題名:Java Diary-79章

五郎の 入り口に戻る

日付:2006/3/31

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Goromi-TV Part14:IPA-X 前編

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家に帰るとIPAから何が届いている。一通はIPAXの参 加者章と通行券。もう一通はなにやらご丁寧な封筒にはいっている。

これはスーパークリエーターの通知かと思ってあければ IPAXで行われるレセプションへの招待状だった。つまり公式には

「スーパークリエーターになったという正式決定はなされて おらず、まだPM以外に言うな」状態のわけだ。いつまでたっても正式発表 にはならないが、必要書類は書かせる。これだからお役所仕事は。

と思ったのだがIPAXの招待状を観ると、出展者一覧がな らんでおり、そこに確かに私の名前はある。しかしスーパークリエイターは別の欄だ。 ということは本当に落ちたのかな。

IPAから内定の通知はもらったが、IPAXの参加章関連はかくのごとき状況であった。ここまでくるとさすがに不安になる。 IPAXでの出展 ゾーンには、スーパークリエイターゾーンと、そうでない人ゾーンがある。そして私に割り当てられた場所はどうみても「そうでない人ゾーン」である。

などとうだうだ考えているうちにゴールデンウィークが訪れそして去っていく。IPAXは近づいてくる。これはだめかもわからんね、と半ば本気で考え始める。

「先日、候補となられている旨のご連絡をさせていただいておりました、
2005年度上期「天才プログラマー/スーパークリエータ」につきまして、

未踏事業審議委員会、IPA役員会において了承され、
貴殿は、正式に「天才プログラマー/スーパークリエータ」として
認定されました。誠におめでとうございます。」

というメールがIPAからきたのが連休明けの9日であった。とはいってもこちらは疑心暗鬼である。本当にスーパー何チャラの何やらをもらえる まで信用する物か。

というわけでほにゃほにゃしているうちに先だ、先だと思っていたIPAXが目前となる。さて、何を準備すればいいのか。
幸いなことに(かどうか知らないが)会社で評価用に使っているMac Book Proが存在してる。これを使い未踏で購入したディスプレイをつなげばまあデモ環境としてはOKだろう。ここで問題になるのはポスター及び配布物である。
会社の仕事でもポスターというのはよく作る。しかしひねくれものの私は何か違ったものを作りたいと考える。そもそもポスターにみんな書いてあるのなら説明 は不要ではないか。説明が必要ならばポスターがあっても意味は無い。
となると説明の途中で「これだけは入れておきたい」という写真なり文字だけを書いてはどうだろう。などと考えると使う写真はだいたい決まる。PC上で検索 している私の写真と椅子にねっころがって(この写真を最初にとったときにはこれほど何度も活用するとは思わなかった)リモコンを操作している写真である。 文字だってどうせ細かくごちゃごちゃ書いたって読めないから「Not」と「But」だけにした。つまり検索をしている人間向けに作ったんじゃありません。 ほにゃらか状態のユーザに向けて作ったんだよ、といいたいわけだ。
というわけで図柄はできたのだが、それぞれどれくらいの大きさでプリントアウトしたものやら。などともんもんとしているうちに救いの手が差し伸べられる。 ほぼ一年前から私はmixiというものの上であれこれ書いたり読んだりしている。インターネットでは誰もがどこでも読んだり(書き込みが サポートされていれば)書いたりできる。このmixiは会員制だからそれが有る程度制限できる。何事もそうだが、自由と制限の間にはいくつもの解があり、 それをあれこれ試行錯誤していくものなのだろう。
でもってそのmixiに原田PMというコミュニティができた。作ってくれたのは私の息子が愛用している「ピッケ」のお母さんである。さっそくそこに 「IPAX2006」という話題がたてられる。そこで「ポスターはどの程度の大きさがよいか」とか「配布物は何枚くらい必要か」などが語られる。ほれほれ と読んでいるうちに、まあA2ならばいいだろう、ということにする。

それとともにそれまで全く考えていなかった配布物について思いをめぐらせることになる。さて、何をどうやって配ったものやら。ここで私は例によって「自分 を基準に物事を考える」ということをやりだす。端的に言えば私は展示会にいってこういう配布物をしこたま収集してもそれをろくに活用したことが無い のだ。せいぜいが他人に報告する際の参考にするぐらいで机に放り込む。そして

「ええい、何故この机はこんなに一杯なのだ」

と発作を起こしたときにごっそり捨てる、それの繰り返しだ。
いや、例えば試供品なり本物がサイトからダウンロードできます、というのであればそのサイトのURLを書いておくというのは大変有効だろう。しかし今回の ソフトは当分配布する予定はないし(これについては後述する)ムービーが公開できる見込みもない(これについても後述する)となれば配ったってしょうがな いではないか。
と考えたのだが、一方で名刺のようなものがあってもいいのではないかと考え出す。というわけでポスターを一枚にまとめ、連絡先のメールアドレスだけ書いた ものを数枚用意した。ところが最初の一枚を印刷した後に「そもそもソフトの名前-Goromi-TV-がはいっていないではないか」ということに気がつ く。あわてて追加する。数枚印刷した後に「そもそも私の名前がないではないか」ということに気がつくがもう遅い。よし、直筆サイン入りにしてやろう。
ディスプレイの発送手続きをしたり、あれやこれやの小道具(ポスターを貼るためのテープやら)を準備しているうちに日は近づいてくる。今回勢いでプレゼン テーションを申し込んでいた。ネタは未踏ソフトの最終発表会と同じにするのだが、多少修正を加える。同じとはいえ久しぶりだからちゃんとリハーサルをやろ う、と一通りやってみる。するとすっかり内容を忘れていてつっかえまくることに気がつく。これはいかん。前日の早朝、会社のプロジェクタに一式つないでリ ハーサルを行う。「これはつながなくてもいいだろう」と心の中でなんどかつぶやくが「いや、それはいかん」と打ち消す。世の中やってみないと何が起こるか わかならいものなのだ。とにかく使うつもりの機材を全部接続する。ようやく内容も思い出しそれっぽくしゃべれるようになる。
さて、問題です。なんとかしゃべることができるとして聴衆は何人くらいいるのでしょう。展示会でしゃべったことはないけれど、他の会社の人がしゃべってい るのは何度か見たことがある。人気商品だったりすると押すな押すなの大盛況だが、小さなブースでやっているようなところではあまり人がいない。と いうか全く聴衆がおらず座っているのは同じ会社のサクラばかりだったりもする。はたから見ていて気の毒になるが、そういうプレゼンに限って退屈で長かった りするから座るのもはばかられる。今回何人来てくれるかしれないが、去年プレゼンした「ピッケの母」によれば

「Rubyとかだと満員だが、アプリケーションだとがらがら」

とのこと。私が話す内容はアプリケーションの中のアプリケーションのようなものだから、まずがらがらを覚悟せねばなるまい。しくしく、と泣きたくなるとこ ろだが早朝の練習で妙な自信を得るに至った。一人の練習だからもちろん観客は誰もいないのだが、結構気にせずしゃべることができるのだ。であれば本番で観客がいなくても大丈夫に違いない。ああ、これは私が

「相手の反応を気にせず勝手にしゃべりまくる人間」

であることの証左なのかもしれぬ。まあいいや。持ち時間は30分だが、私のプレゼンは17分程度で終わるはず。間違って座った人がいてもこれくらい短け れば申し訳も立つだろう。
というわけでとりあえず準備が終わり、その日は真面目に本来の業務に打ち込む、、、はずなのだがいやな予感に襲われだす。その詳細についてはここで書かな いが、とにかくデモ用マシンを立ち上げるとプログラムに一つ機能を追加する。最悪の場合でもこれがあればなんとかなるだろう。

と安心するとその日はおうちに帰り安らかな眠りにつく。翌朝はいつもと同じ時間帯に家を出る。ただし荷物をしこたま抱えてである。15インチのMac Book Pro, 外付けハードディスクにポスターを入れた筒、その他もろもろである。あれこれ電車に乗ったり乗り換えたりすることしばらく、東京ビッグサイトに到着する。 時間は7時過ぎ。まだ空いているわけなかんべ、と思いうろうろする。するとコンビニがあり、その名前に恥じぬよう営業をしていることを発見する。やれうれ しや、というわけでパンを買って食べる。

そもそも会場はどこなのだ、と探すことしばらく。入り口と思しき場所を見つける。他にも待っている人がおりびっくりする。今回はビジネス関係のショウも併 設されており(というかIPAXがそれの併設だという気もするが)関係者は結構な数に上るのだろう。空は曇っておりちょっと肌寒い。このままこんなところ にいると風邪を引くかも知れぬ。熱はださないまでも鼻水ずるずるになってしまうと悲惨だし、説明もプレゼンテーションもできぬではないか。なんとか中に入 る方法はないか、ときょろきょろするとどうも通用口があるようだ。とはいっても私は入れるのだろうか。まあ、警備の人に追い返されたらそれまで、とその通 路に行く。すると誰もいない。いないから入ってしまう。

中にはいるとさすがに寒くは無い。これで一安心。さて、どうしたものやらとあちこち歩き回る。すると会場らしき場所が見つかるが、扉は閉まっている。仕方 がないからぼけっと座る。IPAXの看板が設置されており、未踏ゾーンに出展する人間として私の名前が書いてある。それを写真に撮るとしばらくはやること がない。ぼけっと座る。そのうち入り口と思しき扉に警備員の人が立った。これはひょっとすると入れてくれるかもしれん、と思い近寄っていくと
「あと1分くらいありますよね。しばらくお待ち下さい」
といわれる。時計を見てみれば確かに7時58分。この順法精神は見上げたものだ。おとなしく椅子に戻りしばしぼけたんとする。
8時になると「お待たせいたしました。出展者の方入場、、、」と警備員の人が声を上げる。どもどもと言いながら中に入る。昨日の午後から出展準備が可能 だったのだが、前日から準備する人ってあまりいないだろう、と思っていた。しかしブースを見てみるとあちこちに荷物が置いてあり、ちょっと意外な気持ちに なる。

自分の場所にたどり着くとさっそくあれこれ準備を始める。「ポスターを貼るとき展示台の上に載ると怪我をする恐れがありますので、係りにご相談くださ い」とマニュアルに書いてあった。というわけで「係り」を探してうろちょろするがそれらしき人は居ない。まだ会場の2時間前だからあたりまえなのかもしれ ない。他の事をあれこれやる。まず安心したのはデフォルトで椅子が一つついていることだ。よくみればマニュアルにもそう書いてあるのだが、レンタルを申し 込まないと椅子がついてこないのかと思ってびびっていた。この年になると3日間立ちっぱなしというのはつらいのだ。

パソコンを立ち上げ、電源をつなぐ。あれこれやってあとは送ったディスプレイがつくのをまつだけだ、となったところで隣のブースの人に挨拶をする。これか ら3日間お隣さんです。どーぞよろしく。そのうち段ボール箱をいくつかのせた台車が到着。上には昨日私が送ったディスプレイが乗っている。箱をあけ多少ど きどきしながら電源をつなぐ。問題なく動作しているようだ。これで一安心。

といったところでこの日の懸案事項は1/4くらい片付いたことになる。今日やることは他にプレゼン、スーパークリエイターのなんちゃら式、最後のレセプ ションがあるが、 とりあえず物は動いているようだ。ほっとして辺りを見回す。9時からプレゼン用機器の接続テストができるとかいう話だったが、どんなものかな、とプレゼン の場所を見に行く。するとすでに人がおり接続テストができるようだ。ブースに戻りMac Book Proを接続する。少し手間取ったがなんとか動いているようだ。本番の時のマイクはどちらにしますか?と聞かれる。手持ちのマイクかあるいはヘッドセット か。無意味に新しいもの好きの私は「ヘッドセットにしましょう」と答える。まがった針金のようなものを頭にはめるとマイクの位置が丁度口のあたりにくる。 しゃべっているうちにずり落ちないかとか多少不安はあるがまあこれでいこう。
というわけでブースに戻る。やることがない。ポスターを貼りたいのだが、いつまでたっても「係の人」は見つからない。ええい、もう自分で張って しまおう。すでにポスターを貼っているブースがいくつかあり、まさかその人達がみんな「係の人」に声をかけたわけでもあるまい。ぺたぺた、とはる。一人で ポスターを貼るときの問題点は「曲がる」ことである。しばし修正ののち「これでよい」と自分に言い聞かせる。
といったところで作業は終了。開演まで本当にやることがないではないか。顔見知りの人何人かに挨拶をする。ぶらぶらと歩いてよそのブースを見たり、他の展示を見たりする。今回はオフィスなんとかの展 示会と併設だ。翌日からあるブースの朝礼に驚かされることになるのだが、それはこの時点では関係ない。ひたすら暇をもてあます、となるところだが今回は良 い点があった。今回の展示物はまさにその
「暇な時間をなんとかつぶす」
ために開発したようなものだからだ。というわけでつんつんつついて録画してきた動画などながめる。音を出すとうるさいので字幕があるものを選ぶ。

などとやっていたらいつのまにか10時を回っていた。おっと、もう開場ではないかと思うが誰もこない。しば らくしてから「お待たせいたしましたただいまから開場です」とかそんなアナウンスが流れる。時間を見れば10時15分。ふーん。こういうものなのである か。

それからも誰もこない。何人かお客様は存在しているようなのだが、足早に通り過ぎていくだけだ。ええい、暇ではないか。この隙に、と思いあれこれ見ようか な、と思ったらだれか来た。ぺらぺら、と説明する。この最初に説明した人が、見物に訪れた人だったのか、あるいは展示に来ている人だったのかは覚えていな い。しかしとりあえず一人説明すると
「無駄にここに来たわけでななかった」
という気分になりほっとする。時間は10時半をかなり過ぎていたような気がする。
それからもぽつぽつと説明は続く。そのうちプレゼンテーションの方が気になりだす。そもそも午前中に聞きに来てくれる人がいるのだろうか。ちょっとのぞい てみるとそこそこ人が座っているようだ。というわけで全く無人の場所で説明をするわけではないようだ。ほっとすると自分のブースに戻る。ちょっと説明をす る。ふと気がつけば11時10分ぐらいになっている。11時15分にはプレゼンテーションの場所に来てくださいと言われていたのだった。そそくさとPC等 を外しプレゼン場所に向かう。

まだ前の人がプレゼンをしている。言われるままステージの裏に有る椅子に座ってぼけっと待つ。前の人が終わり片づけが終わったところで自分の機材をセット アップする。外付けハードディスクもあるから結構ややこしい。担当の女性から

「PCに表示を切り替えたのですが、でていませんね」

といわれ、あれこれ操作する。ちゃんと表示されるようになる。朝チェックしたときにヘッドセットの使い方を教わっていたのだが、いざ使おうと思うとやはり 装着の仕方を忘れている。えーっと、ということでつけ方を聞きなおす。

客席を見れば(当然のことだが)がらがらである。一人だけ前の方に座ったので「やれうれしや。無人ではない」と安心した。後で気がついたのだが、この人はIPAの担 当の人だった。一通りセットアップが終わるとまたステージ裏の席に戻る。そのうちアナウンスが流れるのが聞こえる

「まもなく プレゼンテーションステージBに置きまして ”貯めた映像をだらだら見るためのインタフェース”のプレゼンテーションが始まります」

プロらしいよそ行きの声で「だらだら見るための」などと発音されると題名を考えた私でさえもギャップに笑いそうになる。今から考えればこのおかげで少 し緊張がほぐれたのではないかと思う。

そのうちアナウンスがありますから、そしたらステージに出てくださいね、といわれる。正確な言葉は忘れたが「皆様お待たせいたしました。。」とかなんとか 言ったのだろうか。導かれるままステージに出る。客席を見ればそこそこ人がおり一安心。今まで3度ほどやった内容だし、練習もしているから軽快にしゃべり だす。自分で自分の声が聞こえるし、そこから判断するになかなか落ち着いている。

途中立ち見で見ている人が増えだす。推測するに「最初から見る気はなかったけど、なんだかおもしろそう」ということで足を止めてくれた人がいるのか。少し 聞こえた声としては、立ち止まった人が、別の人に

「撮り貯めた映像をみるんだってさ」

とかなんとか話していた。というわけで最後には結構の数の人(自己評価)が見てくれたと思う。しばらく話していると今回初挑戦のヘッドセットがなかなか快 調で有ることに気がつく。ジェスチャを入れる際に両手を使えるというのは便利なものだ。往年のジャネットジャクソンがヘッドセットで歌いながら踊っていた があれをふと思い出す。そろそろ終わり、というときになって一番最初に座っていた人が立ち上がる。あら、つまんなかったかしらと思うのだが、たぶんあの人 はあの人で別の仕事があったのだろう。

最後は調子に乗りすぎて少し早口になったかもしれないが本人ご機嫌のうちにプレゼンテーションを終わる。最後に「あちらのブースでデモをしていますからよろしけ ればお越し下さい」とかなんとか言った。さっさと片付けると自分のブースに戻る。機材一式またセットしなおしほれほれとしているとある人が来てくれる。何 でも名前が私と同じ「大坪」なのだそうな。どもども、と言う。とか説明をしていると今度は
「スーパークリエイター授与式」
の受付にいかなくてはならない。さて問題です。案内書には「総合受付」に集合するよう書かれていましたがそれはどこでしょう。ふらふらしてみるがそれらしき場所は 無い。入り口近くでパンフレットを配っているお姉さんに聞いてみる。すると出たところにあるブースだといわれる。なるほど、と思い言ってみるとNSN氏が なにやら受付をしていた。どーも、大坪ですと言うと、赤と白のリボンでできた花付名札と式次第(座る場所まで決まっている)をもらった。考えてみればこん なに仰々しい式典にでるのって初めてだな。

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注釈