映画評

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モスル~ある SWAT 部隊の戦い~:Mosul(2021/11/23)

今日の一言:「イラク第二の都市モスルを奪還しました」というニュースの現実

映画はいきなり二人組が何者かと銃撃戦をしているところから始まる。弾丸がなくなりいよいよガラスの破片で戦うか、というところで何者かが敵を掃射する。それはモスルの元警察官達が組織したSWAT部隊だった。そして叔父を殺された若者はSWATに合流する。
映画の間中ずっと戦闘が続く。SWATのメンバーは名前も覚えられないうちにどんどん亡くなって行く。画面で何が起こっているか把握できなくても人は死ぬ。彼らにとっては米軍もなんの躊躇もなしに都市を破壊する存在でしかない。銃弾が飛び交い、味方の誤射で人は死に、空からはドローンが降ってくる。

「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を主張できることはなんという幸運だろう。映画を観ている間そのことばかりを考えていた。最初頼りなげで、途中「なぜ何も教えてくれないんだ」と言っていた若者は最後には男の顔になる。

なぜISは勢力を拡大できたのか。それより少しマシなアルカイダはなぜアフガンを「奪還」できたのか。そうした疑問とは別にその地に生きる人たちの物語が存在する。信条、国籍、場所は異なっても人間は生きようとしている。懸命に。観終わってぐったりしていることに気が付く。


エターナルズ :ETERNALS(2021/11/6)

今日の一言:人間の想像力

アベンジャーズが一応の大団円を迎えた後、実はそれより昔からずっと地球を見守っていたすごい何かがいましたって、それどうするんだ。しかもサノスが指ぱっちんやった時も全然助けてくれなかったじゃないか。

という設定上の難題をちゃんとクリアし、しかもスーパーヒーローの強さインフレを起こさずにキチンとした話にまとめるのが素晴らしい。ノマドランドとこの作品を両方とも作ってしまうというのもちょっと私なんぞの想像を超えている。

昨今のディズニー映画だから、政治的にな正しさには最大限の配慮がなされる。ヒーローには聴覚障害者、太った黒人のゲイ、インド人、白人、もはや人種とかどうでもいいアンジェリーナ・ジョリーにアジア人と多様性に最大限配慮。そうだねえ。確かにアジア人二人は多すぎたか。

なんだか最後のオチのつき方とかよくわからない点もあるが、ヒーロー映画だから丸く収まったと思えば良かろう。アベンジャーズが見事な終わり方をした後に「まだこういう手がある」と見せられるのは驚きでもある。仄聞するところによれば、まだ続編は決定していないようだが、Eternals will return とやっておいて作らないてはないでしょう。ちょっと間隔があいちゃうのかな?をを、そのための「一人だけ人間化」であったか。


ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結:The Suicide Squad(2021/8/21)

今日の一言:狂気の面白さ

予告編が素晴らしく、本編は信じられないほど期待外れだったスーサイド・スクワッドの再出発版。前作からはハーレイ・クインと命令を出す怖いおばさんだけが続投。うん。ウィル・スミスはいらないね。

映画の冒頭あっというまにチームが編成され敵前上陸。しかし何もかもがうまくいかない。あっというまにチームがやられてしまうが、それは全部陽動でした、というところからして驚かされる。他にもガーディアンズ・オブ・ギャラクシー で楽しませてもらったジェームズ・ガン監督だけのことはある、というシーンが続出する。グロも無茶苦茶な殺戮もなんでもあり。そしてそれを映画の面白さにつなげている。

登場人物は普通の正義の味方ではない。一人命令に忠実な人間が「正義」ではなくなる。両方に足をおこうとした好漢の大佐の運命。あくまで自分の考えと価値観で行動し続けるハーレイ・クイン。彼女が敵から脱出するシーンでは日本の少女漫画さながらに背景に花が飛ぶ。いや、すばらしい。この脱出シーンだけで過去二作の彼女の良さを上回っている。

現にアフガニスタンで起きたことや、他の国にアメリカが介入した結果を思うとき、最後はちょっと美しすぎる気もするが、まあいいだろう、映画だし。エンドクレジット後のシーンを見る限り続編を作る気満々のようだ。早く作ってくださいな。楽しみにしてるから。


イン・ザ・ハイツ:In the Heights IN THE HEIGHTS(2021/7/31)

今日の一言:この世界の片隅でSing and Dance

ニューヨークの北のハズレ。ワシントン・ハイツと呼ばれるエリアには中南米からの移民とその家族が住んでいる。環境は悪いがここを出ようとしてもニューヨークでアパートを探すのは並大抵のことではかなわない。ようやく空きを見つけても

「賃料の何十倍の収入証明書を出せ」

と冷たく言い放たれる。主人公は小さなコンビニを従兄弟とやっている。彼を中心にハイツで生きている人たちの日常が描かれる。学力優秀で、奨学金を得て(とはいっても全て手ぶらで行けるほどはないよ)Stanfordに行った女性がいる。しかし彼女はStanfordで偏見の壁にぶつかり退学を決意している。一方その父親は苦労して築き上げた会社を売ってまで彼女の学費を払おうとしているのだった。(Stanfordの学費は高いよ)

そんな彼らと彼女たちにとって現実は日々の戦い。嘆いていてもしょうがない。できる方法で前に進むしかない。見ていて「この世界の片隅で」を思い出す。どんな環境でも人間は懸命に生きようとするのだ。そんな人々の姿が圧倒的な歌とダンスを背景に描かれる。

安易に流れず、必要以上に悲嘆せず。もちろんお話だから最後はそれなりのハッピーエンドになるがそこに至るまでの苦労、悩みはちゃんと描かれている。画面を埋め尽くすダンサーたちの人生にふと思いを馳せる。この人たちはこの後どうやって暮らしていくのだろう。この映画に出演できたことは素晴らしい業績ではあるのだろうが。

人のことを心配している場合ではない。自分の恵まれた環境を見てみろ。そしてそこで自分がいかに怠惰に暮らしているかも。

この映画を観た後

「君たちは先進国に生まれ、自分が生まれ育った土地で教育を受けられるし、がんばれば大学にも行け、さらにがんばればそこそこの収入が得られる職にもつける。これはとてつもなく幸せなことなのだよ」

と子供たちに語った。彼らがその意味を理解したとは思わないが。いつの日か彼らがこの言葉を思い出す日が来るだろうか。



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注釈