題名:HappyDays-12-13章

五郎の入り口に戻る

 

日付:1999/4/26

12章

13章


12章:YD合コンリターンマッチ

その日は水曜日だった.YDによると,とにかく早く実現しなくてはならないと言う先方の希望とみなさまの予定を考えあわせると平日に行うしかないのだそうだ。

適当に会社をぬけて寮にもどった。いつも適当な格好で合コンに臨むが-ちなみに前回のYD合コンも同じ格好だったが。合コンでもなんでもとにかく客先に行くとき以外はよれよれのボタンダウンとよれよれのチノパンで通す-今回の合コンには前代未聞の服装注文がついていた。曰く出張に行くときのような格好で来いというやつである。

寮にもどってブレザーに着替えた.ふつうの人間の着替え方とは逆かもしれない がそれがどうした。相手の方々を思えばこれくらいちゃんとした格好で行くのが礼儀というものであろう。

 

異様に早く待ち合わせ場所に着いてしまったので,時間が結構余った。私は例によって例のごとくあまりカタギとは言えない本を買って読んでいた.プログラミングの本である。ソ説の社員としてはこれくらいのことはできなくてはいけない、などという建て前はどうでもよろしい。かつてのコンピュータ少年だったころの自分を少し思い出しただけである。

待ち合わせ場所がまた凝っていて、基本的にはクリスタル広場なのであるが,日産ギャラリの反対側という注文がついていた.幹事YDの細かい心遣いである.言われたとおり噴水のそばで本を読んでいるとSTとYDがきた.彼らは最初私の姿をみてとまどっていたようだった。無理もない。彼らの顔を見るのはほぼ2週間ぶりで,おまけに特に一緒のグループにいなかったYDにとって私がネクタイをしめた姿というのはほとんどみたことがなかっただろうからである。彼らは私を認識するのに苦労したと主張した。あとの二人ーCとN2号であるがーを待つこと数分、ふと気がつくと、彼らは日産ギャラリのなかで車をみてなにやら話していた。Cの顔をみるのはそんなに久しぶりではない.かれは米国出張から帰ってきてからいろいろ愉快な話と49ersのTシャツをみやげにもってきてくれたからである.

合コンの待ち合わせ場所で男の達はぱりっとした格好でひたすら相手を待っていた.そして「もう時間だ」と誰かが言ったときに,YDが相手を見つけた.

今回の女性たちは前回と同じPENTAX,段ボール,朝市それにPENTAXの妹及びその友達なのである。しかし朝市は遅れてくるとのことで、最初は女の子4人が我々の目の前にいた.久しぶりにPENTAX,段ボールと対面した私は,この前よりは心構えができていた。相手がお嬢様だということも知っているし,なんたって今回はちゃんとネクタイまでしめているのである。しかし彼女たちの姿をよくよく見るにつれて,私は自分のブレザーをもっとぴしっとしてくればよかったなどと考え始めていた.彼女たちと目が合って、軽く挨拶をした.彼女たちは軽く頭をさげながらも少し戸惑いの表情をうかべたように見えた。

さて登場人物のうち5人は既に面識があったにもかかわらず、別に飲み屋に向かう間に会話があったわけではない。例によって例のごとく男の子と女の子と別れてたわいもなく会話に花を咲かせていたのである。少なくとも表面上は。

さて今回の会場は例によって例のごとく(どうもこの表現が多いが)結構上品な場所であった。しかしながら食器として用意されていたのは箸だったので私は安心した。なにが苦手といってフォークとその親戚で何かを食べることほど苦手なことはない。

さていよいよ席に着く時間となった。基本的に5人ずつの二つの机にわかれていた。まず最初に席にたどりついた私とYDはさっそく座ろうとした。私は一番端の席に腰を下ろした。ところがなかなか女性が腰を下ろすことができない。そこでYDがやはり最初に女性が座ってもらってそのあとに男が座った方がよかろうと言った。なるほどこれは気がつかなかった。最近の合コンラッシュのおかげで私は少し神経がなまってきているのではないか?反省する暇があればとりあえず席を立って、もう一度しきりなおしである。

さて今回私は最後に座った。その結果として決まったのが以下の配置である。

それぞれの名称については後述するが、例のごとくアルファベットが男の子、ほかのパターンが女の子である。

さて席に着くと、なにかが来るまでは非常に気まずい時間であり、また考え方によってはまだドキドキしている時間である。ここでYDは見事な学習機能を披露した。すでに服装を指示したことでその幹事としての才能を示したYDであるが、かれはまた前回オーダを決めるのに異様に時間がかかったことも覚えていた。したがって今回はすでにコース料理を注文していたのである。したがってメニューを見ながらみんなで沈黙することもなかった。

さてそうはいってもいきなり食事がはこばれてきたわけではない。従って、ここでYDはもう自己紹介を始めようと提案した。そこにいきなりウェイタがきて、飲み放題で、「飲み放題」という言葉にカバーされる飲み物の種類をつげにきた。そこで間髪いれず私はビールとさけんだのであるが、最初の乾杯用としていきなりワインが運ばれてきたので、結局私がビールを手にいれるまでにはまたくばくかの時間が必要となったのである。さて私は小心者なので、合コンにおいての沈黙というものはたえられない。したがって恒例によって左側に座っている女の子にしゃべりかけたのである。

私がこういうシチュエーションで話しかける言葉は二つのパターンしかない。平日の合コンであれば、「今日仕事終わってきてるんだよね。仕事ぬけるの大変じゃなかった?」もし休日の合コンであれば、「えーっと幹事の人とはどういう関係なの?」である。そう考えればこの日は水曜日であったので、平日パターンを使用するべきであるが、なぜか休日パターンを使った。おまけに少し変形して「えーっと幹事のPENTAXさんのお友達なのだよね」であった。

帰ってきた言葉は「妹です」だった。これはお兄さん一本とられた。今回の合コンにPENTAXの妹が来ることは知っていたはずであり、おまけに女の子4人中2人顔を知っているということは、自分の隣に座っている女の子は確率50%で妹さんだというわけじゃないか。しかしこの場合の会話の目的はとにかく雰囲気をやわらげることにあるわけだから、こうして間抜けな会話であっても相手の笑いがとれればいいわけだ。などと局部的な会話をしているうちに、YDが料理はきていないが、自己紹介をしようと再び主張した。

例によって例のごとく自己紹介は男の子からである。順番を決めるためのすったもんだの不毛な論議の末に、若い者順になった。従って私は一番最後であったわけだ。ふつうは男の自己紹介は省略するところである。今回も基本的には省略しよう。しかしこの自己紹介だけで(しかも男の子)かなりの時間を要したことを書いておく必要がある。なぜかといえば、前回よりもリラックスした我々はお互いに結構質問などしていたからである。いくつか特徴的な内容のみ書いておこう。

私の自己紹介中にあれこれ質問の結果として、このメンバのなかで私だけ所属が違い、(某社と某社)おまけに最近職場の場所が変わった(11月から)が判明した。したがって次に妹が「会社をやめちゃったんですか?」と聞いたのもあながち的外れとはいえない。彼女は自分の質問に対して私がどう考えたか想像もつかないだろう。いや私以外の誰にもそれは推察できないだろう。

などと物思いにふけっていると、いきなりPENTAXと段ボールは、前回よりも私が極端にやせたに違いないと主張した。彼女たちの言葉によれば、最初待ち合わせ場所で会ったときにあまりにやせて見えてたので判らなかったというのである。この意見には男の子の中にも同調する声があったが、私は真実を知っている。ほとんど9月4日から私の体重は減っていない。たんに当日の服装の違いがそういう幻想を与えたのである。まあそんなこてはどうでもよい。

他にはYDの卒業年度が妙に話題を集めていたような気がする(PENTAXと1年ずれているのである。)ようするに彼は一年浪人したわけだ。この合コンにおいて彼は何度か「私は浪人したことを少しも恥じてはいない」と繰り返していた。しかしなぜかこの話題は幾度か繰り返されたのである。そしてYDの叫びも何回か繰り返されることになった。

さてふと気がつくと、右側のテーブルに座った5人はすでに妙な盛り上がりを見せている。従ってYDが言っていることを聞いていなかったのであるが、だからといってどうだというのであろう。所詮男はほかの男の自己紹介などに興味はないし、盛り上がっている女の子二人はすでに前回の合コンに参加しているメンバなので、YDのことはよく知っているのである。従ってYDは新顔の二人に向けて自己紹介を続けていたのである。

次に女の子について述べていこう。PENTAXが女の子のトップバッターである。彼女は特に新しいことを言ったわけではない。例によって趣味は生け花なのである。今回も私は「花をちょんぎって刺すやつ」などという下品なつっこみをいれることもしなかった。次はその妹である。彼女は姉と三つ違いなのだそうだ。彼女たちは3姉妹であると言った。そこで私は子どもが女だけの家族構成であるところの女の子に対して使う常套文句「おとうさん、寂しいって言っていない?」と聞いた。

彼女たち(つまり姉と妹)の答えによれば、おとうさんが寂しそうにしていると一番下の妹が「ハゲ」と言っていじめるのだそうである。それでおとうさんはいじけてどっかに行ってしまうのだそうだ。なんてかわいそうなんだ。同情してもらえるどころがハゲと馬鹿にされるのである。しかし考えてみれば、年頃になった娘にどうやって接したらいいかわからない、と言って悩むよりもたとえ「からかい」という形態であってもコミュニケーションがはかれるのはいいことなのかもしれない。

次は妹の前に座っていた武芸百般である。彼女は妹さんとの専門学校からの友達なのだそうである。この自己紹介シリーズにおいて繰り返されていた「趣味は?」という質問は彼女に対してもなされた。すると妹が「彼女はすごいですよー」と言った。

期待にめらめらと燃えて武芸百般の返答を待つと彼女は無難に「旅行」と答えた。旅行がなんだというんじゃ。こんなんですごいといわれたらこちらとしてもおもしろくない。しつこくくいさがると「お茶」ときた。おまけに彼女の場合は習っているのだけではなくてすでに他人に教えることができる域にまで達しているのだそうである。だれかが正座をしていると足がしびれまんせんか?と聞いたところ「完全にしびれた状態をとおりこしてしまえば平気です」と言った。何事においても道を極めた人というのはすごいものだ。彼女はほかにもお花を教えることもでき、エレクトーンをひき、料理が上手で、極めつけは21までガールスカウトでバリバリにならしたのだそうである。こういった彼女に武芸百般という名前をつけたところで誰が非難できるだろう。いやできない。

最後は前回人気一番の段ボールである。彼女は例によって例のごとく今回も明るく元気であった。彼女が短大において国文科であったという話題から、彼女の専攻についての話題がひとしきり語られた。じつのところ「さんしょうだゆう」という言葉がでていたような気がするが全然深い内容を覚えていない。そのあと何とか日記とか言う非常にドロドロした古典文学の名前が思い出せないと言うことでしばらく話題になったのであるが、結局蜻蛉日記ということでケリがついた。私は一応正解に到達したのであるが、内容についてはなにも知らなかったので「それはね、こういう話なんだ。。。」と言っていばることもできなかった。

文学的話題についていけなかった私は前回の合コンで感じた疑問を解決すべく次のような質問をした。「こひばりとは何ですか?」この質問の意味を彼女たちに理解させるのに少し時間を要した。前回の合コンにおいてPENTAXが言った「段ボールはこひばりのような声で歌う」という言葉の意味が謎だったからである。結局それは「彼女は非常に甲高い声で歌う」ことだということが判明した。さらにつけくわえて、彼女は仕事で電話をするとよけい声が甲高くなるのだと言った。

例えばPENTAXの会社に電話をするときなど(ダイアルインなのであるが)次のような会話がかわされるのだそうである。

「(甲高い声で)もしもし。段ボールと申しますが」

「はい(くすくすくす)」

「PENTAXさんいらっしゃるでしょうか」

「はい。少々お待ちください。(くすくすくす)」

もうすでに甲高い声でしゃべる段ボールさんというのが、PENTAXの職場でも有名になっているのだそうである。

さて自己紹介がひと段落したところで、そういえばこの前のエリッククラプトンのコンサートはどうだった?と誰かに聞かれた。そこで私は「あのコンサートにいた観客の70%は、クラプトンの曲を2曲しか知らないに違いない説」を唱え始めた。

とそこにちょうど朝市が現れた。彼女は上司の転属に伴う送別会でもって遅くなったのだそうだ。スケジュールが厳しい時期に合コンをセットせざるをえなかったことをYDがわびている間に、私は久しぶりに朝市の顔を見ることになった。これこれと話していて、あいかわらず合コン三昧の日々だよ。この前は大阪まで行ってね。などと言ったらまた合コンに行ってるの?と半ば呆れられたような顔をされた。

それから結構みんなでしゃべるパターンとなった。ここでひとつ断っておくが、今回の合コンについては自分とYDの話題以外はほとんど席の関係から聞こえなかったので、ここに記述することができない。おまけに記憶力の減退とともなって話題のトピックスは覚えているが、前後関係はかなり不明確である。従って以下に記述する内容には適当に話題の順番を前後させているところがあるが、ご了承願いたい。

とりあえず今回の合コンではそれぞれのテーブルでしゃべるパターンであったので、実の所反対側のテーブルでどのような会話がなされていたか私は全く知らない。こちらのテーブルでは前回の合コンで話題となった、「YDは誰に似ているか」という話題が持ち出された。その瞬間妹は笑い出した。

彼女の話によるとすでに姉から(つまりPENTAXから)YDが「からさわ」君に似ているという話を聞いていたのそうである。そこで初対面の妹と武芸百般に正直な感想を聞いたところ、妹は「真横から見ると似ていないこともない」と言い、武芸百般は「斜め後ろ45度からみれば似ていないこともない」と言った。つまり要約すれば彼女たちはその意見に対して賛成はできないと言ったところだろうか。

次に話題になったのは「中川区で通用する名古屋弁について」であった。ここでいくつかの非常に名古屋弁な単語がのべられた。それらの単語のうち私が理解できたのは「おそがい」(恐ろしいという意味の名古屋弁である)だけである。ほかの言葉にいたってはこの場で再現することもできないほど縁遠い言葉であった。そこで本当に私が名古屋弁をしゃべることができるかどうかまで疑われ始めたので、「そんなことないがね」と言って自分が名古屋弁のNative Speakerであるところを示そうとした。

ところが反応は「なんだかわざとらしすぎる。ドラマの中の名古屋弁のようだ」と言われてしまった。これはまずい。大阪合コンで大阪弁をけなされたのとは状況が違うのである。名古屋弁までしゃべれなくなったら私はしゃべる言葉がなくなってしまうじゃないか。4 危機を感じた私はこれ以上この話題を続けることを拒否しようと思ったのである。

さて幸いにも話題は先ほどのYDの話題から出発して、私が夏目雅子の旦那 に似ているという話題を経て、Cがなんとかという人間に似ているという説が持ち出された。しかしながらまたもやなんとかという人間の顔を誰も知らなかったのである。

次にはときどき私が叫んでいるキャサリンという言葉の語源についての質問がなされた。Cはぶつぶつ言いながらも「大坪さん。今までに何百回もした話をしたらどうですか」と言った。そこで私はいつもの話をしたのであるが、そこで「なんでキャサリンとマリリンなの?」と聞かれた。それに対して私は「適当だよん」と答えたが、Cは「それは違う」と主張した。

Cが入社した当時だから、もう何年も前になるが、そのときなんとかいう映画があって、それに(犬だかなんだか)キャサリンとマリリンという名前が使われていたのだそうである。そこで私はその二つの名前を選んだのだそうだ。私はその話を全く忘れていた。ところがその映画のせいで妙な名前をつけられたCの方はきっちりと覚えていたのである。

そこから話は「ほかの男の人には名前はないの?」という話題になった。そこでSTにはケリーという名前があり、N2号は2号だよん、と言った。そこでYDに名前がないことに気がついた我々は彼にもなにか名前をつけてやろうということにした。そこで多分朝市だったと思うが、「ベンジャミンはどう?」と言った。なんだかわからないが、この意見は非常なる支持を得た。そこでかれはベンジャミンとなったのであるが、この名前は長い。かといってベンと略したのではあまりにあたりまえずぎる。というわけでジャミンと呼ぼうということになったのである。これから会社で彼をみかけたら「ジャミンYD」と呼ぶことにしよう。

そこでかれはさっそくジャミンをジャミラというふうにギャグにとってその場を盛り上げ始めた。なかなかタフな奴だ。

「大坪さんの名前はないの?」と聞かれて、私は五郎ちゃんと呼ばれることに誇りを持っていることを述べかけたが、そこにYDが私が最近ステイシーと自分を呼んでいることを述べた。

ステイシーとは「捨て石」のことである。合コンに行って首尾はどうだったと聞かれる度に「私は捨て石だから。若い者がチャンスをつかんでくれることが私の望みだ。私をステイシー大坪と呼んでくれ。」などとわめきちらしているのである。もっともこの言い方も真に献身的な態度から生まれたものではない。単に私のねじまがった好みに合う女の子がいないために、悟りを得たような態度をとっているだけなのであるが。まあ初対面の彼女たちにはそんなことはわかるまい。

 

さてそうこうして自己紹介が終わって全員がそろったところでいきなり武芸百般が帰ると言い出した。

聞けば彼女の家は門限9時なのだそうである。うーんさすがに道を極めた女の子の家族は厳しい、などとわけのわからない感心をしながらふと時計を見れば、もう9時を回っている。というわけで彼女はさようならとなった。それをPENTAX姉妹が送っていった。

それからしばらく残ったメンバで他愛もない話が続いたのであるが、まもなく2時間がたとうとしていた。というわけで名残惜しいがその場をお開きにすることになったのである。そこでいきなりYDは次回の予告を始めた。カラオケにみんなでいこうか、あるいは以前からYDとPENTAXの間で話がもたれていたと思われる、鍋にするかという話題が飛び出したのである。これは実に最近の合コンにあっては珍しいことであった。たいていその場ではなにもおこらず結局最終的になにもおこらないというのが最近のパターンである。あったとしてもたいてい合コンが終わった後の幹事同士の会話で次の会合の話がもたれるわけであるが。

カラオケか鍋かという論議については、その場では結局結論はでず、最終的にはとにかくなにかやりましょうということで落ちついたような気がする。

 

13章:2次会に向かう人たち

 

さてみんなで下に降りると、さっそく2次会の相談となった。前回は彼女たちの昔話の壁にはばまれて成立しなかった2次会であったが、今回はあっさりと成立した。(段ボールは「私、門限9時なの」とかわめいていたが)

というわけで隣のとあるホテルの2階の喫茶店に向かった。ちなみに前回男の子だけで行った2次回と一緒の場所である。そこでほれほれと席に着こうとしたが、いきなり段ボールだか朝市だかが妹はジュディオングに似ていると言った。そこで彼女の方を見てみると、彼女は恥ずかしがってよそを向いていたので、確認ができなかった。しかしそのあとつれつれとみたところでは確かに似ていると言っても問題ないかもしれないと言う結論に達した。

さてみんなでためらいながら席に着いたのであるが、すったもんだの末に決まったのは以下の席であった。

この座席であるが、しゃべることができる相手というのは1次会とあまり変わっていないのである。私の隣は結局妹と朝市だし、Cの隣も似たようなものである。さてこの2次会においては大した話題がでたわけではない。なんだかわからないがYDには欧米系の血が混じっているというギャグにみんなが首をかしてげいると、フィリピン系の血が混じっているというギャグが満場一致の笑いをとっていたことくらいだろうか。さてYDのおかげで真ん中エリアは盛り上がりをみせているのであるが、私のサイドはいまひとつ静かである。PENTAXがYDと盛り上がっているので、私は妹か朝市のどちらかに話しかける必要がある。しかしここでCについて考えてみよう。片方の隣のPENTAXがYDとしゃべっている以上彼は朝市としゃべるべきなのである。従って私は妹と話していた。しばらくのあいだCと朝市は静かであったがそのうち盛り上がり始めた。しかしその時のCの心中がどうであったか知らない。

さて私が妹とつれつれはなしているうちにYDとPENTAXは昔話をしていた。なんでも中学だか高校だかのときに自転車で二人乗りして名古屋祭りに行ったのだそうである。彼女の証言によれば彼の運転は非常にワイルドで、手を上げて車をとめてぶっ飛ばしていたのだそうであるが、YDはそれを「極端に誇張されている」と否定し、手を上げた事実はみとめたものの、それは単にすでに止まっていた車に合図をしただけだと言った。

さてそうこうしているうちに「そうだそうだ」などとYDがいいながら、彼がーそして誰か覚えていないが、女の子も同じことを言ったような気がするー「今回の目的はこれだー」とかそれにたぐいする言葉とともに、電話番号交換大会をやろうと言い出したのである。

これは驚きであった。そしてきっとCにとっても驚きであったに違いない。段ボールはこのために用意したかどうかしらないがノートの紙も取り出してすでに準備段階である。YDはYDで彼が持っているシステム手帳からすでに何枚かの白紙をとりだし同じくReady状態である。

何枚の紙を回すか、あるいは仮に回したとして結果が全員に行き渡るようにするにはどうすればいいかという論議が数分行われた後に、総てをYDが取り仕切ることになった。彼が紙を回し、女の子には責任をもって彼が送付するという段取りである。我々男の子はYDの活躍により、労せずして女の子4人分の電話番号を手に入れることになったのである。転がり込んでくる幸運というのはこういうものかもしれない。

さて電話番号が一回りした後に、次回については12月初旬をめどに、鍋とカラオケと両方やるという結論に達したのである。こういう手際のいい合コンは何年かぶりなようなきがする。しかしながらこの状況の後ろにあるものを考えると手放しの成功などというものはありえない。手放しの成功というのはフィーリングカップルで一度に5組のカップルができるとか、ネルトンで7組以上のカップルができるとかそういった状況を言うのである。この合コンがそういう状態であると誰がいえよう。しかしそれについては深くふれないことにしよう。

喫茶店をでた後にエスカレータを降りながらCと私は次のような会話をしていた。

「どうだね」

「楽しかったです」

「なぜこの前の合コンで段ボールが一番人気だったかわかるだろう」

「そうですね。ところで彼女ってS社員(私といっしょに働いていた女性社員)に似ていると思いませんか」

「(しばらく沈思黙考の末)君がそういうことは私には理解できる。しかしながらその意見に賛成するわけにはいかない」

会話は総てきわめて落ちついたトーンではなされた。

 

さてそれから我々は平和のうちに喫茶店を離れて地下鉄の駅に向かった。まず一人だけ車できていたキャサリンは最初に帰ることになった。地下鉄でそれぞれ切符を買って、改札をくぐるまでの短い間、私はほとんど初めて段ボールと話す機会にめぐまれた。彼女は私が本来ベルトと通すところに時計をつけていることを指摘した。あちこちで指摘されることであるが、これにも立派な理由がある。私もかつてはちゃんと腕時計は腕にしていたのである。ところが少しじゃまだと思うと時計をはずす私は、半年の間に5つの時計をなくしたのである。はずした時計をつけるのを忘れるからだ。したがって私は時計をズボンにつけることにした。このシステムに変えてから私は時計をひとつしかなくしていない。この話をすると段ボールは「あたしはひとつも時計をなくしたことがない」と言った。彼女の話によると幼いころにベビーカーのところにハンカチを置き忘れたことがあった。それを非常に反省してから、ほとんど物をなくさなくなったそうである。なんというすばらしい学習機能だろう。彼女からみればわたしはほとんど鶏並である。

さて男の子たちはみんな千種駅のりかえのJRであった。女の子とはホームでお別れである。にっこりと笑って手を振って別れた。

千種方面に向かう地下鉄を待ちながら、我々はいきなり反省会に突入した。YDとSTの感想は前回と全く同じである。段ボールがいいと。N2号は無難に楽しかったと言った。私はといえば「私をステイシーと呼んで」などと戯言を言っている。みんなでいろいろくだらない話題に花をさかせながら帰った。前回段ボールのマニキュアの色をみんながチェックしていたことに驚嘆した私であるが、今回その話を持ち出すと、YDは「彼女のマニキュアの色は今回は前回よりおとなしく、全体の雰囲気によりマッチしていた。」と進化をみとめた。鶏並の学習機能しか持っていない大坪君は離れていた段ボールはもとより、となりにいて恐らくは一番長くしゃべっていた妹の服の色さえ覚えていない。次の合コンがあれば-そんなことがあれば-少しは注意を払うようにしようか。それとは別に、誰かが朝市の化粧が前回にくらべて変わっていて、ずいぶん感じが違うように見えたとも言った。これまた全く私は覚えていない。

そうして前の合コンと同じようにSTに送ってもらって私は寮に帰り着いた。そしてやすらかな眠りにつくことになった。

 

金曜日にYDが私がいる部屋にきて、彼がタイプした電話番号一覧表を渡してくれた。彼に何かしたかと聞いたら、前回私が書いた「YD合コン」の検閲バージョンと電話番号一覧表を女の子に送ったと言った。そしてまだ電話番号は利用していないが、今日くらいが電話するいい機会かもしれませんねと言った。相手については述べるまでもないだろう。彼のチャレンジの結果やいかに。まあそんなことはどうでもよい。YDは見事に幹事としての義務を果たしたのである。あとなにかしたければ我々が個別に努力すべき番だ。


注釈

YD合コン:ここに記述されているのは、「YD合コン」のリターンマッチである。この「YD」ってのは何のことだ?と思った方は4XX Official Web Siteをみてください。このバンドのメンバーの一人である。本文に戻る

 

逆かもしれない : ふつうの人は会社にブレザーとかスーツで行って、そして寮に帰ってカジュアルな格好に着替えると思う。本文に戻る

 

鶏並:「3歩歩けばすべてを忘れる」というやつである。本文に戻る