題 名:Java Diary-87章

五 郎の 入り口に戻る

日付:2007/10/10

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EuroITV2007 -二日目:三日目

さて本番たる二 日目である。何事も一番最初は大変だが2回目からは様子が分かるので楽である。というわけで適当にあれこれしているうちに会場に着く。最初に全体の説明が ある。それを聞いて驚愕 する。デモは一日目二日目ともやるものとして準備しろ、と言われていたのが、やっぱり二日目だけというではないか。これはいかなることか。あんなに心の準 備をし てきたのに今日は聞くだけになってしまった。
とりあえず本当に二日目だけか確 認をしよう、と最初の休憩時間に全体をコーディネートしているとおぼしき男を捜す。しかしそういう立場であるからしてやたら忙しいらしくなかなかつかまら ない。というわけで次善の策として「デモ担当はいるか?」と聞いて回る。これは未だによくわからないのだが、会場の前で堂々と PCを数台ならべ、デモとおぼしき展示をやっている連中がいるのだ。そもそもデモは別の部屋でやるはずだし、二日目だけということではなかったのか?ここ であ ちこち聞いて回る位には私も怠け者ではなくなったなあ、などと感慨に浸っている場合ではない。
そのうち全体コーディネートの男がつか まる。デモっ て二日間じゃなかったの?と聞くと「あれ、メール受け取ってない?やっぱり二日目だけにしたんだよ」と言っている。たぶん私が出国した後にメールが来たん だ ろう、了解。と答える。そのうちデモ担当の男が来る。彼はBBCに勤務している若者である。話は聞いた。明日あの部屋でやればいいんだね、と言うと相手は 「そうだ」と答える。こちらは納得しながらも気力が地に落ちている。ああ、今日はがんばってデモをやってそれでもって、、と考えていたのに、と文句を言っ ても始まらない。ひたすら真面目にお話を聞く。時差ぼけにあまり悩まされていないので、眠くなることもない。しかし話はとっても玉石混合であり、
「な んで今時こんなのが査読を通るんだ」
と 思うような発表もある。
参 加者を見渡せばアジア人はほとんどいない。私以外に一人だけみかけたが、どうやら中国人のようだ。まして日本人など他にいまい、と思っていたが、出席者名 簿を観ると日本人の名前がもう一つある。WISSでいつも宴会というか夜のイベントを取り仕切っている人だ(立派に研究をしているのはもちろんだが)。そ の人がポスターを観ているとこ ろを見つけ「どーも」と挨拶をする。
とかなんとかやっているうちにその日はおしまいとなる。本当は運河に行ってあれこれイベントがあ るらしいのだが、こちらはデモが伸びて気力減退しまくり。とっととホテルに帰って寝ることとする。

翌 日になるとまた緊張のし直し だ。今日こそはデモをすることになるはず。さて、反応はどうであろうか。とはいっても一応日本であちこちに見せてきたこともあり、初めてGoromiを UISTに持って行ったときのような不安はない。

朝 行ってコーヒーを飲んだりしていると全体を取り仕切っている男が来て「デモやるんだよね。スクリーンとか準備できているそうだからセットアップしてね」と か言う。私はありがとう、と感謝すると相手は「少なくとも僕は"準備ができた"聞いている」と付け加える。得に海外においては物事が明後日の方向に 進むことなど 日常茶飯事だから彼の言葉が現実と合っていようが違っていようが気にしない。私がうれしく思ったのは彼が一応こちらをみつけて声をかけてくれたという事実 だ。

というわけで朝一番だか途中の休憩だか忘れたが忘れたがデモの部屋に行く。すると何人かがセットアップをして いる。狭い部屋だ がデモの数も 4つだから丁度4方の壁をそれぞれ使えばいいね、とかメールに書いてあった。実際にはデモが5つあるような気がする。というわけでそれぞれ一つずつコー ナーを 使えばよい、というわけにはならない。隣でセットアップをしている男が声をかけてきて

「うちではこの大画面TV使わないからよかった ら使わない?」

と 言ってくれる。こちらはありがとうと答え、その好意に甘えることにする。17インチ程度の液晶ディスプレイも用意されているのだが、やはり大きい方が いいだろう。というわけであれこれ調節して(解像度とかいつもすんなりとはいかないのだ)設置を終わる。さあ、準備完了。後は本番だ、と安心してカン ファレンスに戻る。相変わらず発表自体は「いかがなものか」というものが多い。しかし今はそんなことを考えている場合ではない。あとちょっとで自分が「い かがなものか」と言われる立場になるのだ。最後の発表が終わると階段を駆け上りデモの部屋に向かう。するとちょっと様子が変わっていることに気がつく。

私 が部屋を出た後にいろいろセッティングを変えたグループがあったらしい。おかげでさっき貸してもらえたはずの巨大TVは

「これはうち のよ」

と いうおばさんの言葉とともに元のグループに戻され、私のMac Bookの後ろには17インチのディスプレイが「置いて」ある。おまけに机の配置もかわっているから私の場所はなんだか中途半端なところになってしまっ た。、これも「席を外した奴が悪い」ということなのだろうか。数秒間唖然とするが、とにかく準備をしなくてはならない。ごそごそ接続をやり直そうとす る。 すると液晶ディスプレイを電源につなげないことに気がつく。電源ケーブルの長さがたりないのだ。届くように移動させようとすると、別のグループの巨大ディ スプレイがじゃまをする。あたふたしているとさっきのおばさんが

「外 に延長ケーブルがあったはずだけど」

と教え てくれる。部屋の外に出てみるが、何もない。部屋を回り延長ケーブルがないかと思い観てみるがやはり何もない。これはMac Bookのディスプレイだけでデモするしかないかと腹をくくる。すると例のおばさんが

「延長ケーブルないの?」

と 聞く。そうだ。どうやっても届かないし。。まあ13インチディスプレイ(Mac Bookについているものだ)でもなんとかなるよ、と答える。すると相手は"That is pity"といい、同じグループの人間に「延長ケーブル持ってない?」と聞いてくれた。すると幸いにも一本有るという。それを設置してみるとぎりぎりで電 源に接続できる。やれうれしや。これでなんとかなりそうだ。

とはいってもディスプレイの解像度の設定とかはまたや り直しである。しかし何事にもよい側面というのはある。まだあまり客が来ていない。というわけであれこれやっているうちになんとか動きそうになる。さっき のおばさんはなぜか知らねど部屋の隅にあっ た花を持ってきてくれた。なんだかわからないがとにかく

Thank you !

と 明るく言う。

と かやっているうち、ぼちぼち人がやってくる。例のデモ担当の男がやってきて

「いや、BBCでもQuite Similarなものを作ってるんだ。今のところそれ以上は何もいえないけど」

という。そーっすか。それはおもし ろいっすねえ。と言 いながらまあそういうこともあろう、と思う。いや、BBCバージョンがどの程度これに似ているかしれないけど、偶然の一致以外の何者でもないだろうし。い つの日かそれが表にでることを祈るのみである。

と かなんとかやっているうちにお客さんがぽつぽつやってくる。あれこれ説明する。概ね好評のようである。これは何のTechnologyを用いているんだ? と聞かれる。Technologyねえ。どっか工夫あったっけと考えていると、「いや、何言語で書かれているんだ?」と聞かれるからJavaだ、と答え る。でもって、これはどうするんだ?と聞かれるから、いやあどうするかねえ。今のところあちこちで見せてはいるが買おうって会社もないし。私が働いている 会社は元々 興味示さないし。

また別の人間に同じような事を聞かれ同じように答える。すると相手は

「お まえなんでこれを作ってるんだ?」

と聞く。私は不 意をつかれ口ごもる。なんと答えた物だろう?冷静に考えれば何をやっているのか、と思う。そもそも会社で採用して貰おう、とか会社のプロジェクトだとかそ んな言葉は当てはまらない。しかし、、正直言えば自分がなんと答えたかよく覚えていない。しかしこう言ったような気がする。

Because I want to make it.

今思い返してもそれ以外の理由はないではないか。

そ うこうしているうちにまたデモを取り仕切っている男がやってくる。なんでも2時から30分Demo Sessionという時間がある。そこで何かしゃべれ、という。彼は「おまえはデモビデオを持っているか?じゃあそれを上映しろ」という。こちらはそ れじゃおもしろくない。2−3枚スライド出してそれでデモを見せるよという。どうも相手は時間オーバーを警戒している雰囲気がある。確かにビデオ なら時間決まっているからね、というのは甘い考えであったことが後で分かる。発表5分、質疑応答2分でよろしくね、とかいわれる。実はこの日に"Demo Seisson"なる時間があることは分かっていた。もしかしたらプレゼンをやらされるのではないか、と思っていたが、やはり本当にするのか。一応2−3 枚スライドは用意してきたが、実際に人前でしゃべるのは緊張する。というか大勢を前に英語でしゃべるのは実に1992年以来ではなかろうか。
な どとあわてている場合ではない。いつしか時間は過ぎ去り、下のホールに降りる。席にすわってスライドを多少組み替えしゃべる内容を口の中で練習する。
そ うこうしているうちに発表の順番がアナウンスされる。私は最後だ。さて最初の人間は何をしゃべるのか、と思えば前に立ったままなかなかしゃべらない。時間 はただ過ぎていく。ぶつぶつ言っている言葉を聞けば
「みんなが座ったら話すよ」
とか言っている。あのー、人に話 を聞いてもらいたい気持ちはわかるけど、後の人間 が待ってるんですけど。それからプレゼンを始めるのだが、どうやら話している人間はWindows User,使っているマシンはMacでやたらと「操作が分からん」とかいって中断する。その度に誰かが助ける。時間は過ぎる。セッション終了の時間が決 まっているということは私 の時間がだんだん 短くなっていくわけだ。
よ うやく一人目が終わり、二人目になる。自分はどこそこの所属で、この所属する組織はこういうところで、とかしゃべっている。これも時間は大幅に オーバー。ここらあたりでスライドを使う考えを捨てる。私にとって制限時間を守ることは強烈な強迫観念となっている。なに、どうせわけのわからない英語で 長々しゃべっても面白くないんだから要点だけごんごん述べよう。三人目はそれほど時間をオーバーしなかったと思う。しかし私の残り時間は5分弱である。え えい、とりあえずしゃべってしまえ、と前に出る。考えてみればこれだけの人数を前に英語でプレゼンするのはほぼ十年ぶりではないか。まあ車の防火壁にどの よう な 穴を開けてほしいか説明するよりこちらのほうが自分の趣味にはあっている。しかし気楽かと言えばそうではない。

幸 いなことにPCはプロジェクタに瞬時につ ながる。Goromi-TVを立ち上げしゃべり始める。最初はMy name is Goro Otsuboである。先日あるところで「そんな言い方をするのは日本人だけだ」という記述を見つけたが、私は日本人なの で問題はない。

インターネットが普及した り、ハードディスクの容量が増大して、たくさんの映像データにアクセスできるようになった。 でも問題はインタフェースだと思っている。一言で言えばおもしろくない。

と いうわけでこれを作った。立ち上げるとこのようにトップの選択肢がでる。ここからどこに行ってもいいのだけど、NBCを選んでみよう。するとNBCの Podcastがでてくる。これで気に入れば見ればいい。選択すればこのように動画が始まるよ。気に入らなければ別の、と押すとこのように表示が変わる。 気に入っても気に入らなくてもこの通りクリック、キー一発だ。というわけでどんなにたくさん映像データがあっても好きなようにあちこち見て回ることができ る。

このように英語で一息にしゃべる。たぶんかなりあやしい表現も使っていたと思うが、とりあえず画面を見ていれ ば何が起こっている かは分かって もらえるところがいいとこだ。というわけでしゃべる時間は終わった。デモを仕切っている人間を見るとまだ時間があるので質問は?と聞いている(私 の前の3人は一人も質問の時間をもてなかったが)問題はここからだ。相手が何を言っているか私は理解できるだろうか。

誰 かが手を挙げ る。聞き取れ た範囲では「元の画面に戻れるか?」と言っているようだ。私は「もちろん。このようにUndo機能がある」と実演してみせる。すると相手は

「そ うじゃな い。一番最初のNBCがでていた画面に戻れるか?」

と聞く。私は「OK.それならキー一発だ」と実演して見せる。 ここらへんは去年のWISSの前後で改良 した部分なのだが、やはりそこらへんは必要だったのだな。

仕切っている人間が「他に質問は?」と聞く。お願い。誰 も手を挙げないで、 という私の願いをよそに、後ろの方で手が上がる。緊張して聞いていると

「同じような方法でたくさんの写真とかブラウズできないか?」

と 言う。私 は間髪入れず

I'm working on that

確かに同じようなブラウズ方法を写真とかWeb上の情報にapplyできないかと思う。そして実際やって いるところだ、と答える。(ここで元の質問 は写真は?だったのにもかかわらず、勝手にブラウズ対象にWebを付け加え、「やっている」というのが姑息なところだ)

そ の質問を もってめでたくDemo sessionはお開きになる。その後会議室では発表が続くが、平行してデモを部屋でみせるようにと言われる。またPCを持って行きセットアップをす るべく部 屋をでようとする。するとデモを仕切っていた男が

"Good"

と 言うる。これがプレゼンの内容に関するもの か、一人だけ制限時間を遵守したことに対してかは分からぬがにっこりと"Thank you"と言う。上の階に行き再度セットアップをする。

下 であれこれやっているからたくさんではないが、ぼちぼち人が来る。その中の一人が

「実は俺の母親は日本人なんだ。俺も少し前日本の企 業でインターンをやってい た」

とか言い出す。彼とかなり長い間話し込む。

その後にはほぼ人がこなくなる。ふと気がつけばもうデモシステムを片づけた人もいるようだ。しばらく ぽけたんとしていたが誰も来ない。私も片づけることにする。これでここでの仕事はめでたくお開きだ。

それからセッションの部屋に戻るが、 緊張が解けて頭に何もはいってこない。外にでてしばらくぼけっと座り続ける。美しい午後の日差しを浴びて放心したように座り続けるアジア人はハタから見れ ば異様だったかもしれないがそんなことは知ったことではない。その後もあれこれあったが覚えちゃいない。その日の帰りは唯二の日本 の人と一緒にご飯を食べこれまた面白い話をいろいろ聞かせてもらった。

翌 日の飛行機は夜発である。空港に行く途中ある都市によったのだが、これについてはあっさりと省略する。その後飛行場についたが、チェックインの時間 ははるか彼方である。とはいえぼんやりと時間をつぶす以外にやることはないのだ。今回一つにまとめた荷物は肩に食い込み、これ以上あちこち移動することは あまり考えられない。世の中にはこのようにただ時間をつぶすことが苦手な人もいると思うのだが、私は大得意である。空港の中をあっちにいったりこっちにき たりしながらなんとかチェックインの時間となった。その後のことについては何も覚えていない。たぶん平和のうちに家にたどり着いたのだろう。一つ確かなこ とは、帰り道はおとなしく成田エキスプレスを利用した、ということだ。
翌日会社に行ってみると時差ぼけの影響はほとんどない。山のよ うな精算書を作り上げ、報告書を提出してしまう。さて、今度はWWDC2007&CC2007 だ。

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注釈