題 名:Java Diary89章

五 郎の 入り口に戻る

日付:2006/3/31

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CC2007-後半

翌日も前日と同じようなパターンで始まる。朝ご飯は例によって「欧米で食べる無料朝ご飯」としかよびようのないも のだ。ケチに なっている私としてはただでご飯が食べられるのはありがたいが、そろそろ日本の「1000円で食べられる朝定食」が懐かしくなってくる。などと贅沢を言っ ている場合ではない。昨日あれこれを仕切っていた女性が私のところに来て

「今日はあなたが一番最後にプレゼンをしてちょうだい。そ う すると私がスピーカーを早く移動できるから」

と言われる。他の二人は音楽関係の発表だからスピーカーが必要。あんたはいらないで しょ、とのことらしい。了解、と私は答える。さて、問題はどうやってこの話をあとの二人に伝えるかだ。

そ んなことを考えながら午前のセッションを聞く。すると昨日より話がまともに聞けることに気がつく。大学生二人の発表があるのだが、これは実に見事だった。 研究の内容自体はそれほど面白くないのだが、プレゼンテーションという観点では昨日の発表者達とは雲泥の差がある。そのうちセッションが変わり、発表の 雰囲気も変わる。なんだかアーティスト系の人とおぼしき女性がでてきて

「この中でこのミネラルウォーターを飲んだ人は手をあげなさ い!」

とか言い放つ。それからしゃべることを聞けばなんでもミネラルウォーターは環境に優しくないからけしからんとかそんな話。洋の 東西を問わずこうした「環境を守っているのよ!」という人の話はなぜこうも私の神経を刺激するのだろう。思うに

「自分は絶対正しい。 そうでないあなた達は間違っているのよ」

と いう自分を絶対善においた鼻持ちならない態度が原因ではなかろうか。アートを環境を守る試みに生かしている人はいっぱいいるのよ。あるソフトをインス トールすると、例えばAmazon.comでiPodを買おうとすると、その製造のためにどれくらい二酸化炭素が排出されたか表示してくれるそうな。余計なお世話だ。

というか米国人が「地球温暖化防止の為にエネルギー節減を」を言っているのを聞くと悪い冗談としか 思えない。あ れだけ無駄に電気をつかい、必要以上に食べまくりその体重を減らすためにまたエネルギーを使っている連中が「ミネラルウォーターは環境に優しくない」など 片腹痛い。てめえら他人を非難するまえに食べ物を1/10に減らし、Detroitを消滅させCaliforniaに移住させろ、とかなんとか考 え続ける。とはいえもちろんこれが言いがかりとしか受け取られない事を自覚するぐらいの脳みそは残っている。要するにたいていの人間は自分の行動を愚かと は思っていないので、仮に正しくてもそれを指摘しても何も起こらない。それぞれの文化において許容される形でしか働きかけは行うべきではないのだ。

と はいってもこの(私から観れば無茶苦茶な)プレゼンテーションがBest Paperを受賞するのも米国(およびカナダ)主催の学会という物であろう。米国人ってこういう話好きなんだよなあ、とまたものすごく一般化したことを考 え続 ける。

さて、かくのごとく感心したり憤怒の炎を燃やしているうちに、またまた自分の出番が近づいてくる。緊張しつつ午前のセッション が終わっているのを待っていると、今日は午前の最後にアナウンスがある。

「みんなデモをみてください。あと奥の部屋でプレゼンが三つ ありますからそれもお見逃し無く」

用は我々のデモを含めたデモセッションの宣伝である。余計な事を。今日は総計5人位を前にしゃべれ ばいいのだと思っていたのに、とはもちろん考えたりしない。

と にかく終わるとデモの部屋に急ぐ。なんでも今日は一人遅れてくるのだそうな。ふーん。ところで昨日とは順番を変えよう。いや、誰かきて そうしろって言ったからさ、とかなんとか怪しげな英語で説明する。さて、準備できたというわけで待っていると今日は人がわらわら入ってくる。満室である。どういうことだ。 少人数を前にのんびりしゃべればいいと思っていたのにこれでは緊張するではないか。と今更文句を言ってもしょうがない。最初の人間の話はまもなく終わるが 質疑応答が長い。というか私以外の二人はいつもだが、同じような事をしている人達の間だけで通じる質問が多い。そのうち何人かが部屋から出て行く。やれう れしや。これで少し緊張が解ける。しかしそのうちカンファレンスで最初に挨拶したひとが

「まだ他の人のプレゼンがあるだろう。we are loosing some people」とかいって質疑を打ち切る。

というわけで私の出番だ。足がすくむがここでびびってもしょう がない。

プ レゼンテーションとしては4回のうちでこの時が一番うまくできたと思う。多少の笑いも混じりながらなんとか終えることができた。いろいろな質問が飛んでく る。質問が理解できない、というのが一番おそれていたことだが、幸いにも一件を除いてそういうことはなかった。そのうち「それはOn lineか?I would like to play with your toy. ABCDといれてみろ」とか言われる。幸いなことにプログラムはちゃんと動き、いろいろなABCDが表示される。というかこの瞬間までABCDという略称 を持つ団体がこんなにたくさんあるとは知らなかった。

さて、カンファレンスをしきっている教授はと観るとなんだか苦虫をかみつぶし たような顔をしている。何かが気に入らないのだろうがそれは私にはわからない。あと一回あったプレゼンの後に起こった事とあわせていくつか覚えいている事 を書いておこう。

若 い男が来てよかったよ、とほめてくれた。あんたの専門はなんだ?と聞かれたので「とりあえず会社が命じることはなんでもだ」と答える。ここにいるのはアー ティストとか研究者と呼ばれる人達が多いのだろうが、私はサラリーマン以外の何者でもないのだ。しかし後から考えてみればこれは会社から命じられたことで はないな。

後 ろのほうにいた女性が「画面の上のほうにWeb/Videoとあるがそれは何だ?」と聞く。私は「よくぞ聞いてくれました」と説明を始める。つまるところ Goromi-TVのデモだ。こちらは得意げにやっているが、会場の反応は今ひとつ。あら、これおもしろくないかしら。

アジア系の白髪交じりの女性がやってきて「これはあなたが考えたの?」と聞く。そう、 考えたのもプログラムをしたのも私。いわばPersonal Projectだ、と答える。彼女はこういう

「こ の会議ではみんながCollaboration (協力)することを考えているけど、新しいアイディアは一人の頭からしかでないこともある。この調子でがんばりなさい」

私 はThank youと言った。これは今回のカンファレンスで一番うれしかったコメントかもしれない。

か くしてCC2007はめでたくお開きとなる。わーいわーいというわけで中華料理屋を探し、Chinese Foodをがつがつ食べる。ああ、中華料理って素敵。その後てくてく歩いておみやげを買いまくる。ホテルに戻るとまずやることは明日の空港への足の確保 だ。入り口近くに立っている黒人のおにいちゃんにあれこれ聞く。明日の朝7時発の国際線に乗るのだけど、(これは後で間違いだと分かる)となると5時まで に行かなくちゃいけない。地下鉄動いてないけどどうすればいいだろう。相手は答える。タクシーを呼んでもいいし、スーパーシャトルもある。スーパーシャト ルのほうが安い けど、時間はかかるよ、という。どちらにしても会社に請求するから値段は問題ではないのだが、なんだかおもしろそうだからスーパーシャトルで、と頼む。す るとどこかに電話をしてくれて「なんという飛行機に乗るのだ」とかあれこれ聞く。電話を切ると、明日の朝3時に迎えにくるって、と言う。私は礼を言って チップを渡す。今回はなんとかチップを払わずに生きてきたが、こういうところではちゃんと払わなくてはならない。さて、3時に出るとなると2時に起きなけ ればならない。しかしこういうときに時差ぼけは実に頼もしい。どちらにしてもその前に起きるだろうと思っていたら本当に1時頃起きた。まだ早いのだが、寝 てはいけない。TVなどみながらぼんやりする。するといつの間にか時間になっている。チェックアウトし、下に行く。「タクシー呼ぶ?」と聞かれるが、 いや、もう昨日頼んであるからと答える。まもなく車が来た。

ワゴン車である。それにぽてっと乗る。真夜中のWashington D.C.を走っていく。住宅街のようなところを行くのだが、運転手さんも大変だ。カーナビとかついてないし。近くにいって電話をかけあちこちきょろきょろ したりしている。そうした調子で同じ車に乗る人間をピックアップしていく。最終的には4人が乗っただろうか。エジプトのなにかのようにとんがったモニュメ ントの近くを通り高速道路に乗る。道路脇にいくつも会社のビルディングが見える。むかしああいうビルに働きに行ったこともあったなあ。そんなことを考えて いるうち空港に着く。ちょっとチップが多めだったのだろうか。運転手がにっこり笑ってThank youと言ってくれた。そこからチェックインに向かうのだが列が長い。ビジネスクラスは何か別の列があるのかもしれないが、まだ時間は十分あるからのんび り並ぶ。チェックインがすむと今度はセキュリティのチェック。列はさっきよりも遙かに長い。私の前にいるのは南米のどこかのパスポートをもった母親と子供 二人だ。子供は丁度うちの子供くらいの年でこちらをちょろちょろ不安そうに観ている。そりゃあまり観たことのないアジア人がにっこりして立ってりゃ不気味 だわな。

長い長いと思っていた列もいつしか自分の番になる。チェックをくぐり飛行機に乗る。時差ぼけの神様の加護によりあっというま にSan Fransiscoにつく。空港内をあれこれ移動しながら次の飛行機を目指す。またセキュリティチェックをくぐらねばならぬ。私は金属探知器のゲートをく ぐる時いつも「ぴょん」と飛んで通る。なぜかと言われてもしらん。とにかくぴょん、とする。ところがこの日はそれにクレームが付いた「飛ぶな」と。おと なしく静かに歩いてもう一度ゲートを通る。

飛行機を待っていると日本語と英語でアナウンスが流れる。オーバーブッキングなので、誰か ホノルル経由 で帰る人はいませんか。一日遅れになるけど、宿と食事の料金+$400を差し上げます、とのこと。独身のころだった喜んでそちらに変更したかもしれんな。 しかし今は土産をお家に届けることのほうが重要だ。

San Fransiscoから成田もぐーすか寝ているうちについた。なんとか無事に家につきそうだ、と思いながら成田駅のホームをぼんやり眺める。そのとき白人 男性が何かを出し写真を撮った。そしてそれをポケットにしまう。一瞬裏面が見えただけだが、それはiPhoneだったような気がする。後日それを人に話し たところ

「きっとClieだったんだよ」

と言われた。言われてみると世の中そんなもののような気がする。いずれ にせよこれでしばらく続いた海外出張シリーズも一段落。さて、次の難関は「今年の裏プロジェクト」だ。

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注釈