題名:三年の

五郎の入り口に戻る

日付:2003/11/27


三年生になった初日、まずあるのがクラス替え。二年のクラスにいったん集められ新しいクラスが発表される。ああ、あいつと一緒か。あの子は別のクラスにいっちゃったか。それでは、ということで特に感慨もなく分かれると新しい教室に向かう。

適当な椅子に座るとじろじろ見回す。あれ、あいつが居る。いや、もちろん口をきいたことはないのだけど、あいつは有名人だから。他には、、、ああ、あの子が居る。いや、もちろん口をきいたことはないのだけど、彼女は顔がいいから。

などと首を振り回していると二年のクラスで同級だった男が話しかけてくる。何を話したものやら、という状況だから言葉に意味などない。

「そうかな。俺さぁ」

口から飛び出す言葉に自分で驚く。今まで自分の事を「俺」などと呼んだことはなかったのだ。三年生だからな、新しいクラス、新しいクラスの人間、だからなんなのかは自分でもわからない。とにかくちょっと違うんだ。きっと。

頭の中で自分に言い聞かせることしばらく。いごこちの悪い思いをしたまま会話を終える。また教室の中を見回す。するとあまり顔を合わせたくない子がいるのに気がつく。あちゃー。

いや、気にすることはない。おまえには自意識過剰の気があるじゃないか。きっと相手はこちらの事なんかなんとも思ってないし、きっと忘れているよ。すると目が合う。一瞬視線を止めた後相手は私が形容する言葉を持たない表情を浮かべた後顔を回した。

内心そうだと思い込んでいた事だったけど、やっぱりこちらの思いこみだけではなかったかな。ああ、彼女とこれから一年一緒の教室で暮らすわけか。まあ気にしなければいいことだけど。そうだよ、なんてことはないよ。別にクラスの人間全部としゃべらなくてもいいんだしさ。でもなあ、行事とかあるよなあ。なんとか大会とか。まあいいことにしよう。よくないけど。それにしても先生遅いな。

ほどなくして担任となる先生がやってきた。おお、この先生か。これはラッキー。しかしそう思ったのもつかの間、先生はこう言い出した。

「またクラス替えがあるかもしれません。今日はこれで帰ってください」

翌日学校に行くと昨日のクラスはなかったことにされ新しいクラスが発表された。何があったのかは知らない。新しい教室に行き首をふりまわす。今度のクラスにあの子はいない。有名人がいるわけでもない。ふーんと思っていると新しい担任が入ってきた。あちゃー。一年生の時と同じ男だ。一年が終わるときに「もうこれでおしまいだ」と思い「先生の授業の進め方には問題があると思います」なんて感想かいて提出したんだった。よりによってこの男か。内心頭を抱えていると、ふと目が合う。すると先生はにやっと笑った。


第6回雑文祭」参加作品である。今回の縛りは
  • 題名は「三年」で始まること(例: 三年目の浮気)
  • 「口から飛び出す」「内心そうだと思い込んでいた」「大会」を、この順序で雑文中に含めること。
    • 順序を守ること。たとえば「内心そうだと思い込んでいた」よりも前に「大会」を使ってはならない。
    • お題はそのまま使うこと。漢字をひらいたり、語尾を変えたりするのは不可。

かなりきっちりと決められた縛りである。しかしだからと言って書きやすいとかいうことにはならない。

例によって例のごとく書いた文章をあっさり削除すること数回。ぽっと浮かんだ言葉から(一カ所を除き)実体験そのままを書いた。

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注釈