつらはなんなの か、とか事態の背景は一切説明されない。大きな危機にさらされたときの個人な んてのはこんなものだ。(この前の地震でもそうだったし)

TVもつけずに「外へでてみよう」とか解りやすい死亡フラグをたてまくる男性とか、女性とか。ここらへんは伝統的なパニック映画の設定にのっとって いる。正体不明の相手は手を替え品を替え襲ってくる。途中から時計を見たくなる。退屈だからではない。いつまでこのいやなシチュエーションが続くのか知りたくなるからだ。ちなみに敵の造形は、マトリクスや宇宙戦争そっくり。きっと3Dモデルを流用して費用を削減したのでしょう(勝手な想像)。

そんなことを考えながら見続ける。あれこれあったが、結局「主人公グループ全滅」かと思った瞬間、おーっと、投げっぱなしのジャーマン スープレックスが炸裂だ。

一瞬唖然とするが、その「投げ捨て方」はいやな感じではない。どうしようもない戦力差に抵抗はするが負け続け、それでも「最後の最後まで」なんとかしようとする主人公の姿と、どうしようもない低予算でも、「これでどうじゃーい」と投げ返した監督の姿勢を想像の中で並べてみたくもな る。

以下余談

・今回人間側から迎撃に登場するのは無人機の群れ。人間乗せると駄目になるから、とは思うがそういう時代なのだね。後にF-22もどきも登場するが アップはなし。予算が(以下略)。軍隊がやってくる前に「機関銃で反撃する人」がいるのは、いかにもLos Angels。

・舞台はほとんど高層マンションのみ。そこから出ようとすると律儀に敵がやってきて追い返される。考えてみればこれは予算節約の一つの方法だな。外に出る訳にもいかず部屋の中でうろちょろ時間をつぶす一行をコマ送りで写す場面は一番印象に残っている。

・登場人物も「聞いた事の無い」6人+2名のみ。映画が始まってすぐ街には人っ子一人いないことになっているから。これも予算(以下 略)

・その中で一番かっこいいのはヒスパニック系とおぼしきマンションの管理人。舞台となる部屋に特攻隊員の絵が飾ってあるのには気がついていたが。と いうかアメリカの観客あの絵で意味わかるのか。

・しかしいつものことながら、アメリカ映画の「核爆発」に対する能天気さはなんとかならんものか。


ザ・ファイター-The Fighter(2011/4/2)

悪くはないのだが、アカデミー賞にたくさんノミネートされるほどいいのだろうか。米国ではボクシングを扱うと、+20ポイントとかあるのかな。

駄目一家の兄弟。兄はかつて「シュガーレイ・レナード」をダウンさせたことだけが自慢の薬物中毒。弟は地道にがんばっちゃいるが、トレーナーたる兄 は時間になっても現れず薬物吸ってだらだらしている。母はマネージャーを気取ってはいるが、その手腕は敏腕とはとても言えない。

というわけで「駄目な家族に引きずられつつも完全に切れない」ボクサー兄弟のサクセスストーリーである。彼をささえるお兄さん役はクリ スチャン・ベ イル。ダークナイトの2枚目役をまったく感じさせない熱演は認めるが、なんというのか見ていていらいらする。そんな駄目家 族さっさと捨てればいいのに、と思うが主人公も

「僕はお兄ちゃんがいないとだめなんだー」

の情けない弟だし(いい歳なのに)

途中お兄ちゃんは改心していい人になるのだが、その後が簡単すぎる。結局のところお兄ちゃんの知恵というよりは

「根性と気合い」

で勝つわしねえ。。エンドロールに実際の二人がでてくる。兄のしゃべり方はそっくり。だから俳優としての努力はわかるんだけど。。


エリックを探して-Looking for Eric(2011/1/13)

英国が舞台なのだが、飛び交う”英語”は私が慣れ親しんだものとはかけはなれている。映画が始まってしばらくほとんど台詞を聞き取れな い。そういうエリアの住人の物語。台詞にはやたらとFuckが混じる。

映画の冒頭主人公が道路を暴走して事故を起こす。そんな暴走をやらかすほど彼の人生は行き詰まっている。米国ではDead End Jobと称される郵便配達人。最近はその仕事すらうまくこなすことができない。二人の息子は(何故一人黒人なのだろう)親の言う事を全然聞かず、部屋に入 り浸りTVを観ている。(思うにTVを観る、という行為は下層階級の象徴なのではあるまいか)

行き詰まった彼は息子が隠し持っていた麻薬(大麻かなにかか)に手をだし、有名サッカー選手の幻影を観る。その男の言葉に励まされ、駄目人間の生活 は少しずつ改善を兆しを見せていくが、ギャングに誘われた息子が大きなトラブルを抱えることになり。。

映画なのでそのトラブルはうまく解消されることになるのだが、その仕方がどうにも軽いように思える。そんなんでいいならあまり悩む事な かったじゃないか、と。しかし今の私はまさに主人公のエリック状態な訳だ。私が日々胃を痛くしている問題も、他人からみればこんなことかもしれぬ。

だからこそいかにも映画らしい解決の方法が気になるのかな。いや、映画の中であればこそそうした浮世離れした幸せを観たい、ということ なのかも、、 とか悶々とする映画。何かが心に残ったのは確かなのだけど。


ミックマック-MICMACS A TIRE-LARIGOT/MICMACS(2011/1/12)

フランスといえば、エッフェル塔にシャンゼリゼ通り。つまるところはパリのイメージ、と思っていたのは子供の頃。今フランスの3大名物 はと問われれ ば

と答える。フランス人はそれを当然視しているのかと思っていたが、この映画を見る限り武器輸出に関しては多少良心の呵責を覚えているのかな。

主人公の父は地雷処理をしている時に亡くなった。主人公は流れ弾が頭蓋骨に命中し、いつ死ぬともわからぬ身。ある日父を殺した地雷のメーカーと、自分の頭 にはいっている弾丸のメーカーが隣り合って存在している事を知る。これは復讐しなければ、というわけで風変わりな”家族”と復讐計画にと りかかるのであっ た。

と言われても、なぜ主人公が武器産業を目の敵にするのか今一つピンとこない。フランス製の武器で家族を皆殺しにされた別の国の人というならわからん でもな いけど、そういう場合まず目の敵にするのは使った国であって作った国ではないでしょ。

などという疑問をよそに復讐は着々と進む。話は一本道なので、はらはらどきどきするわけではない。アメリの監督、スタッフが作ったとのことであの映 画に共通する不思議な雰囲気に幾ら払うか、を問われる事になる。

退屈はしなかったのでこの値段にするが、やはりアメリの人の方がこうした雰囲気にはあっているかな。そういえば主人公がいつ死ぬかわか らない身分、 という設定はその後全然でてこなかったな。


アンストッパブル-Unstoppable(2011/1/8)(1000円)

ちょっとした手違いと不運から無人の列車が暴走を始める。貨車には膨大な量の爆発物が。さてどうやって止めましょう。

前半はとてもよかったと思うのだ。テンポよく話が進む。登場人物が重大な決断をするところも無用に強調したりしないのが好ましい。デンゼ ル・ワシントンが娘に

”最後になるかもしれない電話”

をかけるところも背景等は何も言わずただI love you.これは思いもかけず傑作に出会ってしまったかと期待が高まる。

しかし後半が”おいちょっと待て”の連続になってしまったのが惜しい。特に最後の解決方法。それができるなら最初からやれよ、のスペシウム光線状態 だ。家に帰って下敷きとなった実話について調べる。すると大筋で現実にそっていた事を知る。映画用に改変した場所が”おいちょっと待て”になっていたようだ。そりゃあ、ヒーローをあの二人に限定したい気持ちはわかるけど、それだと最後の場面であの長髪おじさんが受け答えしている理由がわからなくなるでしょ。もう少し考えましょう。

失望感にとらわれた私の前で、駄目映画の特長である”必要以上に長く、だらだらした結末”が続く。その間

”日本でこの映画を作ったら”

と考える。

年老いた機関士(ちょっと前なら高倉健)と若い男(なんなら玉木君にやらせるか)が暴走列車をどう止めるかについて議論をする。時間はないのに顔を ドアップにしてありきたりな台詞をぶつけあう。その間に列車は遠く去ってしまう。

いや、後ろから追いつく等日本男児のすることではない。二人とも家族と携帯電話でたっぷり話した後、真正面から”特攻”するのだ。する と運動量保存の法則を無視して暴走列車は爆発もせずに停車。二人の家族(女性のみ)は抱き合ってよよよよよと泣き崩れる。

最後の場面。運行管理室の偉いさんが

”彼らの死を無駄にしてはいけない”

とだらだら演説をする。主人公達のじゃまばかりしていた上司は警察に連れて行かれる。それをバックに女性のみの家族はまたひとしきり泣く。これは ちょっと古いかな?

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注釈

 危機にさらさ れたときの個 人:そうした意味で、本作はミストとか宇宙戦争のような視点から描かれる。思えば日本の怪獣映画っ て、いつも全体的な 視点からしか描かれなかったよね。だからなんやかやと「対策本部」に主人公が乗り込むことになるのだが。 戻る