題名:Goldberg Variations

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日付:2007/11/5


J.S. Bach作曲Goldberg Variations。この曲名を日本語でなんと表記した物か。何故そんなことを悩むかと言えば、最初の「ゴ」の後に長音「ー」がはいるか否 か。およびそ もそもどの文字に濁点がつくのかわからないからだ。ちょっとインターネットを検索しただけでも実にたくさんのパターンがある。はて、どれがた だしいのか。
いや、元々はGoldberg Variations(英語表記では)であるからして、それを日本語のカタカナでどう表記しようがバッハの知ったところではない。つまり正解 は存在しない のだ。そんなことはわかっていても果たしてどれを使うべきか。
よし、ここは多数決にすがろう。「みんながそう言っているから」と自分の責任を回避し、言い訳を作り上げよう。というわけで Microsoft Live Searchにいくつかの日本語を入力する。返ってきたのは以下のような結果である。

ゴルドベルグ変奏曲 748件
ゴールドベルグ変奏曲 8290件
ゴルトベルグ変奏曲 662件
ゴールトベルグ変奏曲 269件

こ れだけ観ると「ゴールドベルグ変奏曲」が優勢である。しかし4っつともインターネット上に存在しているのだ。では例えば検索結果が1とかいう ものは存在し ないのだろうか。何の根拠もないが、最初の「ゴ」を「コ」とするのはあまり無いような気がする。というわけで検索してみる。

コルドベルグ変奏曲 1件
コールドベルグ変奏曲 124件

多少数は減ったが結果は存在している。不安になった私は別のパターンも手当たり次第に検索し始める。えーっと今度は一番最後の濁点を外してみ るか。

ゴルドベルク変奏曲 1620件
ゴールドベルク変奏曲 45700件

をを、こんなところにこんな「当たり」が。よし。もっと濁点を減らしてみよう。

コルトヘルク変奏曲 0件
コールトヘルク変奏曲 0件

やはり終わりが「ヘルク」では弱々しすぎるか。
というわけで、どうやら多数決を信じれば「ゴールドベルク」が「正しい」ようだ。しかし常に多数派が正しいとは限らない。書籍ではどのように 記載されてい るか調べてみよう。そもそも私が何故この曲に興味を持つようになったかと言えば、The Silence of the Lambs「羊たちの沈黙」においてレクターがリクエストした曲だったからだ。看守二人を殺害した後この曲に身をまかせるようにしていたアン ソニー・ホプ キンス演じるレクターの姿は今も脳裏に焼き付いている。
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というわけで小説版の羊達の沈黙とハンニバルを観てみよう。すると「ゴルトベルク」と書いてある。レクターは曲名だけではなく演奏者も指定し ていた。その グレングール ドについて書かれた「グレン・グールド 孤独のアリア」では「ゴールドベルク」となっている。
この映画に触発されたせいかどうか知らないが、近年公開された「時をかける少女」でもこの音楽は効果的に使われていた。伝統に従って主人公が 理科実験準備 室からの物音に気がつきのぞいてみるシーンだ。そして一転して場面がアップテンポに動き出すところでは、第一変奏曲がながれる。
ときかけ
ちなみに「時をかける少女」「変奏曲」で検索をかけるとでてくるもののうち多くは「ゴールドベルグ」のようだ。「ゴルトベルグ」も一つみつか るが。最近辞 書代わりに重宝している日本語版Wikipediaではどうなっているかと調べれば「ゴルトベルク」。なんということだ。「権威」もちらばっ ているではな いか。
となるとGoldberg Variationsを日本語表記するためには先人の知恵を生かし正規表 現を用いるべ きなのか。えーっとどうやって記述するのかな。

[コゴ]ー?ル[トド][ヘベ]ル[クグ]変奏曲

いや、個人的な理由だが正規表現という言葉にはいやな思い出がある。できれば使いたくない。となると
「いや、あのゴォルトベルク変奏曲」
と 小さな声でごちゃごちゃ言ってごまかすか。しかし「え?何?」と聞き返されたら結局ちゃんと発音しなければならぬ。あるいは鼻歌で歌って「あ の ちゃん  ちゃん ちゃらちゃーちゃ ちゃーちゃららーらー っていう曲」とでも言うか。しかし私は未だ人前で歌って「上手ですね」と言われた事が無い 男、というの はとりくろった表現で、良くて「あまりうまくない」率直に言えば「下手」と言われたことしかない男なのだ。
ええい、何故こんなに苦しまねばなら ぬ。がぶっ、と相手の(誰が相手か知らないが)の顔に噛み付いてはレクターと形だけ同じである。この文章を書くためその部分のビデオを見直し たのだが、ア ンソニーホプキンス演ずるレクターは看守に襲いかかっているときでさえその表情は冷静なままだったのだ。
ちゃんと発音することもできない。逆ギレもだめ、となるともはや道はないのか。こうなったら人をさけ引きこもり録音したCDだけ発売するに限 る、、、というわけでグレン・グールドは変人となったのでした。
注釈