題名:Java Diary-77章

五郎の 入り口に戻る

日付:2006/11/16

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Goromi-TV Part12:未踏中間報告

というわけで未踏合宿である。WISSの3日目は一人早めに切り上げ家に帰る。翌日横浜から京急電鉄にのり新逗子駅というところで降りる。今日の目的地へ のバスは一時間に一本しかない。乗り遅れたら大変だ、というわけで例によって異様に早くついてしまう。お昼でも食べようかと思うのだが(これもお約束だ が)何故か近くにご飯を食べる場所がない。
バスに乗ると知った顔が何人もいる。みんなで歩いて建物に向かう。まだ部屋が開いていないらしく空いている場所に座ってぼんやりする。今回は2005年第 一回の中間報告及び第二回のキックオフだ。というわけで知らない顔が何人かいる。一つ前の回で実施していた顔が何人か見える。この時は「あれOBとして参 加か」と思っていた。間もなくみんなが移動しだしたのでぞろぞろ歩き出す。そういえばお昼はどうしたんだっけ。今回の場所は何かの研修所として使われてい る場所のようだ。食堂はあるのだが「お昼は予約が必要」と書いてある。もちろん予約などしていない。おなかがへったなあ。
部屋に入るとLANをつないだり電源つないだりいろいろする。間もなく全員がそろい発表が始まる。今回の発表順序は、記憶が正しければ
「12月に誕生日が近い人順」
ということだったと思う。私は3月生まれだからまだしばらく間があるだろう、とのんびりしていたら思ったより早く順番が回ってくる。
Goromi-TVのプレゼンにこの後もつきまとう問題というのが、セットアップに時間がかかるということだ。例えばGardsのプレゼンならばノートパ ソコンをプロジェクタにつなげばおしまい。ところがGoromi-TVを動かすためには外付けハードディスクを持って行き、電源につなぎ、パソコンにつな ぎ、マウントされたところで、、ととにかく手順が多いのだ。
などとぶつぶつ言ってもしょうがない。あれこれ運ぶとごそごそ接続する。ぽちぽち押すとなんとか動いているようだ。ほっと一安心してプレゼンを始める。
これまたこの後プレゼンの度に悩むことになるのだが、Goromi-TVでは同じキーワードを選択してもでてくる番組は乱数によってある程度順番を変えて から提示するようにしている。そうすることによっていろいろな番組を観ることができるようにしたのだが、問題はそのとき何がでてくるかわからないことだ。 であるからしてデモに使いやすい
「ちょっと見せただけで笑いのとれる番組」
があったとしても、その時でてくれるとは限らないわけだ。
しかしこの時は幸運だった。でてきたのは「トリビアの泉」最初のトリビアが紹介されたところでどっと笑いが起こる。そしてしゃべるほうはとても気楽にな る。
というわけでデモも交えながら快調にしゃべり終える。その後あれこれのコメントをもらったのだが、その日書いたメモによればこんな内容だった。
  1. 横スクロールはいや。
  2. キーワードをランダムに。
  3. どちらに進むか。家電にしたら。
  4. 広告と連動させたら
  5. もっと動きをなめらかに 
  6. podcastの検索に使えないか
1番目の指摘は、それこそ9月に言われたのと同じ内容で「横スクロールはあまり見やすくない」という指 摘だ。全くごもっとも私は「バグです。なおします」と答える。選んだ番組の説明だけ横スクロールさせるつもりだったのだが、何故か全ての説明が横スクロー ルするのだ。実害はないと思ってほったらかしにしていたが、確かに見やすいとは言えぬ。後でプログラムを観たらものすごく単純なミスだった。ミス、というよりそもそも何故こ れでいいと思ったのかと自分を殴りたくなるほど馬鹿な事をやっていた。
2番目は、それまで「選ばれた番組情報でよく使われている単語」を表示していたのだが、単純に頻度が高い物を選ぶよりランダムに選んだほうがよい、という指摘。これに関しては未だにどちらがよいのか結論は出ていない。あれこれ試験中である。
3番目は今後の開発方向に関する指摘。未だに頭が痛いところである。4番目は「なるほど」と思った。例えばGoogleであれば、検索結果と ともに画面の端のほうに広告が表示される。そんなことをしてもよいのでは、という指摘。この「広告との連動」という内容は最終報告での内容に深く関わって くることになる。
5番目で指摘された問題の半分はこのときの仕様の問題である。右側にずっと流れている番組情報を、連続的に表示するのではなく「ぴょこん ぴょこん」と表示するようにしていたの だ。しかしどうもこれは受けが悪い。というわけでこの指摘をもらった後あっさり直すことにした。
もうあと半分はもっと深刻な問題である。とにかく動画を表示し始めると全体の動作が緩慢になるのだ。そしてこのときは「動画の再生にはCPUパワーを食う から、そのせいだろう」と簡単に思っていた。しかしまもなくこれは間違いであることに気がつく。たとえばGoromi-TVの後ろでQuicktime Playerを開き、動画を再生させてもそれほど動作は遅くならないのである。ということは何かが間違っている、、というのは実はこれを書いている今でも 問題の点であるが、詳細は後述する。
6番目はこのインタフェースがいろいろな方面の検索に使えることを示唆してくれたものであり、未だに「あれに使えないか、これに使えないか」と考えだけは進んでいく。しかし手はなかなか進まない、、のには理由があるのだが、それは後述する。
というわけで比較的早く発表が終わったので後はのんびりである。夜には立食であれこれ食べながら発表がある。詳細についてはあまり覚えていない。気がゆるむというのはこうしたものであろうか。
翌朝食堂にいって朝食をとる。同じテーブルに座った今回キックオフの人達とあれこれ話す。プロジェクト管理組織ってどうやって選ぶんですか、なんとか。そのうち相手の一人がこういう

「私こういうところくると、自分の周りに柵を三重くらいにはりめぐらしちゃうんですけど、ここではなんだか話せますね」

なぜこの台詞を覚えているかと言えば、この言葉がそのとき私が考えていたことにぴったりだったからだ。ある人が発した問いに対して、(私はこの問いを覚えていない)私は妙に意気込んでこう答えた。

「ここに来ている人は、みんな頼まれもしないのに新しいものを作ろうとしてわざわざこんなところに来ている。私はこのことを主張しておきたい」

なぜこんな事を書くか。会社の仕事というのは基本的に何かが降ってくるものをこなすものだと思っているからだ。もちろん「前向きに攻めの姿勢で」とかな んとか言われることは多いが、現実はそれほど美しくない。全く間違っており、無駄なことだと思っても仕事と言われればやらなくてはならない。だからよっぽど せっぱ詰まらないかぎり休日にでてきて働こうなどとは思わない。

しかし未踏に来ている人達(少なくもこのプロジェクトマネージャの元に)来ている人達は研究が生業の人よりは、本業を全く別に持ちながらそれとは違うものを作りたい、という理不尽な欲求に駆られている人が多い。最初

「休日に合宿か。いやだなあ」

と思った私が妙に快適に感じているのはそのせいではあるまいか。来ている人達の姿勢が前向きなのである。自分では何も作り出さないが人のやることにケチをつけることだけは3人前の人達ばかりがいる職場とは全く反対だ。

というわけでご機嫌のうちに合宿を終えた私は家に戻る。それから2月末の最終報告に向けてあれこれ改善を加えることになった。

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注釈