題名:HappyDays-30章

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日付:2000/4/26

 


30章:TTK主任とその友達

さてその日は金曜日であった。最近会社で疲れがひどいので、金曜日はほとんど役立たずの状態になっているのである。そうはいっても今日はTTK主任合コンの日なのである。

男だけで日産ギャラリーで待ち合わせをして、最近よく使っている浪漫邸に向かった。浪漫邸はどこだなどと言い合いをしながら「今日はとっととやりましょう」などとサクサク合コンを誓い合ったのである。

ついてみると相手はすでに到着していた。案内された座席というのが私が多分過去に3回は合コンで使用したであろう奥まった座敷である。

女の子は二人が片方の側に座っていた。軽く挨拶をして、(ああこれがヤクをやっている雰囲気のつて姉ちゃんだな)と思った。さてどこに座ろうかという議論が数秒行われた後、KBの「大坪さんに花をもたせてあげましょう」という言葉に従って女性の間に座ろうと、「ちょっと失礼」とヤク娘に言った。彼女の反応は

「何?間に座る気?」

であった。文章にすると疑問形ともとれるが、彼女の口調は否定形を意味していたため、私は

「失礼しましたー」

といってさっさと逃げた。まもなく最後の女の子も到着して人数がそろった。配置は以下のようである。

さっきのべた事情により、合コンにしては例外的に男女は交互に座っていないのである。まあ集団お見合状態も良かろうということでさっさとすわった。

さてメニューがきて注文をしたが、なかなか飲み物がこない。最初の自己紹介は飲み物がきてからにしましょうという合意をしていた私たちであるが、なぜか全然ビールはこないのである。しょうがないから女の子同士、男の子同士でしゃべっていた。しかもその時間が20分程度もあったので、異様な雰囲気であったわけである。男の子同士でしゃべっていたと書いたが、しゃべっているのはCとKBである。私は完全にくたばってねかかっていた。ここでビールの神様が来てくれない限り私は役立たずなのである。

さて催促したらようやく飲み物がきて会話が始まった。彼女たちは日本○○公団で働いているおねえさんたちなのである。彼女たちのプロフィールを右から順番に書いていこう。

一番右はツテのヤク娘である。彼女はショートカットであり、結構なあぶない感じの瞳をしているのである。昔隣接事業所で働いているのだが、およそ4年前に転職したらしい。私が当時うろちょろしていた部署の近くで働いていたのであるが、お互い「視たような気がしないでもない」という感じの記憶しかなかった。それ以上のことは何もわからなかった。

隣が21歳である。私は今回の合コンはツテが29歳で、あとが25と聞いていたので、彼女もそれくらいかと思ったら21なのであった。彼女は元気であり、そしてなぜかへやの中でもコートを来ていた。一番左がソバージュである。彼女とはあまりしゃべる機会がなかったのでどんな人かわからずじまいだった。

 

さて今回の合コンは結構長きにわたったのであるが、二つのことに焦点を絞ればよいであろう。

一つは私がHappyDaysのなかで書いてきた「若いってすばらしい」と「合コンでだれがうけるかは流動的である」を絵に描いたような合コンであったことだ。今回女の子のだしになったのは私であった。この様子については1月8日の合コンと女の子のセリフはほとんど同じである。「いつも会社でもこんなふうなんですか?」とか、「何を言ってもおもしろい」とか。ただしこの場合相手は自爆男ではなくて私であり、受け答えは自爆男のそれとは随分違っていたが。

さて太古の時代からこういうことは少なからず経験している。しかしたいていの場合私は不機嫌であった。その理由を分析した私はひとつの仮説をつくりあげた。それは

大坪君TVの中のコメディアンになっている状態

である。合コンの最中に人のことをケラケラ笑っている女の子たちの反応がなにかに似ていると思った私は、ある日その答えをみつけた。お笑い番組において、会場をうめつくした若い女の子たちが、舞台上のコメディアンに対して笑っている姿とそっっくりなのである。ここで問題は、私はうけをとることで飯をたべているような状況ではなくて、合コンにいるということなのだ。

TVのコメディアンは笑いをとってそれで給料がもらえればハッピーである。私はそうではない。話を聞いてもらいたいし、相手の話もききたい。しかし「大坪君TVの中のコメディアンになっている状態」になってしまうとそういった双方向のコミュニケーションは成立せず相手の笑い声とこちらのフラストレーションだけがたまることになる。

というのが今までの例であったのだが、今回は少し様子が違った。21歳娘は元気で「若い者はいい。恐れを知らないから」という言葉がぴったりであり、かつそういうセリフをにくめないような感じでしゃべりまくれる女の子だったのである。そして私は小生意気な小娘が結構好きである。

一例をあげよう。各自の兄弟構成を推定しましょう大会がおこったことがあった。その瞬間21歳娘は私を指さして

「捨て子!」

と言った。また3人のなかで一番落ちついていないのはこいつだと言って私を指さした。こういったセリフはただだまって「おもしろい」と笑われているのにくらべれば何百倍もましである。したがって結構私には楽しい合コンであった。そして私はいつになくはしゃいでいたのかもしれない。KBは私を変だと言ったし、Cは3杯目のビールを私からとりあげていた。宴会でときどき騒ぐことはあるのだが、普通の人はそれを飲み過ぎた状態ととるようである。本当はそうではないのだが。

さて適当に会話が進んでいるうちに、私は完全に放電状態になった。そしてスリープモードにはいったのである。まるで充電池の寿命がきれかかった時のように、5分間会話して20分スリープモードにはいるような状況であった。従って後半の記憶はほとんどとぎれとぎれである。

もう一つのポイントについて述べよう。この日はめずらしくサービスの面で店のほうにミスが多かった。注文をとりにくるのは異様におくれたし、かに餃子を頼んだにもかかわらず最後までこなっかったし。そう思って最後下駄箱で私はそのことをおねえちゃんに告げた。彼女の返答は今日は調理場が人手不足なんだということであった。私は

「いや(この店は)よくつかってますから別に気にはしていません」

と言った。

 

さて合コンも終わり店をでる。皆の反応はどうかな、と思い男だけになったところで感想を聞いてみて私は驚いた。

KBはほとんど中指をたってて怒り心頭に発する状態であった。店のサービスのことで怒っているのかと思ったがそうではないようだった。Cも同調していたが、よく聞いてみるとヤク娘の態度が彼らのあまり気に入るところではなかったようだ。後でCに聞いたところによると、「大坪さんが一生懸命もりあげようもりあげようとするともり下げるし。何しに来たんだこいつと思いましたよ」ということなのだが。なぜか私はそのことに全然気がついていなかった。しかしはたからみれば私は

「ざるで一生懸命水をくもうとしている人の姿 」

に見えたのかもしれない。

というわけで2次会は誰もいいださなかった。第一にもう時間がおそかったからだ。とはいってもKBとCの胸中では「2次会に来てほしくない状態」だったのかもしれない。表で3人並んで「また何かあったらよろしくおねがいします」といってにっこり笑ってバイバイした。これだから大人の人って嫌い。

 

さて3人の足はかねて約束してあった、「英語の歌が大量にある」カラオケに向かっていた。1月8日の2次会で行った場所である。そこで12時過ぎまで3人で大騒ぎをした。幸せになれる理由がいくつか世の中にあるというのはうれしいことだ。そして今日も私は幸せであった。店をでたところでCが「いやーほとんどカラオケの前に何をしていたか忘れつつあるな」と言った。まさしくその通りだ。

 


注釈

1月8日の合コンHappyDays25章参照のこと本文に戻る

大坪君TVの中のコメディアンになっている状態:(トピック一覧)何度かこれを経験したことがある。本文に戻る